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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第四章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。バレンティア竜国編
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086・アテナの装備

 ―アテナ視点―


 ボクと大和とプリムは、フィールっていう町に来てる。この町に来たのは二回目だけど、大和達が拠点にするっていう町だし、町の人も大和やプリムのことはよく知ってるみたいだから、ボクが新しい婚約者だってこともけっこうあっさり受け入れられた気がする。八人も婚約者がいる人間って、珍しいそうなんだけどね。


「来たぞ、エド」

「アテナの装備、出来てる?」


 ボクが初めてフィールに来たのは一週間ぐらい前だけど、その理由はボクの装備を作ってもらうため。普通のハンターはお店で売ってる武器とか防具とかを買うから、オーダーするのは珍しいんだって。

 だけど大和達は、オーダーメイドの武具にこだわりがあるらしく、ウイング・クレストに入ったみんなの装備も作ってもらってるから、ウイング・クレスト=専用装備っていうイメージができてきてるってマナが言ってた。このお店が大和達がいつも使ってるお店らしく、ボクの装備もここでオーダーしてあるんだ。まさかアミスターの一番北にある町でオーダーするとは思わなかったけど。


「出来てるぞ。持ってくるからちょっと待ってろ」


 エドっていうハーフドワーフが奥に消えて、しばらくすると槍と服を持ってきてくれた。これがボクの装備……。


「へえ、いい槍じゃない。ドラゴンを穂先にくっつけたようなデザインになってるけど、大変だったんじゃない?」

「そりゃそうだろ。穂先を丸々ドラゴンにしろって注文、爺ちゃんも初めてだって言ってたからな」

「だろうな。だけどさすがリチャードさんだ。いつも思うが、あの画像だけで期待以上の物を作ってくれるから、また次回もって思うな」


 これがボクの槍で、プリムが言うように穂先が翼を広げたドラゴンみたいになってる。ボクが翼族っていうこともあって、副翼まである。アレスが羨ましがるよ、これは。

 ルビードラゴンのアレスは、武器の収集が趣味なんだ。クリスタル・パレスの自分の部屋には置ききれないから、ママの許可をもらって収集室まで作ってるからね。ボクも何度か見せてもらったけど、武器庫かと思ったよ。大和達の武器にも興味を持ってて、この町で注文したって話も聞いてるから、お金を貯めてからみんなの武器を作ってもらって、自分のコレクションに加えるって息巻いてたなぁ。


「この槍、すっごく軽いんだね」


 ボクが槍を手に取ると、思ったより軽くて驚いた。ドラグニアで買った鋼鉄の槍より派手な装飾されてるのに、それより軽いなんて思わなかったよ。


「そりゃミスリルだからな。普通に使うなら鉄でもいいんだが、魔力を流すことになるから、ミスリル製の武器が一番使いやすいと思うぞ」


 ミスリルは魔力の伝達率が良いし、強度も鉄よりあるから、そう簡単に折れたりしないんだって。単純な強度や硬度ならアダマンタイトやヒヒイロカネの方が上だけど、そっちは魔力伝達率がミスリルより劣るから、使い手次第じゃミスリルの方が強くなるって話だけど、その辺はまだボクには難しくてわからない。

 そのアダマンタイトとヒヒイロカネ、近くにある村から採れることがわかったから、しばらくしたらフィールにも出回るんじゃないかって聞いてる。


「すっごく使いやすそう!ありがとう!」

「槍の礼は爺ちゃんに言ってくれ。俺が作ったのは、こっちの防具だからな」

「うん!」


 大和達の防具を作ったのもエドとマリーナだって聞いてるから、こっちも楽しみなんだ。


「プリム、手伝ってくれる?」

「もちろん。アテナ、こっちに来て」

「わかった!」


 ボクはまだ上手く服を着れないから、いつも誰かに手伝ってもらってる。早く自分で出来るようにならなくちゃ。


 ―大和視点―


「行ったな」


 アテナがプリムとマリーナに着替えを手伝ってもらいに行ったことを確認すると、俺はエドの顔を見やった。


「ほれ、これが例の物だ」

「助かるよ、エド」


 エドも心得てるようで、婚約の短剣、髪飾り、腕輪を出してくれた。短剣と腕輪はみんなと共通のデザインだが、髪飾りはガイア様にちなんで空の女神の物にしてある。相変わらずいい出来だ。


「お得意様だからな。さすがに聖母竜マザー・ドラゴンの娘とまで婚約してくるとは、夢にも思わなかったが」


 一週間前、アテナの装備をオーダーしにフィールに来たんだが、アミスターじゃドラゴンが人化魔法を使ってやってくることはあまり知られてないし、ましてや転生魔法なんていうご都合主義魔法があることなんて誰も知らない。だからエドやマリーナも、アテナは尻尾が長い竜族の翼族っていう認識しかなかった。


「俺もだよ」

「会うたびに女が増えてくよな。あと何人増えることやら」

「そうそう増えてたまるか」

「実際増えてるだろ」


 その通りだからぐうの音も出ない。フラグなんて立てた覚えはないし、フラムとアテナに限って言えば構築すらされてないだろう。正直これは、何者かの意思を感じずにはいられない。


「ところでアテナの装備、どんな感じなんだ?」


 だが誰かの意思が反映されてたとしても、俺にはどうすることもできない。だから俺は、話を逸らすことに決めた。


「防具はウインガー・ドレイクの皮が残ってたから、そいつを使った。あとミスリルとクリスタイトは勿論、プラダ村で採れたアダマンタイトが回ってきたから、そいつも少々だな」

「もう回ってきたのか。使ってくれたのはありがたいが、良かったのか?」

「スミスギルドの承諾はあるし、ここで使わなかったら爺ちゃんが作る武器にしかならなかったからな。それにいつ売れるかもわからねえから、売れる時に売るのは商売の基本だろ」


 もっともだ。

 アダマンタイトは単純な硬度ならオリハルコンを凌ぐが、とても重いうえに魔力を通しにくい。全く通さないわけではないんだが、ミスリルが10流した魔力を8まで通すのに対して、鉄や鋼は5、オリハルコンは7、ヒヒイロカネは6、クリスタイトは9、そしてアダマンタイトは3しか通さないため、使いこなすのが難しい金属になっている。

 アテナは聖竜クリスタルドラゴンの翼族だから、レベルに対して魔力量は多い。翼族の翼は余剰魔力だとガイア様が言っていたが、体に収まり切らない魔力が翼になってるということなんだろう。


「それにしてもアダマンタイトか。高硬度の金属なのはわかるんだが、もうちょっと魔力伝達率が高ければ使いやすいんだがなぁ」

「俺もそう思うが、こればっかりはどうにもならねえよ。オリハルコンは採掘量がとんでもなく少ない上に馬鹿みたいに高いから、ヒヒイロカネが現実的な選択肢になるんだろうな」


 ヒヒイロカネか。単純強度はオリハルコン以上だが、硬度はアダマンタイト以下だし、魔力伝達率はオリハルコンやミスリルに劣る。だが流した魔力の半分以上を通してくれる金属だから、実戦じゃアダマンタイトは当然、使い手によってはオリハルコンの武具すら凌ぐ。

今はミスリルの武器で十分ではあるんだが、先日アテナの装備をオーダーした際、リチャードさんに俺の薄緑とプリムのスカーレット・ウイングを見てもらったんだ際、多くの異常種を倒してきたこともあって、予想以上に消耗が激しいって言われてる。オリハルコンは無理だって言われてるから、ヒヒイロカネが手に入ったら新しく作り直した方がいいとも言われたな。


「不満そうだな。ヒヒイロカネも魔力伝達率は鉄より高いぐらいだから、お前やプリムには使いにくいだろうが、一般的には十分な性能なんだぞ?」

「ないものねだりだってのはわかってるんだけどな。普通に使うなら今のままでもいいんだが、また異常種の討伐依頼を受けたから、ちょっと心細くなってるのかもしれない」

「また異常種かよ。まあHランクなんだから、それもわかる話だけどよ」


 異常種の討伐はPランク以上のハンターに依頼されることになっているが、討伐できるかどうかはかなり微妙だ。実際、旧ランク制度のAランクでも、犠牲になるハンターはいたそうだから、新Pランクや新Aランクでも、魔物の種類によっては太刀打ちできないことは珍しくない。可能ならギルドもHランクを指名したいって考えるのは当然の話だろうな。


「お前は刻印法具ってのがあるから何とかなるだろうが、問題はプリムだな。プラダ村から回ってきたヒヒイロカネの量じゃ穂先分になるかも怪しいが、爺ちゃんに相談した方がいいと思うぞ」

「ああ、ヒヒイロカネも回ってきてたのか。確かに俺は何とかなるから、プリムを優先するべきだな」


 俺はマルチ・エッジやミラー・リングがあるから、最悪の場合でも武器は何とかなる。だけどプリムはそうはいかない。もしスカーレット・ウイングが折れたりしたら丸腰になってしまうし、その場合は相手もプリムに匹敵する強さを持っていることになるから、プリムが危険に晒されることになってしまう。

 それを防ぐためにはスカーレット・ウイングを、穂先だけでもヒヒイロカネに変えておく必要がある。あとでリチャードさんに相談しよう。


「アテナの装備を確認したら、リチャードさんに相談することにするよ」

「それがいい。お前やプリムのためなら、スミスギルドも多少の無理は聞いてくれるだろう」


 それに期待だが、アダマンタイトと違い、ヒヒイロカネはまだ少量だって話だから、しばらくは無理かもしれないな。スカーレット・ウイングを作る時に買ったミスリルハルバードを使うことも、視野に入れとくべきかもしれない。


「お待たせ、大和、エド」

「お、来たか。どうだ?」

「すっごく動きやすいよ!ありがとう、エド!」


 アテナの鎧はフラムのものとよく似ていて、どちらかといえばチュニックやダブレットに近い。だが裾は膝下まで届くほど長く、薄緑色のミスリルの胸甲と肩甲に青いアダマンタイトが薄く装飾され、防御力を増している。あと女性陣共通でアテナもスカートを穿いてるが、丈は膝上と、ルディアより少し長い程度だ。色はクリスタルドラゴンということもあり、クリスタル・ブルーにしてある。


「どう、大和?」

「似合ってて可愛いぞ」

「あ、ありがと……」


 真っ赤になるアテナ。いや、実際可愛いのよ。裾が長いからスカートが隠れてるけど、背中側は大きな尻尾が嬉しそうに、凄い勢いで左右に振られてるから、風圧で裾が少し捲れて、健康的なおみ足様がチラチラ覗いるんですよ。


「アテナ、これを受け取ってくれ」

「短剣と腕輪と……髪飾りかな?くれるのは嬉しいけど、何でなの?」


 やっぱりアテナはわかってないか。一度も町に行ったことなかったんだし、転生したばかりのドラゴンには人間の風習はわかりにくいだろうから、これは仕方ないな。


「人間の世界じゃ、婚約した相手に贈り物をすることが多いんだ。今は短剣、腕輪、髪飾りが主流だから、それを用意したってわけだ」

「そ、そうなの?」


 驚いたアテナがプリムを見るが、プリムも笑顔で頷いた。


「そうよ。ちなみに私達も貰ってるわ」

「じゃ、じゃあ、これは本当にボクに?」

「ああ。受け取ってくれるか?」

「うん!ありがとう、大和!」


 よかった、喜んでくれて。

 アテナの装備も完成したし、婚約の品も渡したし、これでエレファント・ボア討伐に集中できるな。今日も頑張って探すとしますかね。

アテナの装備です。頭装備とアクセサリーが婚約の品で、もちろん短剣も持ってますよ。


アテナ・ウィルネス・クリスタル 基本カラーはクリスタル・ブルー

  武器:ドラグールスピア(飛竜の槍)

  頭装備:スカイ・ドラグールクラウン(オーラムレギス・ヒーラークラウン)

  胴装備:ミスリル・ドラグールドレス(バハムート・キャスターローブ)

  腕装備:ミスリル・アームガード(デモンズ・スカウトブレーサー)

  脚装備:ウインガードキュロット(グリダニアンエリート・ロインクロス)

  足装備:ミスリルソルレット(バハムート・ディフェンダーサバトン)

  アクセサリー:エンゲージブレスレット(ブラックパールブレスレット)

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