百二話
本隊による追撃でオーク達の討伐も終わり、今は次の行動に移す為の会議をしている。
「予定通りオークを殲滅出来た訳だが、村への報告もあればオークの解体もある。さらに、オークの拠点に調査もいかねばならないか……やるべき事が多いな」
オークの解体に関しては、イオが森の中で倒した分はイオが直接回収してきた。川の決壊で流したオークに関しては、下流側にオークだけをせき止めるだけのネットを張ってある。このネットは研究班が試行錯誤して作ったものだ。ネットを固定する道具も色々と手を加えているらしい。だから、無事ではあると思うが……ネットがオークごと流されている可能性はある。
まぁ、ネットが流されていなければ流されたオーク達は溺死してるだろう。ただ、ネットごと流されている場合が面倒だ。生き残ったオークがいる場合があるからな。
「そうだな。報告は俺がしに行こう。調査は……そうだな、先ず影山達は森の中をオークの拠点に向かう形で調査してくれ。白河とイオは、まず下流に行ってネットの状況を確認。ネットが無事ならば、そのまま回収する人間を回すから報告に戻ってくれ。逆に流されているようであれば生き残っているだろうオークの探索だな」
「あー……オーク達が流されて無いと良いな。魔石も保存食も沢山作れるからねぇ」
「手の込んだ作りだったネットを何重にも仕掛けてたから、最後までは壊されていないと思いたいかな」
あれだけ色々と大掛かりに作戦を立てて実行したからな。オークの素材は出来るだけ回収しておきたい。皆がそう口にするのは、けして食欲の為だけじゃないはずだ。
オークの魔石の数も大量に手に入るので、色々実験というか道具開発も捗る。研究班も今回の成果を物凄く期待していた。現状だと半分以上が流されているはずだから、漏れが無いように探さないとな……研究班だけじゃなく、協会側からのプレッシャーが凄まじい事この上ない。
リーダーもそのプレッシャーを感じているのだろう。俺にさり気無い圧をかけながら笑顔で頼んでくる。うん、別に圧はかける必要ないと思うけどな。
「イオが居れば、流されてたとしても大丈夫だと思いますよ」
「そうだろうな。だからこそ、君達に頼むんだ」
それから色々と議論が進んだ。内容の殆どがオーク戦を省みたもので、カタパルトの開発を止めバリスタを量産するべきだ。いやいや、カタパルトでもダメージが与えれる弾を開発するべきだ等だ。
まぁ、確かにカタパルトは折角作ったというのもあるからな、使えるようにしたいと言う思いはある。
とはいえ、即戦力を増やすならばバリスタだ! と言う意見ももっともで、そこら辺は上層部が決める事だろうな。リーダーには現場の意見を纏めて報告してもらおう。
他にも、この数を策やトラップ無しで戦うには如何すれば良いのか。寧ろもっとトラップやら策の種類や効率を増やすべきだ等々。議論が凄まじい勢いで進んでいった。
とはいえ、議論だけで時間を潰すわけにも行かないので、そろそろイオを連れて下流へと向かいますか。
イオと一気に駆けて、下流に仕掛けたネットを仕掛けた場所へとたどり着いた。
ネット自体一つ目は破壊されていたが、二つ目からは無事だった。お陰で流されたオーク達がネットに引っ掛かった状態で息絶えていた。
「ま、問題が無くて良かったって処か。一つ目が破壊された理由はなんだろうな?」
「ミャン!」
イオが鳴きながら見た場所を見てみると、無理矢理引きちぎった場所がある。なるほど、オーク達が暴れて千切れたのか……それとも、噛み千切ったのかな? ただ、二つ目のネットはどうしようも無かったんだろうな。
「まぁ、一枚目のネット以外問題無かったし、後はオークの回収ぐらいか……放置してたら、他のモンスターとかに取られかねないし、急いで戻ろう」
「ミャン!」
どうやら、イオが他の人を呼ぶまでここで待機してくれるらしい。うん、実によく出来る子だな。
それじゃ、急いで人を連れてこよう。解体は出来るだけ速いほうが良いしな。
拠点で流されたオークに関して報告した後に、人員をつれてイオと合流しオーク達の回収を任せてから、拠点へと戻り次の行動を確認する。
「さて、ネットに関して等の報告は君のは聞いたからな、後は送った人達が戻ってきてからだ。それで次だが白河とイオには、オークの拠点へと向かってもらいたい」
「なるほど、拠点に待機しているオークが居るかどうかの確認に、オークが何処から来たのかを調査ですね」
「その通りだ。オーク達の襲撃は急すぎたからな。出来れば、何処から来たのかしっかり調べておきたい」
オーク達が急に湧いた理由がわかれば、対策が取れるからな。その場に行き成り湧いたのであれば、物見を増やす。何処から移動してきたのであれば、移動する為の道を潰すなど色々と考える事が出来る。その為に調査が必要だ。
兎に角、イオを連れて森の中へと移動だな。
――村にて――
「戦況はどうなってるのかしら……」
「予定だとたしか、第一弾目で三割以上へらして、第二段目で六割以上倒せる算段でしたっけ?」
「その計算は上々と言える結果の話ね」
計算上であれば、バリスタとカタパルトで三割以上だったはずだが、実際はカタパルトが通用しなかったので、計算上の半分ぐらいになっている。だが、その情報は村にまだ届いていない。
「そろそろ伝令がきても可笑しくない時間のはずよね」
「問題が無ければ、定時で来るだけですから……そろそろですね」
問題があれば時間など関係なしに伝令が走ってくるので、それが無いと言うのはある意味安心できる話だ。
定時報告自体は戦闘等関係なしに行なうようにしている。これは義務化しているので、報告が無くなった方が何かあったのか? と心配になる。
そんな訳で彼女達の心理状況は現在、不安になりながらも安堵しているという、矛盾を孕んだ状況だ。
「たしか、第三段目が二段目で慌てた相手に奇襲でしたっけ。それで残った数匹のオークを殲滅でしたよね」
「そうよ。其処まで行けば、残ったオークの予定は奇襲する人と同数になってるはず。とはいっても、机上の空論ってやつね。色々アクシデントとかで、実際は討伐数は減ってるはずよ」
「それじゃ、第三段目で戦う数は大変になりませんか?」
「そうね、だからこそイオちゃん達に奇襲を任せるのよ。彼等ならオークの足止めも出来るからね」
なる程と言える人選だろう。それにしても、品川は環境が人を育てるというのを地でやっているのか、現場に居ないはずなのに、まるで状況が見えているかのように予測を立てていく。
そして、その予測は大方外れている事が無い。実際、彼女の予想通りの流れが戦場では起きており、誤差の範囲内ではあるが、オークの討伐数が其々の作戦での状況で予定よりも減っている。
「伝令です!!」
そんな話をしている中。彼女達の元へと伝令が届く。
内容は、まだ戦闘が終わったという内容ではなかったが、第二段の作戦が上手くいったというもので、彼女達だけでなく協会や村でも、オークとの戦いがもう直ぐ終わるだろうと、そんな安堵するような空気が全体に流れ出していた。
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