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第15話:エリアボス

 まあ、ミリアの反応は当然だ。エリアボスがいると分かれば逃げるのが常識。だが、倒せる相手だと分かっていればまた話は別だ。


「魔力の波長が強いと言っても、強さにも上下がある。俺とミリアなら十分に倒せるはずだ。これを見逃すのは逆に勿体ない」


 ミリアが魔物を倒してもアイテムがドロップしないということは、ゲームとは違ってレアアイテムをドロップすることはないかもしれない。


 だが、経験値を集めることで強くなることはおそらく共通。仮に経験値すらも期待したものじゃなくても、エリアボスの素材ともなれば高い買取値を期待できる。


 倒せるのなら、倒しておくべきだろう。


「なるほど……レインがそう仰るなら大丈夫なのでしょう! では、向かいましょうか」


 ◇


 ——ということで、更に山を上ってエリアボスの近くまで来たのだが。


「なあにぃ? ここを通りたいだと?」


 先にここで戦っていた三人組の冒険者に絡まれてしまった。


 ちなみに、パーティ構成は剣士の男一人に、付与魔法師の女一人、魔法師の女一人。


 近くに転がっている魔物の亡骸を見ると、素材回収のやり方が麓の方で倒されていた魔物と同じだった。麓の魔物は、この三人が倒したのだろう。


「ああ。この辺にエリアボスがいるんだ。俺たちはそいつを倒しにきた。危ないからお前たちは逃げた方がいいぞ」


 と、親切心で伝えたのだが——


「はあ? バカにしてんの? ずっと戦ってるけど、エリアボスなんて見なかったわよ」


「っていうか、本当にいるとして二人で倒せるわけないじゃん。もっとマシな嘘つきなさいよ」


 なぜか、俺たちが嘘をついていると思われてしまった。


「てめえの狙いはわかってるんだぞ? 先にここを使っていた俺たちを追い出して、狩場の横取りをしようってわけだ」


「いや、そんなつもりじゃ……」


「そうですよ! そんなつまらない嘘つきません‼︎」


 とはいえ、今ここで何か証拠を出せるわけではない。


 やれやれ。どうしたものか。


「じゃあ、ギルドカードを見せてみろよ。俺たちはDランク冒険者だ。エリアボスがどんな雑魚だとしてもたった二人で倒すってのが本当なら、少なくともBランク以上ってことだろ?」


 バカにしたようにニヤニヤとしながら言う冒険者。


 もはや見せても無駄なのだが、仕方がないので見せてみる。


「……Fランクだ」


「私、この試験に合格したらFランクになる予定です……」


 俺たちのギルドカードを見た冒険者たちは、呆気に取られたようだった。


「おいおい……若えとは思ったが新人かよ。ああ……麓の魔物を俺たちが狩り尽くしまったから、ここまで上がってきたってことか」


「ちょっと悪いことしちゃったわね」


「どうしたものかしら……」


 俺たちが嘘をついたと誤解して怒っていた三人はなぜかトーンダウンし、可哀想なものを見る目を俺たちに向けてきた。


 そして、剣士の男が俺の肩をポンと叩く。


「まあ、そのなんだ。ちょっと悪いことをしちまったな。だが、ここは新人にはちと強い魔物が多すぎる。早く帰った方がいい」


「せっかくここまで来たのに何もなしっていうのも気の毒だし、素材を分けてあげたらどうかしら」


「焦る気持ちはわかるけど、嘘はついちゃダメよ?」


 多分、この人たちは悪い人ではないんだろうなというのは伝わってくる。


 しかし、俺たちは本当に嘘をついていないのだ。


「確かに俺たちのランクは低いけど、嘘じゃ——」


 と、その時だった。


 ゴオオオオオオオオオオオンッッ‼︎


 影が差したかと思うと、上空から身体を叩きつけるような強烈な突風を感じた。


「な、なんだ⁉︎」


「ちょ、ちょっと、空見て⁉︎」


「な、何よアレ⁉︎ ド、ドラゴン⁉︎」


 空を力強く羽ばたく赤いドラゴン——こいつこそが、俺が捜していたたエリアボスである。


 俺は内心呆れつつ、言葉をかける。


「だから、言ったろ? 嘘ついてないって」

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