[魔天]に降る雪
「何故だ。何故、お下り遊ばしてくださらないのだ」
「陛下の信心がまだ届いておられないのです」
「我らの持てる限りのものを捧げてきたではないではないか!」
キルクネリエの移動速度が速かった訳が判った。
ローデンの兵士さん達とは別の団体がいた。高級そうなきんきらきんの服を着たおじさん達と、彼らを取り巻く騎士らしき人達と、変な人。
がしゃがしゃ、どすどす、がさごそ。
隠そうともしない騒音を怪しんで、肉食系の動物達が遠巻きにしている。そのうちに、ご飯にするかもしれないけど。
「この辺りが、そうなのか?」
「いえ。もう少し先です」
「陛下。何故に我々がこのような場所に赴かなければならないのですか!」
「聖者様の福音を得る為だ。何度言わせる」
「そのとおりです。皆様方ご自身が供物を捧げれば、かのお方もさぞやお喜びになることでしょう!」
聖者の福音? 供物? なんじゃそりゃ。
彼らを誘導しているのは、森を歩き回るには大層じゃまっけな黄緑色のローブを引き摺る中年男性。わりと整った顔立ちだとは思うけど、目付きは普通じゃない。
その昔、名前は忘れたけど禁薬でぶっ飛んだローデンの魔術師や、コンスカンタで騒動を起こした三人組にそっくりだ。
それでも、歩き慣れないおじさん達を巧みに誘導している。いや。踊ってないか?
それにしても、こんなところに何しに来たのだろう。
追跡しつつ、話の続きを聞いてみた。
この際、はっきりと言おう。
ローデンの馬鹿王の子孫とか言ってた貴族の類友、としか思えない。
過去の栄光に取り縋り、無い物ねだりを繰り返す。そのくせ、自分勝手な価値観でしか物事を判断できない、哀れな人達。己を省みる事もなく、耳障りの良い話に耽溺する横着者。
腹が立つを通り越して、呆れ返る。
性懲りもなく聖者の遺物とやらを欲しがっているようだが、探しているのは別物らしい。
方向を見定めて、先回りしてみた。
「これかな?」
魚を捕まえる定置網の地上版、みたいな仕掛けがあった。特定の大きさの動物だけが逃げられないようになっている。ふむふむ。勉強になる。しきり板にはロックアントが使われていた。
最奥部には、ファコタがいた。囮籠を取り囲むように集まっている。
アレを集めるための物、なのだろうか。
彼らの設置した物でないとしても。
問答無用で撤去だ!
仕掛けを切り裂き、ファコタを逃がす。見上げなくていいから、さっさと離れる。ファコタも食べられなくはないけど、今日の獲物は十分ある。
幸い、わたしが近寄った程度ではアレを放出することはなかった。念の為に、ロックアントの消化液で消臭しておく。
ん〜。中途半端に罠を放置しておくと、再利用されるかもしれない。完璧に回収したら? いつまでも罠を探し回る。あんな人達に彷徨かれるのは迷惑だし。
・・・ふ。
これでどうだ。
いい仕事をした。
ファコタ罠を、透き通った冷たい壁の向こうに閉じ込めた。
あらん限りの力で作り上げた氷は、ちょっとやそっとじゃ溶かせない。手を出せない悔しさに涙するがいい。わーっはははははっ。
おじさん達は、まだ到着しない。
もう少し、細工してもいいかな。
ダグ王宮を出発して五日、[魔天]に足を踏み入れてから更に三日。
足は痛むし、食べ物もまずい。いくら聖者様に捧げる供物を得る為とは言え、我らがこんなところまで来る必要があるのか。導師様に対して、今まで感じたことのない疑惑を覚えるようになった。
だが、ここまで来て放置されたりしたら、それこそ魔獣の餌食となってしまう。ダグに帰還するまでの辛抱だ。
そして。「それ」は、こつ然と目の前に現れた。
「な!」
「一体何が」
「導師様。これは、何なのですか」
呆然とそれを見つめる導師様は、答えない。
「導師様!」
周辺を探索した騎士達が、それ以外の異常は見当たらないと報告があっても、まだ答えをくださらない。
やはり、こやつは我をたばかる気であったか。
「・・・ああ。そういうことなのですね」
我々の困惑を他所に、導師様は、うっとりとそれを見つめていた。
「どういう、ことでしょうか」
「これこそが、聖者様の残された福音なのです!」
これが?
王宮でも特別な部屋にしか使われないガラスの様に、どこまでも透き通った氷の塊がそびえ立っている。
氷。だろう。魔術師の一人も、そう言っている。
だが、氷ならば、雪も降らないような暖かい土地ではすぐに溶けてしまう筈。ここまで巨大な物を作り出す魔獣の存在も、聞いた事がない。魔術師は言わずもがなだ。欠片を作り出すことは出来ても、凍らせたままの状態を維持することは非常に難しい。
ならば、やはり聖者様の残されたものなのか。
「陛下、お下がりください!」
騎士達が警戒態勢を取った。
「何事だ」
「近寄る者が居ます。ご注意を」
「まさか、魔獣か?!」
この場に、生きた魔獣と相対した者など居ない。この旅で、既に騎士の半数は失われた。噂に聞くロクソデスならば、あと何人生き残れるのか。
「うわ。どうやってこんな物を作ったんだ?」
「坊主は下がってろって」
「[魔天]では勝手に動くなって言っただろうが!」
「痛てぇ!」
我らとは別の方角から侵入したらしい一同が近寄ってきた。
「そこで停まれ。近付いてはならん」
騎士達が剣を抜き、牽制する。
「は? あ、ああ。他にも訓練で入ってきてた班が居たのか」
「何のことだ。ここには我々が先に来ている。お前達は即刻立ち去れ」
「それはいいが。一つだけ教えてくれ。これは何だ?」
猟師らしき男達の一人が、それを指差した。
騎士達が、視線で我らの指示を乞う。
軽く首を振った。
「お前達が知る必要はない!」
「[魔天]で派手なことをされると、俺達が困るんだよ」
ため息混じりではあるが、至極真面目に断言した。
「知ったことか。とにかく、話せることは何もない」
騎士達は、まだ武器を手にしない猟師達に剣を向けて追い払いに掛かった。
「いいではありませんか。今こそ! 聖者様の福音が誰の物か、知らしめるべきでしょう?」
「「「「導師様!」」」」
「聖者様、の福音?」
「そうです! この奇跡! 雨にも溶けず我らの来訪を待ち続けてくださった。これを奇跡と言わずして何と言うのですか!」
ユードリは、内心で頭を抱えた。確かに、魔術で作った氷の寿命は短い。こんなばかでかい氷像を作れる奴など聞いたこともない。
だからって。
聖者様は四十年も前にお隠れになった。その間、俺達ハンターは何度もこの付近を行き来している。そして断言する。こんな物は存在しなかった。うわさになったこともない。
ダグのギルドハンターが所在を隠していたとしても、他の国の連中だって採取に来ているのだ。森で隠し事など出来やしない。
ご大層な根拠にならない根拠を延々と喋り続けるローブ男は、頭がどうかしているに違いない。
先ほどの彼らの会話を聞いた限りでは、そいつが音頭をとっているようだ。だが、同行している男達の身なりは、どう見てもローデン以外の国の高位貴族と護衛騎士。迂闊に手を出せば、まずいことになりそうだ。
一緒にロトスを追いかけてきた同僚に目配せする。最後尾のハンターが気配を消して離脱した。
あの元団長なら穏便にことを治められるだろう。一応は、貴族らしいし。面倒事は、偉そうな人に押し付けるに限る。
『我の眠りを妨げるは、誰ぞ』
不意に、遥か頭上から声が降ってきた。
同時に、目の前の氷が表面を波立たせる。
「おい! 下がるぞ!」
ユードリ達は、足手まといのロトスを庇いつつ氷の像から一定の距離を取った。
「お、おお。おおおおおお!」
一方のローブ男は、感極まった歓声を上げる。
「聖者様! 貴女様の下僕が参りました! どうか、お姿をこの目に」
『我に、下僕など、おらぬ』
ぞくり。
不快であることを感じさせる声、いや、生きているものとは思えない声色に、背筋が凍る。
いや。
いつのまにか、吐く息が白い。
「どうか! わたしを貴方様の配下にお認めください。わたしの全てを貴方様に捧げ忠誠を・・・」
『我は、この森に住まうモノ。聖者とは、誰ぞ』
「せ、せいじゃさまは、森を知る人。数多の盗賊を撃ち倒し、容易く魔獣を狩る、黒髪の、美女にございます!」
「我ら、ダグの住人にとっても大恩あるお方! どうか、我々の感謝と共にどうか福音を!」
貴族達は、口々に聖者を誉め称え、その口で福音とやらを願った。
『黒髪の、・・・ああ、我が友。儚き者。アレは、すでに天に還った。今は亡き者に、何を願う』
氷塊の周辺が、濃緑の木々が、見る間に銀色の霜に覆われていく。
彼らを守るべき騎士達は、謎の声が齎す重圧と金属鎧から伝わる冷気に身動きが取れない。だが、それに気付かないまま、貴族達は欲望に染まった目で、熱く見つめていた。
「我らにも、聖者様の恩恵を!!」
遂に、白いモノが降り始めた。
「・・・これ。何だよ。冷たくて、溶ける」
「雪、という。北峠やクモスカータ北部ではしょっちゅう見られる。だけど」
「[魔天]で、こんな・・・、まさか!」
ロトスの困惑に、ハンター達が小声で会話する。
「まさかって、おい・・・」
顔色の悪さは、気温低下の為だけではない。
本来、[魔天]に雪は降らない。それをねじ曲げる存在など、ある筈がない。いるとすれば、それは。
「[魔天]の、王」
「ご隠居に連絡だ。ここに来させるな!」
空は暗く搔き曇り、雪は次第にその量を増やす。
騎士達の警戒心を煽ってしまうが、やむを得ない。指笛で、緊急事態を知らせた。
ただでさえ森に不慣れな兵士を引き連れている。全員で掛かっても、グロボア一頭を相手に出来るかどうかの腕前だ。彼らが到着したところで、太刀打ちする間もなく全滅する未来しか見えない。
ここに居るのは、おそらくは[魔天]の頂点に立つ者。としか思えない。他に、思いつかない。
『浅ましき、者どもよの』
「な。何をおっしゃいます」
「我々は、誠心誠意お使えいたしております!」
『無用』
つい一刻前まで足元に溢れていた緑は、もう見えない。くるぶしまで白く埋まっている。
「これらの命などいくらでも捧げましょう」
「陛下?!」
騎士達から悲鳴が上がった。そう、貴族達は、騎士を怪物の生け贄に差し出すと言ったのだ。
『無用。命は、巡るもの』
「あ、ああああああっ!」
「そんな!」
「財宝なら、いくらでも差し上げます。ですから!」
白いモノに覆われた貴族達が、叩き付ける雪を受けて悲鳴を上げる。
『お前達など、要らぬ。立ち入ることも、許さぬ。疾く、去ね!』
「そんな! お待ちを! どうか、我々の誠意を!」
ごう!
一際激しい吹雪に、目を開けていられない。
「口元を覆っておけ。窒息するぞ!」
ハンター達は、ロトスを中心に覆い被さり、身体を張って強風から守った。
人目がないことを確認してから、変身して超特大の氷塊を吐き出した。次は、人型に変身して、ハンドバーナーを使った彫刻をする。夢中になって弄っていたら、工房にこもっている間に張り付いた肩こりがすっきりさっぱり解消した。ような気がする。
もう少し、ここも手を入れて、とかやっているうちに出来上がったのは、ドラゴンもどきな、わたしそっくりの氷の彫像。上半身だけだけど。それに、そのままかと言われると、自信はない。
だって、等身大の鏡なんかないし。手先の感覚だけで、ぺたぺたこねこねしただけだし。
おじさん達が近寄るまでは、『霧原』で隠しておく。目の前に、いきなり巨大建造物が現れれば、驚くだろう。でもって、頭のてっぺんにスピーカー術具を取り付けて声を響かせれば、二度びっくり。
お化け屋敷的ノリと雪祭り的インパクトが合体すれば、さぞや愉快な醜態を曝して、げふん面白い顔をするだろう、と楽しみにしていた。
ここまでは、いい。
それが。
何が、起きた。
わたしは何もしていない。なのに、喋っている間に、勝手に気温は下がるわ、雪まで降ってくるわ! 作り声とは思えない重低音になってるし?!
早々に会話を切り上げ、微調整に苦労しながら『昇華』で彫像を消す。勢い余って罠も分解してしまった。
だけど、おじさん達を巻き込むわけにはいかない。範囲を狭めたり、消去対象を限定したり、エフェクトを出さない様にしたり。追加術式を組み込んだ方が発動が楽だったのは、良かったのか悪かったのか。
証拠は隠滅した。
これで一安心。と言う訳にはいかない。
騎士さん達の容態が心配だ。短時間とは言え、気温は氷点下二桁台まで下がった。シモヤケを通り越して凍傷一直線コース。鎧が皮膚に張り付いてなければいいけど。
絶対に手当が必要だ。
でも。
こちらにも寒さに身動き採れないヒト達がいた。正確にはヒトではない。安全ロープよろしくわたしと木の梢を合体させていた一葉さん達は、ぎっちぎちにわたしにしがみついている。
暖をとるつもりなのかもしれないけど、中身が色々と漏れ出そうなんですけど〜っ?!
『温風』で、勘弁して!
そうそう。もう一つ、安全策を打っておこう。
不意に、強張っていた体が軽くなる。
頭を上げれば、つい先ほどまで雪に覆われていた場所に、白い物は見当たらない。あの、巨大な氷の影も形も見当たらない。上着に染みていた雪解け水も、髪を凍らせていた氷も、なにもかも。
「・・・どうなっているんだ」
夢、だったのか?
がちゃがちゃがちゃっ
大きな音に驚いて振り向けば、騎士達が倒れ臥していた。
騎士だけではなかった。[魔天]の王に詰め寄っていた男達は、揃って地面に倒れている。
彼らの周囲にだけ、酷い低温に曝された痕跡、萎れた草花がその身を曝していた。
などと、観察している場合じゃない。
「周囲の索敵は、誰が行く?」
「俺一人でいい。ここを警戒していてくれ」
「安全確認ができたら、応援を呼ぼう」
「安全って、[魔天]のどこをとっても安全とは言えないぜ?」
「さっきよりはマシだろうが!」
緊張から解放された反動なのか、皆、ポンポンと軽口を叩く。そうでもしていないと、あの怪物が、いつまたどこから現れるか気が気じゃない。
「じーさま達と合流した方がいいんじゃないか?」
「あいつら、放置しておけないだろ?」
「だがよう。出てけって言われて、素直に歩くタマとも思えん」
「巻き込んでくれるなって、怒るべき。だよな?」
「賠償金を請求すっか」
「財宝持ってるって、言ってたよね」
漸く、ロトスも口を開いた。
「やるなよ?! それやったら、盗賊どもと同じだぞ。メイリスさんに言いつけるからな」
焦ったボコスは、ロトスの台詞を遮った。
「あんたこそ。いたいけな子供に剣を向けてたじゃないか」
いつまでも呆けているなら殴るしかないかと思っていたが、なんとか正気付いてくれたようだ。
「そこまでにしとけ。二人とも、騎士さん達の鎧を脱がせるから、手伝え」
「うん!」
体を動かしていれば、恐怖の記憶から気を逸らしていられる。ロトスは、指示に従って手足を持ち上げ、留め具を外していく。
「武装解除か?」
ボコスは、不満気な顔をした。
ハンターや傭兵達が愛用する革鎧と違って、金属鎧は重い。その上、相手は気を失っている。全員脱がせるとなると、相当苦労することになる。武器を取り上げるだけでなく、そこまで手を掛ける意味が分からない。
「違うって! 顔色がおかしいだろうが。体を楽にさせてやらないと」
「ハンターってのは、そこまで気にしてやるものなのか?」
「先輩が言ってたんだよ。賢者様は、森で遭難しそうなハンターを助けていたって。他にも、熟練者も知らないことを、気軽に教えてくれていたそうだ。盗賊だって、捕まえはしても重傷者には手当をした。そう言う人だから、俺達は、賢者様を尊敬し、崇めもしている。ってな。オヤジやギルドマスターが率先して唾を飛ばしながら言うんだぜ?
ま、それはともかく。俺達は、少なくとも俺は、賢者の名前にすがっているこいつらと同じにはなりたくない」
「それに、放置してたら、あの怪物にどやされそうだ」
「同じ場所に居たのを見られているんだ。関係ないって言っても、認めてもらえるとは思えない。今度こそ、俺達も氷付けにされるぞ」
ぴゅぴぃ〜〜ぴぃ
ラバエナの口笛が聞こえた。
「危険種も居ないみたいだな。助かった」
「あれに怯えたのかも」
「だとしても。いつ戻ってくるか判らん。急ぐぞ」
別働隊に付いているハンターに向けて、合流を促す合図を送った。
程なく、ローデンの兵士達が現れた。
「ロナ殿はおられるか?!」
「いや。そっちにも来てないのか」
「合図には気が付いた、と思うけど」
ユードリは、以前、ロナが指笛を使ったことを知っている。実際には、笛を鳴らしていたのだが。至近距離で聞いたら、あまりの音の大きさに耳を覆ってしまった。
ではなくて。
「むう」
豪放磊落な元団長が、渋い顔を崩さない。
「騒ぎを嫌って隠れてるだけですよ。きっと」
「そ、そうそう。姫さん捕まえた時も「すぐ帰る」ってそればっかり言ってた。よな?」
ラバナエとユードリは、森で負傷したレオーネを背負ってわざわざ届けた上、なんだかんだ言いつつ森の外まで送ってくれた時のことを思い出していた。
「まるで、賢者様みたいだね」
「え?」
「だって。ユードリさんがさっき言ってたじゃないか。ロナねーちゃんも、賢者様を尊敬してるのかな?」
「そうかもな」
「それにしちゃ、口が悪すぎる」
「行動で示している。とも言えますぞ」
元団長は、ななしろの弁護をする気らしい。
「オヤジといい勝負だよな」
「言いつけちゃおうっと」
「やめろロトス!」
「そうですぞ? 女性に対して失礼というものですぞ」
「・・・そうだった」
ハンター達は、ななしろが女性であることをすっかり失念していた。
「親分は、ちっちゃくて可愛くて、でも誰よりも男らしい・・・」
ボコスの台詞が小さく萎んでいく。
「だぁれが、男らしいって?」
「ねーちゃん!」
「ボクは、君のねーちゃんでもないっ」
「悪かった親分!」
ボコスの頭は、ななしろの小さな手に鷲掴みにされていた。
「親分でもない!」
「痛い痛い痛いぃ〜」
悲鳴を上げるボコスに、誰も動じない。気配を悟らせずに声を掛けてきた事に驚いて、声が出せなかっただけ、とも言う。
「・・・で。それは、何だ?」
「ゆーはんだけど。要らなかった?」
すっかり日の暮れた野営地に現れたななしろは、背中一杯に動物の死骸を背負っていた。
#######
[魔天]の気候
西側平地 温帯雨林から亜熱帯ジャングル
南北山脈の麓付近 温帯草原
東側平地 温帯草原と温帯




