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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第四章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。バレンティア竜国編
83/99

083・儀式の後

 ―リディア視点―


「……」

「……」

「……な、なんですか、この空気は!」


 エオスが空気に耐え切れず、声を上げました。ドラゴンですら悲鳴を上げる空間を作り出せるとは、私達も捨てたものじゃないかもしれません。あまり、どころか、微塵も嬉しくありませんけどね。

 私達はクリスタル・パレスの一室で、エオスにお茶を淹れてもらいながら大和さんとアテナが戻ってくるのを待っています。私達はアテナの部屋に泊まることになったんですけど、その部屋にはベッドがなく、代わりに魔絹で作られた大きなクッションみたいな布団があります。これはアテナの寝床で、ドラゴンの姿でも問題なく眠れるようにということでとてつもなく大きいんです。私達が特注したベッド三つ分、いえ、それ以上あります。ドラゴン姿のアテナは10メートル近い大きさですから、当たり前と言えば当たり前なんですけどね。

 大和さんはアテナの転生の儀式に立ち会っていますから、時間がかかることはわかっていたんですけど、儀式の内容を聞いている身としては、少しアテナに妬いてしまうのも仕方ないと思います。私達も最初は普通に話してたんですけど、時間が経つにつれて徐々に口数が少なくなって、気が付いたら押し黙ったままエオスの淹れてもらったお茶を何度も飲む始末です。エオスでなくとも、悲鳴を上げると思います。


「そりゃ空気も重くなるわよ。私達は基本みんなでヤるから、アテナみたいに一対一でシたことって、あんまりないのよ」

「そもそも私は婚約して一番日が浅いですから、みなさんと一緒にしかシたことがありません……」

「わ、私もよ……」


 フラムさんは二週間ほど前に大和さんと婚約したこともあって、まだ大和さんに一対一で抱いてもらったことがありません。マナ様もまだ一ヶ月経ってませんが、こちらも機会がなかったようです。同じ理由でユーリ様もないと思ってたのですが、バレンティアに来る前にアルカの湖近くで抱いてもらったと白状しました。ユーリ様はお歳の割に知識が豊富ですし、大胆な性格をしていますから、アルカとはいえ大自然の中で素肌を晒すことにも躊躇いはなかったそうです。もちろんベッドの中で、全て吐いていただきましたけど。

 って、そうではなくて。


「私達も何回かぐらいだものね」

「一番多いのって、多分リディアさんだと思いますよ」

「姉さんはねぇ……」


 かくいう妹も、私の次に多いのは間違いありません。プリムさんとミーナさんは、実は見られていた方が燃え上がるという性癖の持ち主だったので、あまり一対一にこだわりません。ルディアもそうなのですが、こちらは一対一にも憧れがあるようなので、隙を見つけては大和さんに迫っているんです。マナ様も同様ですが、マナ様は初心な性格が邪魔をして、いまだに言い出せていません。そしてフラムさんですが、まだ私達に遠慮している所があるんです。ベッドの上ではマナ様やユーリ様にも容赦ありませんが、普段はそこまで積極的ではないんです。もちろん性格的なものもあるでしょうが、マナ様やユーリ様、プリムさんといったお姫様とどう接していいのか、どこまで許容されるのか、その判断ができてない感じですね。


「なにか心外ですけど、私はそこまで強引に迫ってないですよ?」


 私は大和さんに強引に迫ったことは、一度もありません。一対一で抱いてもらった回数は間違いなく私が一番多いですが、大和さんから手を出してきてくれたことの方が多いのです。


「だったらフロートで買った、スケスケのネグリジェは何なのよ?」

「メイド服も、王城の人から譲ってもらってましたよね?」

「奴隷が着るような貫頭衣も用意してたわよ、この子」

「フィールを発つ前に、水着も買ってたわよ。しかも普通のとすごくきわどいのを」


 はい、そうなんです。私は色々な服を買い、それを使って大和さんを誘惑していたんです。娼館でもある種のイメージプレイっていうのがあるんですけど、それを私もやってみただけなんです。大和さんは娼館には行ったことがないそうですけど、男の人なんですから、行こうと思ったことぐらいはあるでしょう。まだ正式に式は挙げてませんが、夫の不満を解消するのも妻の務めですから、これぐらいはなんてことはありません。私は大和さんの妻であると同時に、大和さんだけの娼婦でもあるんです。


「さ、さすがリディアさんですね……」

「そんな手が……。私もドラグニアの町で、いろんな服を買わないと……」


 フラムさんは少し引き攣ってますけど、ユーリ様は感心してくれています。ふふふ、イメージプレイもいいものですよ。是非やってみてくださいね。


 ―プリム視点―


 まったくリディアは。既にベッドの女王になっているとはいえ、まさかそんなことまでしてたなんて。今回の件は私達の落ち度だけど、ひと声かけてほしかったわよ。まあ私達はみんな、ベッドの上じゃリディアに逆らえないし、リディアとフラム以外は受け身がちだから、声をかけてもらってもできたかどうかは疑問だけど。


「だからって、そんなに妬かなくてもいいでしょう。儀式に予想以上の時間がかかるのは、今までの経験からもわかっていたことですし、そのことも伝えてあるんですから」


 エオスの言う通り、普通は儀式の内容を聞いてから挑むものなんだけど、大和にはあえて説明してないのよ。なにせ大和とアテナはロクに話もしてないし、そもそもお互いがどんな人間やドラゴンなのかもわかってないんだから、まずはそこからとか言い出しかねないもの。


「普通ならそれでもいいし、そうするべきなんだろうけど、あまりウィルネス山に人が立ち入るのもどうかと思うしね」


 とはルディアの弁だけど、私もその通りだと思う。かといって人化魔法を使ったアテナを連れまわすのも、それはそれで大変よ。大丈夫だとは思うけど、何かの拍子に人化魔法が解けたりなんかしたら、町中にクリスタルドラゴンが現れることになっちゃうし、そんなことになったら大パニックだわ。


「それにドラゴンのままで興味を持ったとしても、転生してからどうなるかはわからないですしね」

「通常、転生魔法を使うドラゴンは、相手への思慕の念をさらに強めるそうですが、今回はそういうわけではありませんからね。悪い方に転ぶことはないでしょうが、それでもどうなるかは未知数です」


 リディアとエオスの言うように、それが最大の懸念事項なのよ。転生魔法は実際に使うドラゴンと、伴侶になる人間が揃わないと使えない。ただ転生したところで、ドラゴンは人間の世界で生きてくことは難しいし、そもそもそんな理由で転生するドラゴンなんているわけがない。しかも一度使えば二度と元には戻れないんだから、相手がいないと使えないっていう制約は大きな意味があると思う。

そしてその制約は、伴侶の人間にも多少なりとも影響があるらしいわ。ドラゴンは相手のためにドラゴンであることを捨てるわけだから、伴侶になる人間は死ぬまで見捨てない。これは義務とか契約じゃなく、そうすることが当然だと魂に刻み込まれる感じになるんだとか。最初は一心同体なのかと思ったけど、そういうわけじゃないらしいわ。初志貫徹、とでも言えばいいのかしらね。

 そんなわけで、離婚とか離縁したドラゴンは一人もいないそうよ。


「アテナにとっては一生に関わる重大事なんだし、私達がせっついてもいい問題でもないものね」


 マナの言う通りなのよね。

 なんで私達がこんな話をしていたかというと、今頃大和は、アテナを抱いているはずだからなのよ。これも儀式の一環で、女性のドラゴンは伴侶の男の放つ生命の源を体の中に受け入れなければ、完全な人間になることができないそうなの。儀式を中途半端に終わらせたりしたら、アテナは子供を作ることができなくなるし、人間とドラゴンの境が曖昧になって、突然ドラゴンの体に戻ってしまうこともあるし、それが原因で精神に異常をきたし、死に至ることもあるそう。

 実際過去に、そういったドラゴンもいたらしいわ。子供が作れなくなるだけならまだマシな方で、最悪なのは伴侶を食い殺し、国を滅ぼし、最終的に討伐されてしまった女性ドラゴンがいたってガイア様から伺ったわ。そんな悲しい出来事があったから、ガイア様はクリスタル・パレスに儀式の泉を作り、以後ドラゴン達は、そこで転生の儀式を行うことになったそうよ。

 だからアテナがしっかりと儀式を終えるまで、私達は二人と接触することができないわけなの。だから納得はしてるんだけど、心はそう簡単にはいかないから、終わったら朝までしっかりと相手をしてもらうつもりよ。


 コンコン


 そんなことを考えていると、ドアがノックされた。ここはアテナの部屋だから、アテナがノックする必要はない。だから必然的に、アテナ以外の人ってことになるんだけど、それじゃあ誰よ、って話。


「終わったみたいね」

「ええ。上手くいったのは当然だけど、やっぱり初めてのアテナじゃ無理だったみたいね」


 ドアをノックしたのは大和よ。お姫様抱っこでアテナを抱えてきたんだけど、そのアテナは大和の腕の中で幸せそうな顔して眠ってる。気を失ってる、ともいうわね。なにせアテナってば、体に布切れを巻いてるだけなんだから。


「やっぱりってのがひっかかるが、そんなに無茶なことしたつもりはないぞ」

「それはそうなんでしょうけど、今回はレラさんのドーピング料理を食べたわけじゃありませんから、アテナさんの負担は大きかったんじゃないですか?」


 ミーナの言う通り、私達の時もマナ達の時もフラムの時も、レラが作ってくれた特性料理を食べてから臨んだし、今も作ってもらうことは多い。媚薬効果もあるし精力増強効果もあるから、大和なんて夜の大帝王になってるわよ。

 アテナは初めてなんだから大和も気を遣ってくれただろうけど、それとこれとは別のお話。初めてって心身ともに負担がかかるし、大和を受け入れるのも二回ぐらいが限界だったんじゃないかしら。


「あ、あれ?ここって……ボクの部屋?」


 どうやらアテナが気が付いたみたい。儀式が終わってからどれぐらい経ってるのかわからないけど、そこまで経ってはないと思う。


「起きたのね。体は大丈夫?」

「う、うん。その……優しくしてもらったから……」


 アテナは真っ赤になった顔を、大和の胸に当てて隠そうとしている。初々しい反応ね。


「それなら安心ですけど、今日はあまり無理をしないでくださいね?」

「え?う、うん。ありがとう、ユーリ」

「お礼を言われるようなことではありませんよ。なにせ私達は、これからなんですから」

「これからって……ああ、そんなこと言ってたっけ。いいの、大和?」

「約束だからな……」


 普段でもしっかりと抱いてもらってるけど、こういうシチュエーションって初めてなのよね。


「えっと、ボクもいいかな?」

「え?」


 意外な申し出だわ。さっき処女を捧げたばかりなのに、体は大丈夫なのかしら?私達はみんな、アルカでレラの特性料理を食べてからだったから、知識としては知ってるけど、そこまで大変じゃなかった。だけどアテナは、転生の儀式で魔力を使って人間の体になったばかり、しかもそれも儀式の一環だったんだから、私達とは比較にならないぐらい大変だと思うんだけど。


「聞いてはいたけど、思ったより大丈夫そうなんだ。それにさっきのは儀式だったから、できればみんなと一緒に抱いてほしいなって……」


 なるほど、さっき抱いてもらったとはいえ、あくまでも儀式の一環だし、私達もいなかった。その儀式も無事に終わったから、今度は私達と一緒に抱いてもらいたいってことなのね。そういうことなら、私達としては断る理由はないわ。


「アテナが大丈夫なら構わないが、無理はするなよ?」

「うん、ありがとう、大和」


 人数が増えれば大和の負担は増えるけど、そこはレベルに物を言わせてもらうわ。明日もあるから一人一回が限界でしょうけど、私達としては抱いてもらえることに意義があるし、近いうちにまたアルカで、数日程爛れた生活を送るつもりだから、その時に気絶するまで征服してもらうわよ。

アテナのライブラリー公開です。


アテナ・ウィルネス・クリスタル Lv.27 15歳

聖母竜マザー・ドラゴンの愛娘、客人まれびとの婚約者、ドラゴンからの転生者、聖竜クリスタルドラゴンの翼族


ドラゴンの場合、出身地はミドルネーム、種族名が苗字にになるので、ウィルネス山出身のクリスタルドラゴンであるアテナはウィルネスがミドルネーム、クリスタルが苗字になります。

計算上ではレベル20前後になるのですが、翼族&大和の魔力の影響があるので、普通のドラゴンより転生時のレベルがプラスされるという形になります。翼族の種族特性みたいなものですね。

あと姿は人化魔法を使った姿と同じなので、白髪巨乳ツインテールのボクっ娘で変化はありません。固有魔法は竜化魔法。まあドラゴンの姿に戻る魔法ですね。


そしてサイズですが、プリム(93)>マナ(90)>アテナ(88)>フラム(85)>ルディア(84)=ミーナ(84)>ユーリ(81)>リディア(79)と、アテナは大きいのです。そしてプリム、ミーナ、ユーリがさりげなく成長。リディア涙目。


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