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敗戦確実

 どうしてこうなった。


 工房に近いから、と練兵場を借りることに成功したアンゼリカさん。


 は、まだいいとして。


 参加人数が膨れ上がっていた。


 豪華布陣、と言っていいだろう。あの場にいた元マグロ達とペルラさんまで参戦した。加えて、エッカさんもあちら側のセコンド役に付いた。


 ずるい。

 

「ボクが踏んだんじゃないのに」


「てめえが持ち込んだヤバい物が原因だ!」


「言いがかりだっ」


 と激しく主張したのに、誰も聞いて、もとい来てくれない。もっと非番の兵士やハンターを呼びあつめるか? と脅迫され、渋々受け入れた。


 しかも。


「まあまあまあ。英雄症候群のロナ殿ならば軽いものでしょうに」


 ご隠居さんの無責任発言まで加わった。


「そうね♪」


 アンゼリカさんの挑発が酷い。


「万が一があったらどうするのさ?!」


 重軽傷者量産犯になんかなんかなりたくない。ないったらない!


「そのために、待機しているのですが?」


 いつの間にか、エッカさんは大掛かりな救護所を設営していた。




 わたしの味方は何処にいる? いや居ない(涙)。




 ちなみに、この演習に参加するため工房の警備の人員が足りなくなった。不足した分は、騎士団から派兵されたそうだ。なんて依怙贔屓。


 対戦相手が手にしている武器も、刃付きのマジもの。アンゼリカさんが焚き付けて、実戦から長く離れていた警備員さん達が嬉々として乗った。


 そして、只今作戦タイム中、だとかで爪弾きにされている。


 そっちがその気なら、わたしだってやってやる。

 練兵場なら足場はしっかりしているし、速度重視で惑乱させて各個撃破すればいい。分断できなかった時のための小細工も今度こそ怠らないようにして、と。


「それじゃいいかしら。私達全員を倒せばななちゃんの勝ちよ」


 ん?


「それって、アンゼリカさんが降参するだけじゃダメってこと?」


「そうよ♪」


「で、ボクが誰かに捕まったらおしまい、でいいのかな?」


「そのとおーーーーーりっ!」


 喜色満面の駄隠居さんのドヤ顔がうざい! 逆さ吊りの肩車なんか金輪際遠慮する。


「負けたら勝った方のお願いを聞くこと。いいわね?」


「ボクがお願いしたいことなんて何もないのに」


「い い わ ね ?」


 いつも通りの柔らかな微笑みを浮かべるアンゼリカさんだが、目が怖い。例えるならば、カエルを睨みつけるヘビの如し。


 ・・・これは。早まった、かなー?


 あ。でも、不良在庫を引き渡すいい機会かも。




「火炎弾!」


 ペルラさんの怒涛の弾幕で、先手を打たれた。


 とは言っても、身を躱してしまえばどうってことはない。


 のだが。


「火炎弾火炎弾っ!」


「え? えっ? なんでこんな連射ができるのさっ!」


 わたしが知る限り、どんな単純な術でもそれなりのインターバルが必要だった。それが、例え前宮殿魔術師団長のペルラさんであっても。


 そうでもなかった。術具があった。特定の魔術を効率よく素早く行使するためにオーダーメイドで作る物。それならば連射も速射も可能だ。


 だがしかし。


 手にしていたのは、杖とかリングとかじゃなくて、紙切れっぽい物。


 魔法紙は一発ごとに消滅する筈なのに、おかしなことに、ペルラさんが握っているソレは原型を保っている。

 両の手で上下をしっかり抑えてひれ伏せと言わんばかりに突き出すポーズをとっていると、魔導紙がお触れを読み上げる巻物に見える。


 ではなてく。


 色が黒い。黒い?


「オーホッホッホ! 流石はナーナシロナ様でございますっ! 陣布は素晴らしゅうございますですのことよ?!」


「ハァ?!」


「よそ見するなよ! 「氷の矢」!!」


 ユードリさんの掛け声と共に、今度は氷がぶっ飛んできた。それも背後から。慌てて体を捻れば、ザクザクと音を立てて地面に突き刺さる。細いし硬いし早いし。


「まさか、ユードリさんまで?」


 ペルラさんと似たり寄ったりのポーズで、やはり黒い物を手にしている。


「これも実験だとよコンチクショウ!」


 『楽園』陣布の拡大展開を聞きつけたペルラさんに巻き込まれたのか。ご愁傷様。


 ではなくて。


「そういうテストは他所でやってよねっ」


「一石二鳥だってよクソッタレが!」


「何が一石二鳥なのか十字以内で返答して!」


「俺が知るかってんだアホンダラーーーーッ!」


 弾ける爆炎、唸る氷塊。


「当たりやがりませませ! 火炎弾、火炎弾! 火炎だーん!」


 なんだか、ペルラさんが壊れている。ユードリさんも目の色が変わっている。

 なんとかに刃物的な気配をひしひしと感じる。


 ・・・冗談じゃない!


 両手のトンファーを使って双方の術弾の軌道を反らした。


「うおっ?!」


「きゃぁあっ!」


 ペルラさんには氷の矢が、ユードリさんには火炎弾が。ふはははは、刺され燃えろ。


 避け切れなかった火炎でユードリさんの頭髪の一部が燃えた。ペルラさんのドレスには穴が空いた。


「・・・やりやがったなっ!」


「お気に入りでしたのにっ!」


「やられたらやり返すのが作法でしょっ?」


 仕掛けられた攻撃を跳ね返しただけだ。ただの火の玉じゃなくて着弾した時に爆発するという物騒極まりない火炎弾なんて魔法を使ってるけど。氷の矢だってもはや槍と言ってもいいくらいの代物だけど。


 わたしの反撃に慌てたのか援護射撃が加わった。射手は、例の貴族に雇われていた警備員の人達だ。

 射掛けられているのが普通の矢でも数は暴力。危ないって。


「っ、とっ、このっ! 清々、堂々、勝負しろーっ!」


 にわか弓兵にも魔術弾のおすそ分け。ついでに非難も追加した。


「ロナさん相手に近接戦闘なんかできませーんっ」


「だったらっ、手をっ、引けば?!」


「「「それも嫌でーす!」」」


「今なら無傷で退場できるし、なんなら蜂蜜酒も一人一瓶付けてあげる!」


 買収作戦に、矢の勢いが衰える。この調子で・・・


「給料から差っ引きますわよ?」


 ペルラさんの一言で、矢玉が増えた。


「それに、後で女将様に何をされるかわかったもんじゃないんですっ!!」


「ホーッホッホッホッ! 人徳というものですわのことよっ!」


 それは違う。激しく違う。


「ぐっ、このっ! 「氷の矢」っ! 当ったれぇーーーーーーっ!」


 一際大きな叫び声に振り返れば。


「何それ?!」


 最早、槍も通り越しているぶっとい杭が唸りを上げて飛んできた。


「目を逸らしている暇はありませんですのことよ! 「火炎弾」ーーーーっ!」


 さっきまではせいぜいサッカーボール程度だった。それが、今度は玉転がしにも使えそうな巨大な火の玉が出現していた。進路上に転がっていた普通の矢が、熱波を受けて容易く燃え尽きる。


 あれは、無理。


 わたしは結界に潜んでやり過ごせても、他の人はただじゃすまない。


 慌てて救護所に向かった。せめて、防御力ゼロのエッカさんだけでも保護しなければ。


 ギャラリーが見守る中、双方の魔法が激突した。


 対消滅、とはならず、砕け散った氷のカケラと火の粉と言うには大きすぎる塊が、爆風に乗って容赦無く全方向に飛び散る。そして、逃げ惑うギャラリー。


 ついでに勿体ないから、わたしに向かってきた残骸、もとい氷塊を対戦相手に打ったり蹴り飛ばしてみた。だが、盾や剣で防御され、射手しか潰せなかった。ちっ。


「逃げるな・・・」


「無念、ですわす・・・」


 肝心のペルラさんとユードリさんは、逃げる間もなく吹き飛んだ。二人は自らの攻撃の余波をまともに喰らい盛大に転がりまくる。そのダメージの所為、だけではなく魔力切れで沈没したらしく、ピクリとも動かない。


 ザマみろ。


「あれも、ボクのスコアに入れていいんだよね?」


「・・・そうでしょうね」


 エッカさんの判定だ。


 第一ラウンドは、わたしの勝ち。




「休んでいる暇はないわよ?」


 さっきまで救護所を一緒に防衛してたアンゼリカさんが、軽い調子で無造作にレイピアを突き出してきた。


「少しぐらいいいじゃん!」


「戦術だ戦術」


 ヴァン犬の追撃も難なく避ける。だが、戦場に押し戻された形になった。


「卑怯者っ」


 まあ、避けたり弾き飛ばしたりしていただけだから、大して疲れてはいないのだが。


「では、宜しいですかな?」


「そんな大物振り回したりして、肩とか腰とか大丈夫なの?」


 ご隠居さんの獲物は、彼の身長ほどもある巨大な黒い剣だ。他人事ながら、心配だ。


「先代、俺に当てないでくださいよ?」


 マイトさんの握っている剣も実は大剣に含まれるサイズなのだが、それが可愛らしく見えてしまう。


 ではなくて。


「追加報酬。追加報酬」


「彼女とデートするんだぁ!」


 残る警備員さん達もそれぞれの獲物を手に陣形を組む。総勢七人に取り囲まれた。


「武器を取り上げたら、負けでいいよね」


「ダメよ?」


「そんなっ!」


「だって。ななちゃんは、いろいろたくさん持っているでしょ?」


 予備武器のことか。それを指摘されたら口をつぐむしかない。そもそも、素手で取り押さえるのも立派な戦法だし。


「それじゃ」


 今度は、わたしから行ってみよう。


 ぱしぱしぱしぱししゅばっ。


「ふあ?!」


「あ」


「・・・」


 警備員さん達は難なく無力化できた。よし。


「・・・なあ。それ、なんだ?」


「武器に見えない?」


「ううむむむむ・・・」


 グロエオモナのつのパチンコで、蜜蝋とスライムで作ったプラスチックもどきの中空弾を飛ばしたのだ。中には痺れ蛾の鱗粉がみっしりと詰まっている。矢で体中を穴だらけにする心配がなく、心置きなく大盤振舞できるスグレモノ。

 しかも、命中しなくても直近で弾けるだけでいい。呼吸を止めたまま戦える達人など、いてたまるか。


 尤も、四人が大きく飛び退り、鱗粉攻撃を避けてしまった。改良の余地がありそうだ。


 空間に余裕ができたので、グリーンブラザーズに敗者の撤去、もとい運び出しをお願いする。このまま放置すれば工房戦の二の舞になるし、訓練場をゲロまみれにするのもしのびない。


 特別報酬は無くなっても、健闘賞としておかずの一品ぐらいは増やしてもらえるだろう。きっと。多分。


「盗賊鎮圧用の最新武器だよ。どう? 試してみない?」


 ついでに売り込みしてみたり。


「そんなもん俺らに使うんじゃねぇ!」


 文句を言いつつヴァンさんが殴り掛かってきた。


「人数差があるんだから使えるものは使わないとね」


「使わせなきゃいいんだよなっ」


 今度はマイトさんが斬りかかってきた。うおう。危ない。あえてマイトさんに向かって転がるように突進して大剣をかわす。後ろに下がろうにも四方を敵に囲まれていて逃げ場所がなかったから、でもある。


 身を低くした体勢を生かし、すれ違いざまにスネを殴った。よし、折れてはいない。片足で跳ねまくっているだけだ。このまま他の三人への盾にしよう。

 生きた盾の影から燐粉弾を打とうとしたけど、突進してきたアンゼリカさんの剣に紐を絡め取られてしまった。ついでに剣先が目の前に繰り出されたので、またも飛び退る羽目に。


「止めるなら今のうちだけど?」


 あえて、わたしから降伏勧告を出す。この三人相手ではどこまで手加減できるか。


「あらあら。ななちゃんの負けでいいのかしら♪」


「違う!」


 曲解も甚だしいアンゼリカさん。何故にノリノリ?


「ロナには何が何でも反省して貰いたいからなっ!」


 げっ。復活したマイトさんが参戦してきた。


「ボクが反省することなんてない」


「それがいかんのですぞっ!」


「それこそ理不尽っ?!」


 ご隠居さんの大気を切り裂く一閃を掻い潜る。


「どうですかな? ライバとミゼルの苦労の結晶は!」


 ぶん!


「随分と、大きい、ねえぇえぇぇっ?!」


 トンファーで剣先をいなす。がっつり受け止めたら、マイトさんがここぞとばかりに襲ってくる。いや、間髪おかずに嫌味な攻撃を仕掛けている最中だったりする。忙しいったらありゃしない。


「魔道具作りに飽きた時の気分転換と聞きましたがなっ」


 長台詞も一気に言い切る息の長さ。もしかして、息を止めて鱗粉爆弾から逃れたのかも。


「いい加減に、諦めろ! 説教受けろ。黙って聞け!」


「聞く前に穴があきそうだから嫌だ!」


 ちょっと、マイトさんや。お尻をつつこうとしないで。変態! 痴漢! 小さく前転し、ご隠居さんの股下をくぐって逃げた。


 ガツン!


「うお?! 先代、あぶねぇ!」


 ご隠居さんの横薙ぎをなんとか受け止めた、らしい。でも、音がなんか変。


「もしかして、それ、ロックアント?」


「はっはっはっ。ばれましたか」


 それなら納得。ロックアントは鉄に比べて軽い。巨大剣でも、並みの大剣ぐらいの重さだろう。

 年に見合わない敏捷さを損なわず、尚且つ自前の膂力に遠心力を加えた打撃を与えられる、ご隠居さんに似合いの武器だと言ってもいい。


 つまりは、見た目は斬れ味良さげなギロチンもどき、実態はただの棍棒。但し、丈夫さは折り紙付き。


 ・・・もうやだ。この駄隠居!


「よいしょっ!」


 マイトさんの盾にしたご隠居さんの頭の上に飛び乗った。


「おや? 降参ですかな?」


 わたしの足をつかもうとする片手を踏みつける。


 そして。


「違うもんね」


 襟元の隙間から、ぽいっとね。


「ぬひょひょひょひょひょお?!」


 右手のトンファーを襟元に突き刺し、押し込んでみた。


 これの素材は、謎生物たる首長竜の鱗。つまりは朝顔と同じく。


「ロナ! それはまずい!」


 冷静さを失ったマイトさんの口に、残る左手分を突っ込めば。


「ぼへっ」


 二丁上がりっ!


 電撃を受けて身動き取れなくなったところに、鱗粉爆弾のおまけも追加しておく。これでよし。

 小さな火花が散っているように見えるが、それは気の所為。見てない見てない。ないったらない。


「容赦ねぇなぁ?!」


 剣持ちコンビの背後にスタンバイしていたヴァンさんが、非難の台詞と共に拳も突っ込んできた。


「みんな揃ってボクをいじめるのが悪い」


「てめえの素行が悪いのが悪いんだよ!」


「だったらっ、ボクをっ、街にっ! 入れるんじゃない!!」


「そういう問題でもねえってんだよ!!!」


 猛ラッシュの勢いに負けて回避したら、トンファーを回収し損ねた。トンファーが刺さっている間は、一葉さん達も近寄れない。


 ・・・あの二人、大丈夫かな。


「あらあらあら。余所見している暇はないわよ?」


 第三ラウンドは、この二人が相手らしい。


 対戦相手が減ったから楽になる、と思ったら大間違い。逆に怖さが増した。


 攻撃の主従を入れ替えつつお互いの隙をカバーする手腕は、反撃の糸を掴ませない。


「いい、コンビネーション、だねっ」


「うふふ。もっと褒めてくれていいのよ♪」


「付き合いの長さは伊達じゃねぇ!」


 ヴァンさんの拳が顔面に迫る。半身で躱したところにレイピアの突きが来る。


「死ぬ死ぬ死んじゃうからそれ!」


 本気で怖いよこれ。


「エッカが居るから問題ねぇなっ!」


「骨、折るよ? 本当に、折っちゃうからね!」


 やむを得ない。年寄りの骨折は治りが遅い。だが、うろちょろできなくなれば、少しは大人しくもなるだろう。


 千切り飛ばさない程度の加減でローキックを放つ。


 軽くよろめいたものの、ヴァンさんの脛当ては凹みもしなかった。年寄りのくせに後退もせずわたしの蹴りを耐えきった足腰は賞賛に値する。


 ではなくて。


「どうだ見たか参ったか!」


「・・・なにソレーーーーーっ?!」


 後で、新型装甲を取り入れた防具だと教えてもらった。ロックアントの薄板と緩衝材を複層化させ、魔獣の物理魔術攻撃に耐えられるように設計したのだとか。金属を極力使用していない為、軽くて取り回し易い。


 この新型装甲の構想は昔からあったものの、人手や資金資源の関係でなかなか研究が進まなかった、らしい。それが、「賢者様」の遺品を押し付けられた、もとい大量に預かる羽目になったコンスカンタの関係各者が、「賢者の恵み」を広く世間に還元する為という名目で我武者羅な開発に取り組み、つい最近量産化に成功。他国にも配備できるようになったとか。

 元々、巡回兵の盾や開拓村の防壁への使用を想定していたものなのに、ヴァンさんは運用テストと称してちゃっかり専用防具をせしめていた。


 なにそれずるい。


 経緯を聞いたわたしが打ちひしがれたのは、言うまでもない。


 それはさておき。


 アンゼリカさんから必殺の一撃を貰えれば、わたしは目出度く今生から解放される。

 だが、ついうっかりを装おうにも彼らの技量がそれを許さない。本当に、ギリギリのところを攻めて来るのだ。せめて一人に減ってくれればやりようがあったものの、アンゼリカさんの防具もヴァンさんのものと同素材らしく、またも排除に失敗した。あのレイビアの執拗な攻撃をかい潜って放った千載一遇のチャンスだったのに。でも、わざと当てさせた可能性がなきにしもあらず。・・・(涙)。


 しかも、衆目の中での出来事となれば、アンゼリカさんが殺人罪に問われる恐れがある。例え殺気のない攻撃によるものであっても。


 そう。アンゼリカさんの振るうレイピアに殺気はない。これっぽっちもない。

 だというのに、「他の人が受けたら大怪我まちがいなし」な攻撃ばかりなのだ。躱す方向さえも誘導しているトンデモアタック。


 少しでも気を緩めれば、真面目にやれとゲシゲシ甚振ってくるし。


「ほれほれほれ。いつもの、勢いは、どうした!」


「お留守にしちゃダメよ?」


 ・・・・・・ぬあーーーーっ!


 どうすればいいんだーーーっ?!




 結論。


 負けた。


 ヴァンさんに右腕を取られ、喉元に切っ先を突きつけられ、身動き取れなくなったわたしは降参するしかなかった。


 ・・・異種目混合戦なんか、大っ嫌いだ!

 はっはっはー。


「覚えてろ、作者ぁ!」


 このシーンに進むまで、右往左往していた主人公に言われたくはない。

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