92.10歳
そして、5年後、俺もずいぶん大きくなった。7歳。体高は2メートル弱。ルドルの家には入りきれなくなったので、仕方なく認識阻害をかけて庭でティータイムを過ごしている。
変身は成長を阻害するのでお許しがでないんだ。
ま、俺自身も、前代未聞の小さいブラックドラゴンっていう二つ名は頂戴したくないので成長の為に我慢している。
最近、3歳年上のクラスメイトは人型に変身できるようになってきている。マックもアルムスも人型になった。人型になれた時点で初等園は卒業となって中等園に行ってしまう。人型が解禁できない俺はクラスメイトがどんどん減っていって取り残されてしまう。最後の一人が人型になったら学校は退学することにした。
ファイアドラゴンの女の子が最後の一人になってしまって、二人だけのクラスだ。
「陛下が居てくださって、よかったです。私ひとりじゃ、悲しくて。どんなに魔力を込めても人型になれないし、このまま変身できなかったらどうしたらいいのでしょう」と、彼女は悲嘆に暮れている。
側近たちに話を聞くと、変身できないドラゴンはいないそうなので、取り越し苦労だろう。だが、いくら世話係がいたとしても、最後の一人は嫌だろうな。
でも、ドラゴンが頑丈すぎて、人型になりたてほやほやの学生は、しっぽにふっとばされ、足で踏まれと、怪我人が続出するため仕方ないそうだ。
いくらすぐに回復するとはいえ、血まみれの教室は嫌だし、友達に踏みつぶされるって、トラウマ案件だわ。
最後の女の子は、授業中に突然人型になった。
初めての人型変身は寝ている間というのが一般的らしいので珍しい。最初は魔力の調整が不安定で服は魔法で調達されない。
そう、ということは、裸!
「あ!人型になれた!」と喜んだ瞬間に、
「きゃ~~~~~!見ないでください!」と大声をあげた。
世話係は陛下の前で粗相をしたと、真っ青になっているが、それより、服だしてあげて!
絶世の美少女に変身した彼女は、鏡で自分の姿をみてご満悦だ。
10歳まで自分の人型の顔が分からないまま大きくなるって不思議な感じだと思う。俺も5年間変身していないし、凛々しくなっていたりしないかなぁ?
俺の花の幼少期が、変身しないまま終わってしまう。前世の成長を踏襲するなら、少年期に入ると俺の見た目は凡人になってしまうのに。
この世界の神様も凡人って見た目だし、力があると美しいなんていう、ラノベの魔族にありがちな設定は、残念ながらない。
でも、竜族は大抵美男美女だ。さあ、俺にワンチャンはあるのだろうか?
ちょっとだけ3年後に期待する。
そして、いよいよ、俺の10歳の誕生日!
側近とロイドが私室に集合していた。人型解禁だ。
「みんな、あんまり期待しないでよ。俺って本当に、小さい頃はあんなに可愛かったのにって言われて大きくなった口だからね」と、がっかり予防の言い訳をして変身した。
鏡を見る。うん。竜族の美男エッセンスはどこにも見当たらない。純粋に前世の陽一(10歳)だ。違いは黒角があることだけ。
「まあ、人族のソウ様の姿が16歳の頃の姿だとおっしゃっていましたけど、10歳の今もほぼ同じですのね。驚きました」とサリアは変な驚き方をしていた。
ゴツくなりにくい日本人なんだよ。成長しても子供っぽいままという未来を指摘されてしまった。
でもドラゴンになったらひと際デカいから気にしない!




