64.お仕事決まりました
さすが主都の派遣屋、特技を見せるのは裏庭でササっと、ではなく、演習場があった。初等科にあった競技場より、観客席が少なく簡素なイメージだけど、中央の演習場所はプロ仕様だ。
「ソウ様、保護の魔法がしっかりかけてあるのが分かります。しっかりした作りです。ちょっと安心しました」とホッとしているのがカマラテだ。
加減を間違えて壊す確率が低くて安心したのだろう。全力を出し切って黒龍王を抑える仕事についているんだもんなぁ。加減ってなに?美味しいの?くらいの事だろうに、頑張ってミニマムな魔法を練習してくれている。俺の我がままに付き合ってくれてありがとう。
「一時、東都では、竜族と手合わせをするというイベントが流行りまして。その時の名残で演習場や競技場は保護魔法が強固なものになっていると聞いたことがあります」とティルマイル。
「流行り。すごいな。竜族もよく付き合ってあげましたね。手加減難しかったでしょうに」とビリーヤは驚いている。
「その頃は、死んでも文句は言わない的な誓約書を書いたら、結構なんでも許可がおりた時代だったようです。今は聞きませんから、廃れたのでしょう。興味があるなら調べておきましょう」
「そうだね。俺、経緯が知りたいな。きっと面白い変り者の話が沢山だよ」
「そうよね。ファイアドラゴンは勉学、研究に重きを置いていて、物静かなイメージなのに、一度探求心に火がつくととんでもない事をするわよね。きっと竜族と他種族が戦ったらどうなるのかという研究をしている者の話が出てくるわね」とサリアが揶揄っている。
そんな話をしているうちに、4人の順番がきた。
ティルマイルから順番に、いつもの彼らからすれば、子供だましのような魔法を披露していく。会場がどよめいているので、これでも凄いんだろう。
「さあ、後は、仕事を待つだけなんですね。どんな仕事が来るかな?」とビリーヤはワクワクしている。
ティルマイルはコソコソ受付で何かをやっている。
そうして決まったのは、なんと俺達5人の仕事だった。
地下迷宮と呼ばれる古からある地下道から最近変な音が聞こえるので調査して欲しいと依頼が来ているんだって。首長である竜族に上申するので、その前に、場所と音のする時間帯の特定をするというお仕事。4人は4属性の魔法がそれぞれ使えるし、調査の記録係が人族の俺って訳。
俺は引率だから、受付していないのに?と思ったけど、ティルマイルがニッコリ笑っている。きっと俺をこっそり登録してくれていたんだろう。
「じゃあ、早速行ってきます!」と張り切った俺に、
「待って!準備して!怪我のないように、しっかり準備してから行って!妖精族のお友達がぜひ一緒にというから、君をメンバーに入れたけど、人族は怪我が心配だから、通常現場に出さないんだからね!」と受付の人に注意されてしまった。
「分かりました!しっかり準備してから、行ってきま~す!」といって派遣屋を後にした。
側近達はクスクス笑いながら後をついて来ている。
「よかった!ありがとうティルマイル。俺も面白そうな仕事に一緒に行けるよ!」
「よかったですね。我が君のお休みは今日だけなので、夜までに終わらせないといけませんね」
「でも、この依頼、2週間以内に報告すればいいみたいですから、楽しいことはゆっくりやったらどうでしょうか?我が君も、今日のような臨時のお休みじゃなくて、普通の週末のお休みなら、二日間かけて出来ますよ」
「それいい!折角の楽しい依頼だ。じっくり楽しもう!今日はルドル先生達も巻き込んで作戦会議だ!」




