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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
60/99

060・明かした正体

「でしたら、一つお願いがあるのですが?」


 俺より先に、プリムが口を開いた。さすがプリム、俺と同じ考えか。


「お願いじゃと?」

「はい。私達にとっては、どんな報酬をいただくより、そちらの方が重要ですから」

「ほう、私としても気になるな。天爵の位も都合がいいと言っておったから、それにも関係すると見たが?」

「はい。まずはこれを見てください」


 俺は自分のライブラリーを出し、陛下やグランドマスターにも見えるよう、少し大きくした。


「こ、これは!?」

「君は、客人まれびとだったのか!」


 やっぱ驚くよな。アミスター王家は客人まれびとの末裔なんだから、驚きも半端じゃないみたいだし、年齢的にアルカを作った客人まれびとに会った可能性があるグランドマスターも目を見開いている。バウトさんやファリスさん、宰相なんて、絶句して何も言えなくなってるからな。


「ええ。俺がヘリオスオーブに来たのは約二ヶ月前で、転移先はフィールの近くでした」

「そこで私と出会ったのですが、そこからの行動は、みなさんもご存知だと思います」

「そういうことであったか。どうりでいくら調べても、彼の出身地すらわからないわけだ」


 やっぱり王家としても調べていたか。マナは個人的に調べていたそうだが、俺のフィール以前の足取りだけはどうしてもつかめなかったって言ってたし、少し調べれば簡単にわかることだ。別に調べられて困ることはしてないから、気にはならないけど。


「そして客人まれびとであることを隠していた理由は、その特異性と異世界の知識を狙われるから、じゃな?」

「そうです。正直、お話しするかどうかは迷いました。ですがアミスター王家は客人まれびとに連なる方達ですし、マナとユーリを娶らせていただくわけですから、お伝えしておくべきだと思ったんです。それに、いい加減隠しておくのも面倒になってきたし、俺達がやりたいことを考えると、隠し続けるのは無理がありまして」


 フィールでもライナスのおっさんやレックス団長、ローズマリーさんは俺が客人まれびとだということを知っている。俺が隠し忘れてしまったことが原因なんだが、この先もそんなことがないとは言い切れないし、黙っておく変わりに無理やり協力を迫ってくる輩も出てくるかもしれない。もちろんそんなことがあれば断るが、それを理由にあることないこと吹聴されて、プリム達に迷惑をかけてしまうかもしれない。自分だけが迷惑を被るならなんとか耐えられるが、プリム達にもとなると、とてもじゃないが無理だ。だから俺は、アルカを降ろすと同時に客人まれびとであることを隠さないようにするつもりだ。


「察するに、そのやりたいことが、君達にとって何よりの報酬になるというわけじゃな?」

「そうです」

「聞かせてもらおう」

「はい。俺達は……」


 俺は客人まれびとの遺産である天空島アルカを見つけ、主として認められたこと、アルカをベール湖に降ろし、そこを拠点にしようと考えていること、そこにはオートマトンもあることなどを話した。


「つまりそのアルカという島は、我らのご先祖でもあるサユリ様が、共にやってきた仲間とともに作られた島であり、その石碑を読めなければ、主たる資格は得られないというわけか」


当然陛下も目を剥いて驚いていたが、アルカの所有権は口にしなかった。そればかりか、俺の所有地として認めてくれた。何人かの大臣は歴史的発見ということで国で管理するべきだと主張したが、天騎士アーク・ナイトが望んだものでもあるからとして、その意見は却下し、逆に俺に調査許可を求めてきたぐらいだ。


「しばらくは無理ですが、落ち着いたら是非」


 最初は心配だったが、やはりアミスター王家は欲がない感じだ。ラインハルト殿下も賛成してくれたし、俺が住むということはマナとユーリも住むことになるわけだから、下手な屋敷を用意するよりよっぽど安全だからな。


「それにしても、そんなものがあったとは。王位を継ぐ前に、一度見てみたいものだな」

「私達は連れて行ってもらったけど、すごく素敵な所だったわよ」

「そうですよね。あんな所に住んでもいいなんて、すごく楽しみです」

「なんと、もう行ってきたのか。その石碑にゲート・ミラーが付与されているということだが、客人まれびとの発想はすごいものだな」


 石碑のことも伝えたんだが、やっぱり驚かれた。いずれ招待するつもりだったし、その時に何日もかけて来てくれとは言いにくいからな。


「いずれご招待しますよ。ベール湖に降ろす以上、存在を隠す必要もなくなりますから」

「楽しみにさせてもらおう」


「ふぉふぉふぉ、どうやら問題はないようじゃな。あいわかった。ハンターズギルドとしての二人への報酬は、そのアルカという島をウイング・クレストの物と認め、以後の所有権や相続に関しても、君達の意思に従うということにしよう。まあアミスターが認めた以上、ギルドとしても口は出せんよ。そもそもベール湖は、アミスターの領内なんじゃからな。」


 ハンターは魔物を狩ることを生業としているが、古代の遺跡の発掘をすることもあるし、そっちを生業にしている者も存在する。そういった者達はトレジャーハンターと呼ばれ、ギルドでも出土品を買い取ったり、所有権を認めたりもしている。アルカは出土品ではないが、客人まれびとの遺産になるし、石碑は遺跡に分類してもいい物だから、ギルドの許可がなければ後々手間がかかることになっていただろう。

俺はそんなことは知らなかったんだが、マナが教えてくれたから、タイミングを見計らってギルドに申請することも考えていたわけだが、この場にグランドマスターが来てくれたわけだし、俺達への報酬に困っていたわけだから、俺達にとってもグランドマスターにとっても、悪い話じゃないだろうと思ったよ。


「……バウト、名誉ランクとはいえ、Hランクになった感想は?」

「正直、返上したい気持ちでいっぱいだな」


 バウトさんが弱気になってるな。頑張ってください。


「なんか私達にも暴露した形になったけど、構わないの?」

「ええ。ホーリー・グレイブやトライアル・ハーツにもお世話になりましたから、いつかご招待したいと思ってますしね」

「それはありがたいが、さすがに俺達が同時に王都を離れるわけにはいかんからな」

「ええ。どっちが先に行くかで揉めそうよね。私としては迷宮のことがあるから、トライアル・ハーツが先でいいと思うけど」

「ラインハルト様が招待された時に、護衛として同行するさ。エリス様やレスハイト様、それにマルカ……様もいることだしな」


 そういやマルカ様って、バウトさんの妹なんだよな。第二とはいえ王子妃になってるわけだから、妹相手でも敬称つけなきゃいけないとか、けっこうキツいんじゃないか?


「兄さん、そんな呼び方はやめてって言ってるでしょ」

「そうですよ。私にも敬称は不要だと、何度も言っているのに」

「そうは言われてもですね……」


 エリス様も親交があったわけだから、すごく親しいんだよな。確かエリス様は身分を隠してハンターになろうとしたんだが、そこをラインハルト殿下に見つかって一緒に登録して、その後何度か一緒に狩りに行ったりしてたんだよな。エリス様と違ってラインハルト殿下は身分を隠すわけにはいかなかったから、エリス様は最初から知っていたけど、ラインハルト殿下は結婚の話を持ち掛けられるまで気づかなかったそうだ。だけどレイドに入ってないエリス様のことは気になっていたから、懇意にしていたトライアル・ハーツに入れてもらえるよう、何度も頭を下げたらしい。

 うちの女性陣が、エリス様とマルカ様に聞いた話によれば、ラインハルト殿下はマルカ様といい仲だったそうで、妃の一人に迎える約束もしてあったそうだ。マルカ様もバウトさんも貴族の出じゃないし、次期国王のラインハルト殿下には後継ぎも望まれることになるから、マルカ様は二人目以降ということで陛下も許可を出してくれたんだが、そうなると誰を第一王子妃にするかという話が持ち上がる。マルカ様と結婚するには、先に貴族の誰かと結婚しなければならないから、その話は瞬く間に貴族の間に広まり、適齢の娘を持つ家のほとんどが自分の娘を進めてきたそうだ。

 だがマルカ様はエリス様が貴族の出だということを知っており、何度も一緒に狩りに行って気心も知れていたし、ラインハルト殿下を巡るライバルでもあったわけだから、多くの妃候補達をまるっと無視して、エリス様の実家でもあるウーズバルト子爵家を訪ね、無理やりエリス様を引っ張り出してきたそうだ。王家と子爵家では身分が違いすぎると諦めていたエリス様だが、相手に見初められれば話は変わるし、マルカ様もエリス様以外は認めるつもりはなかったそうなので、そのまま陛下も認め、同時に結婚することになったらしい。ある意味シンデレラストーリーだが、けっこう破天荒な人なんだよな、マルカ様って。

 その妹さん達に詰め寄られているバウトさんは放置して、俺達はグランドマスター立会いのもとで、ハンターズライセンスの更新を行うことになった。それが以下の通りだ。


ヤマト・ミカミ Lv.65 17歳

ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

ランク:ヒヒイロカネ(H)

レイド:ウイング・クレスト

異界からの客人まれびと、異世界の刻印術師、魔導探求者まどうたんきゅうしゃ、ヒポグリフの主、公爵令嬢の婚約者、見習い騎士の婚約者、双竜の婚約者、天空の覇者、亜竜の天敵、亜人の天敵、亜人皇帝の屠殺者、亜人王の虐殺者、アミスター王女姉妹の婚約者、ドラゴンスレイヤー、天騎士アーク・ナイト


プリムローズ・ハイドランシア Lv.63 17歳

ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

ランク:ヒヒイロカネ(H)

レイド:ウイング・クレスト

白狐の翼族、獣人連合の公爵令嬢、客人との絆を深めし者、ヒポグリフの主、客人の婚約者、極炎の翼、亜竜の天敵、亜人の天敵、亜人女帝の貫殺者、亜人女王の滅殺者、亜人翼帝の焦殺者、翼騎士ウイング・ナイト


ミーナ・フォールハイト Lv.27 17歳

ハンターズギルド:アミスター王国 フロート

ランク:ミスリル(M)

レイド:ウイング・クレスト

客人まれびととの絆を深めし者、客人まれびとの婚約者、白麗はくれいの騎士


リディア・ハイウインド Lv.34 16歳

ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア

ランク:ゴールド(G)

レイド:ウイング・クレスト

水竜の竜族、双竜、客人との絆を深めし者、客人の婚約者、亜人の天敵


ルディア・ハイウインド Lv.34 16歳

ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア

ランク:ゴールド(G)

レイド:ウイング・クレスト

火竜の竜族、双竜、客人との絆を深めし者、客人の婚約者、亜人の天敵


マナリース・ラグナルド・アミスター Lv.35 19歳

ハンターズギルド:アミスター王国 フロート

ランク:ゴールド(G)

アミスター王国第二王女、狩人姫ハンター・プリンセス客人まれびとの婚約者


ユーリアナ・ラグナルド・アミスター Lv.24 14歳

ハンターズギルド:アミスター王国 フロート

ランク:シルバー(M-S)

アミスター王国第三王女、客人まれびとの婚約者


 レベルは今回の氾濫だけで上がったわけじゃないぞ。特にユーリは、直接戦闘には参加してなかったんだからな。もちろんそれもあるが、この数日でマナやユーリにも魔法を教えてたから、それも関係してるんだよ。あとリディアとルディアはPランクからGランクになってしまったが、これはランクが見直されたからという理由が大きい。同じ理由でマナもGランクのままだ。それとプリムの称号に加わっている翼騎士ウイング・ナイトだが、けっこう派手な空中戦を披露し、タイマンでゴブリン・ウイングエンペラーを屠ったこともあって、王都のハンター達からそう呼ばれるようになっているから加わっているわけだ。

 あと今まではランクの表示は略称だけだったんだが、今回から現在のランクが略さずに、優先的に表示されるようになり、(登録時のランク―現在のランク)も略称で表示することができるようになっている。ユーリは現在Sランクだが、登録時はMランクなので、こんな表示になっているというわけだ。バウトさんも同じ理由で、ヒヒイロカネ(P-H)ってなっていたそうだ。

 これで報告も終わったし、報酬もいただいたわけだから、あと少し王都に滞在して、問題がないようだったらバレンティアに行くことができるかな。あー、行く前にアルカの館用に調度品とかも買わないといけないし、マナとユーリの普段着も用意しなきゃだな。フィールに戻ったらまた一式注文することにもなるしな。ああ、武器は陛下の作だから、防具だけになるか。確かマイライトならアルカからすぐに行けたはずだから、先に注文しといて、出来上がった頃に取りに行くこともできるんじゃないか?これはみんなとも要相談だな。

新年、明けましておめでとうございます。


アミスターの王家に、客人まれびとであることを暴露しました。以後、隠すことはなくなるでしょう。

ハンターズギルドの新制度ですが、制度が変わることはいつでもどこでもあり得ることなので、最初から途中で導入する予定でした。それにしてもレベル上がるの早いなぁ。新年にあわせての導入は偶然ですが。

マナのレベルがリディア、ルディアを上回りましたが、マナの初ライブラリーは大和に出会った直後、双子の最新ライブラリーは大和に魔法を教えてもらって一ヶ月ほど経ったものなので、マナも魔法を教えてもらってからレベルが上がったということになります。

あと数話でアミスター王国編終了となりますので、またキャラクター紹介もする予定でいます。

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