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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
53/99

053・お空の島は解放的

 そんなこんなでギルドでマナとユーリのウイング・クレストへの加入手続きを終え、獣舎でジェイドとフロライトの新しい獣具を、材料持ち込みで注文してから、俺達はフロートを出た。あ、獣具の材料は、俺のボックスに突っ込んであったフェザー・ドレイクで、念のため二匹置いてきましたよ。職員さん達は目を丸くしてたけど、プリムのボックスにもまだまだ入ってるから、皮素材に困ることはないんだな、これが。


「なるほど、魔法のイメージを固めるだけじゃなく、名称をつけることで実像に近づけるってわけね」

「すごいです……。こんな方法があったなんて……」


 マナもユーリも、俺達が実演するとすぐに納得してくれた。特にユーリには後方から砲台になってもらうつもりでいるし、本人もそれを望んでくれたから、説明に妥協は一切ない。


「最初は自分の得意属性から始めればいいと思う」


 これも大切なことだ。実際俺は風と水、プリムは火と風、ミーナは土、リディアは水、ルディアは火魔法から始めたからな。確かマナが風、ユーリが水が得意だって話だから……あれ?偶然にも、俺の得意魔法と一緒じゃね?


「なるほど、つまりマナもユーリも、大和に手取り足取り胸取り教えてもらえるってことね」


 いやプリムさん、手取り足取りはともかく、胸取りって何ですか?


「えっ!?」

「そ、そんな……私は、その……小さいですし……」


 うん、ユーリが小さいのは、年齢的にも仕方がない。年相応だとは思うが、エルフやハイエルフ、ダークエルフは基本ぺったんこ、とまではいかないが小さい人が多いからな。まあ姉の方は、かなりデカいんだが。


「いや、そこまでするつもりはないからな?そんなことしなくても、しっかり教えるぞ?」

「よろしくお願いします、大和さん!」

「よ、よろしくお願いするわよ!」


 それにしても、マナはけっこう引きずるな。慣れてきた俺が言うのもなんだが、こいつらの話についていけるかが心配になるぞ。最近じゃ俺の前だろうとおかまいなしに、アッチ系の話をしてくるからな。


「とりあえず何回か試して、それからアルカに行こう。魔法は急がなくてもいいし、そもそもの目的はアルカだからな」

「そうしましょか。それに魔法の練習をするにしても、アルカの方が安全だし」


 アルカには魔物も盗賊もいないから、夜でも安全だ。さすがに湖に落ちたりしたら話は別だが、外敵の心配がないってだけでも十分安心できる。まあ夜中に外出する理由もないんだが。


「獣車で簡単に聞いたけど、客人まれびとの遺産なのよね?末裔としても興味深いものがあるわ」

「本当ですね。ですがそれより、大和さんが客人まれびとだったことの方が驚きです」


 マナはギルドでライブラリーを確認した時に気づいたから、先に教えておくことになったわけだ。


「アミスターの王家は客人まれびとの血が流れてるから、ある意味じゃ大和とは、遠い親戚っていう可能性もあるしね」

「さすがにそれはないと思うが、俺の世界との繋がりが少しでもあるってことにはなるから、俺としては少し嬉しいけどな」


 アミスター王家に嫁いだ客人まれびとはサユリ・ラグナルド・アミスターという名前なんだが、王家に嫁いでからの記録しかないから、旧姓がわからないんだよ。それに俺の師匠の一人に同名の人がいるし、珍しい名前でもないからな。コロポックル達なら知ってるとは思うが、急いでるわけでもないし、必要になったらでいいと思ってるから、聞くつもりもない。


「これも縁、なんでしょうね。大和さん、周囲には誰もいないみたいですよ」

「わかった。それじゃ行くぞ」

「獣車の中にいても、周囲の状況がわかるなんてね。刻印術、だっけ?本当にすごいわね」


 ミーナがリビングに設置してあるソナー・ウェーブの魔石を確認してくれたが、マナからすれば画期的だったようだ。ヘリオスオーブにはレーダーっていう概念がないから、周囲の確認とか監視とかは、目視か結界とかで感知するしかないからな。

 驚くマナとユーリを横目に、俺達は獣車に乗ったまま石碑の転移門を通って、アルカに入った。


「すごいです……」

「まさか空に浮かぶ島だったなんてね……」


 予想通りだが、マナもユーリも驚いていた。こちらに関しても簡単に説明はしてたんだが、『島』としか伝えてなかったからな。


「これでよしっと。お疲れ、ジェイド。今日はもう自由にしてていいぞ」


 獣車から放し、獣具も取り外してそう告げると、ジェイドは嬉しそうに一声鳴いて、ルナを背に乗せてフロライトと一緒に飛び立った。ルナとも仲良くなったようで何よりだ。


「お待ちしておりました、皆様」

「ただいま、シリィ、レラ。他のみんなは?」

「それぞれの持ち場で作業をしております。間もなく戻ってくるでしょう」

「なら、先に二人に紹介しておくよ。俺の婚約者のマナとユーリ。アミスターのお姫様だ」

「は、初めまして!ユーリアナ・ラグナルド・アミスターです!」

「マナリース・ラグナルド・アミスターよ。よろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 シリィとレラだけだとは思わなかったが、ノンノは高確率で牧場にいると思ったよ。ジェイドとフロライトを連れてきてから、けっこう忙しそうにしてることが多かったからな。


「それにしても大和様。アミスターの姫様ともご婚約しているとはお聞きしていましたが、まさかお二人も連れてくるとは、さすがに予想外でした」

「夜はいつも激しいですからね。プリム様、ミーナ様、リディア様、ルディア様では足りないということなのでしょう」


 だから待てよ、お前ら!んなこと思ったことねえし、しっかり満足してるわ!つか激しいって、なんで知ってんだよ!?


「え、えと……その……」

「わ、私達、今日婚約したばかりだし……まだ早いんじゃないかなぁって……」


 見ろ!マナもユーリも引いてるじゃねえか!なんでお前らは、そっち系の話をすぐ振るんだよ!?


「なるほど、お二人も処女なのですね。レラ」

「お任せください。今宵も私が腕によりをかけて、しっかりとお作りさせていただきます」

「だから止めろって言ってんだろ!婚約したその日に手を出すつもりはねえし、そもそもできるわけねえだろ!」


 俺は力の限り叫んだ。


「ですが寝室にはベッドは一つしかありません。他の皆様とはイタすのに、マナ様、ユーリ様には手を出さないのは失礼になりますし、そもそもどうやってお休みになられると言うのですか?」

「今日シなきゃいいだけだろ!」


 俺の一言に、プリムとルディアが目を吊り上げ、ミーナが悲しそうな顔をし、リディアが目に涙を浮かべた。失言なのか?これは失言なのか!?


「えっと……別に私は、獣車でもいいんだけど……」

「そうは参りません。館があるというのに一国の姫君を泊めず、あまつさえ獣車などで寝泊まりさせるなど、あってはならないことです」

「ご主人様の子孫にあたる方々なのですから、私どもとしましても礼は尽くさせていただくつもりです」


 だからどうするんだよ!?プリム達は何度か抱いてるからいいとしても、マナもユーリも今日婚約したばかりだし、ユーリなんて手を出したらお巡りさんに捕まるレベルなんだぞ!いくらなんでも、できるわけねえだろ!


「大和の考えは、よ~っくわかったわ。レラ、お風呂って入れるわよね?」

「もちろんです。いつお戻りになられてもいいように、いつでもご入浴いただけるよう準備していますから」

「なら決まりね。リディア、ルディア」

「はい!」

「任せて!」


 プリムが目配せをすると、リディアとルディアが俺の両腕をしっかりとホールドした。以心伝心か、君ら!?


「マナ様もユーリ様も、一緒に参りましょう。ここのお風呂はすごいんですよ」


 ミーナはミーナで、マナとユーリを露天風呂に誘っている。この流れは間違いなく、全員で入浴タイムに突入だ。


「えっと、もしかして、大和さんもご一緒に?」

「もちろんです」


 恐る恐るお伺いを立てたユーリに、あっさりとミーナが、とても眩しい笑顔で答えた。


「わ、わかりました。その、恥ずかしいですけど、いずれ結婚するのですから、裸を見られることも当たり前ですよね」

「ちょ、ちょっとユーリ!なんでそんな簡単に納得してるのよ!?」


 俺もマナに同意だ。だが俺は、リディアとルディアに連れられて、一足先に風呂場に拉致されかけている。逃げるのは簡単だが、そんなことをすれば禍根を残すだけだし、何よりイヤじゃない。イヤじゃないんですよ。


 ―マナ視点―


「お姉様、そんなに恥ずかしがらないでください。大和さんと結婚すれば、こういったことは当たり前になるんです。なのにお姉様は、夫に肌を晒さないというのですか?」

「そ、そういうわけじゃないけど……私は今日初めて、大和と会ったのよ?出会ったその日に、なんて……その、いくらなんでも……」


 互いに知ってはいたけど、私と大和が顔を合わせたのは今日が初めてで、しかも私から求婚したようなものよ。そりゃ私だっていつかは、っていう想いはあるけど、さすがに今すぐなんて、覚悟ができてないわ。


「確かにそうかもしれません。ですが私だって、初めてお会いしたのは一月ほど前ですが、今日再会するまで、数日しか顔を合わせていないのですよ?それに王族や貴族なら、一度も会ったことがないのに婚約して、初めて会う日が結婚式で、その後初夜というのは当たり前。アミスターではあまり聞きませんが、他国ではこれが普通です。しかもこの婚約はお姉様が望まれたのですから、いつまでも恥ずかしがっていては大和さんに失礼というものです」


 私は妹に言い返す言葉を持たなかった。確かに大和との婚約は、私が望んだことよ。そして王族や貴族が、結婚相手を選べないということもよく知っている。アミスターなら多少は自分の希望も通るけど、心から望む相手とは限らない。その望む相手と結婚することができるんだから、いつまでも恥ずかしがっているのは、確かに大和に失礼なのかもしれない。だけど、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのよ!


「あなたの妹って、はっきりと物を言うわね。だけど私もユーリの意見に賛成。私達だって自分で望んで大和と婚約したから肌を晒すし、大和が望むならいつでも体を差し出すわ。それが女の幸せってものよ?」

「プリムさんのおっしゃる通りです。私だって大和さんが望まれるのでしたら、この体を差し出してもいいと思っているのですから」


 プリムがここまで言うとは思わなかったわ。いえ、プリムだけじゃなく、ミーナもリディアもルディアも、本当に大和を愛しているのがよくわかる。私も気持ちは負けてないつもりだけど、まだ心の準備ができてないのよ。結婚までとは言わないけど、せめて数日は待ってほしいわ。


「マナ様、恥ずかしい気持ちはよくわかりますが、いつか大和さんに見せることになるんですから、それが早くなっても問題はありませんよ?」


 ミーナもたたみかけてきた。三人に独自の理屈で説かれると、私が間違ってるんじゃないかと思えてくるわね。実際、説得される寸前だし。


「なんにしても、お風呂に入ってから考えましょう。あなたの気持ちはわかるし、大和だって無理に求めようとはしないから」

「そうですね。あ、マナ様。その時は私達が、しっかりとサポートいたしますから」


 ミーナの笑顔が眩しいけど、それもそれで恥ずかしすぎるわよ!なんでみんなの前でシなきゃいけないの!?


「え?それが普通でしょ?」


 プリムが事も無げに言ったけど、そんなわけないでしょ!基本は一対一よ!きっと、多分、絶対!


「一対一も憧れますけど、みんなでスるのも楽しいですよ?」


 ディアノスの娘だから何度か話したことはあるけど、ミーナってこんな娘だったかしら?もっと真面目で大人しい娘だと思ってたんだけど。プリム達にすっかり毒されちゃったってこと?


「マナ様、愛する男性の前では、女はどんなこともできるようになるんです」


 説得力があるようでないようだけど、ここまで変わっちゃったんだから、本当にそうなんでしょうね。


「そうよ、マナ。それに初めてって、けっこう大変なのよ?」

「私達の時が、まさにそうでしたからね」

「そ、そんなにだったのですか?」

「ええ。私達全員を相手にしてくれたわよ?」


 よ、四人も一度に相手したの!?嘘でしょ!?ユーリ、なんであなたは頬染めながらも、そんなに嬉しそうなの!?とっても逞しいんですね、じゃないわよ!いや、その通りなんだけど!


「大丈夫ですよ。大和さん、とても優しくしてくださいますから」

「私達の初めての話は、リディアとルディアも交えたほうがいいわね。さ、行きましょう」


 ちょ、ちょっと待って!だからまだ、心の準備ができてないんだってばっ!


「大丈夫です。その話をすれば大和さんは恥ずかしがって、先に上がってしまいますから」

「そうそう」


 プリムが私の左腕を、ミーナが私の右腕を掴むと、私は先程の大和のように運搬されることになった。ここには私の味方はいないみたい。

 絶賛混乱中の私は、脱衣所で服を脱がされ、少し小さな布で体を隠しながら温泉?とやらに入ることになった。もちろん大和は既に入っていて、私は初めて男に裸を見られたわ。少ししたら大和は上がっていったけど、華奢に見えた体はしっかりと筋肉がついていて、すごく逞しそうで、思わず見とれちゃったけど、それをしっかりとみんなに見られていたから、そこで私の運命は決まっていたんでしょうね。

マナはとても初心で純真なので、書いてて楽しいです。ユーリは既にプリム達に毒されつつあるので、思考はそっちに染まってますが。

日本でも武士とかは結婚式の日に初めて相手と会うことも珍しくなかったそうですから、政略結婚としてはこれが普通なんでしょうね。

サイズはプリム(92)>マナ(90)>ルディア(84)>ミーナ(83)>ユーリ(80)>リディア(79)と設定してます。リディアが不憫です。

え?クリスマス?美味しいんですか?

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