40.妨害担当
朝食は普通に肉と果物だった。ドラゴンの定番中の定番だから誰からも不満はない。いいよ、いいよ、このままの感じで日中の予定を進めよう!
自分が最初の提案者なだけあって、せっかくなら楽しい思い出を作って欲しいと若干焦っている俺だった。提案しただけで詳細は全て教師任せなのだから俺が焦っても仕方ないんだけど、こればかりは性格かな。
「本日は、宝探しではなく、スピード勝負とします!」とヤノス先生が発表した。
「成体の人型対子どものドラゴン型で、子どものチームには陛下がいらっしゃる。いい勝負となるでしょう」と言い切られてしまっては何処からも反論は出来ない。
「全員で宝玉を守りながらゴールを目指してもらいます。宝玉を落としたら拾ってから再スタートです。相手への妨害もありですが、宝玉を叩き落とすことは出来ても、奪って逃走することは出来ない。よろしいですか?それでは作戦会議の時間を15分として、15分後に鐘を鳴らします。それを合図でスタートです!」
なかなかハードな二日目だ。
ヤノス先生から宝玉を渡されたマックは、
「さて、どのような作戦でいきますか?普通に飛んでも湖と、昼食の用意されている大木、2カ所のチェックポイントを通過して戻ってくるのに6時間ということです」といって俺を見た。
「そうだな。俺は頑丈だから宝玉を持って突っ切ってもいいけど。そうなると大人が本気で向かってくることになると思うよ」
「手加減なしの大人の攻撃か。攻撃される側になるとちょっと怖いな」と脳筋のアルムスさえ躊躇している。
「それじゃ、宝玉はマックに任せて、防衛は俺以外の全員で。相手への妨害は俺が一手に引き受けよう。全然攻撃とかしたことないからどんなものかやってみるのもいいだろう」と言うと、皆の顔が引きつった。
「……ちょっと怖い事を聞いてしまった気がしますが、私達は前だけ向いて進みましょう!」
「「はいっ!」」マックの呼びかけに全員の声が揃った。
その作戦会議を聞いたティルマイルは青い顔をして運営の教師の方へ飛んで行った。が、時すでに遅し?無情にも鐘はなった。
「じゃあ皆気を付けてね!軽く相手を妨害したら追いかけるからね!」とクラスメイトを送り出す俺。
世話係チームは、最速スピードの出せるサンダードラゴンが三人で飛び出していった。あの人たちが宝玉を持っているんだろうな、とあたりを付けて、一気に追いつき、頭上からしっぽでウィンドカッター的な攻撃をしてみた。
物凄い轟音を立てて地上にめり込んでいった三人。
「あれ?これダメなヤツだったんだ」違う攻撃はなにが出来るかなと考えて、その他のメンバーに火球を打ち込んだら、辺り一面が焼け野原になってしまった。
「我が君。恐れながら、このイベントをゲームとして成り立たせるのなら、お力を9割ほど絞っていただく必要があるかと存じます」
「もしくは大人全員ドラゴンに戻らせていただいて我ら側近も世話係チームに加えて頂くとかですと、ギリギリ勝負になるかもしれません」
サリアとビリーヤは苦笑いで、対策を教えてくれた。
「そっか、俺って、滅茶苦茶強いんだったね。軽く打ったつもりだったんだけどなぁ」と反省した。
「あれが、軽く……」カマラテは焼け野原を見てつぶやいていた。




