九話
遅れましたorz
四層の攻略は順調かな? 情報収集やマッピングも完全に慣れたものだ。そんな風に進んでいる四層のモンスターは毒犬が二匹が基本となり、稀にボス犬が紛れている。割とめんどくさい。
それでも犬に変わりは無いわけで、パターンに嵌めて狩って行く。今日も魔石が美味い。
夏休みを明けてからと言うもの学校では、登校してくる学生が減った。仕方ないだろうなと思う。
行方不明者に怪我をして病院にいる者、トラウマとなり外に出れなくなった学生……先生方は頭が痛いだろうな。
授業が始まった当初は何処の学年でも殆どがお通夜モード。今は少し落ち着いたみたいだけど、ダンジョンの会話は禁句となってる。
空気を読まない莫迦が、「俺、ダンジョン潜って二層までいってモンスターをぼっこぼこにしてきたぜ! 敵討ちはまかせろよ!」なんて言っていたが場の空気は凍りつき、彼は居た堪れなくなったのかそそくさと帰宅していった。禁句に触れるのが早すぎたんだよ。
「今日帰りにパン屋さんに行こうよー」
「あれ? あのパン屋って店閉めたんじゃなかったっけ?」
「うそ!? 好きだったのになぁ……」
「最近お店を閉めてる所増えてるよね? どうしたんだろ」
ふむ……パン屋さんが無くなってしまったのか。お土産購入先が減ってしまうじゃないか! 他にもお店が閉まっているとか……ゆいが悲しみそうだなぁ。
そんな感じで、休み時間の会話の内容はダンジョンが現れる前に戻った。先生達も完全に腫れ物を扱うかのような感じでダンジョンについては触れない。
そんな学校生活だけど、学生のダンジョン探索が居なくなったかと言えばそうでもない。
学校帰りや休日に、ダンジョン入り口や協会で顔を合わせる事がある。まぁ、出会ったら何とも言えない空気になるんだけど。大抵は挨拶すらせずに、そそくさと移動するパターンが殆どで、挨拶があっても会話が続かないと言う。
「……よぉ、今からか?」
「ん……そっちも? 気をつけてね」
「あぁ、お前もな」
的な会話があれば本当に良い方だ。潜るのは止められないが、色々と思う所があったりするのは変わらないのだろう。
四層を駆け抜ける。情報もマッピングも完了し、ボスルームを制圧する。戦闘は? ボス犬二匹に毒犬二匹編成になっただけ。そろそろ変化が欲しいなぁ。五層に期待だ。
入り口のお兄さんに挨拶をしてから、受付という何時ものサイクル。何時も通りだと思っていたんだけど……
「ちょっと良いかな?」
誰かが誰かに声を掛けたようだ。
「ねぇ君だよ? クラスメイトの白河君」
声掛けられたの僕だった!? とりあえず振り返ってみると……確かに其処にはクラスメイトの女子。藤野 美咲さんが居た。
「君だよね? ソロでダンジョン四層に行ってるのって」
割と個人情報が出回っている。まぁソロで潜ってるの僕ぐらいだし仕方ないのだろう……きっと。
「うん。そうだけど何かな? 学校でもそれ以外でも基本学生同士で、ダンジョンの事については触れない空気になってたと思うけど」
「そう何だけどね、どうしても聞きたい事があったから」
彼女は一体何を聞きたいのだろうか……暗黙のタブーを無視したんだから、きっと何かあるのだろう。




