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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
45/99

045・王都フロートの入り口にて

 プリム達と結ばれ、さらにアルカに泊まった次の日、俺達は石碑を使ってアルカを発った。今回の目的はユーリ姫を迎えにいくだけではなく、ミーナの実家、リディアとルディアの実家に挨拶することも含まれてるから、急ぐ旅ではないものの予定はびっしりと詰まっている。なので寄り道せずに、まっすぐ王都に向かうことにした。

 途中、ビエントという町で休憩を挟んだが、フィールから王都までは、飛竜ワイバーンなら6時間ぐらい。アルカに転移したのはフィールと隣町のルカニドの真ん中ぐらいだから、俺達は5時間足らずで王都まで着いた。

 ちなみにジェイドとフロライトは、アルカに送ってある。王都でも獣舎に預けることになるし、どれぐらい滞在するかわからないから、何日も窮屈な思いをさせてしまうことになる。その点アルカは、山も森も湖もあるから、二匹とも伸び伸びと過ごすことができる。必要になればアルカに呼びにいけばいいし、召喚することだってできるからな。


「ここが王都フロートか。さすがに大きいな」

「アミスターはフィリアス大陸の最大国家だからね。バリエンテやバシオンも、アミスターから割譲された国なわけだし」


 プリムが説明してくれた。そうだったのか。

確か暴獣王は、アミスターやバシオンを攻めたいって考えのはずだったな。つまりはフィリアス大陸南部を支配したいってことか。本気でロクでもない理由だな。


「いっそのことバリエンテの地は、アミスターに返還した方がいい気もするけどね」


 悲しそうに言うなよ、プリム。自分の国なんだから。それにまだみんなには伝えてないけど、フィールに戻る前にプリムが住んでたっていう村にも行って、ご両親の墓前にも報告したいし、使用人さん達にも挨拶したいんだぞ。


「とりあえず、入るとしようぜ」

「そうですね」

「では町に入ったら、私の実家に案内しますね」


 来たっ!ミーナのお父様は、アミスター近衛騎士団の副団長をなさっており、アミスター王国でも五指に入る豪傑らしいです。近衛騎士団に入るにはレベル31以上が最低条件なので、それを束ねる団長、副団長はさらにレベルが高い。ミーナのお父様はレベル46、アミスター最強の騎士である団長はなんとレベル51というから、近衛騎士がアミスター最強騎士団と言われるのも納得のいく話だ。


「どうぞ、行ってください。次の方」


 どうやら俺達の順番のようだ。フィールじゃ顔パスになってるから、こうやって並ぶのも久しぶりなんだよ。確かライブラリーじゃなく、ライセンスでもいいんだったよな。


「ライセンスですね。拝見させてもらいます」


 門番の女性騎士さんはミーナのライセンスを確認すると、リディアのライセンスに目を移した。


「Pランクですか。その若さで凄いですね」


 軽く驚きながら、続いてルディアのライセンスも確認したが、双子だと知って納得したようだ。ここまではいいんだよ。


「Hランク!?」


 予想通りだが、プリムのライセンスを見た瞬間に絶句した。まだ俺のもあるんだが、この人大丈夫だろうか?


「ちょっと、大丈夫?」

「え、ええ……すいません……。Hランクハンターに会ったのは、初めてなので……!?」


 なんとか正気に返り、最後に俺のライセンスを見たんだが、その女騎士さんは今度こそ固まった。


「おい、貴様!何をした!?」


 何事かあったと感じた騎士達が、詰所から出てきた。対応早いな、さすがアミスター騎士団。いや、俺は何もしてないっつーの。


「何もしてませんよ。ライセンス見せたら固まっちゃっただけです」

「……本当か?」

「あれ?ミーナじゃない?」

「え?あっ!シェリーさん!」


 どうやらミーナの知り合いがいたらしい。女性騎士は少ないらしいし、最近まで王都に来てたんだし、何よりミーナは王都出身なんだから、知り合いがいても不思議じゃない。


「どうしたの?確か十日ぐらい前に、フィールに帰ったはずでしょう?」

「はい。実はですね……」


 シェリーさん?という女性騎士に、ミーナが事情を説明し始めた。あ、王都に入る商人さんとか旅人さんとかもいるから、俺達は詰所に移動したよ。あんなとこで列渋滞なんて作ったりなんかしたら、迷惑以外の何物でもないからな。


「へえ。あなた、婚約して、騎士団も退団したのね。私としては残念だけど、さすがにこれは仕方ないかな。おめでとう、ミーナ」

「あ、ありがとうございます」

「それでそちらの彼があなたの婚約者、Hランクハンターのヤマト・ミカミさんね」

「俺の事、ご存知なんですか?」

「ええ。私はシェリー・ビハインド。ヴァンパイアよ。ミーナとは騎士団の同期なの。あなたのことは王都でも有名よ。フィール、そしてアミスターを救ってくれた英雄としてね」


 予想はしてたが、本当に王都にまで噂が広まってたのか。つか英雄ってやめて。そんなつもりはないんだから。


「それで、こちらの方々は?リーナさんが翼族の方はHランク、竜族の方もPランクって言ってたけど?」


 あの騎士、リーナさんはなんとか正気に戻り、再び門に戻っている。俺達のランクに驚いただけってことも証言してくれたし、頭を下げて謝ってくれたから、取り調べを受けてるわけでもない。Hランクハンターが二人もやってきて、そのレイドにミーナが入ってるから、ミーナの友人であるシェリーさんに詳しく話を聞くように指示があっただけだ。二人は久々の再会でもあるわけだし、こっちがメインな気もするけどな。


「私と同じ、大和さんの婚約者です」

「へえ、そうなんだ。さすがHランクってとこね。私も立候補したいぐらいよ」


 あれ?そんな反応なの?四人も婚約者を引き連れてきたわけだから、引かれると思ったのに。


「それで、王都には何の用で来たの?あなたが騎士団を辞めてハンターになったのも驚きだけど、婚約者を連れてきたわけだし、実家にご挨拶?」

「もちろんそれもありますけど、一番の目的はユーリアナ殿下のお迎えです」

「ちょっと待って。それってどういうこと?」

「ユーリアナ殿下のご婚約が決まったのだ。お相手はそこにいるHランクハンター、ヤマト・ミカミ殿だ」


 ミーナの疑問に答えたのは、シェリーさんの後ろから現れた一人の騎士だった。褐色肌ってことはダークエルフだろうけど、どう見ても20代から30代前半ぐらいにしか見えないな。


「ト、トールマン様!?なぜこんなところに!?」

「少し用があってな。まさかユーリアナ殿下が待ち焦がれていたハンターと会えるとは思わなかったが」

「お久しぶりです、トールマン様」

「うむ、久しぶりだ。聞けばそなたも、大和殿と婚約されたとか。ディアノスが喜んでいたぞ」


 ディアノスってのは、ミーナのお父様の名前だ。そのお義父様を呼び捨てにするってことは、この人がアミスター最強騎士トールマン・ブレイアルスか。


「自己紹介が遅れたな。私はトールマン・ブレイアルス。アミスター近衛騎士団の団長を務めている。ようこそ、フロートへ」

「ありがとうございます。ヤマト・ミカミです」

「そして、お久しぶりでございます、プリムローズ様」


 トールマンさんはレックス団長より立派な鎧を纏い、普通の片手直剣より一回り大きい直剣を腰に佩いている。少し反ってるところを見るに、もしかして片刃の直剣なんじゃないか?

 だが俺がそのことを聞く前に、トールマンさんはプリムに向かって一礼した。あれ?知り合いなのか?


「……私の事、覚えていたんですか?」


 プリムも驚いてるが、そう言うってことは面識ありってことだな。

 ああ、そういえば十年以上前になるが、一度だけ王都に来たことがあるって言ってたな。確かマナリース姫に誘われて、だったっけか。その時に会ってたってことになるのか。


「無論です。バリエンテ王家に生まれた翼族ですからな。行方不明になられたとお聞きしていましたが、ご無事で何よりです」

「ありがとうございます。それで、その……マナは?」

「先日バリエンテを訪れた際、獣王陛下に、あなたは既に亡くなっている、と聞かされたようです。それも事故や病気ではなく、レオナス王子の手にかけられて、と」


 デタラメもいい所だな。そもそもプリムを殺そうとしたのは、当の獣王だ。そのプリムを守るために、ご両親が犠牲になったと聞いている。しかも今はレオナス王子を捕らえるために、Pランク以上のハンターを無実の罪で捕まえてるし、入国まで制限している。ハンターズギルドも、今はレティセンシアのことがあるから手が回ってないみたいだが、そう遠くないうちに動くだろうとライナスのおっさんも言ってたな。


「そうですか。ですが私は生きています。それに私を殺そうとしたのは、その獣王です。父も母も、私を守るために自ら獣王に降り、そして……」

「今までのご苦労、ご無念、お察しします」


 プリムは当時を思い起こしたのか、顔色が悪くなってきているし、よく見れば震えている。プリムにとって、一生忘れることのできない記憶だろうからな。


「プリム」

「え?や、大和!?」


 だから俺は、しっかりとプリムを抱きしめた。プリムは驚いて顔を赤らめているが、やがて安心したかのように目を閉じ、俺に身を委ねるように力を抜いた。


「これは驚いた。もしや、プリムローズ様も?」

「はい。私も彼と婚約しています。そこの竜族の子達もです」


 このプリムの一言に、さすがにトールマンさんも驚いたようだ。まあ、これが普通の反応だよな。


「ユーリアナ殿下から、大和殿には婚約者がおられるとは聞いていましたが、まさかプリムローズ様もだったとは、いささか驚きましたぞ。ということは、ユーリアナ殿下は側室ということになりますな」


 プリムは公爵令嬢だが、王位継承権も持ってたからか。というか、俺としては正室だの側室だのの区別はしないつもりだぞ。理由はどうあれ、俺が自分の意志で娶ると決めたんだから、ユーリ姫も含めて全員が正室でいいだろ。


「普通はそうなるんでしょうが、大和にはそんなつもりはありませんよ。彼は私達を愛し、私達も彼を愛している。それが全てです」


 うおい!そんな恥ずかしくなること、公衆の面前で言わないで!いや、ここには俺達以外、トールマンさんとシェリーさんしかいないけど、それでも超絶恥ずかしいぞ!シェリーさんなんて、真っ赤になってるしな!


「これは余計な一言でしたな。では私は陛下にご報告し、大和殿とプリムローズ様、そして婚約者殿達をお迎えさせていただくことにします」

「申し訳ありませんが、伝言もお願いしてもいいでしょうか?」

「無論です。マナリース殿下に、ですな?」

「はい。何故私が姿を隠しハンターになったのかも含めて、直接説明するとお伝えください」

「承りました。では詳細が決まり次第、ディアノスを通じてご連絡させていただきます。それからミーナ」

「は、はいっ!」

「婚約、おめでとう」

「あ、ありがとうございますっ!」


 ミーナの返事に満足そうに頷くと一礼して、トールマンさんは出ていった。ぷはぁ~っ!すっげえ緊張したぁっ!


「ミーナ……あなた、とんでもない人と婚約したのね……」

「もう慣れましたけどね。シェリーさんも、大和さんの婚約者に立候補されますか?」

「遠慮しておくわ」


 シェリーさんがとてつもなく疲れた顔をしてたが、あの空気じゃ仕方ないだろな。さて、気を入れなおしてミーナの実家、フォールハイト家に向かうとしますか。ある意味、トールマンさん以上に緊張するんだろうな……。なんてご挨拶するか、今からでもしっかり考えとかないと。

ちょっとばかしシリアスになってしまいました。

狐の翼族はプリムしかおらず、しかもバリエンテの王位継承権まで持っていましたから、それを知ってる人なら簡単に同一人物だと見抜きます。その上でライブラリーがあるわけですから、人違いという可能性はかなり低くなるわけです。

今までそんな人が出てこなかった理由は、お隣さんの陰謀でフィールの情報が封鎖されてたに等しい状況だったからですね。それもなくなり、王都まで出向いてきたわけですから、いずれバリエンテも気づくでしょう。

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