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えいゆう症候群

 街門脇の小部屋に案内された。


 どれだけ絞られるかと覚悟していた。しかし、話とは、あの盗賊達のことだった。


「頭と目されていた男は、ローデン、ダグ、ノーン、ケチラ、ケセルデの四国から指名手配されていました。あんな死に方では、もったいないくらいです。それと、首を落とされていた男は、元ジラジレ家の傭兵隊長でした。普通なら、被害者にわざわざ盗賊の前身とか話すことはないんですけどね」


 まるで、世間話のようだ。軽い。口調が軽いよ。


「えーと、報酬も貰えないまま首になったって、ボクに文句言ってたけど」


「依頼自体が無かったことにされてしまいましたからね。酷いやり方です。それでも、他のメンバーは、すぐに新しい就職口を見つけられました。ジラジレ家の依頼を受けた責任はわたしにある、といって傭兵隊長が庇ったからです。その責任感を買われて、彼も隊商の護衛役に付くことが出来ました」


「その商人さん、太っ腹!」


 門兵さんも、大きく頷く。


「まったくです。しかし、彼らは運がなかった。短い距離だからと、傭兵の頭数が足りないまま出発して、盗賊に襲われてしまいました。辛うじて商人を逃がすことには成功しましたが、隊商の傭兵のうち数人は命を落とし、彼も負傷しました。商人から出た報酬は、治療費で消えてしまったそうです。それから、仕事を探すことも無くなり、ロナさん襲撃の二年前、ローデンから出国しました。以降の足取りは不明です」


「怪我が治った後、雇おうと声を掛ける商人さんは居なかったの?」


「かなりの人数がいたそうです。でも、全て断っています」


「自分のことを、災厄の元、とでも思っちゃったのかな」


「・・・そう、かもしれませんね。責任感の強い男だったそうですから」


 一人で抱え込んで、吐き出しきれずに、転落の切っ掛けとなったわたしに押し付けるしかなかった。

 とは言え、そもそもは手前勝手な理屈で突っ走ったなんとか家のおじいさん達が悪い。なんで、あんな変な依頼を受けたりしたんだろう。


「誰かに、相談すればよかったのにね」


「それが出来れば、あんな末路にはなりませんよ」


「思い詰めた人って、怖いねぇ」


「全くです」


 じーっと、わたしを見る兵士さん。


「な、なに?」


「心当たりが無いとは言わせません。体の不調を隠して、姫様と二人きりで森暮らし、ですか。何考えてたんですか?!」


 うおぅ! ここで、それを追求する?!


「ローデンを出るときは、何ともなかったんだってば!」


「途中で切り上げることも出来たはずですよね?」


「いやぁ。ウォーゼンさんに脅されてたから」


「・・・ほほぅ。副団長殿に責任転嫁しますか」


 ますます兵士さんの目つきが怖くなる。


「あ、悪役、ボク、悪役だもん!」


 罪を他人になすり付けるのは、悪役の常套手段。うん。そうだそうだ。


「その、アークヤックァーナシィロナさんへの言付けを預かっています」


 ちょっとした大きさの箱が運び込まれてきた。って、どこに待機してたのよ。


「・・・なにこれ」


「読んでいただければ判ります」


「ここで?」


 運んできた兵士さん達も含めて、全員が頷いた。


 ふたを開ければ、折り畳まれたロー紙がいっぱい。一番上は、




 ありがとう。すまなかった。レオーネ




「へっ?」


 思わず顔を上げて、兵士さんに確認する。


「姫様は、帰還直後に自ら王位継承権を放棄されました。現在、一兵卒として騎士団勤務に励んでおります」


 騎士団に復帰できたんだ。ピクニックの成果があったのかな。


「あの時、怪我とかしてなかった?」


「隊商ともども、傷一つ負っておりません」


 それはよかった。心配事は無くなった。では、帰ろう。


 箱の蓋を閉めようとしたら、止められた。再び、兵士さんの手で蓋が開かれる。


「手紙はまだまだありますよ?」


「街門の管理小屋では、個人の荷物は預からない決まり、じゃなかった?」


「団長のご指示です。ナーナシロナさんが町に入る前に、お渡しするように」


「職権乱用反対!」


「命令ですので我々には何ともし難く」


「本人が、手紙の全てに、目を通したことを確認するように、とも言い付かっております」


 わたしの抗議を無視しただけではない。全て、の所に力が入っている。って、全部?! なんなんだ。悪役活動の悪評なら、口頭注意だけで十分でしょ。


「ここで、読むの?」


 揃って、頷かれた。団命第一。兵士さん二人は、扉の前に立ちふさがり、退路を断つ。

 えーと、痺れ薬を塗った投げ矢は、・・・作ってない。

 痺れ蛾鱗粉の粉末なら、目の前の障害物を無力化できる。が、しかし。自分も巻き添えになる。意味がない。


 逃げ場はどこだーっ!


「・・・読まなきゃ、だめ?」


「「「はい!!」」」


 判りました。読めばいいんでしょ。読めば。は〜ぁ


 衆人環視の中、読み進める。


 レンが危険を知らせにいった隊商の商人さんと警護責任者から、感謝の言葉。街中の小売り店主達から、乱暴者を排除してくれたことへの感謝の言葉。都市内治安維持部隊の隊長から、協力感謝の言葉。アルファ砦でのお祭りで料理を食べた人達から、激ウマだったとの感想と感謝の言葉・・・。


 一部、牢屋の看守からの「食べたかった」という、嘆き節も混じっていたが、おおよそ、「ありがとう!」で埋め尽くされている。


「これのどこが悪役なのさーーーーっ!」


 手紙を放り投げて、怒鳴り散らしてしまった。何たる羞恥プレイ。たぶん、わたしの顔は真っ赤になっているだろう。


「「「そうですよねぇ」」」


 そこ! トリオで同意しない!


 ウォーゼンさんやトングリオさんの「感謝状」も、ちゃっかり混ざっていた。わざわざ手紙に残すなんて、嫌がらせにも程がある。念入りに握りつぶしてやるっ。


「よしよし。まだ居たな。やっと、帰ってきやがって」


 ヴァンさんが、足音荒く飛び込んできた。背後に、伝令らしき見習い兵が一人付いている。


 ・・・術具の警戒レベルを上げとけばよかった。


「足止めしてたね?」


「なんのことでしょう」


「我々は、命令に従っただけですが」


 兵士さん達が、軽やかにスルーする。流石、門兵さんはそつがない。


 じゃなくて!


「団長さんの、ばかぁーーーーーっ」


 あんな、ぽやんな顔した団長さんが、こんな悪知恵を働かせるなんてっ。


「馬鹿はおめえだ」


 ヴァンさんが無情の一言を投げつけてくる。


 ヴァンさんと一緒に駆けつけたオボロは、部屋には入ってこない。手紙を踏みたくないのか、律儀に手先で弾き飛ばしている、もとい投げ入れている。遠慮しないで、団子にして遊んでくれていいんだよ?


「ほれ。忘れ物だ。俺は忘れ物の預かり処じゃねえんだぞ?」


 わたしの身分証を突き出してきた。ヴァンさん。貴方もなのね。なんて底意地が悪いんだ。


「・・・ありがとう」


 素直に受け取った振りをする。わたしの手のひらに載せられた身分証は、淡い光を放った。それを見た全員が、なぜかほっとした顔をした。


 ふん。この場でへし折ってやる。


「ああ、壊そうとしても無駄、らしいぞ。王宮連中がやたらと強化しまくった、って言ってたからな」


「なに勝手なことをしてるのさ!」


「さあな。ウォーゼンにでも聞け。俺は知らん」


 そこまで事情を知ってて、知らないはずは無い。とはいえ、確かに、手応えが全く違う。岩を焼き溶かすぐらいに力を込めないと、壊せそうにない。そんな技術もあるのか。


 じゃなくて!


「これで、ご本人の確認が取れました。どうぞ、お通りください」


「はい?」


「これから通行人が増える時間帯ですので、我々も本来の仕事に戻ります。それは、お引き取りくださいね」


 足下に散らかった手紙を指差した。思わず目を向ける。・・・どうしろというんだ。


「「「「では失礼します」」」」


「あ、ちょっと!」


 兵士さん達は、手紙が飛び散った部屋から出て行ってしまった。器用にも、踏まないように飛び越えて。伝令兵さんも、一緒にさようなら。

 八つ当たりぐらいさせて! 逃げるなーっ。


「さっさと片付けっちまえよ。俺だって、おめえのお守りばかりしてられねえんだ」


「誰も頼んでない!」


 とはいえ、こんな恥ずかしい物は放置できない。四葉さんに手伝ってもらって、箱に詰め直す。

 後で、燃やしてしまえ。


 小脇に抱えて、部屋から出た。


「おい。いつものやつに仕舞わねえのか?」


「壊れた」


 腕輪から指輪になっただけだけど。その指輪は手袋の下。背嚢の中は、お土産入りマジックバッグが満杯。


「・・・そうか」


 おや? いつもなら、もっと追求してくるはずなのに。


「今度は、いつまで居られるんだ?」


 これまたびっくり。そんなこと、今まで一度も聞かれたことは無い。はず。


「すぐ帰る。レンが無事に着いたかどうか、知りたかっただけ」


 今は、超特大の爆弾を抱えた身だ。用が終わったら、即刻撤退するに限る。


「少しは時間があるよな?」


 あっさり言っているようだが。怪しい。


「・・・何企んでるのさ」


「治療院に行って、診てもらってこい。そう何度も倒れられちゃ、こっちの気が休まらん」


 ブス腐れた顔で、ヴァンさんが思いがけないことを言ってきた。


「何で治療院?」


「姫さんが大騒ぎしてたからな。嫌でも聞こえたんだ」


「レンの気のせいだってば」


 そもそも、正体不明の謎生物が変身した姿なのに、普通の人と同じ診断が出来るのかな。怪しまれて大捕り物にすり替わったりしたら、やだな。

 そう言えば、コンスカンタのランガ変態治療師は、怪我の治療であちこち診たはずだけど何も言わなかった。いや、黙ってただけか?


「黒助どもも、あたふたしてたんだぞ。いいから行って来い。そいつは、おめえが帰るまで預かっといてやる」


 わたしの手から、無理矢理、手紙の箱を取り上げた。このっ! 相変わらず手癖の悪い年寄りだっ。


「治ってるなら、そうと念押ししてもらってこいや。そうでないと、また姫さんが押し掛けて来るぞ?」


「あ」


 レンなら、やりかねない。せっかく、まともそうになったというのに、わたしがぶち壊してしまうのは頂けない。


「・・・わかった。行ってくる」


 問診だけなら、誤摩化せる。かもしれない。怪しまれたとしても、二度と来なければいいだけの話だ。


「おう。帰りにはちゃんとギルドに寄れよ。でないと、こいつの中身、バラ撒くぞ〜」


 手にした箱を揺すりつつ、にやりと笑うヴァンさん。


「卑怯ー者ーっ!」


 怒鳴り声に驚いたオボロは、ヴァンさんの後ろに隠れてしまった。


「ふん。おめえに比べりゃ可愛いもんだろうが」


 どこがっ!




 商工会館の裏手にある治療院に入った。


「こんにちわー」


「はい。本日のご用は診療ですか、それとも薬の処方でしょうか?」


 これまた美人な受付嬢が、柔らかな声で用件を訊ねる。いいなぁ。スタイル抜群で。姿勢の良さが、その美貌を一層引き立てている気がする。


 じゃなくて。


「ええと。ギルド顧問のヴァンさんに勧められて、一度、診てもらってこいって言われて」


 ふん。責任転嫁してやる。


「ご予約は、ああ、はい。これですね」


「はい?」


 予約なんかしてない。


「身分証を見せていただけますか?」


 ここでごねてもしょうがない。素直に、身分証を見せる。


「ナーナシロナ様。間違いありませんね。どうぞ、お入りください。十二番のお部屋です」


「あ。どうも」


 なんなんだ。この手際の良さというか段取りの良さは。


「漸く来てくれましたか」


 部屋の中で迎えてくれたのは、ヴァンさんと同年代に見える、でも雰囲気真逆の男性だった。

 きちんと撫で付けられた髪は、うっすらと白い物が混じった青色。目尻の皺もが、もの柔らかな印象を与えてくれる。


 しかし。


「ようやく、って」


「レオーネ姫様から、いろいろと話は伺っていますよ。大変でしたね」


「・・・」


 大変って、アレのこと? それともソレ? なんか見透かされているような気がして落ち着かない。

 いやいやいや! 初対面も初対面。この人は、何にも知らない、はずだ。冷静になれ、わたし。


「本日、こちらにお見えになれたということは、症状は治まっているのでしょうか?」


「あ、はい」


 症状って、誰から何を聞いたんだ?


 だからおちつけわたし! 診断できる物ならしてみろ。今までのあれやこれやで、どうしても疑い深くなる。


「ふむ。なるほど」


 いろいろ聞き取って、手元の書類と見比べている。問診だけで済みそうだ。よかった。


「やはり、英雄症候群で間違いないようです」


「・・・はい?」


 よくなかった。その中二的病名は、なに?


「おや。お聞きになったことはありませんか?」


「一度も耳にしたことは無い、です」


「それでは。ご説明しましょう」


 英雄症候群とは、魔力過敏症の対極にあるような体質のことだった。体内の魔力のバランスが狂うことで、倦怠感などの症状が起きる、と推測されている。魔力酔いと似ているが、異なる特徴が、怪力になったり、いきなり魔術の効果が跳ね上がったりすること、だそうだ。自律神経失調症の魔力バージョン、ってところかね。

 ちなみに、魔力酔いと同じく、ドリアードの根などで体内の魔力を減らせば一時的に症状は治まる。しかし、薬を止めれば元の木阿弥、だそうだ。


「重症になりますと、ベッドから起き上がろうとするだけで、そのベッドを叩き割り、床板を割り、壁に手をつけば大穴が開き、と、日常生活にも大層支障が出ます。全て石造りの家にすればいいのでしょうが、庶民が借りるには、軒数が不足しておりまして。やむなく牢屋で過ごす方もいらっしゃいます」


 ・・・、魔力酔いよりたちが悪いじゃないの。


 ん? 怪力と言えば。


「マレヒトとは、どこが違うの?」


「彼らは、患者とは異なり倦怠感などの体の異常はありません、また、いついかなるときでも、思うように力を加減することができます。

 そうですね。例えば、マレヒトは、丸太を持ち上げ、その下から子供を抱き上げられます。英雄症候群の重症患者ですと、丸太の排除は出来ても、子供は抱き潰されるでしょう。

 言い忘れてました。魔力型の発症者は、最悪、自分の放った魔術で死にます」


 こっわ〜〜〜〜


「それで、その名称は詐欺でしょ!」


 苦笑された。


「昔に付けられた病名ですので、これは何とも。一般の人も、長命種の人も、歴史上ではマレヒトでも発症したことがあるそうです」


 マレヒトで、発症者。なんとかに、金棒。


「ちなみに、魔術師で英雄症候群の人は結構居ますよ。というより、ローデンでは王宮魔術師団が率先して採用しています。ただ、筋力増幅型の場合は、ケースバイケースです。頻繁に発作を起こす人は、開き直って鉱山や鍛冶に職を求めます。たまに、で済む人なら、発作の時期は安静にして過ごします」


「ボクが、その、英雄症候群であると診断した、根拠は?」


「盗賊達を捕縛する為に出動した騎士団員からの聞き取りです。襲撃現場と仮小屋の周囲の状況を確認していて、力任せにへし折られた木々を大量に見つけたそうですから。

 盗賊の検死結果も考慮しています。三人が弓矢ではあり得ない損傷を受けていました。一人は、棒状の物で首をちぎり取られています。最後の一人は、剣を叩き折られただけでなく、その破片が後頭部から突き出していました。使われた素材の強度にも寄りますが、だからといって、とてもとても常人の力では無理でしょう。

 残りの盗賊は、手足を射抜かれていただけで命に別状はありませんでしたので、当時の状況を尋問、いえ証言してもらいました」


「今、さらっと黒い事言わなかった?」


 人の命を救うお医者さんが、それでいいのか?


「とにかく。総合して、盗賊襲撃以前に英雄症候群を発症しており、戦闘中は急激に症状が悪化したと、結論付けました」


 力のコントロールが効かなかったための惨状だったことは、間違いない。


 しかし。


「それでも、あんな死に方をさせたのは、ボクだ」


「不可抗力です。そもそも、盗賊が襲ってこなければ、あのような事態は起こりませんでした。

 貴女は、無実です」


 うん。人の、ローデンのルールなら、そう、なのかもしれない。


「騎士団にも確認を取りました。むしろ、盗賊討伐の褒賞が出ているはずですよ?」


 ご都合主義にもほどがある。


「英雄症候群は、気に病みすぎる人ほど悪化している期間が長い。それに、これは体質です。ある程度は個人の努力で制御も可能ですが、無理はいけません。反って悪化させてしまいます。

 気長に、気長に付合っていきましょう」


 それはそうなんだけどね。わかってるけどさ。


「なんで、こんな風来坊に優しくするの?」


「おや。貴女がそれを言いますか?」


 にやり。気のいいおじいさんの顔が、意地悪く笑った。


「私の患者の一人に、ガーブリアでの養生を勧めたことがあります。ところが、目的地に到着する前に「すっかり元気になった!」と、手紙を送ってくださったのですよ。あれは、ナーナシロナさんの料理の効果ではありませんか?」


 ものすごく聞き覚えのある話だ。でも、ばっくれる!


「ボクは知らなーい」


「是非、その時使った処方を教えていただきたいのですが」


「知らないってば!」


「王妃様が率先して、お手伝いなさっていたとか。うらやましいですねぇ」


 ローデン治療院長のエッカさんは、超一流の情報網もお持ちらしい。アルファ砦での騒動だったというのに、メニューと素材のリストまでそろえていた。なんて執念だ。

 それから、散々情報を搾り取られた。逃げられなかった。


「ロックビーの蜂蜜ですか。確かに、内服時の症状緩和効果は知られていましたが、そのような使い方もあったんですね」


「偶然だから。たまたまだから!」


 アルファ砦で使った超消化促進剤は、生のカンタランタの効果を乾燥させた薬草で再現できないか試作した物だ。数種類の健胃効果のある薬草を粉末にして調合しようとして、でも均一に混ざらない時、添加物としてロックビーの蜂蜜を少量落とし、更に細かく摺り潰すことで漸く完成した。

 見た目、さらさらパウダーなので、蜂蜜が加えられているとは判らない。


 というところまで、白状させられた。問診のプロは、ひと味違う。


「薬草採取では、是非、指名依頼させていただきますね」


 じゃなくて。


「やらないってば! ボクは、ハンターじゃないっ」


「気がかりが解消されて、私も安心して過ごせます」


 おや?


「はい。私も英雄症候群なんです」


 ・・・いろいろ詳しいはずだ。


「危なかったんですよ? 調剤中に魔力が漏れて、薬効が狂ってしまうことが多々ありまして」


「・・・」


 にこやかに言う話じゃないじゃん。

 ええ。ご都合主義です。

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