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百一話

 イオと共に拠点から離れ大きく下流側へと走り川を渡る。

 単純に突撃をして来たオークだが、斥候を出すぐらいの事はしたからな……まぁ、あまり中身が無かったけど。それなら、大きく下流へと迂回してから、村を襲う別働隊を編成してる可能性も在ると言う事で、俺とイオが川を渡ってから、森の中を遊撃するようにとリーダーの一存で決まった。

 それに、そんな部隊を作らず全軍で突撃しているのであれば、俺とイオは相手の裏を取れる位置に移動できる。どちらにしても、やった方が色々と良いだろう作戦だ。

 なら、上流側はどうなんだ? と言う事になるが。上流側であれば、どの道この川岸の拠点を通らないといけないし、拠点を通らない森の中を進んでいくのであれば、時間的にやる意味が無い。なので、穴があるとしたら下流側であり、そこを俺とイオで埋める訳だ。


「さてさて、今のうちに森の中を進みきって、オーク達の裏側に到着しておきたいな」


 イオの探査能力なら、相手に気がつかれずに移動できるはずだ。

 偶に木々の隙間から見える戦場は……うん、バリスタによる負傷とカタパルトによるノックバックで、オーク達は上手く前に進めてないみたいだな。

 現状だと、オーク達の損耗率は一割行くかどうかだろうか? このまま撃っていけば、オークの進撃は止めれる。とはいえ、弾切れになるのも時間の問題だろう。

 矢玉があれば、バリスタだけで撤収判断がでる三割はいけただろうけど……それは人間の考えだからなぁ、オーク達だと関係なしに攻めてくるか。

 とはいえ、恐らく撃った量から残りを計算するとだ、よくて二割のオークを倒せれば最高の結果になるだろうな。


「ま、その前に裏まで移動は出来るから、後は奇襲をかけるタイミングが問題になるか」


 オーク達はどうやら別働隊を編成していないようで、なんの異変も無く森の中を進んでいける。どうやら思った以上に、オーク達への奇襲は彼等の逆鱗に触れたみたいだ。とはいっても、最初に村へと奇襲をかけたのはオーク達なのにな。

 やった側がやられて逆切れとかねぇ……オーク格好悪い! っと、まぁモンスターにこんな事を思っても仕方ないだろうな。


「ミャン!」


 ……って、イオも同じ意見なのか? オークは美味しいけど、お馬鹿すぎるって。やった事で報復されるのは当たり前なのに! か。うん、どうやら、モンスターとか関係ないみたいだな。人にもそう言う奴いるし、モンスターだからってレッテル貼りはいけないか。目を曇らせてしまうな。


「ま、イオが敵じゃ無くて良かったよ」

「ニャー」


 此方のいう事を理解してるし、頭の回転も早い。判断力も身体能力も凄まじいからな。まぁ、ご飯に目が無い所とかは凄く可愛いポイントだが。

 それに、出会ってからその能力はまだまだ増えていっている。というか、意思疎通がしっかり出来てる時点で、とんでもない話なんだけどな。



 閑話休題(それはさておき)



 オークの裏取りが上手く行った。今居る場所は、オーク達の裏手にある森の中だ。

 此処からならば、オークの動きがしっかりと見える。そんなポジションにつく事が出来た。


「さてとイオ、俺達は少し待機だな。飛び出すタイミングは、作戦第二段が発動した後だ」

「ミャン!」


 作戦第二段が発動すれば、成功しようが失敗しようがオーク達の被害率が違うだけで、あいつ等が驚愕し足並みが崩れるのは間違いないはず。

 そのタイミングで、俺とイオが背後から奇襲をしてかき回す。まぁ、俺とイオの行動は第三段とも言える内容になるかな。


 第二弾に入る前に、バリスタとカタパルトによる射撃が止む。オーク達の被害が現状だと一割六分ぐらいか? もし俺が指揮をしていれば、撤退の文字が頭によぎるんだけど……あのリーダーっぽいオークを見た感じだと、一切それは無さそうだな。

 案の定、バリスタの攻撃が止んだのを理解すると、突撃!! と言わんばかりに咆哮を上げ、オーク達が一気に川を渡るべく走り出した。


「とはいっても、其れも作戦通りなんだよなぁ」

「ミャン……」


 イオがオークをかわいそうな子でも見るような目で眺めながら一鳴き。イオはイオで、生き残る為にあの雀蜂共から撤退をした経験があるからな。今のオーク達の突撃をみて、色々思う事があるんだろう。

 まぁ、俺達からしたら予定通りに行けるから、これほど楽な事はないけどな。


 そして、オーク達が川の半分ぐらいを渡りきった頃に、上流から一気に大きな音と共に水が押し寄せてきた。

 このダムの決壊みたいなものが、作戦の第二段でこれの為にオークが村を奇襲してから、上流に堰を作って大量の水を溜めておいた。

 それにしてもこの川岸が妙に広く、石やら岩がゴロゴロと転がっていたのに、オーク達は気がつかなかったみたいだな。普通ならもっと川は広いのにね。


 勢いのある水流と其れに押され流される石や岩に、オーク達は足をとられ打撃を喰らい、一匹また一匹と川の流れに飲まれて行っている。

 急激に広がる川は更にオークを巻き込んで行き、それと同時に巻き込まれまいとするオーク達が慌しく、逃げ惑っている。……うん、ここだな。


「イオ突撃!」

「ミャン!」


 イオと同時に、どう指揮を執れば良いか判断できていない、オークのリーダー達が居る場所へと奇襲。

 奇襲に対する警戒すら出来ずにいたオーク達が、抵抗をする事無くイオの魔爪に切裂かれ、地面へと倒れていく。


「イオばっかりに、良いところを取られる訳には行かないな!」


 調整され戻ってきたメイン武器を振るい、斧の部分でオークの首を飛ばし、別のオーク相手に穂先の部分で心臓を目掛けて突きを放つ。そこから、グルリと回転しながらハンマーでオーク相手にホームラン!

 川の氾濫と同時に奇襲をくらったオークのリーダーは、頭が回っていないというか、真っ白になったのだろうか。一切の抵抗も無くただただ周囲を眺めるだけの状態になっている。


「如何考えても、動きを止めるのは愚策だよ? それじゃ、討ち取ってくださいって言ってる様なもんだ」


 足が完全に止ってるリーダーを背後から斧で肩から腰にかけて一閃。ズルリとオークリーダーの体が落ちて行く。その姿をみた他のオーク達は、一瞬足を止めた後に状況を理解しだしたのか、一斉にだが内容はバラバラの行動を取り出した。


「ま、森の方へ逃げるのはイオに任せるとしてだ……当然、向かってくる奴も居るよね」


 現状だと川を渡る事はできない。そして、今オーク達の目の前にいる脅威は俺とイオの一人と一匹だ。

 排除するなら、楽だと思う奴だっている。とはいえ、オーク達はその数を五割ほどは川に流されており、その前のバリスタでの被害で合わせて七割ほどは出ている。


「ま、現状をしっかりと認識すれば、楽な奴だと判断するのは間違ってるんじゃないかな?」


 それに、こちら側にいるのは俺とイオだけじゃない。ここ一ヶ月程スパルタ訓練を受けた隠密部隊が、実は隠れているんだ。

 だから、俺のやる事は……。


「豚共! 此処を抜けないと、ただ森の中に逃げた奴はイオの餌食だぞ? 全員同時に向かって来たらどうなんだ!?」


 挑発だ。俺一人に意識を向けてくれれば……影山さんたちが。ほら動いた。


 挑発に乗ったオーク達が、一気に俺へと押し寄せてくる。まぁ、光景だけみれば物凄い恐ろしい映像だな。

 ただ、オーク達はまったく気がついてないようで、一匹ずつ、最後尾から、地面へと音も無く倒れて行く。影山さん達の仕事の成果だな。

 俺の方でも足元を泥濘に変化させ、鉄串を投擲しじわじわとオークの行動力を削っていく。

 オーク達がたどり着く順番を調整し、先着順にその首を刎ねる。ただそれだけで良い状態だ。


「ミャァァァァァァァ!!」


 そんな中、森の中からイオの咆哮。どうやら、森にはいったオーク達を殲滅したらしい。相変わらず仕事が速いな。イオはすぐさま此処まで駆けつけて来るだろうな。


「オークの殲滅よりも、イオが此処まで来るほうが速いだろうなぁ」


 やれやれといった感じでそう口にすると、オーク達の沸点が崩壊したのか駄々を捏ねるように暴れ出した。


「あらま……まぁ、聞こえちゃって激怒したのは仕方ないけど、仲間も殴り飛ばしてたら意味がないよな」

「まぁそう言うな。オーク達からすれば予想外すぎる展開だろ」


 さり気無く横に来てた影山さんが、突っ込みを入れてくる。まぁ、彼の言うとおりだけどな。川まで来てみれば、要塞が出来てるし、川は決壊するし、奇襲をするつもりが逆に受けたわけだから。


「とはいえ影山さん。仕事は完了って事で良いんですか?」

「ま、オークがバーサク状態だからな、背後からの暗殺も無理だろ。今はあいつ等が自滅するのか、落ち着くのを待つだけだからな。白河とイオで殲滅してくれても良いんだぞ?」

「嫌ですよ面倒くさい。あんな暴れ方してる相手とか……あぁ窒息でもさせて置きますか」


 どうせ、周りを一切見ず暴れてるだけだ、十分に隙だらけといえる状態。

 とはいえ、魔石は使えないから一匹ずつ丁寧にその意識を奪っていく。


「はぁ……魔法は便利そうだな」

「ダンジョンに入れないと、習得できないのが問題ですけどね」


 魔法の便利さに影山さんと会話をしつつオークの数を少しずつ減らして行き、イオが到着してからはイオのサポートの為に鉄串を射出。


「川も落ち着いてきてるみたいですし、後は消化試合ですかね?」

「ま、拠点から部隊も出てきたし、残りのオークは全体の一割ぐらいだろう? うっし、俺達は仕事をしっかりした、後は任せて良いはずだ!」


 後の殲滅はリーダー達にまかせて、影山さんはゆっくりするつもりらしい。まぁ、俺も適当にサポートするぐらいで、残りは何かあった時用に待機かな? イオは……森の中で倒したオークを拾いに行くみたいだ。うん、食いっ気が凄まじいな。全部食べる気でいるみたいだ。


 とりあえず、オークとの防衛線はコレで良いとして、後はオークが此処に居る理由を探さないといけないか……次の仕事は色々と調査がメインになりそうだな。

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