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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
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048・第二王女の悩み

 ―マナ視点―


 トールマンからプリムの安否を聞いて、三日が経ったわ。やっぱりプリムは生きていた。そればかりかハンターになっていて、しかも今はHランクなんだとか。生きていてくれたことは嬉しいし、早く会いたいんだけど、ハンター歴は私の方が長いのに、あっさりと私のランクを越えるなんて、釈然としないものがあるのよね。私だって四年目で、やっとGランクになったのに。

 しかもレイドを組んでいる、もう一人のHランクハンターと婚約までしたとか、もうね。

 名前はヤマト・ミカミで、驚いたことにユーリのお相手でもあるのよ。しかもディアノスの娘とも婚約してるし、バレンティアのハイウインド家の双子とも婚約したっていうじゃない。ここまで来ると驚きを通り越して、呆れるしかないわ。

 ……ないんだけど、私はその男に興味津々なのよ。あのプリムが、自分より弱い男なんて興味がないと言っていたプリムが婚約したばかりか、本当に女の子してたって言うじゃない。実際にユーリを助けたのもその男だっていうし、フィールのギルドからの使いが、オーク・エンペラーまで倒したって言ってたわ。いったいどんな化け物なのよ?


「ディアノス様がおっしゃるには、人族の男性で、一見するとどこにでもいそうな少年だとのことでしたが?」

「見た目で判断するなんて、三流ハンターのすることよ。見た目に騙されて命を落としたハンターなんて、星の数ほどいるんだから」


 マリサの言いたいこともわかるけど、この世界じゃそんなことは珍しくないわ。何度かホーリー・グレイブに迷宮に連れて行ってもらったけど、危うく死にそうになったことだってあるんだから。外の魔物と同じ種なのに、ワンランク上の強さを持ってるなんて、反則でしょ。


「それにオーク・エンペラーの死体はフィールのギルドで確認してるんだから、倒されたのは厳然たる事実よ」


 プリムもオーク・エンプレスを倒したそうだけどね。しかもプリムも大和という男も、一対一で倒したっていう話だから、常識外れにも程があるわ。ハイウインド家の双子が一緒だったそうだけど、一度話を聞いてみたいものだわ。


「これがヤマト・ミカミね。思ったよりいい男だけど、少し線が細い気がするわね」


 マリサがフィールの人に描いてもらった似顔絵を見たけど、実は割と好みのタイプなのよね。確かプリムと同じ17歳だから私より二つ年下になるけど、もうちょっと若く見えるわ。


「それで、姫様」

「何?」

「そのヤマト・ミカミ様についてですが、何故ここまで調べておられるんですか?そんなことをしなくてもユーリアナ姫様とご婚約されるのですから、直接お聞きすることもできると思いますが?」


 私は返す言葉を持たなかった。私がマリサに頼んだのは、ヤマト・ミカミがどんな人物なのかを調べてもらうこと。フィールでハンター登録をしたから、わざわざフィールまで飛んでもらって、しっかりと調べてきてもらってるのよ。そうしたら父様達が英雄と呼び、ユーリの婚約を認めた理由が、とてもよくわかったわ。

 フィールに来るまでの足取りはわからないけど、途中でプリムと出会い、二人でハンターになって、ゴブリン・クイーンやエビル・ドレイクも倒しているし、実はレティセンシア、じゃなくてアバリシアの工作員だった緋水団、フィールの元ギルドマスター サーシェル・トレンネルまで捕まえていた。極め付けがオーク・エンペラーとオーク・エンプレスを、たった二人で倒してしまったんだから、本当にとんでもないわ。わずか数日でAランク、一ヶ月でHランクになるなんて、間違いなく最速記録よ。

 じゃなくて!確かに私、なんでこの男のことを調べてるのかしら?マリサなんて、わざわざフィールにまで出向いてくれたっていうのに。


「姫様……惚れましたね?」

「ふぁいっ!?わわわ、私が!?こんな優男に!?ないないないない!絶対ない!!それにこいつは、ユーリと婚約したのよ!?」


 マリサったら、なんてこと言うのよ!?いくらなんでも妹の婚約者に横恋慕するなんて、そんなことあるわけないじゃない!それに私がこんな男に……その、惚れてるなんて!いったい何を根拠にそんなこと言うのよ!?


「根拠ならありますよ。姫様がここまで男性に興味を持たれたことは、今まで一度もありません。フロートのハンターはもちろん、ホーリー・グレイブの方々にだって、素っ気なく接していたではありませんか」


 確かにホーリー・グレイブはもちろん、フロートにも私より強い男の人はいるわ。言い寄ってくる人もいなかったわけじゃないけど、私は強くなるためにハンターになったんだから、そんな輩は端からノーサンキューよ。


「何よりあのプリムローズ様が骨抜きにされているわけですから、姫様が興味を持たないわけがありません。その興味が憧れに変わり、まだ見ぬこのお方への思いが募り、そして恋心に変わったんですよ」


 ……サキュバスに言われると、説得力があるわね。特に意味はないけど。

 確かにプリムがメロメロになってるって話だから、興味がないわけじゃないけど、だからってこいつは、ユーリの婚約者でもあるのよ。もし私が本当に恋してたとしても、そんなことが許されるわけがないわ。


「ユーリアナ姫様に遠慮なさっておられるのでしょうが、何を気にされることがあるのですか?前例だってあるのですよ?」


 前例?そんなの、どこにあるのよ?


「ハイウインド家の双子です。実の双子の姉妹が、同じ相手と婚約しているではありませんか」


 確かにそうだわ。私の母様は第一王妃、ユーリの母様は第二王妃だから、ユーリとは血が繋がっているとはいえ、ハイウインド家の双子と比べれば半分になるわ。それにその双子も同じ相手と婚約してるんだから、私もそこに入ってもおかしくはないわよね?

 ……はっ!わ、私ったら何を考えてるの!?


「ほら、見なさい」


 勝ち誇った顔をするマリサが腹立たしいわね。だけど私は第二王女でユーリは第三王女。同じ相手に嫁ぐことなんて、絶対にできないのよ。


「そこは考え方次第ではないかと」

「どういうことよ?」

「姫様がお気になさっておられるのは、王位継承権のことでしょう?でしたら……」


 私の王位継承権は第二位。王位なんてものには興味ないけど、王家に生まれた者として、そんなことを言うわけにもいかないわ。今のところ、王位は一位であるラインハルト兄様が継ぐことになっているけど、万が一のことが起きてしまえば、私が王位に就く可能性だってでてくる。もしそんなことになってしまえば、私は王配として相応しい人と結婚しなければならない。そこには私の意志は反映されないし、ハンターと結婚するなんて、絶対に無理。

 だからマリサの考えは、私にとって盲点だったわ。さすがにそんな簡単にはいかないだろうけど、可能性はあるし、父様や大臣とかも無視はできないわ。プリムがどう思うかが気になるところだけど、なぜ消息を隠していたのかを話してくれることになってるから、その時に何とかして説得するしかないわね。

 いけない、もうヤマト・ミカミたちが来る時間だわ。急いで出迎えの用意をしないと。あら?私、プリムと会うのを楽しみにしてたのに、なんであいつの名前が先に出てきたの?


 ―大和視点―


 王都に到着して三日、俺達は王城に招かれることになった。それまでは王都のギルドで依頼を受けてたから、暇な時間を持て余すようなことはなかった。一度少し遠出すると告げてアルカで一泊したし、夜は夜でしっかりと四人の相手をさせていただきましたとも。フォールハイト家はミーナの実家だから、さすがに屋敷じゃ抵抗あるしな。


「四人とも、今日はお肌が綺麗ね」


 帰ってからお義母様にそう言われた時は、心臓が止まるかと思ったが。あの顔は絶対にわかってる顔だった。

 それはともかくとして、ようやく王城に来ましたよ。ある意味、今回のメインだからな。今は王城の一室で雑談してるが、じきに王様と謁見して、そこで正式にユーリ姫と婚約することになっている。


「それにしてもみんな、そんな恰好でよかったのか?」

「もちろんよ」

「私達も、ハンターとしてお招きに与ったわけですからね」


 確かにそうなんだけどな。俺は最初からアーマーコートで登城する予定だったからいいが、他の四人はハンター装備でなくても、ドレスでも良かったんじゃないかなと思う。Aランクレイド、ウイング・クレストとして招待されたわけだし、失礼には当たらないだろうとリチャードさんからのお墨付きももらってはいるんだが、だからってフル装備でなくてもいいだろうに。


「いいじゃない。私はドレスより、こっちの方が性にあうわよ」


 ルディアはそうだろう。なにせ一人だけ、ミニスカにスパッツという動きやすい恰好をしている。格闘術をメインにしてるから当然っちゃ当然なんだが、俺としてはドレス姿も可愛くて好きなんだけどな。本人に言ったら、顔から火を吹くんじゃないかっていうぐらい、真っ赤になるが。


「私もルディアの気持ちはわかるわよ。ドレスって綺麗だけど、窮屈なのよね」

「確かに、動きにくいですよね」


 リディアもミーナも、ドレスを着る機会はそれなりにあったみたいだから、説得力がある。コルセットとかは本当に締め付けるようにするそうだし、そのおかげでかなり苦しいんだとか。しかもヒールの高い靴も履くから、とんでもなく動きにくいのに、それなりに動かなきゃいけないから、終わった後は足が攣りそうになるし、コルセットのおかげで内出血をすることも珍しくないそうだ。男にはわからない苦労だが、確かにそれは大変だと素直に言える。


「待たせてすまないな。陛下やユーリアナ殿下のご用意も整った。今から向かうから、私についてきてくれ」


 案内役はディアノスさんだ。ミーナの父であり、俺の義父になる人でもあるし、先日本当に、俺の婚約の挨拶とやらを王様に報告しやがった。それで王様もひどく喜んだらしいが、俺はひどく落ち込んだよ。マジでなんて言えばいいのかわからんし、王様に挨拶なんて、失礼極まりないだろ。


「ところでプリムさんは、まだ戻ってこないんですか?」

「三年ぶりの再会だからな。積もる話もあるだろうし、俺達が口を出すのも野暮ってもんだろ」


 プリムは今、この場にはいない。俺達が登城すると、真っ先に出迎えてくれたのはユーリ姫とマナリース姫の二人だったんだが、マナリース姫はプリムの幼馴染でもある。この三年、マナリース姫はずっとプリムの安否を気にしていたし、わざわざバリエンテにまで足を運んだぐらいだから、本当に心配していたんだよ。プリムもマナリース姫に迷惑をかけないよう、隠れて暮らしていたから、この再会は二人にとって、本当に待ち望んでいたものだった。今はマナリース姫の私室で、二人で話し込んでいるはずだ。


「あ、いたいた。ミーナ、リディア、ルディア。ちょっとこっち来てくれる?」


 と思ったら、プリムが戻ってきた。なんかミーナ達を呼んでるが、これから王様と謁見なんだぞ?


「大丈夫よ。ちょっと聞きたいことがあるだけだから」

「それならいいけど、あんまり時間かけるなよ?」

「わかってるわよ。大和は先に行ってて」


 それならいいけどな。

 さて、いよいよ王様と謁見だ。半端なく緊張してきたぞ。

またしてもマナ視点です。理由もバレバレだと思いますが、元々そのつもりでした。本当ですよ?

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