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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
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051・初心な姉姫とマセた妹姫

「いっそのこと、王都の外に出るか。王都の近くとはいえ、少し離れれば問題はないだろうからな」

「それが無難ね。城の庭なら召喚できるから、移動も問題ないし」

「召喚って……ああ、確かあなた達、ヒポグリフと契約したんだったわね」


 俺のことを調べてただけあって、ヒポグリフと契約したことも知ってたか。まあ調べられて困るようなことでもないし、フィールじゃ誰でも知ってるから少し聞けばすぐにわかるし、下手に隠すとジェイドとフロライトが危なくなるから、そんなことする理由もなかったしな。


「そういうことよ。獣車は大和のボックスに入ってるから、楽しみにしてて」

「それなら私も、あの子を連れて行こうかしら」

「あの子?」


 誰だそれは?話の流れからすると、マナも獣魔契約をしてるってことなのか?


「もしかして、マナ様の召喚獣ですか?」

「ええ。プリムとユーリ、それからミーナも知ってると思うけど、私の固有魔法は召喚魔法なのよ。といっても、まだ一匹だけしか契約してないけど」


 マナの固有魔法って、召喚魔法だったのか。確か召喚魔法は固有魔法の中でも多い部類に入ったはずだな。獣魔魔法と違って複数の召喚獣と契約できるけど、その分育てるのが大変だし、餌代とかもバカにならないから実際に使う人は少ないんだったっけか。お姫様でもあるマナだから、有効活用ができてるってことなんだろうな。


「あの仔に会うのも久しぶりね」


 プリムは会ったことがあるのか。まあマナの固有魔法も知ってたみたいだから、それはそうだよな。マナが何と契約したのかは気になるが、一応王城内で飼育しているらしい。ホーリー・グレイブやラインハルト殿下と狩りに行くことが多かったそうだが、召喚するかはその時の状況によるから、場合によっては召喚しないこともあったんだそうだ。王城で飼育できるってのは、ある意味召喚魔法使いにとっては理想的な環境だよな。

だけどアルカは、その上を行くんじゃなかろうか?牧場があるにはあるが、アルカの中ならどこでも自由に行けるから、獣舎に閉じ込めっぱなしなんてことにはならないからな。ジェイドとフロライトなんて、普段はアルカの山で過ごして、湖で魚を獲って、寝るときは自分達の獣舎に戻るなんて生活をしている。その獣舎もノンノが苦心して、アルカの山を模した環境にしてあるから、ある意味俺達よりアルカでの生活を満喫してるぞ。マナの召喚獣も、きっと気に入ってくれるだろうな。


「それじゃあ決まりですね。お二人のウイング・クレストの加入手続きもしなきゃいけませんから」


 そうだった。それにホーリー・グレイブにも説明しなきゃいけないな。まさかマナが俺と婚約するなんて思ってないだろうから、特に男共の反応が怖くて仕方ないが……。


「それは大丈夫よ。ファリスには簡単に伝えてあるから、ホーリー・グレイブのみんなにも伝わってると思うわ」


 ……なんかギルドに行きたくねえな。ほとぼりが冷めるまで、と言いたいところだが、バレンティアに行くまでに手続きを済ませなきゃマズいしなぁ。


「大和が何を考えてるのか、だいたい予想つくけどさ、とりあえずジェイドとフロライトを召喚して、ギルドに行って、それからアルカに行こうよ」


 ルディアに心を読まれた。いつも思うんだが、俺ってそんなにわかりやすいのか?


「わかりやすいですよ。マナ様のことは、誰でも思うことだとも思いますけど」


 ミーナにも読まれた。色々と言いたいことはあるが、ここで俺が口を挟んでも余計な時間を食うだけだし、ある意味今更の話だからスルーすることにする。


「よし、庭に行こう。ハンターなんだから狩りに行ってもおかしくはないし、獣魔を召喚してもいいなら移動も楽だからな」

「ヒポグリフが引く獣車に乗れるなんて、楽しみだわ」


 ユーリは一度乗ってるが、マナは初になるからな。獣車のストレージルームを見て引かれないかが心配だが、プリムの幼馴染だからあっさりと受け入れてくれそうな気もする。ユーリは喜びそうだが。


 ―ユーリ視点―


 昼食後、大和様……さんの提案で、私達はお城の庭に移動しました。中庭ではなく外庭ですけど、貴族の方が獣車を停めたりすることもできるようになっていますから、大和さんが獣車を出しても問題はありませんし、獣魔を召喚しても大丈夫です。あ、私とお姉様は城中用のドレスでしたから、ハンター用の装備に着替えてきていますよ。


「それじゃあ召喚するか。プリム、準備はいいか?」

「問題なしよ」


 獣魔を召喚するには、武器等に魔力を込めて召喚陣を描き、完成した召喚陣に魔力を流して門を起動させることで、獣魔が通る道を作ります。大和さんは剣に、プリムさんは槍に魔力を込め、慣れた手つきで召喚陣を描いて、門を開きました。すると、それぞれ中からヒポグリフが出てきたんですけど、なにか大きくなってませんか?


「最近知ったんだけど、俺達が契約した時は、まだ生後2,3ヶ月ぐらいだったんだよ。だからまだまだ大きくなるみたいだな」


 そうだったのですか。確かにあの時も甘えん坊さん達でしたけど、馬と変わらない大きさでしたから、てっきり成獣だと思っていました。


「マナは初めてよね。私と契約した仔がフロライト、大和と契約した仔がジェイドよ」


 二匹がお姉様に挨拶をしていますが、お姉様もヒポグリフを見るのは初めてですから、恐る恐るになっています。見れば城の者も、ヒポグリフが二匹も召喚されたことに驚いていますね。気持ちはよくわかりますよ。


「かわいい仔達ね。よろしくね、フロライト、ジェイド」

「「クワアッ!」」

「ちょっと、もう。くすぐったいわよ」


 フロライトがお姉様にすり寄って甘えています。私にもそうでしたから、あれがあの仔の挨拶なのでしょう。だけどとても可愛いです!


「ジェイド、また大きくなったんじゃない?」

「この分だと、獣具を新調した方がいいかもしれませんね」


 大和さんはボックスから獣車を出し、ルディアさんとミーナさんに手伝ってもらいながらジェイドを繋いでいるのですが、どうやら難義しているようです。


「まだ少し余裕はあるけど、確かにこれは新調した方がいいな。幸い素材はあるから、行きしなに注文するか」

「フロライトは寂しがりやさんだから、ジェイドと一緒でないと引いてくれないものね」


 プリムさんが申し訳なさそうな顔をされています。なるほど、そういう事情もあって、フロライトは繋いでないのですね。二頭立てにするには大きくなりすぎてますし、道幅の問題もありますから、それは仕方がないかもしれません。


「わがまま、ってわけでもないのね。こればっかりは性格だから、仕方ないのかな」

「ええ。フィールでこの仔達を担当してくれた人も、無理をさせるのはよくないって言ってたから、フロライトが獣車を引くことはあまりないわね」

「なるほどね。っと、それじゃ私も、召喚するとしますか」


 そういうとお姉様は剣を抜き、魔力を込めて召喚陣を描きました。先程大和さんとプリムさんが行った獣魔召喚と、ほとんど変わりありません。基本的には、召喚魔法も獣魔魔法も同じものです。違いは契約できる召喚獣の数と呼び名ぐらいでしょうか。


「これは……リスか?」

「カーバンクルよ。私と姉妹同然に育ったの。名前はルナよ」


 カーバンクルは、大和さんが勘違いしたように、リスに似た小型犬ほどの大きさの魔物です。マルカお義姉様によく似たふわふわの尻尾、額にはルビーのように赤く輝く宝石、そして紺碧色に輝く体毛を持つ、お姉様ご自慢の召喚獣カーバンクル。私は一緒に狩りをしたことはありませんけど、小さな体に似合わない力を秘めているそうです。


「これぐらいの大きさなら、問題なく獣車に乗れるな」

「それにジェイドやフロライトとも、仲がよさそうですよ」


 ルナの召喚を、ジェイドもフロライトも物珍しそう見ていたのですが、トコトコとルナが歩み寄ってきて一礼すると、フロライトはすぐに頭を下げてすり寄っていました。ジェイドはそこまでではありませんでしたが、それでもルナを背中に乗せていますから、三匹の仲を心配する必要はなさそうです。


「人見知りの激しいフロライトが、ここまで懐くなんてね。マナの魔力を感じてるとこはあるんだろうけど、これなら心配はいらなさそうね」

「だな。ジェイド、今日も悪いが、頼んだぞ」


 私達は大和さんにエスコートされて、獣車に乗りました。こんな作りの獣車は初めてです。フロライトも器用にドアを開けてルナと一緒に乗り込んでますし、ストレージ・ミラーを付与させて作ったストレージルームのドアを開けると、その豪華さに驚きました。


「これはまた……すごい獣車を作ったものね……」


 お姉様が呆れられていますが、その気持ちはよくわかります。だって、王家の獣車よりすごいんですよ。リビングとつながっている獣舎にはフロライトがルナと一緒に寝そべっていますが、獣舎特有の臭いは一切しませんし、それぞれの個室もあるそうですし、大きなお風呂まで完備しているなんて、すごすぎます。


「大和の結界も付与してあるから、全員で一緒にお風呂に入っても大丈夫だし、夜もぐっすり眠れるんですよ」


 ルディアさんが説明してくださいましたが、まさか大和さんが結界魔法を使えて、しかもそんな高等魔法まで付与してたなんて、思いもしませんでした。ですがちょっと待ってください。一緒にお風呂って、まさか大和さんもですか!?


「当然ですよ。それに私達、その……」

「もう大和と寝てるのよ」

「な、なんですって!?」


 お姉様が驚かれていますが、私も驚いています。あ、大和さんは御者席でジェイドに指示をされていますから、ストレージルームには来ていないんです。だからなのか、みなさんあまり隠そうともしないんですよ。その、普段大和さんとどうやって過ごしているのかを……。


「ちょ、ちょっとプリム!寝てるって、一緒のベッドで寝てるって意味じゃないわよね!?」

「当然じゃない。夫婦になるんだから、ヤることは一つしかないでしょ?」


 免疫のないお姉様は、今にも顔から火を吹きそうです。かくいう私も、顔が熱くなっているのがわかります。確かに結婚するということはそういうことですけど、まさか既に関係を持たれていたとは……。

 聞けば本当に関係を持たれたのはここ数日で、それまではいくら誘惑しても、大和さんが襲ってくることはなかったんだとか。


「ぷしゅ~っ……」


 そんな話をしていると、お姉様の顔から煙が吹き出てきました。さすがにこれはマズいです。


「マナ様、大丈夫ですか?」

「え、ええ……。ありがとう、リディア……」


 リディアさんが支えてくれていますが、お姉様は今までハンターとして過ごしてこられましたから、男女のこういったお話は苦手なんです。ロエーナお義母様やマリサ達侍女も、すごく手を焼いていましたからね。


「マナ様、まだ寝室をご覧いただいていませんが、いかがなさいますか?」


 ミーナさんが気遣いながら訪ねていますが、私も見るのが怖いです。予想はしているんですが、正直当たってほしくない思いでいっぱいです。


「すごく怖いんだけど、寝るときになって見るより、今のうちに見ておいた方がダメージが少ない気もするから……怖いけど、見させてもらうわ」


 その寝室を見たお姉様は、真っ赤になって倒れてしまわれました。私も倒れそうになりましたが。ですが大和さんと一緒に眠れることが確定したわけですから、怖いですけど嬉しくもあります。さすがにお姉様には慣れていただく必要がありますから、気が付かれたお姉様は御者席に追いやろうと思います。寝室はここしかないのですから、私達はともかく、大和さんが寝られません。リビングで寝ると言い出しそうですが、せっかく立派なベッドがあるのですから、ここで一緒に寝るべきです。ですからお姉様には、今日中に慣れていただかなくてはいけません。頑張ってくださいね、お姉様?

マナの固有魔法の簡単な説明と召喚獣初披露。そしてマナは一番年上なのに一番純情乙女です。

現時点での二人の装備はこんな感じです。


マナリース・ラグナルド・アミスター 基本カラーはパステル・グリーン

  武器:ミスリルロングソード(ミスライトフレイムタン)

  頭装備:なし

  胴装備:ミスリルジャケット(ヒッポグリフジャーキン)

  腕装備:ミスリルアームガード(ウルフアームガード)

  脚装備:ドレイクレザートラウザー(ヒッポグリフトラウザー)

  足装備:ミスリルレザーブーツ(ソーリアンストライカーブーツ)

  アクセサリー:なし


ユーリアナ・ラグナルド・アミスター 基本カラーはローズ・ピンク

  武器:ミスリルロッド(ウルダハンクルーク)

  頭装備:なし

  胴装備:ミスリルジャケット(ヒッポグリフジャーキン)

  腕装備:ミスリルアームガード(ウルフアームガード)

  脚装備:ドレイクレザートラウザー(ヒッポグリフトラウザー)

  足装備:ミスリルレザーブーツ(ソーリアンストライカーブーツ)

  アクセサリー:なし


 二人とも武器は王様が作ったものですが、防具はGランクハンターの標準になります。ハンターなんだからそれぐらいは自分で稼いで買えというわけです。マナは自分で買いましたが、ユーリはラインハルトが立て替えてるんですけどね。フィールに帰れば、しっかりとグレードアップしますよ?

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