39.バーベキュー
そして、翌月、12人全員参加で、オリエンテーション合宿が始まった。何故か、引率の教師が10人もいるが、これは完全に『黒の森ツアー』のおのぼりさんだろう。そんな役目必要か?っていうふんわりした仕事を無理やり作って参加している。まあ俺には関係ないからいいけどね。
「それでは、はじめ!」とヤノス先生の号令で、宝探しが始まる。
俺達は宝の地図をのぞき込み、作戦を立てる。
世話係達も少し離れた所で作戦会議をしている。うん、ワクワクして来た!大人達には負けないぞ。
ちなみに、側近の4人は、世話係チームに入らず俺の側にいる。ただ、見守るだけで手は貸さない約束だ。
「陛下、やはり、大人とはいえ人型を相手にする訳ですから多少手加減は必要ですかね」とアルムスが真剣に聞いてくる。
「さっきの説明聞いてなかったの?肉弾戦とかないから、頭脳プレーで宝を早くゲットした方が勝ちなの!」
「それならアルムスは、数人連れて、その辺を駆けまわって陽動して、相手に動きがあったら邪魔をするというのはどうですか?」
「あ!いいね。僕きっとそういう方が向いているよ!」といって、詳細も詰めずに上空に飛んで行った。アースドラゴンの子も仕方ないなと言う顔をして、後を追いかけて行った。
ファイアドラゴンのアルムスの舎弟がアースとはなぁ。やっぱり脳筋系のシンパシーとかあるのかな。
残ったファイアドラコン達は、領土の風土にピッタリのザ・知的って感じの子達で、謎解きに夢中だ。次期領主のことも少しは気にしてあげて!
でも、今回は頼もしいからいいか。
俺達は地図を片手に謎を解き、不思議な呪文を唱えたら開く扉や、既定の回数以上をノックしたら爆発する扉などを大いに楽しんで宝石をゲットしていった。
世話係チームがどれほど集めているか分からないけど、爆発する系のトラップは人型では少々分が悪いだろう。怪我するからね。そこへいくと、子どもとはいえドラゴンは頑丈だ。爆発しても、ケラケラ笑って、
「凄い風圧だったね~!」なんて言ってはしゃいでいる。
俺は意外に常識人だったようで、一番丈夫なのに一番ビビっている。爆発は心臓に悪いよ。
「ドラゴンは爆発平気なんだね?」とサリアに聞くと、
「子どものドラゴンは人型になれませんもの。生まれてこのかた、怪我をしたことがないのでは危機感も湧きませんわ」だって。
危機感大事。生命にとっては。
ストーブでやけどして危ないのが分かる。この経験の積み重ねが大事なんだよ。まあだけど、今世の俺には縁がないだろう。ドラゴンでは怪我はしないし痛くもないし、人型でも瞬間で治るからね。後はビックリする心臓を鍛えるだけだ。
さて、夜も近くなって一日目の集計が始まった。だけど、宝石の数を競うのではなくて、宝石を割って出てきた番号のバーベキューの材料がゲットできる仕組みだった。
世話係チームと交互に割っていく。しかしなんと、数はほぼ同じなのに、バーベキューの大本命の肉はほとんど世話係チームに持っていかれてしまった。
割る度に、テンションの下がっていく我らが一年生チーム。
「キャベツ、ピーマン、ニンジン、シイタケ」もはや絶望的だ。
「明日!明日こそ、がんばろう!明日はきっと好物がでるよ!沢山集めよう!」と頑張って盛り上げようとするも、お通夜の雰囲気は抜け出せなかった。
おいこら運営、空気よめ!




