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九十九話

「オークさんオークさん遊ぼうじゃないか、今はんし「ミャン」……あれ? そんなに声大きかった? ごめんごめん」


 拠点における全ての迎撃準備が終わった為に、予定されていた工作活動をしにオークの拠点側に来ている。

 朝駆けで行動している為かテンションがあがった為に、ついつい脳内で歌ってたはずが口に出してたらしい。お陰でイオに駄目出しをされてしまった。

 とはいえ、其処まで声も大きくなかった上に距離も未だあったから気がつかれずにすんだ。まぁ、内容的には減点だから気をつけないとな。


「さてさて、イオさんオーク達の様子はどんな感じ? 後、他の皆は上手く行動してるかな?」

「ウー……ニャン!」


 ふむふむ……イオが拠点を睨んでから少し顔を移動させつつ数回鳴く。鳴いた場所を考えれば、四方に見張りを立てているみたいだ。

 味方の方はと言うと、俺達の後方をゆっくりだがしっかりと着いて来ているか。


「時間もまだまだあるし、後方の人達と合流してからオークの見張りについて話をするべきだな」

「ミャン」


 イオも賛成らしい。四箇所を固めながら一箇所ずつ三匹は居る。正直奇襲を仕掛けるには、状況が悪いと言える。とりあえず、後方部隊を待つか。




 後方部隊を待つ為に移動をやめてから数分。影山さんをリーダーとした後方部隊が俺の元へと到着した。

 因みに彼等の編成は、三人一パーティーだ。リーダーによる隠密行動の訓練と試験に、パスしたのがこの三人だった。そして、一番好成績を残した影山さんが、この隠密パーティーのリーダーに抜粋された。

 その影山さんが俺達を見ると、何かあったのかと疑問に思い声をかけてくる。


「俺達を待ってたみたいだが、何かあったのか?」

「あったと言うよりも、相談ですかね? どうやらオークが見張りを四箇所に立ててるみたいなんですよ」

「……仕掛けるには、少々厳しいか」

「そうですね。その四箇所も四方を固めるように配置されてるみたいで、気がつかれずに破壊工作をするには厳しいかと」


 見張りを暗殺するにしても此方の人数が足らない。もし一箇所にニ匹なら俺とイオで行けるが、他に三箇所もある上にニ匹じゃなく三匹もいるから無理がある。

 それは、影山さん達が居ても同じと言える話で、全員で襲えば例え三匹でも一箇所だけなら問題ないけど、四箇所もあるとなると時間的に厳しい事になる。


「もう、油壺を投げ込むか? 予定された数をこなすのは無理かもしれないが、被害は出せるだろ」

「ま、それに今回の目標は数を減らす事もだけど、挑発して相手を此方に引き込む事だしね」


 確かに遠くから投げ込めば突入するより安全に奇襲が出来る。が、皆が言ってるように色々仕掛けるよりも、被害がランダムになるからなぁ。


「投げ込むにしても、一箇所だけは奇襲で見張り倒しますか? そうすれば、その位置なら少しは仕掛けれますし」

「出来ればそうしたいがな……正直、俺達が奇襲を成功させれる自信がない。相手は見張りをしているんだろう? それなら、周囲への警戒レベルは高いはずだからな」


 影山さん達の能力ならば、間違いなくオークが警戒していても奇襲は成功する。ただ隠密スキルを習得してから日が浅い為に、その自信が未だ無い状態だ。これは、無理強いして自信をつけさせるよりも、強張って行動に阻害がでるリスクを回避するべきか。


「すまんな、一匹ならば間違いなく行けると言えるんだが……流石に数が多い」

「大丈夫ですよ。確実に行く手段を判断するのも、生きて勝つ為に必要な事ですからね」


 あと少し日数があれば……と思わなくも無いが、オークが数を増やしてる可能性があるなら、仕掛けるならば今がベストなタイミングのはずだ。

 先に延ばす訳にもいかないし、被害を少しでも出しておきたいという事で、今回は油壺投擲案で行く事に決定。


「バックパックに突っ込んだ油壺だが……一人二つから三つ投げれれば良いか。それ以上やると逃げるタイミングを逃しそうだな」

「投げ終わったら直ぐに逃げてくださいね。俺は皆が投げ終わった後に燃焼爆弾を投げてから、イオと殿をしつつ逃げますので」

「了解だ。本来なら俺達がその役をやるべきなんだろうけどな……まだ、力足らずですまないな」

「適材適所ですよ。影山さんは部隊を上手く率いていってくださいね。それこそ、俺には無理ですから」


 会話をしつつ、油壺をバックパックから出して準備を済ませる。

 研究班特製のこの壺は、その大きさが縦横高さ共に十センチ程のサイズだ。普通にこれだけの物で燃焼させようと思ったら小さいのだが、そこは研究班の阿呆みたいな技術が詰め込まれた燃料だ。十分な成果が出せる事は間違いがない。


「さて……投げ込む位置は、中央と四方で良いとしてだ……中央とその周辺に二個、四方に一個ずつでいいか?」


 丁度投げるのは四人だ、割り振られた場所に投げ込めば外側の四箇所をカバーできる。

 中央附近は恐らく、リーダーやら数を増やす為の場所があるだろうと予測して、各自三個目が投げれるのなら投げておこうと言う判断。


「よし、各々の投擲場所は解ったな? いくぞ!」


 影山さんの号令で、一斉に油壺の投擲を開始。

 全員が山形に飛ぶように思いっきり油壺を上空へと放り投げる。すぐさま次の油壺を同じ軌道で四方へと投げ込む。


「よし、三投目いけるぞ!」


 身体強化されている力で投げたからなのか、油壺が落ちて来るまでの時間が出来たようで、全員が三つ目を投げるタイミングが作れた。

 すぐに三投目による油壺が空へと上がっていく。だがその軌道を見ることなく、影山さん達は撤退を開始。


「ゴーゴーゴー! まだ、壺が落ちてない今なら結構遠くまで逃げれるはずだ!」


 俺はイオに周囲の警戒を頼みつつ油壺の第一陣が落下する瞬間に、燃焼爆弾を山形ではなくストレートボールでオークの拠点へと投げ込む。


「よし! ストライク!! オーク達が壺の割れる音に気が着いたと同時に燃焼開始だな!」


 その後も降り注ぐ油壺にオーク達は翻弄されつつ、中にはその炎に巻かれている奴等もいる。

 きっと側でみれば、オーク達の地獄絵図が出来ているはずだ。だが、其れを確認する前に俺は生き残るであろうオーク相手に、その姿をちらっと見せてから拠点の方へと撤退を開始する。


「今回の奇襲は、やったのが俺達だとばれないと意味が無いからな。とはいえ、この奇襲でどれだけ数が減るか解らないのはちょっと辛いか」

「ミャン!」


 今はそんな事よりも着かず離れずの撤退だ! と、イオが鳴く。まぁ、思考は確かに後で出来るからな。うん、ついすぐ思考に入るのは悪い癖かも知れない。

 とにかく、追いかけてくるオークの数が増えすぎないように、適度に攻撃を加えながら撤退行動。とはいっても、相手もあの火を止めるのに数が要るはずだから、追って来るオークは多くないはずだ。


「それでも、頭に血が上ったオークが数匹は追ってきてるけどな」

「ミャン!」


 上手く距離を調整しつつ、足の速いオークだけを狩りながらの撤退。さり気無くイオがオークを持ち帰ろうとするが、今はそんな暇が無いので捨てさせておく。

 イオが少し悲しそうな顔をするが……まぁ、現状は仕方の無い話だ。後々、オークが大量に襲撃してくるだろうから、其れを待ちなさいと嗜めておく。




 そんな撤退をしながらも川岸の拠点へと帰還した。奇襲は恐らく成功と言えるだろう。

 此処からでも、轟々と燃える火の手が見えるという事は、未だにその火が消されて無いという事だから、オークの拠点は崩壊したと言っても良いと思う。

 しつこく追いかけてきたオークも川までたどり着くと拠点を見たためか、追いかけてくる事を止め森へと一目散へ散っていった。


「お、白河も戻ってきたか」

「影山さん達も、無事帰還できたみたいで良かったです」

「阿呆か。お前が殿をしたんだ、俺達が戻ってなかったら其れこそヤバイだろうが」


 お互い無事に戻れた事を、冗談を交えつつ笑いながらも確認しあう。

 全員が危険な一仕事を終えた事に安堵しているからな。なにせ今回は、諜報部隊の始めての破壊工作及び奇襲作戦だ。

 彼等の不安やらストレスは物凄いレベルだっただろう。

 拠点にたどり着いて、安心したためか気が緩みっぱなしだ。……まだ、報告があるはずなんだけどな。


「ま、報告は俺に任せて他の奴等はゆっくり休んでおけ」

「リーダー! ありがとうございます!」

「さすがリーダー。それじゃ私は酒でも飲みに行くかな!」

「おいおい、飲みに行くなら後から俺も行くから席用意しとけよ?」

「解ってますってリーダー!」


 さて、俺もとりあえず影山さんと一緒に報告に行かないとな。

 恐らく奇襲を受けたオークの行動は、通常ならば激怒して攻めてくるか……それとも、また新たに拠点を築こうとするか。俺なら拠点を作る場所を変えるか撤退してまったく違う場所へと行くけど、あいつ等の行動って読めないからな。

 今後について話つつ、当分の間は警戒レベルを上げていく事になるだろうな。

 まぁ、此方としてはさっさと攻めてきてくれるほうが楽なんだけどね。

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