幕間の昼下がり
客が、来ない……
「ひまー」
「ひままー」
「ちょっと2人共、声に出てるわよ」
カウンターで頬杖付いて待ちぼうけの あたしと蓮華草が揃って紫丁香花姉にホウキで叩かれる。
「だってねぇ、誰も来ないんだから仕方ないじゃん」
「今日は、まだ片手で数える程しか来てない。紫丁香花姉は何か心当たりない?」
「んーそうねぇ、この辺では特にイベントとか無かったと思うけど」
「なんでだろなぁ」
休日だとそこそこお客さん来るのが普通なんだけど。
「あらあら、そっちも閑古鳥? 」
「っと、胡蝶花さん。お疲れ様です」
カウンターから立ち上がって姿勢を正す。胡蝶花さんはうちに隣接するロリータ雑貨店『長春華』の店長さんで、あたしの憧れである店長ーー灯台躑躅さまとの共同経営者。
「『も』ってことは、そちらも?」
「そーなのよー、ホントに閑古鳥がカーカー」
「それカラスでは?」
「カラスもある意味閑古鳥でしょ、人の居ないとこで啼くんだから」
「ごもっとも」
なんて肩を竦めていると、
「コホン。あの、胡蝶花さま……その、毎回お伝えしてるかと思うのですが……その格好はよろしくないかと」
「いーじゃないの、こんな暑い時にカッチリしてられないもの」
あたしはもう見慣れてるけど、胡蝶花さんは暑いのが苦手でこの時期はけっこう着崩している。あと……その……非常に豊かなものをお持ち故に、少しでも崩せばセンシティブになるのだ。紫丁香花姉もそれなりのモノだけど胡蝶花さんのソレはもう質量的暴力。…………辛うじて上衣を落っこちない様に止めているストラップには頑張って欲しい…………けど確かに崩したいと言えば崩したい。暑いもん。
「紫丁香花姉は毎度毎度堅苦しいよねぇ。どんな時でも衣装と姿勢は崩さないし」
「当然よ。プロだもの」
「ふーん?」
蓮華草が徐に踏み台を持ってきて、紫丁香花姉の首筋から何かをひっぺがす。
「これな〜んだ?」
「ちょっ、返しなさいって!!」
「冷却シート…………なんだ、やっぱり暑いんじゃん」
「他にも身体中にぺたぺた貼ってるの見たよー」
「ふぅん? プロ、ねぇ?」
胡蝶花さんがニヤニヤと見つめている。
「………み、みんな配置に付きなさいっ、いつお客様が来るか分からないんだからっ。あと胡蝶花さまはご注文は?」
「アイスティーをお願い。氷たっぷりね?」
「かしこまりました」
紫丁香花姉に追い立てられるようにしてそれぞれの配置に付く。
でもこの後お客さん来るのだろうか……?もうお昼過ぎだけど……




