74.観察結果
信者たちを十分に堪能?した竜族は、そろそろ仕事場所を返してほしいとなったようだ。ロイドが、例の悪代官風な笑顔を浮かべながら、
「我が君がいらっしゃる週末まで待っておりましたが、少々この後の展開が心配になるほど、マイナス点を加算し続ける輩達でございましたね」と言った。
「いやいや、それ心配している顔じゃないから。それにしても一週間で積りに積もった悪行か。俺が毎日ここにいれば、数日早くストップをかけてあげられたかもしれないなぁ。ま、いいか。で、何をやらかしてたの?」
「東領では全く映像をご覧になっていませんでしたか?」と、少し驚かれた。
「俺って勤労青年なんだよ。平日毎日働いているの。くだらない大人の、くだらない映像は、週末の娯楽にしかならないよ」
「左様でございましたね。未だに労働している黒龍王様という存在が、理解はしているのですが、脳の処理が追い付いてこないと申しますか、なんとも」
口ごもるロイドに、それはいいから、信者のことを教えてくれと、先を促す。脳がバグるのは、時間をかけて慣れてもらおう。
まずは、自分たちの魔力でも開けられるドアを片っ端からあけて、権威付けになりそうなものを一か所に集めたようだ。
最上階の窓からの侵入や、軍府の階に上る階段扉の開閉はあきらめて、階下に降りていきながら物色した物を、正面玄関の一角に、夜逃げするように積んである。
玄関の扉は結局開けられず、裏口から出入りをし始めたようだが、各領の棟に行って、偉そうに、教会の部下を連れてこいだの、料理人を手配しろだのと命令を始めたそうだ。
「我ら竜族は既に管理者から手を引きましたので、皆様だけの力でどうぞ、おやりになってくだい。と、突っぱねましたら、聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせてきました。私は初めてのことゆえ、しばらく理解ができなかったくらいです」
「ちなみにどんな風に言われたの?」
「我々は神から直接この世界を託されたというのに、それに非協力的とは、貴様など、地獄落ちだ。犬畜生にも劣る卑劣な所業で、神に見放されるだろう。と、こんな感じでした」
「凄いね~。自分たちより明らかに強い相手によく言えるね。それ程、神の後ろ盾って、自信になるんだね」
「我が君は、神から直接依頼されましても、気負いもなく過ごされていますから別格でございますわね」とサリア。俺をほめることに関しては平常運転だ。
俺の場合、すでに権力も、物理的な力もあるからね。傲慢になる必要がない訳だ。そこは一緒にすると可哀そうかもしれない。
「まあ、しかし、我々に対しての傍若無人なふるまいは百歩譲って良しとしても、陳情書を自分たちの利益になりそうなものだけ、より分け始めたのには唖然といたしました」
「あの者たちでも、読むだけは読んだのですね」ティルマイルも既に、あいつら嫌いってオーラを隠さなくなっている。
「読まないほうが良いくらいでしたがね」とロイド。読まないほうが良かったってどういうことだろう?
一週間という短い期間で何をそんなにやらかすことがあるのかなぁ。




