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百八話

 村の一角に立てられている協会の会議室に、遠征していたメンバー一同が集まった。なんとも久々に見る顔ぶれだな……入谷のお兄さんとか一ヶ月以上ぶりだよね。

 まぁ、無事に全員が戻ってこれてよかった。そんな感想を思いながらも、ここは会議室だ。当然だが、報告と其れに対する会議が今まさに進行している。


「はぁ……瘴気を調査している間に、オークの侵攻があったとはね。現場で指揮を取れなかったのは残念だけど、被害も殆ど無い様で良かったよ」

「皆が上手く動いてくれたからよ。まぁ、頭が痛い話が一杯残ってるけどね」


 入谷のお兄さんが調査に出ている間にあった事をベースに話を進めると、お兄さんは驚いた後に自分が指揮を執れなかった事を残念だと言いつつも、死者が出なかった事に安堵。うん、ただオークに対する防衛線の話だけで、其処まで表情を変えているとこの後心臓が持たないよ?


「まぁ、まだ何かありそうだけど……こちらの報告をさせてもらって良いかい?」

「えぇそうね。そっちの方が良いでしょうね。何せこの後の話は、聞いてもらった後すぐ対策について話を詰めたいもの」

「おっと……それは少し話を聞くのが怖いな」


 少しおどけた感じで返答するも、その顔は真剣だ。因みにお姉さんには、事前にある程度説明はしてある。俺達の帰宅の方が入谷さん達より数日早かったからね。

 まぁ、入谷さん達が戻ってきてるのは伝令で聞いてたから、お姉さんには会議の進行をしてもらう為に簡単に説明したんだけど……その時の表情の変化は正に百面相と言った所だろうか。内容的に仕方ないと言えば仕方ないけどな。


 それにしても、お姉さんは自分が驚いたからと言って、入谷さんの反応が楽しみで仕方ないと言った感じだ。……内容を考えると不謹慎かも知れないが、其れぐらいの心持で当たらないと精神的に潰れてしまう。

 それに、この村のメンバーならそういった行為でも、笑って許してくれるから問題はない。まぁ、外の人と対話する時は切り替えるだろうから、大丈夫のはずだ。


 そんな爆弾が待っているとも知らず。入谷のお兄さんは報告を進めていく。街で上手い具合に遭遇し交渉が出来た事や、ダンジョン前にて瘴気やコボルトのズーフとの会話についてだ。


「なるほどね。それじゃ彼等に此方の言い分を、上手く通せたって事で良いのかしら」

「重要な点は全部通せたと思うよ。〝神樹の森〟への進入や、街の一部に中継地点が欲しいという事に関しては、間違いなく話を通したからね」

「なら、後は街の人達と上手く交流していくぐらいかしらね。なら、この件は完了という事で、次は瘴気関連ね? 現状だとどうしようも無いのが研究班の判断よね」

「そうですな……今の技術じゃ無力でしたわい。力不足で済まぬな」

「いえいえ、元々駄目元でしたし。何か解ったり出来ればもうけものと言う判断でしたからね。それに、全く成果が無かった訳でも無いのでしょう? なら、十分だと思うわよ」


 瘴気が流れていく穴の発見は、実際大きい話だ。ただ流れていくとだけだと思うなかれ、その事実だけでも瘴気の性質が少しは見れる。

 まず下に流れておりその流れ方で、瘴気がドロと液体の中間的な物だというのが発覚。しかも、その場に留まる訳じゃなく、下へと移動するという事も重要だ。

 上手く掘り下げ道を作ってやれば……瘴気の池の範囲を小さくする事も可能かもしれない。

 そして何より、その瘴気が流れていく穴の先……それは、俺達が見た場所の可能性が高い。この話を聞いて、思わず俺は川岸拠点のリーダーや影山さんと顔を見合わせた。まぁ、直ぐに其れを発言する事はないのだが、まだオークの地下王国については会議の話題に上がってないからな。


「そして、コボルトのズーフ氏との会話から、前々から良く話に上がってたダンジョンの秘密などが見えてきましたよ」

「へぇ……一体どう判断したの?」

「これまでの白河君の報告や、今回ズーフ氏と直接会話をした事を纏めると、やはり異世界が存在する可能性が高いという事ですね。今まではやはり半信半疑の部分がありましたが……ズーフ氏が語る人や文明の違い、特に我々が使っている道具や服装は初めてみるようで」

「……まぁ、そういった存在と会話したと言う報告を上げる人が、白河君しか居なかったからね」

「信用とかそう言う前にそんな話は混乱が先ですしね、モンスターに追われてやる事も一杯でしたし。俺としては入谷さんのお陰で、別視点からの判断が出てきたのはありがたいですよ」

「そう言ってくれると助かるわ」


 違う人が違う目線で同じ判断をしてくれるのは、信憑性も増すしありがたい話だ。それが、入谷のお兄さんともなれば、その説得力は更に増すと言える。

 これまでだと、「信じたいけど解らない部分が多いし、まだ高校生の年齢のいう事だから」と、捉える人も多かったのは否めないからな。……とはいえ、今だと文明崩壊が無ければ、高校は卒業してる年齢のはずなんだけどな。おっと、会議の方に意識を戻さないと。


「其れとだけどね。ズーフ氏曰く、世界に魔力が急速に増えてるらしい。瘴気が出来たのも、その関係上じゃないか? って話みたいだ。なんというか……一気に増えた魔力とのバランスを取る為に、異常が起きやすくなってるだとか」

「……そうなのね。という事はやはり地球にはそもそも、魔力だとかそういったものは無かったって事ね」

「まぁ、ズーフ氏だけが言っている事なので、他にもこの手の観測をしているモノが居れば良いんだけどね」


 ……聞けそうな相手といえば、一つだけ心当たりがあるけど、接触できるか? 進入禁止の約束しちゃったからなぁ。

 森の入り口までいって、大きな声で出てきてくれるとか無いかな? うん、今度試してみるか。やらないよりはマシだろう。

 とはいえ、期待させる訳にも行かないからな。今この場で言う必要は無いな。後で、お兄さんかお姉さんにでも相談するとしよう。


「それじゃ、瘴気調査隊の報告はそれぐらいかしら?」

「そうですね……強いて言うなら、村へと帰還する時に街に壁が出来つつあったという事ぐらいかな」

「そう、決断してからは凄い早さで動いているみたいね……はぁ、良かったわ」


 お手紙を出してからは、随分と返事をまったからなぁ。返事がなくて結構ヤキモキしてたみたいだし、現状の街における行動は、お姉さん達からすれば一安心と言ったところなんだろうな。


「それじゃ、今回の最重要案件ね……オークの集落跡から続く地下についてよ。私も概要を聴いただけだから、説明は岸君達に任せるわ」

「おう。オーク地下についてだな!」


 お姉さんから説明を任せると振られるが……拠点リーダーの苗字って岸って言うんだ。初めて知った! 今まで皆がリーダーリーダーと言うから、たいして気にしてなかったとか言えない。これは、墓場までもって行こう。岸リーダーも自分の名前を知られていなかったとか言われたら、落ち込むかもしれないしな。うん、今知れてよかった。……と言うか、よくよく考えたら、氏名を知らない人だらけかも……これってやばいか? 後でこっそりと主要人物になりそうな人だけでも調べておくか。


 あ……そんな思考をしている間にも、岸リーダーと其れを補佐する影山さんで、地下についての話が進められてる。


「まぁ、そう言う訳だ。地下の存在はかなり不味い。出来るだけ早く潰したいが、村の戦力じゃ足らねぇな」

「あ……あはは、それは、流石に冗談でしょう? 何ですか其れ。地下の王国に上位のオークが沢山? ダンジョンで言うなら、二十層前後の状況じゃないですか。自衛隊や警察の出番ですよそれ!」


 入谷さんが暴走しそうになってるな。まぁ、お姉さんも最初は同じような感じになった。それにしても、ダンジョンニ十層レベルか。確か俺が最後にダンジョンへと入った時は……十一層ぐらいだったっけ。

 もし、ダンジョンにそのまま潜っていたら、ニ十層クラスまで既に行ってたかもしれないが、今だとダンジョンによる成長ブーストが無いし、ボーナスや宝箱による魔本やらアイテムも無い。

 ……果たして、今の俺でニ十層レベルの相手と戦えるのだろうか? そういえば、オーガや雀蜂は何処レベルだろう? 聞いてみるか。


「お兄さん、一つ聞きたいけどオーガや雀蜂は何層レベルなんです?」

「え……あ、あぁ、そうだね、オーガは十層後半にボスとして出るレベルかな? 雀蜂は虫系ダンジョンの十五層前後辺りだったと思うよ」

「なるほど……という事は、上手く戦えば此処に居る面子でも十五層クラスは、対応してきた事になりますね。しかも、其処から皆の能力はアップしてる訳ですよね」

「……確かにそうだね。でも、オーガ相手には尻尾を巻くしかなかった」

「えぇ……ただ、あの時は咄嗟だったじゃないですか。対策を立てて万全の準備をしたらどうでしょうか?」


 まぁ、武器が通らなかった時点でオーガを相手に出来たとは思えないが……現状であればオークの魔石までなら大量にある。それも、何百と言った数でだ。

 下位の素材を上手く利用して武器を強化し、上位の敵を倒してきたのは今までやってきた事だ。ならば、オーク素材を使い上手く立ち回れば、オークの上位でも戦える可能性は出てくる。

 とはいえ、正面から堂々と戦う必要も無いのは、前にも考えてた事だ。少しずつ話を振っていくとしよう。


「例えば……大量にあるオークの魔石を使い、地下王国全体を爆破して、奴等を土葬するとかどうでしょう?」

「なるほど、別に正面から戦う必要は無かったね。うん、少し気が動転し過ぎてたみたいだ。ただ、其れは不味くないかな? 地下に作ってる時点で、そういった空間崩しには対処してるんじゃないかな。それよりは……水で埋めてしまうのが良いと思うけど」

「オークの拠点にあった穴を全部埋めれるなら、水攻めはありだと思いますが、何処に穴が続いてるかが謎で……恐らく逃げられちゃいますよ」

「毒ガスを送り込むのはどうだ? ほら、雀蜂の巣の時みたいなのをやるんだ」


 圧倒的なオーク上位による地下王国という脅威。その情報に会議室にいる殆どの人間が一時呑まれてしまった。まぁ、今までの例を挙げて入谷さんを復活させる事で、全員の思考に燃料が注がれ、策の出しあいという話題に火がついたか。

 とは言え、前途多難なのは間違いない。先ほどあがった毒ガス攻撃というか、空気を如何こうする攻撃は、あの空気を正常にするシステムをどうにかしないと……無意味だろう。

 空気をコントロールして窒息させたり、スペックダウンが使えないのは実に痛い。大物狩りには便利だし、地下空間というお誂え向きの場所なのにな。


 何はともあれ、こうして議論をしていく内に良い案でもでれば良いだろうな。

 まぁ、当分は議論と準備等で村での生活になりそうだ。休みも潰されてたし、少し妹達と過ごす時間が出来るのは良いんだけど……できるだけ早く、オーク達の地下王国を潰す案を出さないと。

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