表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第四章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。バレンティア竜国編
88/99

088・レイドバトル

 ―マナ視点―


「ミーナ、お願い!」

「はい!『トゥインクル・イージス』!」


 ミーナが固有魔法トゥインクル・イージスの結界を作ってくれた。この中なら多少の攻撃は跳ね返せるから、ユーリやフラム、レベッカみたいな後衛も危険は少なくなる。


「あちらのロングノーズ・ボアは、私が運んできましょう」


 エメラルドドラゴンの姿に戻ったエオスが空を飛び、竜巻を起こしてロングノーズ・ボアを私達の前まで運んできた。運ぶってそういう方法なの!?


「行きます!」


 そんなことには動じず、リディアが地面にフリーズ・ブレスを放った。ロングノーズ・ボアは地面に落ちると同時に氷り付いた地面に足を取られ、なかなか立ち上がることができず、アタフタしている。予想以上にはまってくれたわね。


「今よ、ユーリ、フラム、レベッカ!」

「はい、お姉様!」


 私の合図でフラムとレベッカが、アクア・アームズを纏わせた矢を、ユーリがアクア・ストームを放った。三人とも水魔法が得意だし、フリーズ・ブレスで地面が氷ってるから、ロングノーズ・ボアの体温を奪うには向いてるわね。


「やあああっ!」


 ルディアがエーテル・バーストを使いながら、ドレイク・ガントレットにフレイム・アームズを纏わせ、そしてフレイミングドレスに刻印化されてるフライ・ウインドを発動させて宙を舞った。私のドレスガードもそうだけど、みんなの装備には大和がいくつかの刻印術を刻印化してくれてるの。その中でもフライ・ウインドは、一番使用頻度が高いかもしれないわ。

 ルディアがそのままドレイク・ガントレットを振り抜くと、ロングノーズ・ボアの一匹の頭部が吹き飛んだ。そのルディアに、別のロングノーズ・ボアが長い鼻を伸ばし、薙ぎ払おうとしている。


「たあああっ!」


 そこにラウスの魔道武具生成魔法で生成された風と水の刃が突き刺さった。風の剣にアクア・アームズを纏わせて打ち出すなんて、けっこうやるわね。


「そっこだあああっ!」


 そのロングノーズ・ボアに、アテナがドラグールスピアとフレイム・ランスを突き刺した。アテナは元ドラゴンということで空中戦は得意みたいだし、早々にフライ・ウインドも使いこなしてたわ。そのせいか、火魔法も得意みたいね。

 私も負けてられないわ。私はブラスト・アームズをプラチナムソードに纏わせると、ルディアやアテナと同じくフライ・ウインドを使って、近くにいたロングノーズ・ボアとの距離を詰めた。そしてブラスト・スフィアを三発ほど打ち込んでから、頭部にプラチナムソードに突き刺し、息の根を止める。さらに隣にいたロングノーズ・ボアにブラスト・ランスを放ち、これも頭部を吹き飛ばす。自分で言うのもなんだけど、短時間でこんなに強くなるとは思わなかったわ。


「それっ!」

「『アイス・アームズ』!」


 あっちではフラムがアクア・アームズを纏わせた矢を放ち、その個体にリディアがアイス・アームズを纏わせたアクア・エッジとアイス・エッジで斬りつけている。氷魔法は水魔法の一つなんだけど、高レベル、だいたいPランクぐらいの者でないと使えない難しい魔法なのよ。だけどリディアは、フリーズ・ブレスという固有魔法を使えることもあって、コツを掴むのが早くて、けっこうな頻度で使ってるわ。

 魔法は火、土、風、水、光、闇、無属性の七属性だけど、無属性を除く六属性は二つの属性で構成されている。火魔法は火と雷、水魔法は水と氷、風魔法は風と木、土魔法は土と鉱、光魔法は光と聖、闇魔法は闇と魔といったところね。刻印術と同じだと思ってた大和が一番驚いたのは、木魔法が風属性に分類されてたこと。刻印術だと木属性って、土属性になるんですって。あと聖とか魔属性は刻印術にはないそうよ。聖属性はアンデット対策に必須だから、すごく有名なのよ。


「『アクア・アロー』!」

「『アクア・ストーム』!」


 向こうじゃレベッカが放った矢を使ってアクア・アローをばら撒いて、そこにユーリがアクア・ストームを重ねることでロングノーズ・ボアの動きを抑制し、長い鼻を切り落としてるわ。あ、そこにラウスがフレイム・アームズを纏わせたミスリルカットラスで斬りかかってトドメ刺しちゃった。すごい連携じゃない。


「なかなかやりますね。なんというか、私も血が滾ります」


 そう言うとエオスはファイアブレスを放ち、ロングノーズ・ボアを5匹ほどまとめて焼き尽くした。さすがエメラルドドラゴン、ロングノーズ・ボアじゃ相手にならないのね。というか焼き加減が丁度良かったらしく、すっごくいい匂いが漂ってきてるんだけど。


「エオス、もしかして狙ってブレス吐いたの?」

「ええ。ロングノーズ・ボアの丸焼きは、私の好物ですから。終わったら一匹頂いてもいいですよね?」

「もちろん。せっかく焼いてくれたんだから、そのままボックスで保管しておきましょう」


 好物だから火加減も熟知してるってことなのね。私達としても焼く手間は省けたけど、食べ切るのに何日かかるかしら。まあエオスの好物だし、ジェイドやフロライトもいるから残ることはないでしょう。

 そんなことを考えてたら、エオスが尻尾を振って吹き飛ばしたロングノーズ・ボアを、ルナのアクア・アローとミーナがアース・ランスが串刺しにしていた。トゥインクル・イージスを展開させたままなのに、よく魔法使えるわね。それだけ頑張って練習してたってことなんだけど。

 エオスが手伝ってくれたとはいえ、もうロングノーズ・ボアの数は半分以下になってるから、こっちはなんとかなりそう。大和やプリムは……心配するだけ無駄ね。あっちは任せて、私達はこのままロングノーズ・ボアを殲滅よ。


 ―プリム視点―


「へえ、みんな腕を上げてるわね」


 私はフレア・ペネトレイターを使い、2匹のジャンボノーズ・ボアを貫いた所だった。本当なら4匹まとめて倒したかったんだけど、私のスカーレット・ウイングや大和の薄緑はけっこうダメージが蓄積されてるそうだから、あんまり無理はしたくないのよ。だから大和も、今回は薄緑を使っていないわ。マルチ・エッジがあるから私の槍を優先してくれてるけど、嬉しい反面、羨ましいのよね。

 っと、それは置いといて、今はジャンボノーズ・ボアを倒さないといけないわね。

 私はスカーレット・ウイングをボックスにしまうと、残ったジャンボノーズ・ボアに向かって魔法を二つばかり放つことにした。


「『フレア・ストーム』、『フレア・アロー』!」


 極炎の嵐の中で極炎の矢が乱舞する二つの魔法を受けて、ジャンボノーズ・ボア達が慌てふためいている。だけど残念。逃げられないし、逃がすつもりもないのよね。


「『サンダー・ランス』!」


 それぞれに雷の槍を落とすと、ジャンボノーズ・ボアはビクンビクンと痙攣しながら倒れて、しばらくすると動かなくなった。万が一スカーレット・ウイングを使えなくなった時のために備えてやってみたけど、けっこうなんとかなるものね。


「『フレア・アロー』と『フレア・ストーム』の合成魔法、けっこう使えそうね」


 そうね、『フレア・トルネード』っていう名前にして、もうちょっと煮詰めてみようかしら。竜巻になるかはわからないけどね。

 それは後でじっくり考えるとして、大和はどうかしら?って、もう終わってるじゃない。あの様子から察するに、ブラッド・シェイキングをまとわせたマルチ・エッジを、アース・スフィアで保持させたまま大量に打ち込んで、手にしてるマルチ・エッジにミスト・ソリューションを使ってトドメを刺したってところかしら。刻印術だけでも反則なのに、二つの刻印法具まであるんだから、大和に武器なんて必要ないんじゃないかって思うわ。


 ―大和視点―


 プリムがフレア・ペネトレイター使い、ジャンボノーズ・ボアを二匹屠っている最中、俺は今回の討伐対象であるロングノーズ・ボアの異常種、エレファント・ボアにケリをくれていた。

 エレファント・ボアは耳のない象と言う感じの見た目で、ロングノーズ・ボアにはない鋭い牙も持っているため、凶暴だってことがよくわかる。ロングノーズ・ボアはエオスが召喚されたことに慌てふためいて逃げ惑っていたのに、こいつやジャンボノーズ・ボアは、逃げるどころか戦う気満々だったからな。まあ逃がすつもりもないんだが。


「悪いが一気に終わらせてもらうぞ。『アイス・スフィア』」


 俺はブラッド・シェイキングを発動させたマルチ・エッジを10本生成し、それをアイス・スフィアで保持させ、周囲に舞わせた。メタル・ブルードラゴンを倒した時はアース・スフィアを使ってたんだが、俺は土属性の適性が低いから、あんまり数を作れない。それでもビットみたいに使うこの戦法は使い勝手がいいから、ずっと試行錯誤を繰り返してたんだが、リディアが氷魔法を使うようになってから、俺も氷を使うことを思いついた。正直、目から鱗だったな。


「そら、よっとっ!」


 そのマルチ・エッジを四方八方からエレファント・ボアに打ち込むが、アクセル・ブースターの思考加速がなかったら使いこなせなかっただろうな。だけどその分強力だ。ゲームやアニメとかでも反則的な強さを誇ってる理由がよくわかる。アイス・スフィアからアイス・アローを放つことで、簡単には壊されないしな。

 エレファント・ボアはマルチ・エッジに発動させているブラッド・シェイキングを受け、大きな悲鳴を上げるが、それでも倒れはしない。それどころか俺に向かって長い鼻を伸ばして、捕まえようとしてくる。


「さすが異常種ってとこか。これだけブラッド・シェイキングを叩き込んだんだから、放っといてもそのうち死ぬだろうが、俺のそんな趣味はないから、これで楽にしてやるよ!」


 俺は新たにマルチ・エッジを生成し、アイス・アームズを重ねると、短剣状であるマルチ・エッジが長剣へと変わった。マルチ・エッジは消費型ということもあって何本でも生成できるが、形状も俺の意思で変更することができる。今回生成したマルチ・エッジは短剣としては柄が長いんだが、アイス・アームズの刀身を纏わせることで、全体的にバランスが良くなる。俺はそのマルチ・エッジにミスト・ソリューションを発動させ、鼻を切り落とし、返す刀で喉元に突き刺した。


「バランスは悪くないんだが、やっぱりアイス・アームズだと強度が足りないか」


 マルチ・エッジは折れてないが、剣状に纏わせているアイス・アームズの刃は、エレファント・ボアに突き刺さると同時に折れてしまった。俺の魔力でコーティングしてるとはいえ、元はただの氷だから、乱暴に扱えばそら折れるよな。

 エレファント・ボアは血管を破壊され、そのままゆっくりと崩れ落ちていったが、俺としてはそれなりの課題が残る結果になった。


「プリム、そっちも終わったみたいだな」

「ええ。刻印術とは違うけど、新しい魔法のとっかかりもできたから、素手でもなんとかできるかもしれないわ」


 まあ武器が壊れたぐらいで戦えないなんて、言い訳にもならないからな。リチャードさんにスカーレット・ウイングの穂先を頼んでるけど、どうなるかはまだわからないから、明日にでも聞きに行った方がいいだろう。


「俺も似たようなもんだな。だけどそれは後だ。今は」

「ええ。残ってるロングノーズ・ボアを倒して、ドラグニアに帰るとしましょう」


 ロングノーズ・ボアの数は、半分以下になっている。エオスもいるから俺達が手伝う必要はないと思うが、戦いに不測の事態はつきものだ。油断や楽観は命取りになる。

 俺とプリムはエレファント・ボアとジャンボノーズ・ボアをボックスに収納すると、その場を飛び立った。

ウイング・クレストのバトルを書いたのは、多分初です。けっこう魔法を使いこなしてる感じではありますが、実際の狩りはここまで魔法を使いません。

多くのレイドは、もっぱら剣や槍、弓なんかの物理攻撃が多いですし、熟練のハンターでも魔法は牽制ぐらいですから、ウイング・クレストの戦い方はヘリオスオーブでは類を見ない戦い方なんです。

エレファント・ボアさん、もったいぶった割にはあっさりとお亡くなりになりましたが、強さ的にゴブリン・ウイングエンペラーよりは下なので、大和の敵ではなかったんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ