22.南街へ
さて、城下へ出てやること。まずは食べ歩き!基本だよね。
前回は人の視線が気になったので、見て回っただけ。街の人に声をかけたり食べ歩きをしたりはしなかったので、今回は楽しくやろう。
どこの街に行くかは、ティルマイルを除いた3人でじゃんけんだ。
ビリーヤが鬼気迫るほどのヤル気を見せているが、これからは度々外に出るつもりだから、落ち着いて欲しい。チャンスはいくらでもあるんだよ。
結果、カマラテが勝って、アースドラゴンの街、南街に決定だ。
「南街は、ガサツな者が多いですよ。我が君、十分にお気をつけください」とビリーヤが負け惜しみのようなセリフを吐く。
「ま、ま、落ち着いて。俺はドラゴンで行くんだよ。誰も俺を傷つけられないよ」
「それは、そうですわね」
「そうそう、皆は俺を守るというより、俺の暴走から一般人を守るのが仕事ってこと。よろしくね」
ニッコリ笑ってそういうと、ティルマイルが、膝から崩れ落ちて、「レッドドラゴン姿が可愛すぎます」と呟いている。
サリア並みの重症だ。だが、放っておく。
南街は活気があった。ガサツだとビリーヤが言っていたが、そんなことはない気がする。街全体がわちゃわちゃしていて、声が大きいけど。
百貨店じゃなくてアメ横的な感じっていえばいいのかな。
「すごいね。楽しそうだし、美味しそうな匂いがする!まず、あっちから食べてみよう!」
串肉を注文してもらって、食べさせてもらう。ドラゴン姿なので、色々お世話を焼いてもらわないといけない。この姿じゃ、お金も払えないからね。
噴水の側のベンチに座って周りを見ると、同じように、小さなドラゴンとお付きの者という組み合わせを見かける。流石に4人も引き連れているものはいないが、2人くらいならチラホラ見かける。
「ねえねえ。あの人達は、良い所のお坊ちゃんと使用人って感じなの?」と聞いてみる。
「そうですわ。黒角の幼いドラゴンは城下で育ちますでしょう。そうなると、親元から離れて暮らすものがでてきます。なので、裕福な親は自分の配下を供につけて、余裕のない親は政府から手配された世話係を側におきますの」
「へぇ~。みんな俺と同じくらいの大きさに見えるね」
「そうですね。我がき、み、じゃなく、ヨーイチ様と同じくらいの子どもしかいないのは、4歳になると初等園に通いますので、平日の今日は登園しているからでしょう」
なるほど。人型になれない幼いドラゴンでも、4歳以降は学校だったか。
「俺も、行くのかな?」
「!!!わがき、み、いえ、ヨーイチ様は我々とロイド様で家庭学習を致しますので」とティルマイルが驚きながら言う。
そんなに驚くことか。俺は恐怖の黒龍王だから、学校は遠慮してくれって?なんかへこむ。
それより、事前にすり合わせた名前、言えてないから。
俺は、陽一から、ヨーイチ。サリアはサリー。ティルマイルはティル。ビリーヤはビリー。カマラテは本人たっての希望でラッテだ。カマラテだけが、ちゃんと別名っぽい。ここの人達は種族、顔、名前などアイデンティティーにこだわりがあるようだ。
それでも、変装もどきの認識阻害をかけたんだから、しっかり頼むよ。
学校の事は、ロイドも交えて要相談だ。
今日は、楽しむんだ!
と、一日、はしゃいで、沢山食べて、喧嘩を見学したりして、南街を堪能した。




