9.アオハルか。
ロイドに、今日は、城内の5階より上ならどこを見てもいいと許可をもらっている。
どうして、城の主の俺がそんな許可を取っているかって?それは俺が恐怖のブラックドラゴンだからなのだ!
事情を知らない、周りの人からしたら、3歳くらいまではブラックドラゴンとはいえ、まだまだ赤ちゃんだと、そこまで恐怖に感じなくていいはずだったそうだ。だが恐るべきスピードでしゃべりはじめ、飛びはじめた俺は、いつ魔法攻撃をぶっぱなして暴れるようになるのかと恐れられているらしい。
可愛いと怖いとのコンボで城内はプチパニック中だと教えられて、俺はあまり我がままを言わずに慎重に行動しているんだ。
『ぼく、わるいスライムじゃないよ』のドラゴンバージョン実践中という訳。
と言う事で、しっかり対応できる者が配置についている場所をあらかじめ用意して、『だから安心ですよ』とアピールしている訳だ。今日はその場所が5階以上になったという訳。徐徐に範囲を広げちゃうぞ!
それらの対応にてんてこ舞いのロイド達は、養育係だ側近だと張り合っている暇もなく、ひたすら調整に走り回っている。
いいねぇ。俺という難物を前に、いがみ合っていた者たちが一緒に奮闘して駆けずり回っている。青春物語か。平和だな。
5階以上、と言う事は、もちろんこの城はそれ以上にデカい。10階建てって言うけど、それ以上に大きいと感じるのは、俺が大人のドラゴンになって城を出入りしてもいいように全てが大きく頑丈に作られているからだ。偶数階のバルコニーはヘリポートみたいになっている。
俺だけはドラゴンのままで城郭内を飛び回ってもいいんだって。まあ、今までは、誰も迷惑だって言えなかっただけだろうけど。
室内は流石に人型サイズ。でも最上階の10階はドラゴンサイズにに作られているというから、早速見に行ってみた。
「うん、デカいね」と隣にいたカマラテにシンプルな感想をもらした。
「そうですね。我が君以外の者がドラゴンに戻ってもこのサイズは持て余します」
巨大なクッションや高い天井、恐ろしいほど布を使ったんだろうなと思わせる重厚なカーテン。
「ここって、頻繁に使ってたのかなぁ」
「ここは寝室としての利用のみだったと聞いています。何代か前の黒龍王様が、寝る時はドラゴンに戻りたいとおっしゃってここが増設されたと言われています」
「へぇ~。じゃあこのクッションはベッドなんだ。ふかふかそうだけど、今の俺には大きすぎて寂しくなるね」
「そうですね。まだ少々早いようですね」と言ってほほえましく見られた。
いや、だって、30メートル四方くらいのクッションの中央にポツンと寝ている40センチの俺って、寂しくない。心が冷え冷えするよ。
見ている方も、きっとなんか哀れに思うと思う。心が小市民だからか?大富豪とかだと、大きければ大きいほど、豪華なら豪華なほど安眠できたりするんだろうか?
それにしても、このサイズの部屋にぴったり合うように成長するのに、人型でチマチマご飯を食べていてもいいんだろうか?
なんかこう、とてつもない大きな獲物をガツガツ丸ごと食べるとかしないと大きくなれなくない?
「ねえ、カマラテ。ドラゴンって人型でご飯を食べ続けても大きいドラゴンになれるの?」
「!?考えたこともありませんでした。時期がくれば人型になり、人型で成長している間は、ドラゴン型も比例して大きくなりますから」
「確かに、ドラゴンの大きさが人型の食事量で支えられているなど不思議ですわね」と、サリアがやってきて言った。お昼ご飯に呼びに来てくれたらしい。
意味はないかもしれないが、沢山食べるぞ!とモチベーションマックスで一日中やたらと食べた俺だった。




