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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
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059・来たる報酬タイム

「次は此度の氾濫に際して、王都を救ってくれた者達への報償となる」


 お待ちかねの報償タイムか。俺は待ってないけど、同席してるバウトさんとファリスさんにとっては、ある意味これが本番だよな。


「まず騎士団、特にトールマンとディアノスは騎士団の指揮だけではなく、二体の異常種を倒した功績がある。よって騎士団には報奨金として10万エルを贈呈。トールマンとディアノスは異常種を倒した功績を称え、天騎士アーク・ナイトの地位と称号を与える」

天騎士アーク・ナイト!?」

「我々などにそのような地位と称号を与えてくださるなど、身に余る光栄です」


 天騎士アーク・ナイトっていうのは、アミスター建国神話の騎士のことで、揺ぎ無き国の守護者として語り継がれている、んだったか?詳しくはないが、ようは王の側近中の側近になって、天爵てんしゃくという爵位を与えられ、望めば領地を拝領することも可能だそうだ。


「おめでとうございます、父さん!」

「ありがとう、ミーナ」


 ミーナがすごく嬉しそうだ。ディアノスさんは義父になる人だから、その人が認められると俺も嬉しくなるな。


「そして此度の氾濫を食い止めるために戦ってくれたハンターには1万エルを、トライアル・ハーツとホーリー・グレイブには5万エルを与え、リーダーのバウト・ウーズ、ファリス・リーンベルにはクリスタイトを配したサーコートを授けたい」

「へ、陛下がお作りになられたサーコートを!?」

「それも、クリスタイトを使われた物など、よろしいのですか!?」


 クリスタイトは加工が難しいため、加工するためには魔法の付与が必要になる。つまり陛下が作ったサーコートには、何かしらの魔法が付与されているということになる。何を付与させたのかまではわからないが、普通に買えば白金貨が数枚は飛んでいく。それに加えて報奨金まで貰えるんだから、バウトさんとファリスさんが驚くのも無理はない。


「無論だ。外見もそうだが、実用性も高くしたつもりだから、そなたらが実戦で使っても耐えられると思う。ぜひ使ってくれ」

「あ、ありがとうございます、陛下!」

「大切に使わせていただきます!」


 ここまで言われたら、断れないよな。多分、サイズもしっかりと合わせてあるんだろうな。


「うむ。そして最後になってすまぬが、ウイング・クレストにもそれぞれ5万エルを。そして此度の氾濫においても多くの魔物を倒し、民を救ってくれた大和殿には、天騎士アーク・ナイトの称号を授けたい」


 いやいやいやいや、待て待て待て待て!天騎士アーク・ナイトってトールマンさんやディアノスお義父様と同じだよね!?天爵ってことだよね!?そんなの貰っても困るし、陛下の側近になるつもりもないですよ!?


「心配せずとも、私に仕えよとは言わぬよ。マナとユーリを娶ってもらう以上、爵位は受け取ってもらうつもりでもあったのだからな」

「確かにの。ワシもアレグリアの王女と結婚する際、侯爵の位を授けられたもんじゃよ」


 確かにお姫様と結婚するわけだから、高ランクのハンターであってもそれなりの体面は必要なんだろうけど、だからって天爵はないでしょ!


「いいじゃない、別に。天爵の権利は、私達にとっても都合がいいし、私達としてもあんたが認められたってことだから、けっこう嬉しいわよ」

「そうですよ。天爵位はアミスターだけの爵位ですけど、他国でも通用しますし、相応の実力があると認められていますから」


 プリム達にそう言われると、断れるもんも断れなくなる。だが冷静に考えれば、天爵は望めば拝領することもできるから、それを少し解釈を変えれば、ベール湖にアルカを降ろすことも問題がなくなるか。


「わかりました、ありがたく天爵の位、頂戴いたします」

「うむ。何か希望があれば、後で聞かせてもらう。そしてプリム殿、そなたにも天騎士アーク・ナイトの称号を授けたかったのだが、バリエンテの姫君でもあるそなたに、勝手にアミスターの称号を授けるわけにもいかん。なのでそなたには、出来る限りのことをさせて貰うことで報いたいと思う」


 俺だけじゃなく、プリムだって異常種はけっこう倒したから、当然のように報償があるはずなんだが、やっぱりバリエンテの姫ともなると、勝手にアミスターの爵位を与えるってわけにはいかないか。普通に考えたら当然だが。


「ありがとうございます、陛下。では私からは一つだけ。私はバリエンテの地をアミスターに返還したい、と考えております。もちろんこれは私の独断ですので、レオナス王子や臣下の者の考えも聞かなければなりませんが」


 前から言っていたが、ついにプリムはアミスター王家の前でもその考えを口にしてしまった。バリエンテの姫と呼ばれてはいるが、実際には公爵家の生まれであるプリムがこんなことを言うのは、普通なら問題になるはずだ。だがバリエンテ王家は、暴獣王に抵抗を続けているであろうレオナス王子とプリムしか生き残っていないから、越権行為ってわけでもないか。


「プリム殿、それは……」


 さすがに陛下やラインハルト殿下も驚いている。隣国の、公爵家とはいえ王家に縁のある者が、ある意味では自分の国を売るような発言をしたわけだし、現獣王の意向は一切無視してるんだから、それも当然だろう。


「いえ、兵を出せと申しているわけではありません。獣王ギムノスは先代獣王を謀殺し、私の両親の命までも奪った男。仇は私が自分の手で討つつもりです。ですが獣王が死ねば、バリエンテに混乱をもたらすことにもなります。それにレオナス王子が、素直に王位に就くとは思えませんから、その場合はアミスター王家に、バリエンテも治めていただきたいのです」


 やっぱりプリムは、自分の手で仇を討ちたいんだな。そしてプリムには、それができる力がある。だけどそんなことをすれば、たとえ暴獣王を討つことができたとしてもプリムは犯罪者になってしまう。王位簒奪者ではあるが、ギムノスは正当な手順を踏んで王位に就いたから、その王を討つとなれば、相応の理由が必要になる。今のバリエンテの情勢が不明な今、迂闊にバリエンテの王城に攻め込むことは、プリムの身を危険に晒してしまうことにもつながってしまうから、今は時期を待っている状態だ。もちろん時期が来れば、俺は迷わずプリムに手を貸すぞ。


「そなたが王位に就く、つもりはないか」

「無論です」

「さすがに事が事だけに、今すぐ頷くことはできん。だが出来うる限りのことはしよう」

「ありがとうございます、陛下」


 ここで簡単に頷かれたりなんかしたら、そっちの方が怖いからな。


「バリエンテの件については、ギルドとしても遺憾に思っておるよ。なにせ現在バリエンテにいるハンターはGランク以下で、Mランクハンターの横暴な振舞いが目につき、治安も悪化し、そのために連日戦士団が出動しておるが、その戦士団も士気が低下しておるそうじゃ。それとレオナス王子じゃが、やはりバリエンテにおられる。ハンターはGランク以下と言ったが、レオナス王子に従うハンターも少なくなく、共に行動をしているハンターにはPランクもおるそうじゃから、今のところは無事のようじゃ」

「そうですか」


 これは朗報だが、同行してるっていうPランクハンターも身を隠しながらだろうし、何より治安が悪化して、しかもまたMランクハンターが関与してるとなれば、本気で問題だな。バレンティアでリディアとルディアのご両親にご挨拶を終えたら、やっぱりバリエンテにも寄った方がいいかもしれないな。


「君達はこの後、バレンティアに向かうと聞いておる。そこでも情報を入手できるよう、ギルドマスターに伝えておこう」

「ありがとうございます、グランドマスター」

「礼には及ばん。我々としても、無視はできん問題じゃからな」


 深々と頭を下げるプリムだが、グランドマスターは笑って制してくれた。


「ではワシからも、今回の迷宮氾濫に協力してくれたハンターに、ギルドから5万エルを贈呈しよう。それからホーリー・グレイブにはランク4の攻略報酬を支払うことにする」

「で、ですがグランドマスター、私達は迷宮を攻略したとは……」


 俺も同行したが、確かにあれは攻略とは言わないだろう。行ってみないとわからないのは間違いないが、それとこれとはさすがに話が別だからな。


「確かに報告では、既に守護者は倒されており、コアもなかった。じゃがおそらくファリス君、君とクリフ君、そして大和君もいたわけじゃから、ランク4の守護者程度ならば倒せていたはずじゃよ。ランクや迷宮の特徴もあるから一概には言えぬが、ランク4の守護者ならば、メタル・ブルードラゴンと同程度の強さになるじゃろうからな。それに今回の氾濫は、ランク5でも足りぬ脅威じゃったから、それを踏まえてランク4の報酬にさせてもらっているんじゃよ」

「そういうことでしたら……」


 ファリスさんとしては、攻略できたわけじゃないのにそんな報酬をもらうわけにはいかないって感じだな。だけど実際、あれだけの氾濫を食い止めるために戦って、その直後で迷宮に入ったんだから、肉体的にも精神的にもけっこう疲労している。武器や防具だって傷んでるから、買い替えるにしろ直すにしろ、それなりの金は必要になるからな。これが三流ハンターなら報酬の上乗せを要求するし、二流ハンターなら辞退したんだろうが、一流ハンターはどちらもしない。自分の想定以上の報酬だったとしても、相手が適切だと判断したんだから、それを否定することは相手に対して失礼になるってことをよく知っている。


「うむ。それとトライアル・ハーツじゃが、ホーリー・グレイブが迷宮に潜っている間に王都を警護してくれていた功績も加味し、ランク3の報酬を支払わせてもらう」

「そ、そんなにですか!?」


 バウトさんは、さらに驚いていた。実際にどちらが迷宮に入るかは少し揉めたが、自分達が引いたわけだからな。マナのことがあったとしても、そんなことは理由にならないことぐらい、ハンターなら理解している。代わりに王都の守りを固めていたわけだが、魔物の襲撃があったわけでもなく、ただ待機してただけでそんな報酬が貰えるなんて、普通ならありえない。


「今回の氾濫は、それだけ異常だったということじゃ。そしてバウト君、君には別に報酬がある」

「俺個人に、ですか?」

「うむ。氾濫の最中、ハンター達を纏め上げてくれた実績を評価し、君をP-Hランクに認定したい」

「P-H?A-Hではなく、ですか?」

「そうじゃ。この場にいるハンター達から、新しいランク制度に移行させようと考えておる。その関係で、君をはじめとした多くのものがランクダウンしてしまう。これについては、謝ることしかできんがの」


 確かにそうなんだよな。特に今までのAランクは、レベル41~50の人はPランクになってしまうし、A-Hランクの人も同様だ。まあそのPランクもGランクになるし、Gランクの一部はMランクになるわけだから、けっこうな混乱が起きるだろうし、文句を言ってくる輩もいるだろうけど、ギルドが決めたことだから逆らえばライセンスを剥奪されるだけだしな。

 それに伴って、今まで高ランクといえばA、Hランクを指していたが、そこにPランクも加わることになったし、待遇とかも今までと変わらないそうだから、混乱するのは最初のうちだけで、一年もすれば周りも慣れてくるだろう。


「ありがとうございます、グランドマスター。名誉ランクとはいえ、その名に恥じないよう、精進を重ねてまいります」


 A-Hランク改めP-Hランクは、レイド指揮に秀でたハンターに与えられる名誉ランクだが、有事の際はA、Hランクにも指示を下せる権利を持つ。特にHランクハンターは個人行動を好むし、それを可能にする実力もあるから質が悪い。俺が言うなって話だが、実際にそうなんだから仕方がない。それは新Aランクハンターも似たり寄ったりだから、レイド指揮は苦手な人が多いそうだ。

 だけどバウトさんは、あれだけの氾濫の中でもしっかりとハンターに指示を出していたし、プリムも指示に従って行動していたそうだから、指揮能力に関しては何も問題ないことが証明されたといえる。


「そしてウイング・クレストじゃが、レイドとしての報酬はランク2とさせてもらう。そして大和君、プリム君への報酬じゃが、こればかりは難しくてな……」


 そうでしょうよ。正直、金はあるに越したことはないが、既に5百万エル以上の蓄えはあるし、特に緊急で大金が必要ってわけでもないし、そもそもこの氾濫は遭遇戦でもあったから、氾濫時におけるハンターの報酬規程分でも十分なんだよ。それに普通に金銭で支払うとしても、二人で十体近く異常種を倒したから、それだけで神金貨様が何枚もお出ましになられるんだからな。

だからこれはむしろ、俺達にとって都合がいい。

当たり前のように受爵しました。定番ですがお姫様と結婚するわけですから、やっぱりそれなりの立場は必要かなと。

それからファリスとバウトが王様からもらったサーコートのデザインは、ファリスがガラント・サーコート、バウトがヴァラー・サーコートで、名称はミスリル・アミスターサーコートとしてあります。


今日で2015年も終わりです。皆様、よいお年を!

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