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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第四章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。バレンティア竜国編
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074・バレンティアの魔物達

気が付いたら13万PV、2万ユニーク突破してました。

ありがとうございます!

 ―ユーリ視点―


 フレイアス様自ら獣車を操り、私達は王城へと招かれました。バレンティアへ来るのは3年ぶりですが、お城も街並みも変わりなく、この国も平和なんだと実感しています。竜族はあまり権力志向が強くありませんが、仲間意識はとても高く、上下関係もしっかりとされていますから、内乱などもほとんどなく、他国と戦争になったとしても竜騎士団の駆るドラゴンが強大な戦力になりますし、ウィルネス山に住む上位ドラゴンが協力してくれることもあるそうですから、バレンティアを侵略しようとする国はありません。

まあ戦争と言っても、隣接している国はアミスター王国、バシオン教国、バリエンテ獣人連合国ぐらいですし、実際に攻め入ったことがある国も、フィリアス大陸統一を目論んでいると噂されているソレムネ帝国だけですから、バレンティアが戦火に包まれることはないと思いますが。


「竜王陛下は本日は所用で外出されておりますので、謁見は明日とさせていただきたいそうです。申し訳ありませんが、ご了承ください」


 私達はあてがわれた客間で、フレイアス様から竜王陛下がご不在の理由を聞かせていただきました。ですがそれは仕方ありません。私達が突然訪問したようなものですし、聞いた話ではウィルネス山に行っておられるとのことですから、そちらを優先していただくのも当然のことです。なんでも聖母竜マザー・ドラゴンに会いに行かれているそうで、今日向かうことは以前から決まっていたそうなのです。


「大丈夫です。もともと私達が突然訪問したこともありますし、聖母竜マザー・ドラゴンの下へ行かれているなら、待つのは当然のことですから」

「恐れ入ります。御用がございましたら、そちらの魔道具を使い、係の者をお呼びください」


 一礼してフレイアス様は客間を出ていかれました。ですがまだお昼を回ったぐらいですから、時間は十分すぎるほどあります。


「さて、それじゃギルドに寄ってから狩りに行きましょうか」

「だな。ここにいても暇を持て余すだけだし、最近あんまり狩りしてないから、少しぐらいは運動もしておきたい」


 どうやらみなさん、狩りに行きたくて仕方がないようです。私は平気なんですが、みなさんは何をすればいいのかわからないみたいですし、確かにフロートを発ってからはあまり狩りをしていません。それに私達の装備は昨日完成したばかりですし、フラムさんのランクもIのままですから、狩りに行くこと自体は私も賛成です。

 というかお姉様だって、こういうことは慣れてらっしゃるはずなのですが


「私は姫である前にハンターなのよ。ずっとお城に閉じこもってたら腕も勘も鈍るし、何より退屈で仕方ないのよ」


 こういう始末です。王家の姫としてはどうかと思いますが、もうそんなことを気にする必要もなくなったわけですから、以前より生き生きとしてらっしゃるようにも見えますね。


「ドラグニアって、どんな魔物が出るんだ?」

「グラス・ビークにジャイアント・バッファロー、ロングノーズ・ボア、サーベル・ライガー、それと亜人がゴブリン、コボルト、アントリオンかな」

「体の大きい魔物が多いですね」

「私達が倒せるとしたら、グラス・ビークぐらいですね」


 私もレベッカの意見に賛成です。グラス・ビークは鳥の魔物ですが、空を飛ぶことができないため、嘴で地面を掘り、地下で暮らしています。お姉様の召喚獣であるルナと同じぐらいの大きさですし、登録したばかりのハンターでもさほど労せず倒せますし、害になるような魔物ではないのでどの国でも討伐依頼はほとんどでません。地下に住むという性質から、畑の下に巣があったりすると、作物を食べられてしまうことがあるので、その場合に依頼が出るぐらいですね。

 逆にジャイアント・バッファロー、ロングノーズ・ボア、サーベル・ライガーは、一気に危険度が跳ね上がります。特にサーベル・ライガーは肉食で動きも素早いですから、Mランクハンターでも返り討ちに会うことが珍しくありません。


「そういえば、亜竜っていないのか?」

「いるけど、ドラグニアはウィルネス山の麓にあるから、亜竜達は怖がって滅多に近づかないわ」

「亜竜も多くはウィルネス山か、東にあるルセロ山脈を住処にしているんですけど、聖母竜マザー・ドラゴンや上位ドラゴンが目を光らせていることもあって、バレンティアでは大人しいと思います」


 それでも町や村を襲う亜竜はいるそうです。亜竜は知能が動物並みですから、いかに聖母竜マザー・ドラゴンでも完全に抑えるのは無理らしく、亜竜はそれなりに討伐されていんだとか。もちろん大和さんやプリムさんが、フィールで狩りまくったフェザー・ドレイクより下位の亜竜ばかりですけど。


「ということは、亜竜を狩る機会はなさそうだな」

「そうね。まあジャイアント・バッファローやロングノーズ・ボアも面倒な魔物だし、フラムのランクを上げるのが目的だから、とりあえず狩ってみてから考えましょう」


 大和さんとプリムさんの言うことは、私達にはまったくわかりません。どちらもGランクの魔物ですから、普通ならGランクハンターがレイドを組んでようやく倒せるような魔物です。お姉様やリディアさん、ルディアさんなら何とかなると思いますが、私やミーナさん、フラムさん、ラウス、レベッカはレベルも経験も足りてませんから、ほぼ間違いなく返り討ちにあうでしょう。というか、決定なのですか?


「待ちなさいよ、二人とも。フラムの初依頼なんだから、そんなランクの高い魔物じゃなく、普通にグラス・ビークでいいでしょう。私達だってキツいんだからね?」


 さすがお姉様です。大和さんとプリムさんはHランクハンターですが、レベルに物を言わせる戦い方が身についてしまっているようなのです。何しろお二人は亜人皇帝も倒していますし、大和さんなんて上位ドラゴンの異常種まで倒していますから、そこらの魔物では相手にもなりません。だからなのか、今までもけっこう無茶と思える狩りをしてきていたそうです。ルディアさんが何度か諫言したそうですが、そういった状況に遭遇してしまったこともあるため、今では諦めていると言っていました。

 ですがお姉様はプリムさんの幼馴染ですし、ハンター歴も一番長いですから、しっかりと意見を述べてくれるのです。実際、お二人もレベルに物を言わせる戦い方は避けたいと考えられているようですから、お姉様が経験されたことをよく聞き、そこからどうすればいいのか対策を考えられることもあります。もしお姉様がいてくださらなかったら、私達はお二人に流されていたことでしょう。本当にありがとうございます、お姉様。


「ならグラス・ビークの討伐依頼を探して、なければ……そうだな、ゴブリン辺りにしておくか」

「それが無難ね。ジャイアント・バッファローやロングノーズ・ボアを狩りたいなら、個人で受けておいて。まあどちらも肉質がいいって話だから、狩っておくことに異存はないけど」


 バッファロー種は食用としても人気が高く、アミスターでもけっこう討伐依頼があったそうです。私も食べたことがありますが、柔らかくてとても美味しいお肉でした。逆にボア種は、あまり食用には向いていません。グラス・ボアはそれなりに食べられるので、一般の食卓には並ぶそうですが、他は無理です。野営するハンターが食べることはありますし、私も食べたことがありますが、硬くてあまり味がしませんでした。ですがロングノーズ・ボアは別格で、高級食材として人気があります。私も3年前にバレンティアを訪れた際、晩餐会で食べましたが、本当に美味しかったです。


「ならそうさせてもらうか。それにしてもドラグニアって、魔物の強さが偏ってないか?」

「そうよね。いくら聖母竜マザー・ドラゴンのお膝下とはいえ、Gランクの魔物が闊歩してるようじゃ、商人とかも怖がって近づかないんじゃないの?」

「定期的にライバートさんが間引きしてくれてるから、それは大丈夫ですよ」


 ライバート・ウェルネスさんですか。大和さんやプリムさんと同じ本物のHランクハンターで、双子のドラゴンと契約し、バレンティアを守っている英雄。聖母竜マザー・ドラゴンとも何かしらの関係があるそうですが、そちらは噂の域を出ていません。ですがHランクハンターですから、Gランクの魔物ならば物の数ではないのは間違いありませんね。


「ああ、バレンティアのHランクハンターか。ドラグニアに住んでたのか」

「なるほどね。確かにそれなら、よっぽどのことがない限りは大丈夫か」

「あんまり頼ってばかりもいられないから、竜騎士団も出ることが増えてるって聞いたわよ」

「そりゃHランクだから、緊急招集されることもありますからね」


 ランク制度が新しくなったこともあり、P、A、Hランクのハンターはハンターズギルドから招集がかけられた場合、余程の事情がない限りはそちらに行かなければなりません。これは高ランクハンターの義務ですから当然なのですが、どれぐらい時間がかかるかわかりませんので、その間は国を空けてしまうことにもなります。ライバートさんのように地元の生活に密着している場合、それだけで国が傾いてしまう可能性がありますから、竜騎士団が出動して魔物を狩るのも当然のことでしょう。


「俺やプリムも、いつ招集されるかわからないしな。今のところはそんな気配はないが、トラレンシアのゴルド氷河やバリエンテのガグン大森林のこともあるし、そんな先の話でもない気がするな」

「招集がかかるとしたら、トラレンシアじゃない?」


 トラレンシア魔王国のゴルド氷河とバリエンテ獣人連合国のガグン大森林は、フィリアス大陸最大の難所として有名です。ですがバリエンテは、現在高ランクのハンターがいませんし、ハンターズギルドとしても問題視していますから、別の意味で招集がかかりそうな気もします。ハンターが国を落としたことはありませんが、今回ばかりはそれもやむを得ない気がします。もちろん後始末は、隣国であるアミスターやバシオン、バレンティアにも降りかかってくるでしょうけど、それも仕方がないと思えますね。


「緊急度が高くないと、そもそも招集はされませんし、そこまで気にしなくてもいいんじゃないですか?」

「そうよね。それより行くなら早く行かない?」

「ですね。バレンティアで狩りをするのは初めてですから、ちょっと楽しみです」

「この武器の使い勝手も試したいですし、フラム姉さんは初めてですしね」

「ちょっと緊張しますけど、頑張ります!」


 それもそうですね。私やお姉様、フラムさん、それにラウス、レベッカの装備は昨日完成したばかりですから、まだ実戦での感触を確かめていませんし、早いうちに感覚を掴んでおきたいです。


「んじゃ誰かに伝えて、それからギルドね」

「そうね。ルナやジェイド、フロライトも呼びましょう。あの仔達もあんまり戦闘経験なさそうだから、少しは経験を積ませておいた方がいいわよ」

「あー、確かにそうだな」

「そうね。特にフロライトなんて、最近はアルカか獣車の中かだし、フロートでも積極的に戦おうとはしなかったから、少し甘やかしすぎたかなって思うわ」


 本来ヒポグリフの成獣はGランク相当とされていますが、まだ子供のジェイドとフロライトは、通常であればMランクかSランクでしょう。ですが大和さんとプリムさんの魔力に影響を受けていますから、成獣顔負けの強さになりつつあるそうです。実際ジェイドは、フロートでの迷宮氾濫でもかなりの魔物を倒していました。ですがフロライトはかなり消極的で、自分に攻撃を仕掛けてきた魔物を、数匹返り討ちにしたぐらいで、ほとんどジェイドの陰に隠れていたそうです。

 私達と会う前、フィールでハンターに誘拐されそうになったことがあるそうで、そのことが尾を引いているのではないかと、フロートの獣舎の厩務員が推測していましたが、その通りではないかと私も思います。


「まあフロライトはメスだし、いずれはジェイドの仔を産むだろうから、そこまで神経質になる必要はないと思うわよ」


 私もお姉様に同感です。まだ何年か先の話ですが、無理をさせる必要はありませんし、その分ジェイドが頑張ってくれていますから、それで十分だと思います。


「俺も同感だ。そもそもジェイドもフロライトも、そのために契約したわけじゃないしな」

「まあね」


 ジェイドとフロライトの育った群れは、フェザー・ドレイクの異常種で、元ギルドマスターの従魔であるエビル・ドレイクによって全滅させられてしまったそうです。そのエビル・ドレイクを倒したことが認められて、生まれたばかりのジェイドとフロライトを托されたそうですから、その時点で従来の従魔契約とは異なっていることがわかります。

 ですからフロライトは契約者のプリムさんだけではなく、みなさんにすごく甘えてきますし、最近大和さんの婚約者になったフラムさんにも同様です。また大きくなってきましたから、甘えてこられるとけっこう大変ですけどね。

 それはそれとして、みなさんの準備も整いましたから、これから狩りに行ってきたいと思います。実は私も、大和さん達と本格的な狩りに出かけるのは初めてなんです。不安はありますけど、それ以上に楽しみですし、何より大和さんがいるのですから、とても心強いです。さあ、頑張りますよ!

説明会ですねぇ。

話しているのはほとんど大和、プリム、マナの三人です。力押しな大和とプリムをマナが諫めるという構図は、今後多用することになります。もちろん三人だけで話を進めることはなく、みんなの意見もしっかりと取り入れますから、ラウスとレベッカの出番も増える予定です。

ちなみに今回のフラム、ラウス、レベッカは、初めてのお城で緊張しまくっててあんまり話す余裕がないという設定をしています。

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