65.グーとパー
俺は夕飯の席で、他のメンバーに今日の出来事を話して、俺も週末に調査に参加するから、それまで作戦会議に付き合って!とお願いした。
「勿論付き合いますよ。でも、研究所はいつお休みしてもいいんですよ。私だって、実験する日以外は、研究所に行かずにここで思索してもいいくらいなんですから。ソウ君は好きに動いてくださいよ」とルドルは微笑みながら言ってくれた。
「ありがとう。でも、ルドル先生に相談があるって来るお客様も多いでしょう。やっぱり研究所に居たほうがいいよね。俺も少しは役に立てるはずだし」
「それは勿論そうですよ。でもね、雑用はともかく、アイデア出しは、ワクワクすることを見つけた先にしか発見できないものがあるのも事実ですよ。研究職なんてそんなものです。まあ、ですが、ソウ君たちだと、週末だけでサクッと解決するのでしょうから、平日は作戦会議だけで楽しみを先延ばしにするのもいいのでしょうね」
「そうねぇ。竜族の方に調査を依頼する前の、予備調査を竜族の王様にお願いすることになるなんて、かなり面白い話だわ。しっかり楽しみましょう」プープルさんは、ルドルとは違った方向の楽しみ方を見つけたようだ。
でも確かに、黒龍王が予備調査か。身分がバレたら、受付のお姉さんがひっくり返るな。
まずは情報が必要なので、側近達で平日の間に、聞き込みをしてきてもらうことになった。
ティルマイルがいるので、安心して任せられる。
俺の側近達は、俺が生まれる前から決まっていたから、俺が決めた訳ではない。では誰が決めたかと言うと、宰相府、行政府、軍府の合議で人選し、宰相のロイドが最終決定をしたらしい。
自分達より上の身分を決めるって複雑じゃないのかな?
あ、でも首相や大統領なんかもそうか。自分達のトップを自分達で決めて、指導者の立場を与えるんだもん、いっしょかな。
とってもバランスのとれた4人が集結しているのを見ると、人選した人のセンスが分かる。ロイド、凄いよ。
養育係に自分をねじ込んで来たりするから、あんまり実感がわかない時もあるけどね。
週末来た~!
楽しみにしていた調査日だ。平日にしっかり聞き込みをしてくれたので、異音がするのは町の東側の一画と、そこからちょっと南下した2カ所。どちらも同じような音がするらしいので、発生源は同じかもしれない。
地図上では繋がっていないので、何かがおこって繋がったかもしれないと予測を立てて、両側から進むことにした。俺とティルマイルとビリーヤは南側。男の子チーム。
まあ、「グーと、パーで分かれましょ!」という定番のチーム分け方法を伝授して、やってみたら偶然こうなったんだけどね。
竜族は男女で力の差は無いので問題無し。
サリアは目に見えてがっかりしたけど、それは俺と同じチームじゃなかったから。自分のグーを見つめてしばし立ち尽くして、その後、
「我が君。我が君は、派遣屋では記録係を任命されていますから、こちらにも記録係としていらっしゃらないとおかしなことになるのでは?」と悪あがきしている。
「モックに頼んでみる?」と言うと、テーブルを片付けていたモックがビクッとした。冗談だよ。安心してね。




