87.イレギュラー
翌日、帰ってきた側近たちはボロボロだった。魔法で服を修復する力さえ残っておらず、よろよろと飛んで帰ってくるのが精いっぱいのあり様だった。
「側近って、めっちゃ強いんじゃなかったの?そんなにボロボロになるなんて!」と驚く俺に、
「我が君、お言葉を返すようですが、わたくしたちは大人数の竜族を相手取って戦う訓練なんてやっておりませんもの」とサリア。
そりゃそうか、俺のぶっぱなす魔法の肉壁となる危険はあっても、味方である竜族が束になってかかってくる危険は想定外か。
「我が君と、半年以上蜜月旅行に行って楽しくやっていたお前らには、これくらい当然だといいながら、相当な人数がうっぷんばらしに集合しておりました」
まじめな顔でぶっそうな事をいうカマラテ。
「蜜月旅行って何?」
「さあ、よくはわかりませんが、皆、そのように言いながら魔法をぶっ放してきました」
「我が君と仲良く一軒家で暮らしたのが相当うらやましかったのでしょう」ティルマイルはボロボロでありながらも、得意げだった。
なんだかんだ言って、俺が大好きな竜族だ。しばらくは大人しく、王都でしっぽアピールでもして、皆を癒してあげよう。俺のしっぽ、無敵だから。
だが、王都にただ居るだけってのもなぁ、という訳で、やってきました初等園。お久しぶりのヤノス先生。事前に連絡をとると、いつでも来ていいと許可が貰えたが、クラスメイトは学年が一つ上がって2年生になっているので、そちらの教室へ行くように言われた。
「マック!アルムスも、久しぶり!」と言って、クラスに入って愕然とする。
「ななな、なんで~~~!!!?」
驚いた、そりゃ驚くよ、みんな大きくなっている。唯一のストレートドラゴンのマックは長くなっている。
「なんで、みんなそんなに大きくなってるの??俺ちびっちゃいままだよ!?」
「陛下、お久しぶりです。今は成長期ですから、大きくもなりますよ……」とマック。言葉尻がしりつぼみになったのは、明らかに俺が成長していないのが見てとれたからだろう。
入学の時に4歳児のみんなと会ってから一年と少し。この差はなんだ?俺は0歳児だったんだから成長は彼らより早いはずなのに。
もうすぐ2歳の誕生日を迎える俺。絶対に異常だ。
「黒龍王ってこんなもの?」とサリアに聞く。
「いえ。城の記録には、通常のドラゴンより早く大きくなる傾向にあるとございましたわ。しかし、我が君は何分イレギュラーがつまっておりますから、成長もイレギュラーなのかと」
「そうです。そもそも、普通ですと魔法はおろか、いまやっと飛べるようになった頃合いです」とティルマイル。
「やっと、飛べる?2歳ってそんな感じなんだっけ」俺の周りに赤ちゃんドラゴンが居ないので赤ちゃんの認識がふんわりしている。俺はもっと自分のイレギュラーを認識すべきか。
だが、チートのパワーのイレギュラーは受け入れられても、成長が遅いってイレギュラーは受け入れがたい。
休み時間に何食べているか聞き取り調査をしよう。なんて考えていたら、恐ろしく進んだ授業に全くついていけなくって、休み時間は側近とクラスメイトによる詰め込み補講の時間となった。
補講を受ける黒龍王とは、これいかに。




