043・アルカの長い夜
「……って考えてたはずなんだけどな」
俺は今、露天風呂に入っている。もちろん一人ではなく、みんなでだ。俺は飯が食いたかったんだけどな……。
「私達は先に汗を流したかったし、レラが用意してくれてるところだから、それまではお風呂でいいじゃない」
「ミーナも初めての露天風呂を、楽しみにしてたんだしね」
とはプリムとルディアの弁だ。確かに案内とかしてもらってたから、できてないのは仕方がない。だけど飯ぐらいボックスに入ってるし、いざとなったら俺が適当に作ってもよかったんだけどな。
まあミーナも楽しみにしてたみたいだし、まだ明るいうちに入った方が景色も綺麗だと思うから、特に反対はしなかったんだが。
「すごく綺麗な景色ですね……」
そのミーナは感動して、体を隠すことを忘れてしまっている。おかげで綺麗なお胸様が丸見えです。大きさはリディアより上、ルディアよりちょい下ってとこだが、バランスは一番いいと思う。
「さて、それじゃご飯の前に、あれを決めちゃいましょうか」
ん?何か問題でもあったか?さっき寝室を見たが、あんなもんだと思ったぞ。言いたいことは色々あったが、俺の意見が通るとは思えないし、今更の話だからな。
「あれですか。私達はいいですけど、ミーナさんは大丈夫なんですか?」
「え?あ、あうぅ……」
リディアに話を振られたミーナが真っ赤になった。あ、まさかこれって……。
「まだ慣れてないもんね、ミーナってば。でもさ、普通はそういうもんなんじゃない?」
「私もルディアに賛成。それにミーナだって、少しは期待してたんでしょ?」
「ええっ!?い、いえ、そのっ!す、少しは……」
マジですか。いや、確かに結婚するってことはそういうことだけどさ!だからって一度に四人は大変なんですけど!?
「大和、前に言ったわよね?ミーナだけ後回しにするのは申し訳ないって。だけどその問題も解消されたし、ここなら邪魔は入らないから、ゆっくりできるわよ?」
「それに避妊用の生活魔法もバッチリ覚えましたから、妊娠することもないですよ?」
俺は今、足を延ばして、岩に寄りかかりながら湯に浸かっている。他の四人はというと、プリムが俺の右の胸に、ミーナが左の胸に寄りかかり、リディアは俺の右腕、ルディアは左腕に自分の腕を絡ませ、胸を押し付けている。
まごうことなきハーレムだが、裏を返せば俺は身動きができないということになるわけだ。こんなことを言ったらモテない男どもからボコボコにされること間違いなしだが、実際にそうなんだよ。
「そ、そうよ。約束したんだから、いい加減観念しなさいよね?」
「あ、あの……優しくしてくださいね?」
プリムとリディアは今日も隠す気ゼロな上に、今日こそ最後までスるつもりだ。ミーナとルディアはまだ恥ずかしそうにしているが、こっちもナニかを期待しているのがわかる。これはいい加減、年貢を納めなければならないか?特にミーナは、まだご両親にご挨拶をしていないとはいえ、認めてもらっている。つまり断る理由はないわけですよ。というか、いい加減俺も限界だし、約束なわけですから、もういいよね?
「わかったよ。だけど先に飯を食ってからな」
震える体でガッツポーズはやめてもらえませんかね?みんな体が密着してるから、震えてるのが丸わかりなんですよ?というか、俺だって初めてなんだから、めさめさ緊張してますよ。心臓バクバクしてるし。
うわ、晩飯しっかり食えるだろうか?レラが頑張って作ってくれてるってのに、味がわからないかもしれねえ。いや、そこはしっかり食って、体力をつけないと。なにせ四人なんだからな。
……軽くのぼせそうだが、そのせいで思考力が落ちてるな。いや、今まで耐えてきたんだし、みんな婚約者なんだから、何も問題ないはずだ!
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「で、レラさん。これは?」
「夕食です。精のつく食材を厳選しております」
風呂から上がり、部屋に食事を運んでもらったんだが、運ばれてきた料理は今まで見たこともない料理ばかりだった。しかも俺だけ。何となく予感はあったが、本当にそっち系だったのかよ……。
「このホワイト・イールの蒸し焼きは、精力を増強させると言われています。こちらのファング・タートルのステーキは、持続時間と硬度を長時間保つことができ、同じく精力を増す生き血をソースに使用しております」
だからなんで、そんな料理を知ってんだよ!?そもそもお前らを作った客人って、全員女性だったよな!?だけど料理の効能、どっからどう聞いても男に作用するもんだろ!それ以前に、どこから入手したんだよ、この食材!
「ホワイト・イールから採れる油は良質で、洗髪用に使うことができますし、配合を変えれば髪を傷めずに整えることができるのです。ファング・タートルは牙と甲羅が優秀な素材ですので、どちらも湖に放しております」
なんだろう、この敗北感は。つまりホワイト・イールはシャンプー兼リンス兼整髪料として、ファング・タートルは牙と甲羅を剥ぐために養殖してたってことなのか。ってことは今回の使い方は、もしかしなくても初めてだよな?
「ご主人様が遺してくださったレシピにありましたので、いつか作ってみたいと思っておりました」
レラさん、とってもいい笑顔。ここで怒ったりなんかしたら、この後スるのがイヤなのかと問い詰められるから、グッとこらえるしかないぞ、俺。
「それから先程シリィに、リラックスできるお香を寝室に届けておくよう頼んでおきました。性欲も増すお香と合わせて使うことで、この世の天国をご覧いただけるかと思います」
……もはや何も言うまい。というか、プリムもミーナもリディアもルディアも、すっごく真っ赤になってるんですけど?あれだけ俺に色仕掛けしてきてたってのに、いざとなると緊張して仕方がないってことなのか?いや、俺も半端なく緊張してるけどさ。
「と、とりあえず、食べましょう」
「そ、そうですね」
「お、美味しそうですよね」
「や、大和は特別料理だけど、私達は普通の料理みたいね」
女性陣も挙動不審な点が目立つな。このあとスることになってるし、俺だけそのための料理が出てきてるわけだから、意識するなと言う方が無理か。とりあえず、食うとしよう。
「ご安心ください。女性の方々の料理にも、特別な食材を提供させていただいております」
ブハッ!おもっくそ吹いたぞ!?つかタートルステーキのソースが喉に!確かこれ、生き血だったよな!?かなり絡んでくるぞ、このソース!プリム達もむせまくってるじゃねえか!なんてタイミングでカミング・アウトしやがったんだよ!
「ちょ、ちょっとレラ!それってどういうことなの!?」
「明らかに私達全員が食べたのを確認してから言いましたよね!?」
「そうですが何か?」
悪びれたところがない、だと?いや、もう食っちまったんなら仕方がない。ないのか?ともかく、何を食わせたのか聞きださねば!
「ち、ちなみに、何を食わせたんだ?」
「グラス・ボアのステーキに、ファング・タートルの甲羅を粉末にした物をまぶしました」
「……ちなみに効能は?」
「女性自身に作用し、体液の分泌量が多くなり、感度が上昇します。また副次的な効果としまして、初めての痛みも緩和してくれます。ぶっちゃけてしまえば、媚薬ですね」
その瞬間、女性陣が真っ赤になりながら固まった。媚薬って、なんてもん食わせてんだよ!
「……最後に聞いておく。この料理は、ヘリオスオーブでは一般的なのか?」
「いいえ。そもそもファング・タートルの肉は食用ではありませんし、甲羅を粉末状にしようなど、誰も考えません。ですが媚薬として名高いヒグサダケより効果が高いことは確認しております」
あるのか、媚薬。
「ヒグサダケは副作用として、服用した翌日に激しい倦怠感に襲われ、体力も消耗します。ですがファング・タートルの甲羅には、一切副作用はございません」
多分、自分達で身を以て確認してるんだろうな。それにしても、なんて魔物なんだよ、ファング・タートル。まさか肉だけじゃなく、甲羅も精力剤っつうか媚薬になるとは……。
俺はファング・タートルという、まだ見ぬ魔物に恐れを抱きながら、グラスに入った飲み物を呷った。
「今大和様がお飲みになったのは、ファング・タートルの生き血そのものです」
盛大に吹いた。これも生き血かよ!そんなもん飲ませんなよ!
「ファング・タートルの生き血は、濃度が高い程男性の精力を高めます。今回はストレートで召し上がっていただきましたので、四人を同時にお相手しても、精力が尽きることはないでしょう」
ストレートってことは、まんま血を飲んでるってことか。口当たりがいいから、まったく気が付かなかった……。まさかファング・タートルの生き血が、オレンジジュースと同じ味だとは夢にも思わなかったぞ。マジでどうなってんだよ、ファング・タートル……。
だがもういい。ここまできたら開き直るしかない。
その後俺達は、一言も喋らずに料理を完食し、レラが食器を下げたことを確認してから、寝室へと足を踏み入れた。
「まさか、ここまで至れり尽くせりとはね……」
「多分それ、使い方間違ってると思いますよ……」
俺もそう思う。むしろあれは、罠に嵌められたって言った方がしっくり来る気がする。今度から絶対、食う前に聞くようにしよう。
「でもさ、その……なんか私、体が……」
「私もです……。体が火照ってしまって……」
「実は私も……。大和さん、もう、もう私……」
「お願い、大和……」
四人が四人とも、とても熱っぽい眼差しを向けてきた。プリムとリディアなんて、服を肌蹴させたりしてるからな。って、もう効いてきたのかよ!?効果バッチリだな、おい!かく言う俺も、今にも暴発しそうになってるけどな!マジで怖いわ、ファング・タートル!って、みんな脱ぎだしましたよ!?
風呂上りだからみんな鎧姿じゃなく、普段着になっている。本当ならこのタイミングで自室で寝間着に着替えて、それから寝室に集まるという手順を踏んで、みんなで寝ることになるはずなんだが、今日はそんな余裕がなかったからな、いろんな意味で。
「わ、わかった!」
初めてだってのに、ムードも何もあったもんじゃない。ミーナやルディアもモジモジしだしてきてるから、色気はたっぷりあるが。
ともかく俺も限界だから、プリム、ミーナ、リディア、ルディアと、婚約した順にディープなキスをしてから、全員でベッドに雪崩れ込み、一人一人体を触りながら服を脱がしていった。
普通、ファンタジー世界といえば、ゴムがないから下着は紐で結んでたりするのが普通だろう。だがヘリオスオーブにはゴムがある。衣類に使われることが多く、女性用の下着も上下しっかりと売られている。ホックはないからスポーツブラみたいなのが多いが、小さなボタンで留める方式のブラジャーもあり、プリムとミーナはそれを着用していた。
「は、恥ずかしいです……」
「裸は何度も見せてるけど、下着姿ってけっこう恥ずかしいのね……」
プリムもミーナも、本気で恥ずかしそうだ。だけどここまで来たら、もう止まれないし、止まるつもりもない。隣ではリディアとルディアが上半身裸になり、手で胸を隠そうとしていたが、俺は二人の腕をとり、そのまま引き寄せた。
「きゃっ!」
「や、大和……なんか、大胆だね」
自覚はあるが、言わないでほしい。そう思いつつも、俺の手は次々と服を脱がしていき、気が付くと目の前には、一糸纏わぬ四人の姿があった。
「や、大和……その、優しくしてね?」
「はうぅ……大和さぁん……」
「よ、よろしく、お願いします!」
「大和ぉ……」
その瞬間、俺の理性は虹の彼方へと消え去った。野獣となった俺は四人の体を貪り、行為は朝日が昇るまで続いた。最終的にミーナとリディアが気を失ってしまったが、プリムとルディアは満足そうに俺に抱き着き、俺も二人の肩を抱くと、そのまま眠りに落ちていった。
ついにヤッてしまいました。ある意味戦闘描写より難産でした。
食材のホワイト・イールは鰻、ファング・タートルはスッポンです。
あ、詳細に語るとノクターン方面に引っ掛かるので、掲載予定はないですよ?




