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救い手は、天より現る

「ヴァンさん。さっきも言ったけど、あっちの洞窟には近寄らないでね。あの二人にもよくよくよーく言い聞かせといて」


「そこまで念を押すって、なんかヤバい物を隠してるんじゃねぇだろうな」


 ばこっ


 真面目な話を茶化すようなお調子者には、拳骨だ。


「作業場だって言ったよ? 時間が惜しいんだってば。いい? 何か手を打っとかないとまた体調悪くなるでしょ。つまりはヴァンさん達の為なの。グダグダ言ってると駕籠詰めにして密林街道に捨てるよ? 本気で」


 うーん。案外、それがベストな解決策かも。


「〜〜〜おー痛ぇ。判った判った。さっさと終わらせてこいや。メシはさっき預かった分を食わせとく。アンゼリカが動けるようになったら、後はあいつに任せられるしな」


 魔力酔いの対処方法は二つ。食べ物由来ならばドリアードの根の粉末を処方するだけで済む。しかし、環境由来の酔いは現場から離れて安静にしているしかない。ドリアードを服用しても、ほんの少し体調を改善させるだけだ。しかも、回復までの時間には個体差があり、一概に言えない。

 幸い、目の前の一人に看病を任せられる(本当は復調していないが、根性で起きているだけ)。


「それと、山羊狙いの鷲とか山猫にも気を付けて。九卯と五樹がいれば近寄らないとは思うけど。慌てて逃げようとしてうっかり崖から飛び降りました〜なんてことにならないようにね」


 翼長約二メルテほどの大鷲は、断崖絶壁に逃げ込んだ山羊に特攻をかまし、足を踏み外させて墜落死したものを美味しくいただく。仔山羊ならばさっくり攫っていく。山羊以外の草原に住む動物も選り好みせずに狙う。非常に食欲旺盛な天敵だ。

 山猫と呼んでいるが、この世界での名前は知らない。彼らの灰褐色の斑模様は、溶けかけた雪や点在する岩に紛れやすい。外敵からの保護色にもなるが、気付かずに通りかかる動物を襲う時も非常に役立つ。そう大きくない体格にも関わらず、その前足の一撃はとってもパワフル。人が食らえばひとたまりもないだろう。


 見慣れないプレハブ小屋を警戒して山羊は逃げ出している。主食がいない草原で山猫に目をつけられることはないだろうが、大鷲はわからない。いや、そうでもないか。番犬ならぬ番魔獣が二頭も居る。


「お、おう。気を付けとくわ」


 これだけ釘を刺しておけば無茶はしないだろう。


「眺めだけは良いから、たまにはぼーっとしてみたら? って、いつもボケてたか」


 本人の資質にも釘をさす。わはは。


「誰がボケじゃあっ!」


 とにもかくにも、油断大敵。気が緩みそうな情報は与えない。


「三葉は準備ができるまでは抜け毛を集めてていいよ。九卯は手伝ってあげてね」


 五樹は、今はわたしの影で休んでいる。昨日はよく働いたからね。抜け毛集めは九卯の暇つぶしになるだろう。多分。


 あ、三葉が喜びのダンスを踊り始めた。グリフォンの頭の上で。九卯は訳も分からずそれでも一生懸命に踊る。

 大きささえ無視すれば可愛い、と言えるかもしれない。


「こら。てめぇやめろ!」


 対抗意識を刺激された四葉が、ヴァンさんに巻きついたまま、踊る踊る。つられたヴァンさんも踊る踊る。出来の悪いマリオネットみたい。こちらは可愛くない。


「ほどほどにねぇ」


「ロナ止めさせてから行けってうおえぇぇ」


 手加減はする、だろう。多分。


 さて。


 捨てるにしろ連れて行くにしろ、騒動を減らすための魔道具が必要だ。


 『魔力避け』は必須として、まーてん周辺では何が起こるかわからない。全員に防御結界を持たせた方がいいのかな? うっかりしていたが、肉を運ぶための容器も予め用意しておくべきだった。


 そんなこんなで、魔道具を作ることにしたのだが。


 誰よりも、わたしが一番油断していたのかもしれない。





 夜明け前、温冷切り替え機能付きのマジックボックスが完成した。

 そして、肝心の九卯は、蓋は開けられたものの中身の出し入れが出来なかった。爪が大きすぎて、うまいこと肉や料理に手が届かないのだ。だけど、これ以上大きくすると、飛ぶ時の邪魔になる。容器を取り落としたら持たせる意味がない。


 それに、九卯に、肉に目が眩んだガレンさんの相手がまともに務まるとも思えない。


「三葉、やっぱりお願い」


 仕方ないなぁ


 割増報酬を約束して、ローデンと[南天]往復ガイドも頼んだ。存分に山羊の毛を集められた為か機嫌がいい。すんなり引き受けてくれた。

 最初の届け先は、まずローデンから。そろそろ第一便を送っておかないと、ガレンさんの血管が危ない気がする。


 中身は、偶然手に入れた猪肉と鹿肉と薄味肉。鹿は水麦をもらった村から帰る途中で遭遇し、五樹が軽く撫でてしまったものだ。全部、偶然。これっぽっちも惜しくはない。

 それに、たくさん欲しがったのはガレンさんなのだ。圧倒的物量に泣くも笑うも勝手にすればいい。


「ここに小屋がなかったら、いつもの所に向かってね」


 三葉さん達は、わたしに巻きついた状態で何度も往復している。道案内も出来る筈。


 がってん!


 くう?


「あ〜、九卯は三葉のいうことをよーーーーーく聞くように。そうすれば、ご飯が美味しく食べられる・・・」


 くえっ!


 「ご飯」の一言でめっちゃヤル気になれるなんて、単純、もとい素直でよろしい。

 朝焼けに染まる凍った雪を吹き飛ばし、ダッシュで飛び出して行った。


「慌てなくて良いから怪我しないようにね〜」


「やっぱグリフォンは速えなぁ」


 気配に気づいたのか、ヴァンさんが起き出してきた。


「その気にさせるのが大変だけど」


 鳥頭の一族には、目先の好奇心しかない。


「そうか? んで、もうここを出るのか? あいつらは、まだ起きられそうにないんだがよ」


「まだだよ。これからが本番」


「は? もう出来たんじゃねえのか?」


「バカ言わないでよ。魔道具はそう簡単に作れないって」


 術式は、保冷用マジックボンボンの魔法陣をちょこっと改良するだけで済んだ。形状は、自分が駕籠を使って不便だった所を手直しした結果、寿司屋の出前風になった。

 岡持ち下げたグリフォン。似合っている、のか?


「まだ作るのかよ。昨日、急いでるって言ってたよな」


「急いでるよ? 街道に送り返すだけならすぐに出られるけど。後のことはヴァンさんに全面的に任せることになるけど」


「・・・」


 ははは。その時のアンゼリカさんのキレっぷりは、ただ事じゃ済まないんだろうなぁ。あはははは。


「という訳で、もう暫く看病してて」


「・・・・・・おう」


 この時、魔道具にこだわっていなければ、あんなことにはならなかった。




 夕方、ウォーゼンが目を覚ました。


「むぅ。ここは?」


「おう、気分はどうだ?」


「ヴァン殿か。世話になったようだ」


「礼はロナに言え。起きられそうか? いろいろ、いろいろと説明したいんだが」


 寝台で体を起こしたが、頭が上の寝台に当たってしまった。一葉は、器用に寝台から引っ張り出し、椅子にちょこんと座わらせる。


「かたじけない」


 ぴぴっ


 荷物同然に扱われたにも関わらず、生真面目に感謝を伝えるウォーゼンを気に入ったらしい。


「おめぇら、本当に器用だな!」


 ぐにぐに、ぐにぐにぐに


「褒めてねぇ!!」


 ヴァン殿も、小声で怒鳴るなどという器用さを発揮しているのでは? と、ウォーゼンは思ったが賢明にも口にはしなかった。


 それぞれに気を取り直し、ウォーゼンは出された薬湯と出来立ての粥をすすり、ヴァンはロナからの伝言と言う名の指令を実行した。


「最後に、ロナからの話じゃねえが言っておく。俺は、ここからローデンに帰る方法がわからん。方向も距離も手段もお手上げだ。・・・文句を言うなよ?」


「言えないさ。寧ろ手間を掛けるようで済まない」


「謝るならロナにしろ」


 全て、ロナの一存にかかっているのだ。


「・・・そうだな。そうしよう」


「それより、もう少し休んどけ。ロナの魔道具が完成したら、嫌でもまた移動だからな」


「ヴァン殿は休まなくても良いのか?」


「おめえが起きたら交代してもらうさ。そん時はさっきの説明を必ず女将にしてくれよ?」


「了解した。外の景色は明日の朝の楽しみにしておこう」


 深夜になって、アンゼリカも目覚めた。


 一葉との通じているかどうかわからない身振り手振りの会話を中断したウォーゼンは、まず薬湯を勧める。


「これを飲めば少しは楽になる。窓がないからわからないだろうが、まだ夜中だ。ヴァン殿は、先に起きて俺達の看護に付いていてくれた。先ほど交代したばかりなので、静かにしてもらうと助かる。俺もヴァン殿からの又聞きで知らないことも多いのだが」


「・・・一度に言われても混乱するわよ」


 頭痛の所為か、眉間にしわを寄せて文句を言う。


「それは済まない。だが、必ず伝えるように言われたことがあってな。では、落ち着いて聞く気になったら話すとしよう」


「ななちゃんは?」


「それも含めて、だ」


「置いていかれたのではなくて?」


「違う。と思う。俺が目覚めたのは女将殿よりも四半日早かったのだが、まだ顔を合わせていない。それに、外には五樹殿もいる」


「いつも、置いて行く、くせに」


 まだ顔色が悪い。それに、泣きそうな顔をしている。


「ロナ殿は、小屋から離れたところで作業していて、終わればまた移動するそうだ。今は、体調を戻すことに専念したほうがいい」


 薬湯を飲み終わると、アンゼリカは再び寝台に体を預けた。


「そうね。ななちゃんを、ちゃんと、叱って、あげなくちゃ・・・」


「何故に叱ることになるのだ」


 唖然とウォーゼンが呟いた時には、アンゼリカはもう眠っていた。


 夜が明けて、やっと三人が顔を揃えた。


 それぞれ軽く身だしなみを整えたところで、ヴァンが口を開く。


「朝飯にしようぜ」


「粥はまだあるだろうか」


「おう。たんまり預かってる」


「・・・ヴァン。粥ってなぁに?」


「てめえの尻拭いでロナが作ってくれたんだよ。ほれ」


 赤い器を受け取りはしたものの。


「尻拭いって何よっ・・・痛い」


 大声を出したら頭痛もぶり返したらしい。


「何持って来てたのか一切訊いてねぇし人のもんは勝手に使えんっつって俺達の看病そっちのけで駆けずり回ったんだってよ」


「・・・」


 ヴァンの指摘に心当たりがあるのか、一瞬口籠る。


「で、でもでもでも工房の食堂では」


「あのなぁ。街ん中とは状況が違うんだっての。おめぇが必要だと判断して持って来た物にあいつが何も言わんで手をつけると思うか?」


「・・・・・・」


 ヴァンは深々と溜息をついた。


 これは、あれだ。ロナが今まで散々やらかした後遺症だ。お互いに何をやってもカバーできると勘違いしてやがる。だが、ここは勝手知ったるローデンではない。アンゼリカの方が断然不利な立場になっていることに気付いてもいない。

 そもそも、採取物ならともかく、野外活動中、各人の荷物は当人の了解なしに触らないのがハンターのルールだ。街暮らしが長すぎて、こんな肝心なことも忘れてしまったのか。


 小屋の出来が良すぎるのも、アンゼリカの勘違いに輪を掛けているのかもしれない。


「ウォーゼン。ロナからの注意事項は説明したのか?」


「いや、まだだ。アンゼリカ殿は薬湯を飲んですぐに寝てしまったのでな」


「んじゃまあ。もう一度言っとくか。守れなくて何かあっても俺は知らんからな」


 ロナには軽くふざけてみたが、注意点は至極当たり前のことだ。その土地を知る者の話は、決して蔑ろにしてはいけない。


「で、後はあいつが戻ってくるまではここで待機、ってことでいいのか?」


「・・・どうなのだろう?」


 男二人が首を傾げている。寝台を畳んでも、小屋の中は狭い。仕舞っておいたテーブルと椅子を並べたら、尚更。


「小屋の周りならいいんでしょ?」


 まだ素直になりきれていないアンゼリカは、狭い小屋で顔を付き合わせているのが気に入らないらしい。


「うっかり沼にハマるなよ?」


「しないわよ!」


 ばた・・・


 扉の前にあったものに遮られ、全開にはならなかったようだ。


「五樹ちゃんかしら」


 ゆっくりと押し開けたところには五樹の黒い被毛ではなく、白い毛皮の山があった。


「なんじゃこりゃ?!」


「五樹殿が山猫を捕まえたのか?」


「違うみたい。紙が埋もれてるわ。えーと、


  忘れてた。普段着にどうぞ。ななしろ


 ですって」


 広げてみたら、汚染湖作業員に大好評のつなぎに似た形をしていた。そして、サイズ違いの三種類がそろっていた。


「ロナ殿の置いていったものなら、着てみるしかあるまい」


 真っ先にウォーゼンが一番大きいものを手にした。


「どう見ても普段着じゃねぇだろうが! 本気か!?」


「ナナちゃんが来るまで暇だものね」


「・・・」


 一人、仲間外れになるのもおもしろくない。ヴァンは渋々最後の一着に手を伸ばし、前合わせを解いて手足を入れる。


「こ、こうか?」


「手を外に出す前に、合わせを閉じたほうが良さそうだ」


「あら。続きがあるわ。


 フードを被り、手首足首を絞れば、より快適。


 ・・・ちょっと、ヴァン。フードってどれ?」


「手が届くだろうが。寝すぎて体が硬くなったんじゃねぇか?」


 ずこっ!


「一言多いのよ」


「あー、うむ。アンゼリカ殿、似合う、な」


「そう? ・・・ウォーゼンさんこそ」


 アンゼリカ以外は微妙に体に合わず、袖や裾がだぶついている。


 もう一つ。フードの飾りが動物の耳に似ていなくもない。


「こんなもん着てどうしろってんだ!」


 慌てて脱ごうとしたが、硬く縛りすぎた紐が解けない。


 ウォーゼンが、アンゼリカの手から落ちた紙を拾った。


「・・・ヴァン殿。裏面にも何か書いてある」


「あぁ?」


 製品名  極限地対応作業着

 原材料  ミューノラ

 効果   天候耐性(気温湿度に左右されず、快適に過ごせる)

 注意事項 池や川に飛び込まない(浸水防止機能はない)

      縫い目が綻んだら速やかに補修する(耐性機能が劣化するため)

      毎日の手入れを推奨する(手触りが良くなるかも?)

 付属品  手袋、室内用長靴(可愛さがアップする)


 備考   フェンさんが突貫作業したものなので、文句があるなら街に帰ってから存分にどーぞ。


「あ、あんのやろーーーーーーっ!」


 自身の見てくれを想像してしまい、恥ずかしさに激昂する者。


「やだ。可愛いって」


 ついうっかり喜ぶ者。


「なるほど。結界が破られた時の用心の為なのだな。流石はロナ殿だ」


 依頼者の狙いを正確に読み取り、感心した者。


「もうちっと怒れよ! 俺は道化じゃねえーーーっ!!」


 持ち込んだ張本人に届けとばかりに絶叫した。そして、どこからも応えはなかった。


「ちょっとしたお茶目じゃない。あら、手袋がないわね。ななちゃんが持っているのかしら?」


 そして、浮かれたアンゼリカは足取りも軽く歩き始めた。


「あ、おい待てえぶ!」


 ずべっ。


 追いかけようとしたヴァンは、足首を縛る紐の端に足を取られて転んだ。


「ウォーゼン! 何してる、止めろ!」


「判ったっぬおっ?!」


 ウォーゼンも以下同文。


 アンゼリカのななしろセンサーもレオーネ並みの制度があるらしく、真っ直ぐに洞窟に続く斜面へ向かっている。


「あ〜〜〜っ! ロナっ! アンジィを止めろーっ!!」


 二人が着ぐるみを脱ぎ捨て追いかけ始めた時、彼女はもう岩場の陰に入るところだった。


 そして。


 どんっ


「何が起きたのだ!」


 爆音に驚いた動物達の咆哮が遅れて耳に届く。


 上手く歩けず、這い寄った崖の際から音の発生源を伺うと、巨大な洞穴から遠ざかるように、岩屑と共に妙にゆっくりと崖下へ落ちていく白い影が。


「アンジィーーーッ!」


「ヴァン殿、無理だっ! え? ロナ殿?!」


 次いで、より小さな影が白い影の後を追う。ほぼ垂直な崖の下は遥か遠く、そこに転がっているのは巨大な岩なのだろうが小石ほどにしか見えない。ここからでは、到底二人を引き上げるすべがない。


 音に気を引かれて来たはぐれワイバーンが、中腹を舞う。狙っているのは、白い影か。


 その時。


 小さな影は姿を変えた。


 いっそ蛇にも似たほっそりとした肢体の背に、皮膜を備えた四枚のつばさが翻る。

 より勢いを増して落下して征く。落ちる岩屑をすり抜け、体表は動きに合わせて虹色に光を弾き、四分の一ほどの大きさしかないワイバーンに勢いのまま頭突きをかましてね飛ばす。


「な、なな」


 ウォーゼンはそれ以上言葉が出ない。


「・・・あ〜あ」


 ヴァンは、一部始終を見届けて安堵する一方、頭を抱えた。


 白い影は、地面に激突する遥か手前で虹色の生き物に無事に拾われたようだ。


 そして。


 くるりと体を捻り、急上昇。見る間に姿が大きくなっていく。落ちる一方のワイバーンは、お互いがすれ違う瞬間に消えた。

 体の細部は真正面の頭に遮られてよく見えない。その形状は、知っている限りのどの生き物にも似ていない。


 冷たい怒りを湛える色違いの瞳が目指しているのは、見物人のいる、ここ?!


「のうわっ」


 一瞬、辺りは暗がりに覆われる。豪、と風が成り、煽られた二人は、草地を転がる。


 すぐさま眩しい陽の光が復活した。さく、と草を踏む音もする。


「無事で何より」


「ちゃんと、話をしたの?」


 寝転がったまま再会を寿ぐヴァンへの返事は、地を這う低音。


「話した。話したとも。俺も一緒に聞いていた間違いないぞ」


 腰の抜けたウォーゼンが、四つん這いのまま早口で答える。


「じゃあ。どうしてこうなったのかな?」


 彼女の機嫌は、すこぶる悪かった。とことん悪かった。間違いようもなく悪かった。

「ふ、ふふふ。ふふふっふふ・・・」


 退却っ退却ーーーーっ!

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