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どたばたは続くよ、・・・いつまで?

 翌朝。漸く息を吹き返した騎士さん達が、改めてご隠居さんの前に頭を下げに来た。


「恥を忍んでお願いいたしますっ」


「陛下は、あの呪術師にたぶらかされただけなのです」


「何卒、お力添えを!」


「そなたらで、あやつの首を搔き切ればよかろう」


「「うっ」」


 ご隠居さんの物騒な解決策を聞いて、言葉に詰まる騎士さん達。


「今なら無抵抗だし?」


 徘徊防止のために、両手両足をふん縛ってある。


「「・・・・・・」」


 わたしのユーモアは、ブラック過ぎたらしい。


「わたしが踏みつぶせばいいのね♪」


 すっパーーーン!


「モリィさんは下がってて」


「ぶーーーーーーっ!」


 こらこらこら。鼻息で吹き飛ばしていい、とも言ってない。


 あおりを食らった隣のグループから、盛大な悲鳴と怒号が返ってきた。


 本来ならいの一番に遠ざけたい対象なのに、竜の里では呪術師にあったらとにかく逃げ出せと教えていないのか? さっきの話もちゃんと聞いていただろうに。鈍い、鈍すぎる。


「導師様に何をする気だというのだ! この不届き者が!」


 自称導師様(笑)にはドリアードの根の粉末を溶かした水をたらふく飲ませ、魔力遮断効果のあるてん杉布で梱包した。彼の体質による影響は途絶えた筈。なのに、未だに崇め奉るおっさん達。思い込みの激しい気質なのだろうか。「導師様」と聞くだけで条件反射的に怒鳴るなんて、傍迷惑な。


 呪術者の影響を即刻完全に排除する手段も後世に残しておいて欲しかった。ローデン王宮には伝わっていなかったのか、ご隠居さんの追加情報はなし。仕方なくわたしの頭脳を酷使する事態に陥っている。だから駄隠居だというのだ。


「こやつは呪術師だという話を聞いていなかったのかな?」


 ぬぅ〜ん、と厳つい表情で詰め寄るご隠居さん。にも負けないおっさん達。ある意味根性はある。根性だけは。


「余所者は関係ない話であろう?!」


「そうはいきませんな。これほど影響力のある呪術師をやんごとない方々の側には置いておけませぬ。まだお判りにならないか?」


「導師様は我らに道を指し示してくださった尊きお方。不遜な真似はさせん!」


「そうだ! ダグの未来は、導師様が導いてくださるのだ!」


 おっさん達は、自分の言動に酔っぱらっているようだ。まわりの反応が全く見えていない。わたしのブレスよりも寒いよ?


「・・・こんな、やつらのせいでっ! 俺達の村がっ!!」


「にーちゃんっ!」


 鬼の形相で掴み掛かろうとするボコスさんを、ロトス君が必死に押し止めている。


 騎士さん達は、主君に盲従して自称導師様(笑)をヨイショする気はないらしい。


「貴殿ら。主君を諌めるのも配下の勤めであろうが」


「「「・・・・・・」」」


 かといって、彼らの言動に呆れ返ってはいても、諌言するほどの勇気の持ち合わせもない。らしい。へたれどもめ。

 そう言うわたしは、別の意味で関わり合いたくない。王様とか貴族とか、面倒くさすぎる。


 タイムリミットも近い。そろそろ、この場所から人払いしよう。


 一葉さん達に、こっそりお願い、もとい指示を与える。・・・こんな時ぐらい、口調に文句を言わないで欲しい。


「ロナ殿? 何をする気ですかな?」


 いくら小声にしても、耳の傍で内緒話が出来る筈もない。当然、ご隠居さんには聞こえてしまう。仕方がない。


「人が多すぎるし、堂々巡りだし。さっさと解散させようと思って。だから離して?」


 何をトチ狂ったのか、わたしを肩車したまま焚き火会議に参加していたのだ。この駄隠居は。


「ふむ。そういうことでしたら」


 やれやれ。ようやく降りられる。


「ぬああああっ。命ばかりはお助けをぉおっ!」


 ・・・・・・。


「ご隠居殿?!」


「何事だ!」


「ロナっ! 何やってんだよ!」


 あちらこちらから、大量の疑問符が叩き付けられた。


 それは、わたしこそ訊きたい! 何する気だこの駄隠居は!


 しかし、ご隠居さんは、さもわたしが突き付けているかのような位置にナイフを握って脅されている芝居をしつつ、主にダグの騎士さん達を狙って撥ね飛ばしていく。


「ちょ、ちょっと! 何やってんの!」


「今のうちに、ハンター達に指示を出してくだされ」


「へ? あ、うん」


 = 水に注意! 現地から退避! 各自の判断で、速やかに、ローデンのギルドハウスへ撤収!! 荷物は全部拾っていくこと!!! =


 慌てて、指笛通信を送った。複雑な文章は無理だけど、今までの経緯で荷物イコールローデン兵と判断してくれる、はず。


 その間にも、砕氷船の様に突き進むご隠居さん。なんてパワフル。


 ではなくて。


「なんでご隠居さんがやるの?!」


「仲間はずれとはあんまりですぞ♪ それに、こちらの方が面白そ、げふん、お役に立てそうですしなっハッハッハ!」


「笑ってる場合じゃないってばっ!」


 一葉さんが差し出した人質を小脇に抱え、更にわたしを肩に担いだまま爆走する。それでも普通に喋るとは、只者ではない。


 ではなくて!


「おや。これでも、ロナ殿の計画に支障はない筈ですが?」


 ・・・確かに。


 人質を囮に、ダグの人達を安全地帯へ誘導。尚且つ、ローデン組から引き離す。というプランだ。


 人質候補は、自称導師様(笑)一択。

 彼をダグに持ち帰らせれば元の木阿弥になりかねない。ローデンに連れて行っても、いずれダグの二の舞になるだろう。




 物騒な人型兵器は、人里から隔離するに限る。


 だけど。


 ドウシテコウナッタ?!

 主人公の持つ魔力量は世界一。学校のプールに砂つぶ一つ落としたところで、痛くも痒くもありません。

 むしろ、魔力放出を限界まで抑制していたからこそ、今まで呪術師扱いされずに済んでいました。


「・・・」

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