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方針転換、、あるいは試練

「な、なかなか強烈な、称号だ、な」


 漸く口を開いたウォーゼンの感想は、物凄く控えめなものだった。


「やっぱりそう思う?」


「ツッコミどころがありすぎるぜ」


 人と頻繁に接触する「北天王の使者」や、大陸東側の湖で数十年ごとに目撃される「東天王」はよく知られている。

 疑いたくても、身分証の賞罰欄に「北天王の手を煩わせた者」なんて表示が出た記録が残っているのだ。


 だがしかし。


 魔天の王は、あくまでも伝説の存在。人々が旧大陸から逃げ延びてきた当初から囁かれており、ヘリオゾエア大陸に生きるすべての生き物の頂点に立つモノ、とか言われてても、正確なところは判らない。誰も知らない。見たことも接触したこともない。

 ダグの貴族一行が遭遇した「声」の主がそうではないかと囁かれているが、それも確証はない。


「どう考えても、ななちゃんしか居ないのよ。それでね?」


「いやちょっと待て。待てっての!」


 思いつめた顔をしたアンゼリカを制止した。なぜならば。


「何悪巧みしてるのさ」


「きゃぁーーーーっ!」


 気配を感じないまま、後ろからいきなり声を掛けられたらそうなる。


「どどどどこから聞いていたのだ?」


「ボクしか居ないって。なんのこと?」


「本当に本当かよ」


「?」


 キョトンと首を傾げるななしろに、称号云々は聞かれていないようだと安堵の溜息を吐いた。


「その、だな。先日受け取った肉のことなのだが、非常に美味かった。種類が判れば我々でも狩ることが出来るのではと思ったのだが」


「すばしこいとかグロエオモナみたいなトンデモ能力の主で、おめえしか捕まえられないんじゃねえかってな」


 とっさのアドリブにしては上出来だと思う二人。


「あ〜。うん。ボクだけになる、かな? でも、肉自体はガレンさんが泣いて喜ぶぐらいあるから、当分は堪能できると思う」


 バカ正直に白状しないでほしい。


「獲り過ぎは良くなかったのではないか?」


「ちょっと間違えちゃって・・・」


「なんだよ。てめえのニョロ長しっぽでなぎ倒したんだろぅあっ!」


 迂闊なヴァンが、殴られた。


「ヴァンさん後でじっくりたっぷりしっかりオハナシしようか」


「・・・もう聞こえていないようだが」


「いつもはあんなに無駄に丈夫な癖に」


 ななしろが、念入りに背中を踏み躙っている。あ、蹴りも入った。


「ななちゃん、もういいんじゃないかしら」


「俺も注意しておくので、そろそろ」


 アンゼリカですら顔が引き攣る躾、もとい暴力に、あちらの姿について口にするのは自殺行為であると再認識する二人。


「暇漕いてるから余計な口を挟んだりするんだよね。解体は飽きたって言ってたし。ウォーゼンさんの稽古相手にちょうどいいんじゃない? アンゼリカさんのたっぷりお肉料理があれば元気溌剌、すぐに復活するでしょ。傷薬は各種用意してあげるから、どれだけ切っても大丈夫」


「いやいやいや。草刈りで十分、十分に体は動かしているとも! それよりもロナ殿こそ十分に休みを取っているのか?」


 藪蛇になりそうな提案を全力で拒否し、強引に話題を替えてみた。


「うん? もうちょっとしたらね。そうだ、いい感じに熟れてたのを見つけたから持ってきたんだ。そろそろ、果物が減ってきたでしょ? 結構美味しかったよ。でもヴァンさんには分けてあげなくていいからね。

 それと、今日のお肉はこっち」


 背負った籠を下ろすと、その脇に黒い容器を取り出した。いつ見ても、何処から出てくるのかさっぱり判らない。


「む。そうだ。ファタ殿に蜂蜜は必要以上に頂いたからもう出さなくても結構だと伝えてもらえないか?」


「・・・蜂蜜?」


 少しばかり遅かった。ななしろが目を向けた時には、緑の蛇はアンゼリカと共に小屋に逃げ込んでいた。


「アンゼリカ殿がクトチを焼くのに少し分けて欲しいとお願いした処、樽で差し出されてな。コップ一杯だけ貰って残りは返したのだが、隙を突かれて鍋が全滅した」


「鍋が全滅って?」


 首を傾げるななしろ。ウォーゼンの説明では、上手く伝わらなかったらしい。


「並々と入っているぞ。コップやボウルも、な。申し訳ないが、解体用に預かった容器を借りた。だが、いつまで保つか判らん」


 小屋近くにある池が無事なのは、もう一匹の蛇が必死に抵抗しているからだ。流石に同格相手では分が悪いらしい。


 それを聞いたななしろは、肩を落とした。


「双葉・・・。樽を空けて酒を仕込みたかったんだと思う。全く、これ以上飲まない酒を増やしてどうする気なんだ」


「だが、ロナ殿はいくらでも保管しておけるのだろう?」


「小屋いっぱいに詰め込まれた酒満載の樽が半年毎に完成してるんだけど」


「そ、そうか」


 ますます肩を落とすななしろに、ガレンに大量の肉を提供していることについては問題ないのだろうか、と思ったのが良くなかった。


「そうだ! お肉のおまけに付ければいいんだ!!」


「いやそれはちょっとまずい!」


「だって、ウォーゼンさん達全然飲んでくれないんだもん」


 ちっとも減らない、とブツクサ言うななしろ。まるきり双葉と同じ発想であることに、当人は気付いていない。


 [魔天]で採取される品目の中でもロックビーの蜂蜜は品質の良さと採取量の少なさにより、高価で取引される。それをたっぷりと使用した高品質の酒ともなれば、とんでもない値段に跳ね上がる。どう考えても、肉類の「おまけ」にする品ではない。


 そんなものを樽で出されたら。


「ガレン殿が破産するぞ。商工会でもそう簡単には捌ききれまい。頼むから止めてやってくれ!」


「安酒の空き瓶に入れちゃえば誤魔化せるでしょ。その辺もメモに書いておく」


 だからそれは止めろと言おうとして、上空からの声に遮られた。


 くーえ〜ぇ


「何度も往復してもらうのは気が引けるな」


「腹ペコ大将が揃ってひっきりなしに催促するんだもん。ちょっと結界を解くよ」


 旋回していた九卯に合図を出すと、ゆるゆると降下してきた。


 くーえぇ〜〜〜〜〜〜ぇ


 着地するなり、地面にへたり込むグリフォン。それでも手桶を落とさないところは立派、なのか?


「・・・ボサボサだな」


「また、絡まれたのかな?」


 九卯の首元に巻き付いていた三葉がひょっこり顔を出して、ピコピコとゆれる。


 ここの草地に魔獣は入ってこない。だが、その周辺では多種多様な魔獣達が縄張りを持ち、或いは広範囲の移動を繰り返しているのだと説明を受けている。

 新参者が地元民に突き上げられるのも、お約束。実力を伴わない若造が迷い込み、教育的指導を受けて死ぬこともあるそうだ。


 だけど、九卯の逃げ足はオヤブンのお墨付き。並み居る先輩達のシゴキをかいくぐり、今日も生きて戻ってきた。


「ウォーゼンさん、九卯の世話を頼んでいいかな? ボクはもうひと回り行ってくる。これでなにも無ければ、ロックアントの方は一段落だよ」


「ふむ。そういう事なら、俺からも一ついいだろうか。草地の外も見てみたいのだが、どうだろう」


 ななしろは、それを聞いて黙り込んでしまった。


 その様子に、寧ろウォーゼンの方が慌て出す。


「いや、無理はしないでくれ。報告書の中身に彩りが増えるかと、その程度だからな。本当に、ロナ殿の気が向いたらでいいのだ」


 ニヤリ


 覗き込んだななしろの口元に浮かんだ薄ら笑いを見て、ウォーゼンは心の底から後悔した。





 あれから一月。


「アンゼリカさーん!」


 びくぅ!


「ロナ殿。頻繁に脅かさないでくれないか?」


 全速力で小屋に逃げ込むアンゼリカの後ろ姿を見て、ウォーゼンは深い溜め息を吐いた。


 例の称号について考察を交わしたいが、こうも不意打ちが続く間は口に出すのもはばかれる。


「今度はこのお肉を試して貰いたかったんだけど」


「もう肉になってるんだな? 解体しなくていいんだな?」


 ヴァンが噛み付くように念を押す。


「うん。洞窟で寝かせておいたんだ。そろそろ食べ頃だと思って」


「・・・腐っているのではないのか?」


「物凄〜く冷たい風が吹くところでね、旨味がぎゅーっと濃縮されている・・・筈?」


「疑問形で答えるな!」


「大丈夫だって。薬は各種万全に揃えてあるから♪」


「全く安心できないぞ」


 ウォーゼンの迂闊な提案は、三人にとっての試練に生まれ変わった。


 ななしろ曰く「お一人様限定サファリツアー 〜ぽろりもあるよ〜」


 各人の希望するテーマに沿ったルートを選び、五樹の背に揺られてのんびり見物するだけ、と言っていたが、見ると聞くとは大違い。


 ヴァンは、魔獣の生態見物コースをリクエストし、まーてん東側のサバンナ地帯へ連れて行かれた。


 サイクロプスやキルクネリエなどの草食魔獣の群れに混ざって、トラケリオやタルスレス(グロボアよりも大きい猪似の魔獣)がゆったりと移動している。かなりの間隔をおいて生える太いトレントが木陰を提供し、小さな灌木が所々に茂みを作っている。


「あんま、代わり映えしねぇな」


 確かに、動物の種類を無視すれば密林街道周辺でもよく見かける風景といえなくもない。


「それはそうでしょ。何を期待してたのさ」


「そりゃあ、お高いやつを上手く取っ捕まえる方法をだな」


「それ、もっと街道に近い場所でやらないと意味ないんじゃないの? キルクネリエなら何処にでも居るけど」


「一日こっきりってことはないだろ? もちっと観察させてくれるよな?」


「ボクが教えてあげてもいいけど?」


「参考になるわけねぇだろうが! このデタラメ野郎」


「ひどい」


「おめえと同じ手段でグロエオモナを狩れるやつなんざ居ねえっての!!」


「そろそろ、かな?」


 何が、と聞く前に、いきなり草原に火が付いた。


「な、おい、逃げろ! って、どうする気だよおい!!」


 野火の進むスピードは人が想像する以上に早い。五樹やななしろの足ならば逃げ切れる筈なのに、一歩も動こうとしない。


「何時も通りだもん」


「いつもって・・・」


「そう珍しくもないし?」


「死んでまで見たいとは言ってねぇ!」


 逃げる魔獣を、肉食獣達が狙う。


 だが、様子がおかしい。


「・・・なんだありゃあ?」


 踊る炎の先で、カラフルな毛玉達がみょーんみょーんと不揃いな角度で跳ねている。それらに狙いをつけようと懸命に追っている肉食獣が、一頭また一頭と地面に伏せていく。


「カラフルうさぎって呼んでるけど、あれもキルクネリエに似たカモシカみたいな魔獣だよ。ああやって何かに追われると毛を逆立てて斜めに飛び跳ねるんだ。なんでか判らないけど、あの動きをじーっと見てると目が回ってくるんだ。グリフォンも撃墜されちゃう。で、追手がひっくり返っている間に、逃げる。見ててもいいけど、程々にしといたほうがいいよ」


「・・・遅い」


 魔力酔いに似た吐き気に襲われ、えづきそうになる。


「あ、次が始まるよ? 見逃したら損だって」


 吐き気を堪えて頭を上げると、トラケリオ達が火を取り囲んでいる。そして、何度もつばさを打ち振るう。


「普通火を煽れば燃え広がるもんじゃねのか?」


 見る間に火が消えていくのを、呆然と眺めるしかなかった。


「ああ、やっぱり。若いタルスレスだ。太い牙を擦り合わせて仲間に自慢するんだけど、たま~にやりすぎて火花を散らすのが居てね。枯れ草が多い場所だとあっという間に放火犯。自分は少々の火では火傷しないからって、本当に迷惑だよねぇ。真ん中に倒れてるよ。


 あ、ほらトラケリオ達が地面を突付いてるでしょ。火に驚いた虫が散らないうちに食べてるんだよ」


「・・・・・・なあ、どーやって消したんだ? あんな魔術見たことも聞いたこともねぇんだが。それに、そのタルスレスは軽く炙られた程度で死なねぇんだろ? なんで倒れてんだ?」


「人が息をするように、火が燃えるときにも空気が必要だって知ってる? トラケリオは、ある程度の範囲の空気を自在に操ることができる。あれは必殺技で、燃えてた一帯の空気を抜くんだ。数羽で取り囲むともっと範囲を広げられる。そうすると、新鮮死にたてとか瀕死の小動物食べ放題ビュッフェの出来上がり。だから、トラケリオに取り囲まれそうになったら一目散に逃げるんだよ? でないと、あのタルスレスみたいに窒息死するから。あ、蛇は生き残ってる場合があるから気をつけて」


 ななしろの怒涛の解説を聞いている間にも、トラケリオの一羽がぐったりした蛇を拾い上げ丸呑みした。ただ、ヴァンの胴と同じぐらいの太さがある。

 ヴァンは、まるで自分が巨鳥に喰われたような気になり、ますます顔色が悪くなった。


 他のトラケリオ達が負けじと地面を突付いて突付いて突きまくる。だが、タルスレスには見向きもしない。


「あいつら、猪野郎は喰わねえのか?」


「皮を引き裂く手間が面倒なんじゃないの? グリフォンが来て大騒ぎになる前に食べられるだけ食べる方がお腹いっぱいにできるし」


「は?」


「ホラ来た」


 墜落した者とは別のグリフォンが急降下してきた。見る間にその数が増えていく。

 そして、放火犯はあっという間に姿を消した。もとい、グリフォンの腹に収まった。


「ね? あの巨体が群れ集うとトラケリオ達が分け入る隙がなくなっちゃうんだよ。それに、ちょーっとだけグリフォンの方が爪の威力が勝ってるから、下手に近づくと大怪我するし」


 火が出てからタルスレスが食い尽くされるまで、半刻も経っていない。グリフォン達も三々五々散っていく。


 そして、平穏な風景が戻ってきた。


「・・・もう少し、普通のやつで頼む」


「何言ってんの、珍しいのをリクエストしたのはヴァンさんでしょ? まだまだいっぱいいるから、楽しみにしてて♪」


「いやそもそもトラケリオが群れを作るなんて初めて知ったんだぞ?!」


 繁殖及び子育ては「深淵部」で行い、巣立ち後繁殖可能になるまでは「周辺部」で単独行動する。ハンター達が採取に訪れる地域は若いトラケリオのデートスポットでもあり、つがいを求めて過激な行動に走るのが常である。


「よかったね。新しい知識が増えて」


「そうじゃねえ!!!」


 ヘリオゾエア大陸入植当時から現在に至るまでの間、人々が死に物狂いで掻き集めた魔獣の生態記録は、何度も繰り返された大氾濫を経て更に充実したものになり、各都市のギルドで大事に保管されている。


 だが、それは未だに[魔天]の極一部に過ぎないのだとヴァンは思い知った。知り尽くしているモノが居るとしたら、それは「魔天の王」ぐらいかもしれない。


 這々の体で小屋に逃げ帰り(ヴァンの主観)安堵したのも束の間、その後、三人は何度も草原の外へ連れ出された。


 アンゼリカのお題は、「ななちゃんが料理に使う調味料の材料が知りたい」で、忙しいななしろの代わりに採取するつもりだった。

 だが、[魔天]にある食用に適した普通の植物は、草食動物に食べられるのを防ぐためになのか肉食系植物型魔獣の近くに繁殖している事が多い。結果、採取下見ツアーは、植物型魔獣の生態観察、もとい巧妙な捕食戦略現地観察会にクラスチェンジした。

 しかも、多種多様な採食手段を展開しているその場で、ななしろから事細かな解説が入る。グロいシーンをこれでもかと目の当たりにし、あーんなこととかこーんなこととか余計な想像力を掻き立てられたアンゼリカは、早々に音を上げた。


 ウォーゼンは、「ロナ殿の採取の手伝いを」と申し出た結果、ロックビーの清掃行脚に同行することになった。

 ダグの地下道とは違い、巣穴は仄明るく、ウォーゼンが動き回るのに支障は無い。だが、それは大量のロックビーが飛び交う様を間近で見続けるという事でもあった。更には、唸る羽音、入れ替わり立ち替わり様子を見に来る巨大蜂、地面から突き出たモグラの鼻。


「ふ、ふふふふ」


 ロックビーに見送られて巣穴から出てきたウォーゼンが軽く笑う。


「どうしたの?」


「ロナ殿が陛下方の無理難題に動じない理由が判った気がしてな」


「そう?」


「ここの環境に比べれば、遥かに静かだ」


「音だけならそうかもしれないね」


 万感の思いを込めたにも係わらず、ななしろの反応は軽い。


「何か音以外にもあるのか?」


「大集結するロックアントとか、延々と這い出てくる粘菌とか。ああ、針魚の特攻も酷かった。うん、あれがいる海域で漁はできない。

 ほんと、数の暴力は冗談抜きで始末に負えない。そう思わない?」


「そ、そうだな」


 上には上があった。ロックビーの巣一つで悟りを開いた気になったのが間違いだった。何より、つい先日までロックアントの解体作業していたことをすっかり忘れていた。それだけロックビーの群れの迫力に押されていたということでもあるのだが。


「そうだ。ウォーゼンさんの掃除、双葉も満足してたみたいだし、いっそのこと三年ぐらい専属掃除夫やってみない? 毎日肉たっぷりな三食付きで蜂蜜酒飲み放題、日給は魔包石一つ、で足りるかな。満期に完遂ボーナスにを樽で付ければいいか」


「謹んで遠慮申し上げる!!」

 あとがき小劇場


「この雇用条件で掃除夫募集したら、どれくらい応募者が来るかな」


「仕事場がどこか知られたら誰も手を挙げないと思うが」


「じゃあ、そこは黙っておいて連れて来から説明する」


「・・・それは人攫いと言わないか?」


「ただの住み込み従業員♪」


「拉致監禁とどこが違うってんだ!!」


「じゃあヴァンさんがやってよ。どーせギルド顧問なんて看板背負ってても暇なんでしょ?」


 ダダダッ(逃げ去る足音)


「ヴァン殿・・・」


「私は誘ってくれないの?」


「ついうっかり剣でぷすっとやりそうなんだもん。雇用主を刺したらだめでしょ」


「お茶を淹れてくるわね」


 アンゼリカは手にしていた細剣をエプロンに仕舞い、そそくさと立ち去る。


「逃げた」


「・・・そういうロナ殿こそ、どうなのだ?」


「必ず背中に張り付いてるのがいるんだよ。逆にこっちがぷすっとやられそうで迂闊なことはできないの」


「俺は何もなかったが」


「あの作業着の所為かなぁ。材料に使ったモグラ、心底嫌ってるんだよねぇ。そういえばウォーゼンさん、顔を刺されなくてよかったね」


「・・・・・・」(もっと早くに教えておいて欲しかった。そんな事実があるなら行く前に拒否していたのに!!)

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