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九十七話

 影山さんとオークの斥候探索を始めて一週間程。四度ほどオークの斥候を発見してこれを討伐。影山さんも四度目になると、奇襲による一撃での攻撃に迷いが無くなり、オークを即死に近いレベルで攻撃する事に成功した。


「それにしても、こんな一撃が出来るようになるとはな」

「スタイルが合ってたのも有りますけどね。奇襲するわけですから、最初の一匹は即死させれる可能性は高いですよ。ニ匹目からは警戒されて厳しいでしょうけど」

「ま、そうだろうな」


 奇襲するタイミングであれば、敵は周囲の探索に意識をやっているために防御に気をやっていない。そうなると必然的に武器が急所に通りやすくなっている。

 当然だが奇襲が成功すれば相手が複数いた場合、ニ匹目からは防御主体にしつつの警戒になるから、攻撃が通りにくくなる。

 まぁ、筋肉やら魔力を何処に使うかってやつだな。防御を固められてしまえば、ただでさえ硬いオークだ……普通の攻撃じゃ刃はその筋肉に弾かれる。

 そういう訳で影山さんのスタイルでは、奇襲してからの離脱が正しい戦術だ。彼の装備だと、防御力なんてオーク相手には無いようなものだからね。


「ま、今回は斥候技能の習得だからな。複数のオーク相手に立ち回るわけじゃないし、一匹でも狩れるなら十分だろ」

「確かにそうですね。それに、斥候がパーティーを組んでいたら同時に倒せる状況を作れば良いですし」

「……それは難しくないか?」

「いえいえ、現状であれば俺やイオが居ます。それに、お姉さん達の方針を考えれば斥候自体は、ニ人から三人で組ませて行動させると思いますよ」


 村の上層部は確実性を取るタイプだからな。単独調査なんてさせないはずだ……俺が単独で行動してた時すらも、険しい顔してたし。美咲さんやイオと行動を共にする様になってから、かなり安心してたからなぁ……まぁ、そういう人達だ。間違いなく調査部隊は数人で編成するはず。


「まぁ、安全度が上がるから良いが……人手は足りるのか?」

「人手は何処も足りませんよ。ただ、情報はどんな時でも生命線ですからね。少しぐらい人手が足らなくても入手できる環境は必要って事ですよ」

「……なら、何故今まで作らなかったんだ?」


 影山さんの疑問は俺の話を聞けば当然の疑問だ。ただ、今までは村の整備や食料調達の方が優先度が高かったからな。

 モンスター相手も探す必要性が少なかったという状況もあったわけだし。

 なので必然的に調査が必要な案件は、俺とイオに回っていた。なので、本来であれば瘴気の調査が終わり次第だが、調査班の育成をする予定だったみたいだ。ただ、現状は其れを許さない環境になりつつある。

 お姉さんは「オークの所為で予定が狂ったわ!」と嘆いてたけど、予定通り行く方が稀だろう。


「っと、そう言う訳で今までは其処まで必要じゃなかったんですよ」

「はぁ……予定が狂ったか。協会に調査部門を作る予定ではあったんだな」

「当然ですよ。村としての活動範囲が広くなっている現状です必要な事ですよ」


 そんな調査部門についての話をしつつ、今日のノルマを達成し時間も日が暮れだしたので、川岸の拠点へと移動する。




 川岸の拠点。現状だと壁を先ずは作り上げ、内部は天幕だらけだ。ただここは、上水道の設備を後々造る場所で、川を挟んでの防衛拠点としても恒久的に使う場所でもあるので、壁はかなり頑丈に作り上げるので現状だとまだ時間がかかるようだ。


「たしか、拠点完成に一月ぐらいでしたっけ?」

「あぁ、ただし上水道の設備に関しては含まれてないけどな」


 オークの襲撃があるので、壁の後は防衛設備を先ずは作る。 その次に、人が生活する施設を立てた後に村へ続く道の整備と上水道関連。

 その為にオークの件が解決するまでは、上水道は後回しになる訳だ。まぁ村への道に関しても、一ヶ月の建設予定には含まれて居ないけどね。


「なんというか、一ヶ月であの計画している防衛拠点が作れるって言うのも、すごい事な気もしますけどね」

「それは同意だな」


 堤防と壁にとんでもないレベルで力を入れている。村にある壁以上の物が出来るのは間違いない。

 遠距離攻撃用の迎撃システムもだ……もしかして、研究班の技術力があがったから此処で試してるのかな? 建築に手を貸してる技術班の目の色が違いすぎるし……うん、あれは間違いなく何か試してるよね。


「とりあえず、協会の出張所に行かないか? これ以上あいつらの目をみるのは少し怖いぞ」

「たしかに。行きましょうか」




 協会の出張所に来ると、此処で陣頭指揮を執っている戦闘班のリーダーが冗談を交えながら、周りを明るくしつつ指揮を執る。間違いなくぱっと見ただけだと、明るくそして軽い人物にみえるだろう。

 そんなリーダーが俺達に気がついたのか、手招きしながら声を掛けてきた。


「おう! 漸く来たか!」

「何言ってるんですか……何時も通りですよ」

「おっと……そうだったか? まぁ、細かい事は気にするな! それで、今日はどうだったんだ?」


 陽気な雰囲気から一転、急に真剣な顔になり辺りの空気が一段とさがった。

 この人って割りとふざけてるけど、こういった一面を持っているからこそ、リーダーに抜擢されてるんだよな。

 ま、真剣な状況を作り上げ問われれば、此方も冗談を交えるわけには行かない。しっかりと今日見た出来事を報告していく。


「ほぅ、ならばオークの斥候に関しては現状変わりなしか」

「そうなりますね。何か引っ掛かることでも?」

「ふん……白河も解ってるだろうが。やつらにとって斥候が戻らなくなって一週間だぞ? お前ならどう考える」


 本当に……なんでこの人はダンジョン低階層でうろうろしてたんだろうか? それが不思議なぐらい思考能力が高い人だ。

 正直、今これを問われるまで考えてすら居なかったんだけど。とはいえ、言われて見れば確かにその通りだ。

 もし俺がオーク達側なら、一週間も斥候が帰らない状況になれば……色々と疑い、斥候を出すのを止めるか、数を増やすはずだ。そう、なんらかの変化を起こすはず。

 だというのに、オークは何の変化もなく何時も通りの斥候を出してきた。


「確かに……可笑しいですね。俺なら斥候を無くすか増やします」

「ん? 白河……お前、今気がついたのか?」

「言われて気がつきましたよ。其れまではどちらかと言うと、何処からあいつ等来たんだろう? って思考ばっかりでしたし」

「あー……なるほどな。確かに其れも気にはなる内容だ」


 お互いが納得しながら話を進めていくと、周りに人が集まり議論が加速していく。

 オークの斥候について楽観的な物だと、オークは斥候を出すが其処まで重要視してないのでは? という意見。その逆の意見だと、オークの数が多いから、多少の被害を無視してドンドン送ってくるのでは? なんてモノもあった。


「どちらにしてもだ……オークが斥候を捨て駒の様に使っている事は間違いない。本当頭が痛くなる話だな。舐めプか? 俺達はオークに舐められてるのか? 実に気に食わないな……建築を急ぐぞ! 出来上がったものを見せて、奴等の顔を阿呆面にさせてやれ」


 リーダーの言は少し強引な気もするが、周囲の人はそれで士気が上がったのか現場へとダッシュしていく。よほど、舐められてるかもしれないというのが気に食わなかったようだ。

 影山さんも、周りに釣られるように走って建築の手伝いをしに行ったしなぁ……まだ、話終わってないけど、まぁ大丈夫か。


「で、釣られないのは解ってたが、その顔をみるに他にもあるんだろう?」

「そうですね。話は影山さんについてですよ」

「ほう……その顔を見る限りだと、使い物にならなかったと言う訳じゃないな?」

「適性が完璧だったって事ですかね」


 彼に教える事はもう無い。後は必要なモノと言えば、慣れとモンスターの知識ぐらいだ。

 これ以上のレベルアップは教えを受けて上がるものじゃない。教える側に回ったほうが、色々な点に気がつく段階に入っている。

 そういった点をリーダーに上げていくと、彼は壮絶な笑みを浮かべながら楽しげに会話を始めた。


「ははは! そうかそうか! いやぁ、実に良い報告だ。影山が其処まで使えるとはな! オークに奇襲を成功させて、しかも瀕死状態にしただと! くはは!」

「まぁ、奇襲ですからね。最初の一匹相手ならですよ」

「いやいや、それでも十分だろう! オークは一匹に対して、一パーティーで対処する相手だったんだぞ! それを、たった一人で最初の一匹だけとはいえ無効化できるなら、それは凄い成果だ!」


 元々、影山さんはこのリーダーが作ったパーティーに所属していたメンバーだ。その所属していた影山さんの能力アップが、自分の事のように嬉しいのだろう。

 そんなリーダーは一頻り嬉しそうに笑い続けた後、少しだけ真剣な雰囲気に戻り今後について話を進め出す。


「ふぅ……すまんな、少し嬉しくて笑いが止らなかった。とはいえだ、今後についてだな。影山には隠密系が出来そうな奴を教導する側にまわそう。それと白河には対斥候の仕事を続けてもらって良いか?」

「元々は対斥候の仕事だけでしたからね。問題ないですよ」

「おう、今はまだまだこの拠点の事を知られたくないからな。頼んだぞ」


 この拠点がばれるにしても、遠距離用の攻撃設備が整ってからの方が良い。そうであれば……最低あと一週間、出来るなら二週間はオーク達にばれない様にしたい。

 オーク達が自分達が出している斥候について、如何考えてるか不気味だが……流石に変化が起き出しても可笑しくないから、今まで以上に斥候に対して気をつけなければな。

 そう言う意味なら、影山さんが能力習得を終えてくれたのはタイミングがよかった。


 そろそろ、此方もオーク相手に斥候を出したい所だけど、村で技能習得してる人達はどれぐらいになっただろうか。とりあえず、習得が出来れば此処に来るはずだから、来たらリーダーが上手く采配するだろう。


 兎に角……俺はイオと一緒に時間稼ぎといきますか。今は時間が出来れば出来るほど、俺達が有利になるはずだしな。

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