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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
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057・フロート迷宮コア破壊作戦実行中

 フロートの迷宮が氾濫を起こしてから二日、俺は今、マナやファリスさん達ホーリー・グレイブとともに、そのフロートの迷宮にいる。

 あの後フロートを襲った魔物達は、ハンターや騎士団の活躍もあって、無事に全て倒すことができた。もちろん俺達も魔物を狩りまくったし、怪我人は多かったが、幸いにも死者はでず、建築物の被害も最小限で済んだ。だから陛下からだけではなく、ハンターズギルドからも依頼を受け、俺達が迷宮に入り、コアを破壊することになった。HランクやAランクハンター全員を迷宮に向かわせると、万が一の事態に対処できないので、俺とプリム、ホーリー・グレイブとトライアル・ハーツのどちらかが潜ることになったんだが、マナが同行を申し出てきたこともあって、ホーリー・グレイブが行くことになり、マナを守るために俺も名乗りを上げたというわけだ。プリム達は不満そうだったが、普通に考えれば迷宮に潜る方が危険度が高いから、一応納得はしてくれた。バレンティアに向かう道中でアルカに立ち寄って、二日ほどがっつりと相手をすることを約束させられたが。レラに例の精力料理作ってもらわなきゃ……。


「ところでファリスさん、コアルームってまだかかるんですか?」

「いや、もうすぐよ。本当ならこんな簡単に辿り着くことはできないんだけど、溢れた直後だから、大した魔物も残ってないのが幸いしたね」


 ファリスさんは何度かコアルーム近くまで来たことがあるそうだが、コアルームは守護者に守られており、Aランクハンターが何人も集まってようやく倒せる程強力なんだそうだ。迷宮は氾濫を起こさない限り、ハンターにとっては良い狩場、国としても希少な素材を手に入れる機会にもなっている。いつ出現したのかわからないことも多いので、出現が確認されれば、Pランク以上のハンターやGランクのレイドを指名して調査を依頼し、内部の状況を確認し、そこで驚異度を判定を行う。

 ランクは1~5まであって、数字が大きくなるほど危険度が上がり、1と2の間はMランク以上のハンターに入る許可が下りる。3になるとコアを破壊する攻略が前提になるため、Gランク以下のハンターには制限がかけられ、4に認定された迷宮は、即座にAランクハンターが緊急でレイドを組み、攻略し、コアを破壊する。そして5になると、いつ魔物が溢れ出すかわからないため、迷宮への出入りは全面的に禁止され、Aランクは勿論、Pランクのハンターにも待機命令が出されることになっている。十数年ほど前、ソレムネ帝国にあった迷宮が溢れ、多くの人が犠牲になったことがあったそうだが、Oランクハンターが迷宮のコアを破壊し、町を襲っていた最上位の魔物達を倒して終息に導いたんだが、その後で亡くなったと聞いている。以来Oランクハンターは現れておらず、各国も迷宮の監視に力を入れていたため、危険度が5になったことはないそうだ。

 だがフロートの迷宮は、危険度が2と、Pランク以上のハンターからすればさほど難易度は高くない。いつ危険度が上がるかわからないから、アミスターも厳重に監視していたし、ギルドもハンターからの情報を仕入れることで、逐一状況を把握していたから、なぜ今回急に氾濫を起こしたのかが全く不明だ。だが俺が倒したメタル・ブルードラゴンやコボルト・ウイングナイト、プリムが倒したゴブリン・ウイングエンペラー以外にもゴブリン・ロードやブラックファング・フェンリル、リッチ・カーディナルといった異常種が溢れ返っていて、ソレムネ帝国の迷宮が溢れた時でも、こんな数の異常種は出てこなかったとシエーラさんが真っ青な顔で言っていた。つまり、どう考えてもあり得ないってことだ。


「大した魔物が残ってないって言っても、大和君とファリスがいなかったら、どうなってたかわからないがな」


 呆れたように笑っているのは、ホーリー・グレイブのサブ・リーダーをしているPランクハンターのクリフ・リーンベルさんだ。人族でレベルも40と高く、そう遠くないうちにAランクになるんじゃないかって言われてる。そして驚くなかれ、ファリスさんの旦那さんでもあるんだよ。


「私も賛成だけど、クリフだってファリスが討ち漏らした魔物を、しっかりと狩ってたじゃない」


 マナの言う通り、ファリスさんは何度か魔物を討ち漏らしていたが、これはマナやホーリー・グレイブに経験を積ませるためで、俺もそれを承知していた。何が襲ってくるかわからないから、俺とファリスさんが最前列を固めているが、襲ってくる魔物はGランクなら問題なく倒せるぐらいの強さしかなかったので、少し本気を出せば、討ち漏らすことはない。緊急時だからこそ不測の事態に対する経験が必要になる、とファリスさんやクリフさんに言われたから俺も少しは後ろに通していたんだが、マナ達が手こずった魔物はしっかりとクリフさんが仕留めてくれたから、誰も大きな怪我を負うこともなく、ここまで進むことができていた。


「そりゃこいつらはともかく、マナ様に万一があったら、俺の命が危ないですからね」


 冗談めかしてクリフさんが言う。そんな魔物が現れたら、俺がいの一番に叩き潰してるっての。誰が好んで、マナを危険な目に合わせるかよ。

 なんて返したら、マナが真っ赤になってファリスさんの背中に隠れてしまった。


「マナ様って、本当に初心なんだから。プリムも言ってたけど、今回同行してもらったのは、ある意味じゃ正解だったわね」


 俺もそう思う。マナは俺の婚約者の中じゃ一番初心で、俺と手を繋ぐだけでもハイエルフのような白い肌を、耳まで赤く染めるぐらい照れてしまう。それでも繋いだ手を放そうとしないのがいじらしくて可愛いんだが、おかげでまともに歩くこともできなくなる。ハンターとして過ごしてきたせいで、女の子らしいことはほとんどしなかったそうだから、仕方ないっちゃ仕方ないんだろうけどな。


「というかファリスさん、プリム達とそんな話をしてたんですか?」

「少しだけどね。あっと、その先を右よ。あとは道なりで、コアルームに着くわ」


 おっと、ここを右か。初めて迷宮に入ったが、迷宮の中は本当に迷路になっていたが、地下とは思えない空間もあったから驚いたのなんの。森や湖もあったし、空に浮かぶ遺跡みたいな区画も通ったな。下に落ちたらどうなるのかが疑問だが、自分で試したいとは思わん。落とした魔物が、小さくなって見えなくなっていったからな。

 などと考えていると、コアルームに到着した。


「ここがコアルームよ。この中に守護者がいて、さらに奥にコアがあるわ」


 ここがコアルームか。でっかい扉で、いかにもって感じだな。あれだ、ファンタジーの魔王城なんかにありそうな禍々しい扉、っていうイメージが一番近いと思う。


「確か守護者は、迷宮の中でも一番強い魔物なんでしたっけ?」

「そう言われている。迷宮にいる魔物の強さに比例して、守護者も強くなるという説もあるな。確か迷宮内の魔物の魔力を吸収して、自分の魔力に変えているんだとか」


 それが事実なら、十体以上の異常種を放出したこの迷宮の守護者は、とんでもない強さになってるでしょ。まあそんな魔力を吸収しても、体の方が耐え切れなくて崩壊、ってこともあるだろうが。


「ちなみに守護者の種族は?」

「サイクロプス・エビルオーガだ」


 サイクロプス・エビルオーガか。サイクロプスの最上位種で、身長が5メートルもある巨人にして一つ目の鬼、サイクロプス・オーガ。その異常種であるサイクロプス・エビルオーガ、しかも守護者ということは、オーク・エンペラーやメタル・ブルードラゴン以上の強さを持っているってことになるな。


「姐さん、俺達、足手まといになりませんか?」


 今回俺達に同行したホーリー・グレイブのメンバーは、Pランクが三人だ。つまり俺、マナ、ファリスさん、クリフさん、そしてPランクのハンター達と、全部で七人で移動してるんだが、彼らが泣き言を言いたくなる気持ちもわかる。もちろん彼らもPランクの実力と実績、レベルを持っているんだが、王都を襲った魔物以上の強さを持つ守護者が相手となれば、クリフさんはおろか、ファリスさんだって戦力になるかわからない。メタル・ブルードラゴンなんて、Aランクが数人がかりでも倒せるかどうかっていう魔物なわけだから、それ以上の相手となれば逃げたくもなるだろう。というか、Aランクはレベル41から60までのハンターが対象だから、同じAランクでもピンキリなんだよ。せめてレベル51以上にもう一つランクを設けるか、ランクの見直しをした方がいいと思うんだがな。


「あんた達の言いたいことはわかるけど、牽制ぐらいはできるでしょ。大和でも一人で勝てるかわからないし、そもそもHランクだからって一人で戦わせたりなんかしたら、もしもの時は全滅しかないんだからね」


 その通りだ。地上なら逃げるという選択肢もでるだろうが、迷宮、それも最深部のコアルームなんて、どうやっても逃げるのは不可能だ。ゲート・ミラーが使えれば話は別かもしれないが、生憎とこのメンバーでゲート・ミラーを使える人はいない。負けるつもりはないが、それでも万が一を想定しておかないと本当に全滅する。それだけじゃなく、多くの人が危険に晒されることになる。


「大和の言う通りだ。お前達だってPランクなんだから、足手まといになることはない」

「そう、ですよね。すんません、弱気になってました」

「あんな異常種の大群、見たことありませんでしたからね」

「俺やファリスだってないさ。そろそろ行くぞ」

「「「おうっ!!」」」


 さすがホーリー・グレイブのサブ・リーダー。もともとホーリー・グレイブは、クリフさんが立ち上げたレイドなんだそうだ。そこにたまたま一緒に依頼をこなしたファリスさんが、クリフさんを気に入って加入したのがきっかけで、二人は結婚し、その後ファリスさんはメキメキと実力をつけ、Aランクにまで登り詰めたってマナが教えてくれた。なるほど、当時はクリフさんの方がレベルが上だったのか。ファリスさんの方が強くなってしまったからリーダーを譲って、自分は補佐に徹することでファリスさんや一緒に戦ってきたハンター達を支える縁の下の力持ちになったわけか。まさにいい男ってやつだ。実際クリフさんにももう一人奥さんがいて、家事や育児なんかはその人に任せっきりなんだそうだ。

 それはともかくとして、いよいよコアルームに突入だ。腕がなりますなぁ。

初の迷宮です。まあ魔物はほとんど外に溢れましたから、もぬけの殻に近いんですが。襲ってくる魔物のランクはSからGがほとんどで、たまーにPが混ざるぐらいですから、大和はもちろん、ファリスの敵でもありません。

そしてコアルームに突入!さあ、果たしてどうなるのか!?

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