072・ここが竜都ドラグニア
バレンティア竜国へ行くためには港町イスラから出ている船を使い、三日かけて玄関口である港町エトラダに向かい、そこから獣車で一週間ほどかけて竜都ドラグニアへと至る。隣接しているウィルネス山には聖母竜をはじめとする上位のドラゴン達が住んでおり、聖域として理由なく立ち入ることを禁止されているが、ウィルム湖は例外で、中立地区になっている。そのため泳ぐことも漁をすることもできるし、ドラゴン達もウィルム湖にいる人を襲ったりはしないばかりか、むしろ助けてくれることもあるので、ある意味バレンティアでは一番安全かもしれない。
「ここが竜都ドラグニアか」
フィールを発ってから約二週間、俺達はようやく、バレンティア竜国の竜都ドラグニアに到着した。
ここで日数がおかしいことに気付いただろう。フィールからイスラまでは、獣車でも一ヶ月近くかかってしまう。空路なら一日で着けるが、俺、プリム、マナ、ユーリ、ミーナ、リディア、ルディア、フラム、ラウス、レベッカと総勢十人の大所帯にだから、さすがにジェイドやフロライトに乗ることはできない。だから陸路を行くしかないんだが、ここでアルカの存在が大きく役に立った。
俺とマナとフラムがジェイドに乗ってイスラの近くまで先行し、そこで一度アルカに戻って一泊して、そこに転移門を開いて獣車で移動してイスラに入り、ジェイドとフロライトをアルカに戻してから船に乗り、バレンティア観光をしながらドラグニアに向かうことにしたというわけだ。
ついでというわけじゃないが、マナ、ユーリ、フラム、ラウス、レベッカの装備も完成したし、短剣、ブレスレット、髪飾りという婚約の品も受け取ったから、今は全員がフル装備で獣車に乗っている。もちろんフラムのも、しっかりと追加で注文してあるぞ。
いざ渡すとなるとかなり照れくさかったが、勇気を振り絞って何とか渡すと、表情はそれぞれだったが、みんな喜んでくれた。こんなことならもっと早く用意しておくべきだと思ったよ。
それからフラムだが、実はアルカに招待した日に抱いてしまっていたりする。アトゥイとのこともプリム達を通じてしっかりと筒抜けになっていたため、人化魔法を解いた姿でも抱かせてくれたし、何より魔族は五種族の中で一番性欲が強いから、恥ずかしがりながらも積極的だった。尾びれが弱いらしく、みんなからも責められていたが、そこはやはり魔族。しっかりと逆襲して、Mっ気のあるプリム、マナ、ミーナを早くも手玉に取ってたな。
「久しぶりね。一年ぶりだっけ?」
「そうね。商隊の護衛に混ざってエトラダに行って、それからバシオンとバリエンテを見て回って、せっかくだからってことでアミスターでミスリルの武器を買おうと思ってフィールを目指して、そこで大和さんに出会ったのよね」
なんかそういうことらしい。本当はもうしばらくバリエンテに滞在する予定だったらしいが、例の暴獣王がレオナス王子を捕らえるために旧Mランク以上のハンターを投獄し始めたため、急遽予定を変更してフィールに向かおうとしていたんだが、そこでユーリを襲っている元ギルドマスター達と遭遇してしまい、危ないところを俺が助けて今に至るわけだが、あれからまだ二ヶ月ぐらいしか経ってないんだよな。
「時間も時間だし、とりあえずうちに行こうか。さすがに準備はできてないだろうから、今日は宿屋に泊まることになると思うけど」
「問題なしよ。というかハンターなんだから、それが普通」
「ですね。アルカに戻ってもいいのですが、お二人のご実家から使者の方が来られる可能性もありますから、残念ですけど今日はここで一泊した方がいいと思います」
マナとユーリの言う通り、安宿か高級宿かはハンター次第だが、普通は宿に泊まる。稀にゲート・ミラーを使えるハンターがいて、拠点に戻ることもあるが、それは例外だ。かくいう俺達も、今まではアルカに戻っていたわけだから、人のことは言えないんだが。
それより俺は、ドラグニアの街並みに驚いた。正確には王城を見て驚いた。東南アジアのどこかの国の王宮にそっくりなんだよ。そこまで詳しいわけじゃないから、どこの国だったかはわからないが、それでも有名な建築物だから、ネットとかをあさればすぐに見つかる。そもそもバレンティアという国自体が、東南アジア系の街並みをしている。
「それならまずは宿を探して、それからリディアとルディアの実家に連絡かしらね」
「そうですね。私達がドラグニアに戻ってきたことは父にも報告がいってるでしょうから、私もまずは宿を決めるべきだと思います」
お義父様が近衛竜騎士団の副団長をやってる関係で、娘であるリディアとルディアもそれなりに有名なんだよな。そもそも双竜っていう二人の称号は、二人でウィルネス山に迷い込んだ時、聖母竜に遭遇して、ドラグニアまで送ってもらったことからつけられたそうだ。
「そうするか。どこかいい宿があったら教えてくれ。そこにしよう」
「そうですね、実家からもそんなに遠くないところに、「竜のねぐら」という宿があります。ベール・ホテルに似た感じの宿ですから防犯もしっかりしてますし、お風呂もあったはずです。その分高いですけど」
「そこにしましょう」
「「「えっ!?」」」
プリムがあっさりと竜のねぐらという宿に決めた。慣れてないフラム、ラウス、レベッカは驚いているが、俺達からすればいつものことだし、風呂があるって情報だけでそこがいい宿だと判断するようになってるからな。
「ち、ちなみにその宿って、一泊いくらなんですか?」
ラウスが恐る恐るリディアに尋ねているが、魔銀亭で俺達が泊まってた部屋と大差ないと思うぞ。
「私も詳しくはないけど、多分一泊350エルぐらいじゃないかしら」
むしろ魔銀亭よりは安いのか。となると部屋は、普通の宿と同じだな。などと思っていると、ラウスは目を見開いて驚いている。フラムとレベッカなんて、姉妹揃って倒れそうになっているな。まあ金銭感覚が崩壊してるって自覚はあるから、この三人の反応が普通なんだろうが。
「あなた達の言いたいことはわかるけど、このレイドじゃこれが普通みたいよ。順応しろとは言わないけど、早く慣れておいた方がいいと思うわ」
唯一マナだけが、三人に同意していた。マナもハンターとして活動してたから、俺達の金銭感覚がおかしいことは何度も指摘してきてたからな。まあお姫様だし、一般からはかけ離れてるのも間違いないんだが。
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「いらっしゃい。泊まりかい?」
竜のねぐらの受付にいたのは、恰幅のいい竜族のおばちゃんだった。いかにも肝っ玉母ちゃんって感じだな。
「ええ。十人ですがいけますか?」
「いい装備してるってことは、名うてのハンターかね。大丈夫だよ。部屋はどうする?」
「どんな部屋がありますか?」
「一人部屋、二人部屋、四人部屋、大部屋、それからレイドルームだね。レイドルームは四部屋しかついてないけど、詰め込めば全員入れると思うよ」
レイドルームがあるのか。ってよく考えれば商人とかも泊まるわけだし、レイドルームの成り立ちはフィールで聞いてたから、バレンティアにもあってもおかしくはないのか。だけどこれはこれで問題だな。
「どうするかね?」
「私達はレイドルームでいいけど、ラウスとレベッカだけ二人部屋っていうのもね」
そう、各部屋に二人ずつ泊まって、俺とラウスがリビングで寝れば済む問題ではあるんだが、レベッカ以外の女性陣は俺の婚約者で、既にみなさん抱かせていただいております。なので寝る時は、みなさん積極的にわたくしめの所へやって来られるのです。
「いえ、俺達は二人部屋でいいですよ」
「お邪魔になりますしね」
ラウスとレベッカもそのことは知っているんだが、だからと言って同じレイドルームに泊まるのは気兼ねするだろうから、そうなると二人部屋か、結婚前の男女ってことで一人部屋に入ってもらうかになってしまう。二人部屋でいいというのは、少しでも宿代を浮かせるためだろう。別に気にしなくてもいいし、する必要もないんだけどな。
いや、待てよ。
「そうだった、なんとでもなるんだった。女将さん、レイドルーム一部屋でお願いします」
「はいよ。一人一泊430エルだよ」
全部で4,300エルか。まあレイドルームだし、そんなもんだろう。俺はボックスから魔銀貨を五枚取り出し、カウンターの上に置き、お釣りとして銀貨七枚と部屋の鍵を受け取った。
「部屋は最上階の一番奥、聖竜の間だよ。夕食は部屋まで運ぶかい?」
おっと、どうやらルームサービスの料金込みだったようだ。それなら運んでもらったほうがお得感あるな。
「お願いします」
「はいよ。時間の希望はあるかい?」
「いえ、既定の時間でいいですよ」
「なら一時間後に運ぶから、食べ終わったら廊下に出しておいておくれ」
「わかりました」
女将さんとのやり取りを終え、レイドルームに入ると、俺は一番左の寝室の扉を開け、部屋の中を確認した。
「やっぱり広さは魔銀亭と大差ないな。これならベッドを少し動かせば、なんとかなるな」
「大和さん、先程何とかなるとおっしゃっていましたけど、何をされるんですか?」
「ベッドを動かすって……ああ、なるほど。その手がありましたね」
「ミーナもわかったの?」
ミーナだけじゃなく、プリムとマナ、リディアもわかったようだ。
「こういうことだ」
俺はベッドを動かし、スペースを作ると、そこに獣車を設置した。レイドの人数が多ければ部屋数が増えていくのは仕方ないんだが、ハンターは長期滞在することも多いから、その分部屋を占領されることにもなってしまう。宿屋からすればそれでもいいんだろうが、そうなると旅人や商人が困ることになってしまう。だから比較的裕福なレイドは一部屋だけ借りて、ストレージ・ミラー付き獣車を置くことがある。ストレージ・ミラーが付与されてるということは防音対策もできているということだから、少しぐらい騒いでも迷惑をかけないし、宿には人数分の料金を支払ってるわけだから、損をさせているわけでもない。問題がないわけじゃないが、獣車を使うのはこちらの責任になるので、万が一破損したとしても、宿は一切保証しないことにもなっている。
だから女将さんも、特に気にした様子はなかったというわけだ。
「そんなことができるんですね。知りませんでした」
「実際にやってるレイドって、そんなに多くはないものね。ホーリー・グレイブは持ってるけど、トライアル・ハーツは持ってなかったはずだし」
「そうなの?」
「ええ。ホーリー・グレイブというよりクリフの私物っていうのが正確なんだけどね」
「ああ、なるほどね」
トライアル・ハーツがストレージ・ミラー付き獣車を持ってなかったのは意外だが、ホーリー・グレイブ、というかクリフさんは持っていたようだ。奥さんや子供さんもいるから、そのために買ったんだろうな。
「ということは俺とレベッカは、一部屋ずつ使うってことですか?」
「別に二人一緒でもいいわよ。あと私達は獣車を使うから、レイドルームのお風呂も二人で使っていいわよ」
「ありがとうございます」
「レベッカ」
「わ、わかってるわよ!」
ヘリオスオーブじゃ17歳で成人になるわけだが、貴族やハンターなんかじゃ14,5歳でも結婚ってのも珍しくない。貴族の場合は政略結婚が大きな理由だが、ハンターの場合は魔物狩るわけだから、それで興奮が冷めやらず、そのまま異性を抱くってことはよくある話だ。だからハンターズギルドのある町には必ず娼館があるし、ハンターによる性犯罪も少なくない。若いハンターは後者になる可能性が高いが、相手がいる場合はその限りではない。もっとも避妊に失敗して子供ができてしまうこともあるそうだから、別の意味で問題になっているそうだ。
既にラウスは、何度かレベッカを抱いているそうだから、一緒に風呂に入ってもいいし、一緒のベッドで寝るのもあまり抵抗はないだろう。なんで俺が知ってるかというと、プリム達がレベッカから聞き出したからで、当然フラムの耳にも入っている。
二人とも、避妊はしっかりとな。俺が言えた義理じゃないが。
道中すっ飛ばして到着させました。
アミスターが、いわゆる中世ヨーロッパの王宮なのに対し、バレンティアの王宮はタイのチャクリーマハープラーサート宮殿をイメージしています。
そしてマナ、ユーリ、フラム、ラウス、レベッカの装備公開です。
それから婚約の短剣とブレスレットは全員共通で、エンゲージダガー(ミスライトスティレット)、エンゲージブレスレット(ブラックパールブレスレット)になっています。
髪飾りは頭装備にしているので、プリム、ミーナ、リディア、ルディアは以下の通りです。
プリム:ビーストライカー・サークレット(ミスライト・ストライカーサークレット)
ミーナ:ヒューマニック・ディフェンドサークレット(オーソドックス・ディフェンダーヘアピン)
リディア、ルディア:ドラゴニア・サークレット(ハイアラガン・ヒーラーサークレット)
マナリース・ラグナルド・アミスター 基本カラーはパステル・グリーン
武器:プラチナムソード(ゴルディオンバゼラード)
頭装備:エルフィン・サークレット(ボガトィーリ・ヒーラーサークレット)
胴装備:ミスリル・ドレスガード(アダマン・スレイヤーコート)
腕装備:ミスリルヴァンプレイス(アダマン・スレイヤーヴァンプレイス)
脚装備:ウインガードスカート(グリフィンスレイヤースカート)
足装備:ミスリル・ナイトソルレット(アダマン・スレイヤーソルレット)
アクセサリー:エンゲージブレスレット(ブラックパールブレスレット)
ユーリアナ・ラグナルド・アミスター 基本カラーはローズ・ピンク
武器:クリスタルロッド(シヴァ・アイスケーン)
頭装備:エルフィン・サークレット(ボガトィーリ・ヒーラーサークレット)
胴装備:ミスリル・ドレスローブ(アラクネローブ)
腕装備:ミスリル・ウインガードグローブ(キリムヒーラーグローブ)
脚装備:ウインガードロングスカート(オーソドックス・ヒーラーロングキルト)
足装備:ミスリル・ウインガードブーツ(キリムヒーラーブーツ)
アクセサリー:エンゲージブレスレット(ブラックパールブレスレット)
フラム 基本カラーはシーフォグ・ブルー
武器:ネーヴェ・セレジェイラ(アルテミスの弓)
頭装備:マジカリック・サークレット(ガーロンド・ヒーラーグラス)
胴装備:ミスリル・チュニックドレス(バハムート・ヒーラーローブ)
腕装備:ミスリル・アームガード(デモンズ・スカウトブレーサー)
脚装備:ウインガードスカート(グリフィンスレイヤースカート)
足装備:ミスリルソルレット(バハムート・ディフェンダーサバトン)
アクセサリー:エンゲージブレスレット(ブラックパールブレスレット)
ラウス 基本カラーはチャコール・グレイ
武器:ミスライトカットラス(ロミンサンエリート・カットラス)
ミスライトシールド(バハムートシールド)
頭装備:なし
胴装備:ミスリル・スレイヤーアーマー(ガーロンド・スレイヤーアーマー)
腕装備:ミスリル・バトルガード(ガーロンド・スレイヤーアームガード)
脚装備:ミスライトホーズ(ガーロンド・スレイヤーホーズ)
足装備:ミスライトソルレット(ガーロンド・スレイヤーソルレット)
アクセサリー:なし
レベッカ 基本カラーはロータス・ピンク
武器:ランスエッジ・ボウ(オーディターボウ)
頭装備:なし
胴装備:ミスリル・ドレスタバード(バハムート・レンジャータバード)
腕装備:ミスリル・アームガード(デモンズ・スカウトブレーサー)
脚装備:ウインガードスカート(グリフィンスレイヤースカート)
足装備:ミスリルソルレット(バハムート・ディフェンダーサバトン)
アクセサリー:なし




