75.トップ会談
信者たちは、陳情書をよりわけて、自分たちに益のなさそうなものは捨て置き、益のありそうなものは、それを利用して、自分たちの支配下におくとか、金を巻き上げるとかの算段を始めたようだ。
ロイドは、難しい顔をした後、
「他種族の者が皆このような考え方をするとは思えませんが、あやつらには、なんともあきれ果てました」と言って、うんざりした顔を見せた。
権力や財力は急に転がり込むと碌なことにならないという教科書のような人たちだったようだ。
「そこで、そろそろ俺の出番って訳だね。明日からみんなが仕事復帰できるように、何をすればいい?セリフとかも決まってたりする?」
「セリフまでは決まっておりませんが、我が君には、檻の中で一生を過ごすか、城壁の外へ放り出されるか選べと迫っていただきたい」
「ふ~ん。簡単な仕事だね。でも、その二択って、絶対城壁の外を選ぶんじゃないの?」
「さあ、どうでしょうかな」とニヤニヤするロイド。今日の彼の表情筋は忙しそうだ。
早速、ドラゴンの認識阻害をかけて、飛び立とうとすると、
「我が君、おまちを!」とロイドに止められる。
「??なに??」
「申し訳ございませんが、通常のサイズでお願いいたします」
「……。わかった」見えを張った体高1メートルサイズをあきらめて、通常サイズの50センチに術をかけなおした。
ビリーヤの肩がヒクヒク動いている。ちょっと恥ずかしかったけど、きっと理由があるはずだ。
気を取り直して行ってきま~す!
信者たちは、正面玄関付近のソファーでなにやら話し合いをしていた。
自分たちではまったく動かなかった扉が、そよ風に押された程度の軽さでフワリと開くのを驚愕の目で見ている。
そこを側近に囲まれながら、入ってきたのが、ちっちゃいミニドラゴン。
ああ、彼らの考えることが、手に取るように分かる。
こんな小さなドラゴンがこの世界の支配者だと?俺たちでも勝てそうだ、なんて考えているんだろうなぁ。
「俺が邪魔なんだって?」俺ははじめましての挨拶も抜きに、聞いてみた。
「邪魔とは申しません。ただ、この世界は神より我らにお任せいただけたので、退場いただきたいと言っております。ここは、側近の方々を抜きにして、トップ会談と行きませんかな?」
この人たちも、まどろっこしい挨拶は嫌いなタイプのようだ。欲望も隠せないタイプのようでもある。側近がいなければミニドラゴンなど、敵では無いと顔に書いてあ。
「我が君、それは」とティルマイルが口をはさんだが、
「いいよ、いいよ。みんな帰っていて」と外へ追いやった。まあ、どこかで監視カメラの魔法を使って見ているだろう。
トップ会談というわりには、信者たちは全員揃っている。全員トップなの?まあいいけど。
「それで、何が話した
まで言ったところで、全員からの強烈な風の魔法が襲ってきた。かまいたちってやつ。
いやいや、どうする?これって、俺には全く効かないよ。でも死んだふりとかするべき?瞬時に頭をフル回転させるも、いいアイデアはでない。そもそも黒龍王が死ぬって、どうやって?最後は、光になって空に昇っていくってファンタジーな存在で、傷もつかない丈夫さなのに。
う~ん。と考えて、とりあえず、首がスパッといく感じに見せて倒れてみた。




