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百話

開戦! とはいえ、今回は短めです。

 川を挟んで矢がオークへと降り注いでいく。


「手を止めるな! 次々撃ち込め!」


 お兄さんの号令で次々と矢が飛んでいくが、それでもオークの進行が止る事が無い。それはそうだろう、奴等の皮は硬い。魔法を併用もしておらず、使う矢も量産品だ。目や口の中をピンポイントで狙えるなら別だが、現状やっている事はよくて嫌がらせ。

 そんな攻撃だからか、一気に川を渡ろうとするオーク達。とはいえ、此方も川を渡らせる訳には行かないので、その為のカードを切るべく準備をして行く。


「準備の方はどうだ?」

「第一弾は完了です!」

「よし……ならば、やれ!」


 行動開始の許可と同時に、拠点内からオークに向けて大型の矢や岩が飛んでいく。

 まぁ、拠点内に作られてたのはバリスタとカタパルトだ。トレビュシェットの方がよかった様な気もするが、設置範囲の都合上でトレビュシェット案は廃案となった。


「魔石を爆破させた方が強いと思うんだけどな」

「魔石はジョーカーみたいなものだ。数も無いから早々使えるもんじゃないさ」


 魔石を使えば速いとカタパルトを担当している人が愚痴るが、それをバリスタを担当していた人が嗜める。

 バリスタもカタパルトも苦し紛れの対策で、魔石を使った道具を使わずに、効果を発揮させるには如何すれば良いか? と、思考錯誤した結果。

 とはいっても、使ってる材料には魔石も少量含まれているし、新発見した木材などが使われているので、それなりには資材を消費している。

 婆様曰く、従来地球にあった素材は魔力に反応しない、もしくは反応しにくい。だが、新しく発見された素材は魔力の通り方や反応が比にならないレベルらしい。

 たしかに、武器を作る時も生体素材を粉にしたりして、武器に混ぜて作ったりしてたからな……鉱石もダンジョンから拾ったモノのように、新しいものがあれば……また色々と変わってきそうだ。


 という訳でバリスタもカタパルトも使用した素材からみて、オークへの攻撃は十分にダメージが通るはずだ。というよりも、目の前の光景はしっかりとダメージは出ているように見える。が、ただ少し差があるようだ。


「どうやら、バリスタの方がダメージが大きいみたいですね」

「あぁ、岩に関してはノックバックする程度にも見えるな。岩をうけてもすぐさま立ち直ってくる」


 恐らく、飛ばしてる物の差だろうな。岩や石はそこら辺から拾ってきたものだが、バリスタの弾は新種の木材を加工した物だ。

 その差からだろうか、バリスタの弾はオークに突き刺さっている物もある。


「これは、バリスタメインの方が良さそうだな」

「まぁ、今回は岩や石をばら撒いてノックバックさせるのもありだと思いますけど」

「たしかにな。よし! カタパルト隊は牽制として、相手のリーダーが居るだろう場所にガンガン打ち込んでくれ!」


 それにしても、オークが単純で助かった。まさか、此方が奇襲を仕掛けてから二日で攻めてくるとかね……頭に血が上っての行動だとは思うけど、これだけ待ち構えている場所に攻めてくるなんてな。

 とはいえ、数で押す自信があるのだろう。現状だと撤退するオークは一切居ない。

 どんどん川を渡ってこようとするけど、現状全てのオークに対して足止めができている状況だ。


「と言っても、何時かは渡ってこられるんだろうけどね」

「まだ手段はあるからな。一応次のカードを切る準備をさせておくか」


 リーダーが影山さんを呼び寄せてから、一言二言言った後に影山さんが颯爽と何処かへ消えていく。

 恐らく次のカードを切るための準備だろう。といっても、準備は出来ているから、位置に着くといったところか。


「タイミングは如何しますか?」

「あぁ、オーク共の数が半分ぐらいか? 川の中央ぐらいに来たときだな」

「なるほど……それじゃ、そろそろ俺とイオは移動しても?」

「万が一の為に拠点に居てもらったが、この調子ならば大丈夫だな。よし、そっちは予定を戻して作戦行動に移ってくれ」

「了解です」


 さてさて、リーダーからの待機命令が解除された訳だ。

 現状は開戦したばかりだし、まだまだ色々と戦況は動くだろうから急いで行動しないといけないか。

 まぁ、イオと一緒に本来の予定を一つずつこなして行かないとな。




――村で待つ人達――


「……そろそろ拠点では開戦しているかしら?」

「恐らくですけど、報告を受けた感じですと戦いは始まる頃かと」


 今回の戦場はオーク相手に色々試す為に、万が一の為に女性は全員村側の防衛と回っている。

 「私達も戦いたい!」と言っていた女性も居たが、全てを協会命令で却下された。

 何故かといえばゴブリンは女性を発見した時、優先的に突撃をしてきた。オークも同じであれば、作戦が狂うからだ。囮にしてオークの行動を制御する。なんて手もあるかもしれないが、今回に限っては無心で突撃されては、たまったものではない。


「防衛装置もトラップも充実してるから、大丈夫だとは思うけどね。そうそう、伝令は着いたかしら?」

「こちらは信じて待つしかないですからね。それと、伝令はまだ到着して無いです」


 何時もは賑やかな村だが、今日はオークとの防衛戦がある事を知っているのか、実に静かだ。

 なにせ今日は村の皆が仕事以外では、拠点に居る人達の無事を祈っている。話声が在ったとしても、家族同士の会話や戦場に居る人の安否についてばかりだ。


「どちらにしても、私達に出来ることは……何時もの仕事をこなす事よね」

「私も弓をもって駆けつけたいですけど、邪魔になりますから」


 もどかしい。そう感じる思いに差は無く、何の問題も無くなれば今すぐ飛び出しかねない。そんな空気を出しながらも、何時もの作業をこなして行く。

 少しでも情報が欲しい。そんな思いが通じたのか、廊下をバタバタと駆けて部屋へと飛び込んでくる影。


「慌しいわよ! 何かあったの!?」

「伝令です! 拠点では開戦されたようです。現状対岸で相手の足を止められている模様で、怪我人も現状は居ないとの事。もう少しオークの数を減らしたら、作戦第二段に移るそうです」

「そう。今は順調のようね……」

「はぁ……よかったぁ。そういえば作戦って何段階あるんです?」

「私が聞いてるのはそうね…………」


 伝令を受け取り一安心した二人と職員達は、作業の手を止める事無く動きながらも、作戦などについて会話をして行く。

 このまま作戦通りにいけば大丈夫だ。そんな気持ちが周囲を軽い空気へと変化させていった。

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