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九十二話

 〝無の森〟の名前を協会が〝神樹の森〟と名前を改めた。理由はそうしたほうが、人が侵入を考え直すのに使えるだろうという事。それでも進入する奴は死のうが行方不明になろうが知ったことじゃないと、そういう判断も出来るという裏もある。

 そして、他のシェルターの人達との交渉もやり易くなるのでは、と言う願望も混ざっている。神だの悪魔だのと言うのは、魔法やモンスターにダンジョン等が出来た世界だ、ハッタリとして使いやすい言葉となる。

 それならば、使わないのは損というものだ。それに、あながち嘘という訳でも無いだろう。その大木を神のように祀り上げ、守っている存在が居るのだ。神というワードを使っても問題はない。


「ま、それらの交渉するのも〝神樹の森〟の出入りを警戒するのも、お姉さんや他のシェルターとのやり取りで交渉して決める事だろうから、俺の手は既に離れたんだけどな」


 とはいえ、何かあれば呼ばれるだろうから、常に情報の収集だけはしておかないといけないだろうな。

 あの森で、言葉を話す丸い光と直接対話したのは俺だけだ。むしろ、何かあった時に俺が呼ばれない方が可笑しい。


 とりあえずだ、森の調査も終わり装備を預けてる。そんな現状では手が空いているから、ゆっくりと休んでおくべきだろう。




 休む……うん、ただ休む。それだけで良いのに、其れすら許されないのだろうか? 十時頃に妹達の襲撃を受けた。まぁ、コレについては休みならば何時もの事だから良いだろう。それに、今日は学校が休みだからな……休みのタイミング的に仕方ない話だ。本来なら俺は今頃、〝神樹の森〟の中か外で攻略活動をしていた筈だからな。


「兄さん! これどうかな?」


 ゆりの問に誘われ様子をみると……うん、弓でクレー射撃をしているゆりが居る。

 それも、中央にあるサークルから一切出ずに、四方八方から飛び出るターゲットを落とすという、離れ技をやってのけているんだが……ゆりは一体どこを目指しているんだ。


「どうかな? これ、美咲お姉さんに教えてもらったんだけど」

「良く其処まで出来るようになったな」


 「えへへ」と笑うゆりを見て……うん、乾いた笑いしかでない。美咲さんは一体なにを如何教えたんだ。

 片手義手だぞ? 婆様達が総力をあげて作り上げた魔道具とはいえ……本物の腕よりも上手く動かせるわけが無い。そのはずなのにだ、巧みに義手と弓を操って的を射抜く。並大抵の努力じゃないはずだ。

 そして、それは恐らくトラウマからきてる気もしない。ダンジョンでモンスターの脅威をその身に受けたわけだからな。恐らく、強くなろうと努力しすぎているんだろう。それは、自分だけじゃなく母さんやゆいの為にという思いも日々の行動から見える。


「ま、良く其処まで努力したな。とはいえ、体壊したら意味が無いからな無茶はするなよ?」

「うん、大丈夫だよ! なんだか最近、日を重ねる毎に調子が良くなっていくからね」


 調子が良いか……それは、身体のスペックが上がってるからだろうな。食の変化に運動をしてるから、そりゃ上がって調子が良く感じるだろうな。

 とはいえ、今のゆりを止めるのは無理だろう。気をつけろと注意をするぐらいしか出来ない。

 後は爺様と母さんに言っておいて、しっかり様子を見ていてもらうしか無いだろうな。


「お兄ちゃん! 私も! 私もこんな事が出来るようになったよ!!」


 槍を持ちながらひらりひらりと舞うように飛び跳ねる。ゲームで見たような槍の使い方をしながらだ……槍を地面に刺して飛んだり回ったり、現実的に見てしまえば曲芸すぎて使えるのだろうか? というモノだが、これまた身体的なスペック上昇のお陰からか、まったく使えない戦い方とは言い切れない。まぁ、パーティーを組んだら邪魔にしかならないから、使えないけれど単体なら……うん、威力は可笑しい事になるかもしれないな。


「あー……その槍を地面に刺して回転蹴りって、あのゲームか」

「そうだよ! 出来そうな気がしたからやってみた!」


 やっぱり、ゲームからか。まぁ、今は遊びでやってるみたいだから良いけど。とりあえず、ゆいも爺様と母さんに言っておかないと……絶対、目を離すな! て内容だ。まぁ、しっかりと言い聞かせてるから、勝手にモンスターを狩りに行ったりはしないだろうけど。


「まぁ、二人とも良く〝運動〟をしてるみたいだし、勉強の方も頑張れよ?」

「えー……勉強は苦手だなぁ」

「そっちは……まぁ、ぼちぼちやってるから」


 二人共目をそらすか……まぁ、それでも以前みたいにあれもこれもと、勉強をしろって状況ではないからな。結構教える勉強の種類って削られてるんだよね。まぁそれに、専門的なものだと教える側が居ないってのもあるけど。




 妹達に色々とアドバイスなどをしていたら、村に備えてある鐘が激しく鳴り響く。

 このなり方はモンスターの襲撃か。こういう時は、まずシェルターに避難する事が義務となっている。


「さて、母さんを呼んできて。荷物は大丈夫だから、シェルターに行くよ」


 険しい顔になった二人だが、俺の指示を受けると急いで母さんの元へと走っていく。

 別行動するのは、何かあっても良いようにシェルターまで三人を送ってからだな。爺様は既に協会で色々と議論をしているだろうから、後回しでいい。イオは、まぁ独自で動いてるだろうな。


 そんな訳で、シェルター前まで三人を送った。村の人は……うん、偶に訓練をしているのだろうか、凄い順調にシェルターへと入って行っている。


「……結弥は行くのよね?」

「ま、戦えるからね。行かないとね。母さんは二人をしっかり見ておいて」

「むー兄さんは行くんだよね」


 一体何が不満なのだろうか。ゆりの目は微妙に非難の色が映っている。


「ゆりどうした?」

「だって、兄さんは今日お休みなんでしょ? 一緒に避難しちゃ駄目なの?」

「そうだよ! お兄ちゃんはやる事やった後なんだよ」

「とはいってもな。戦う戦わないは別として、様子は見ておかないとね。それに、イオも暴れてるだろうから、そっちの手綱を取れるの俺だけだし。まぁ、この辺りのモンスターなら気にする事も無いよ」


 まぁ、納得はいかないけど仕方ないといった雰囲気で、二人が母さんに連れられてシェルターへと入っていく。

 ゆりはなぁ……多分だけど、表情的に自分も戦えるって言いたかったんだろうな。とはいえ、それを言ってしまえば、もれなくゆいも同じ事を言う。今は二人一緒に頑張ってるから、言い出さないわけが無い。だから、ぐっと我慢したんだろうな。


 さてさて、見に行くとは言ったけど……特に仕事なんて無いだろうな。まぁ、武器は予備しかないから無茶も出来無いだろうし。とりあえず、現場まで走りますか。




 現場までたどり着いた。そして、周辺の状況を見て思う。


 休む……うん、ただ休む。それだけで良いのに、其れすら許されないのだろうか? 十時頃に妹達の襲撃を受けた。これは良いんだ……うん。家族とのふれあいだからな。むしろ、積極的にしていくべきだろう。だけど、これは無いだろう。


 飛び交う言葉が村の周囲の環境とまったく違いすぎる。


「なんでこんな所にオークの群れが来てるんだ!」

「口より手を動かせ! 罠に引っ掛かってる奴から確実に倒していくんだ!」

「弓の援護薄いよ! 左側から三匹抜けそう!」


 目に写るオークの数は、確実に三十を超えている。

 そして、村の戦闘班の力ではオークを一匹倒すのに、一パーティー必要といったレベルだ。確実に戦力が足らない。

 罠を利用しているからこそ、現状は戦線が保てている状態だ。


「はぁ……理由は解らないけどさ、休みになんで邪魔が入るんだろうね? というか、休みで村に居た時で良かったのかな」


 思わず口に出してしまったが、間違いなく村に居る時で良かったと思う。何せイオが暴れるからだ。とはいっても、数が多すぎるのは間違いない訳だし、とりあえずお姉さんと美咲さんが何処かで指揮を執ってるはずだから、まずは合流しないとな。

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