68.とんでも解釈
なんと、信者さん達、
「神が、我らに!直接お言葉をくださった!!!」と大喜びだった。
どうしたら、あの邂逅に震え上がらずにおけるのか?不思議でならない。
「神は我らに、この世界を愛するならば、この世界は我らにくださるとお約束くださった!」
「神、ご自身の希望より、我らの希望を叶えてくださるとおっしゃった!」
「……独特の解釈だね。神様の言葉って、そんなんだった?俺の耳がおかしかったのかな……?」
「いいえ、我が君。神はこの世界に異を唱える者たちよ、去れ。と、はっきりおっしゃいましたし、神の願いより己の願いを優先させるつもりか?と脅していました」
「私にもそう聞こえましたわ。なぜ、あのようなとんでも解釈になってしまうのかしら?」
俺達が物陰で、ヒソヒソやっていると、神様が帰ってきた。
「ただいま~。どうやった。俺、格好良かったやろ~。ほれてまうやろ~」と楽しそうに話しかけてくるので、現状説明をしておいた。
「まじか~。神様もビックリな展開やな~。もっとはっきり、きっぱり言わなあかんかったんか~。あ、ちょっと上司に呼ばれてもうたわ!あと、宜しくたのむわ~」と去って行った。
「上司に呼び出されるなんて、神様業も世知辛いものなのですね」とカマラテはしんみりしている。
そこじゃないし、いや、そこも気になるけど。
今は、この厄介な人たちを丸投げされた事の心配をしようよ。
取り敢えず、俺達は一旦帰ってルドル達の知恵も借りることにした。
早朝というか深夜の出発だったため、地上に出てもまだ薄暗く人通りは少ない。
「お帰り。早かったな。音の原因は分かったのか?」とセルゲイが出迎えてくれた。
「おはよ~。セルゲイ達こそ朝が早いね。心配して待っててくれたの?」なんてほのぼのした会話をした後に、早速、今日の出来事を報告した。
ルドルは神妙な顔をした後、
「それは厄介なことですね。神様の言葉を曲解して受け取るあたり、我々が何をいっても始まらないでしょう」とため息をついている。
「でしょ!神様も宜しく~。みたいな感じで帰っていくしさ。俺あの人達と会話出来ると思えないんだよね」
「こういう時は年長者の知恵を借りるのがいいのではないでしょうか?」というプープルさんの発言で、みな一斉に700歳越えのサリアを見る。
なんか見た目が30代くらいに見えるし、思考回路はたまにぶっ飛んでいるし、あまり年長者の風格みたいなものは感じないんだけど。
「いえ、サリアさんではなくて、ロイド宰相ですとか、他にもお城にはお歴々が揃っていらっしゃるのでしょう?黒龍王を蔑ろにする輩がいるとなれば、いくらでもお知恵をかしていただけるのではないかしら?」とプープルさんが補足する。
「それは勿論、城内には狸も狐も揃っておりますわよ。でも、このような事があの人達に知られたら、主都一つ吹っ飛ぶわ」
「過激!でも軍府の大将たちならやっちゃいそう」俺は素直に、ありえそうだと同意した。
う~ん。『恐怖の黒龍王』の俺のほうが、理性的とは、これいかに。




