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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第三章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。アミスター王国編
42/99

042・寄り道はお空の島で

 ―ミーナ視点―


 もうなんて言ったらいいのか、わからなくなってきました。

 大和さん達が見つけた客人まれびとの遺産、天空島アルカに、私は初めてやってきました。話には聞いていましたから、いつか行ってみたいと思っていたのですが、王都へ行くための準備もありましたし、私もハンターになったばかりですから、そちらの方を優先せざるをえなかったのです。リディアさんとルディアさんはPランク、大和さんとプリムさんはHランクですから、今のままでは私は足手まといにしかなりません。ですから少しでもお役に立てるよう、頑張らなければいけないのです。大和さん達が開発したという魔法も、大和さんに手取り足取り教えていただきましたから、私が得意としている土魔法と水魔法ならなんとか使えるようになりました。他の属性はまだかかりそうですけど。

 ですがおかげで、わずか十日でレベルが上がりました。これが今の私のライブラリーです。


ミーナ・フォールハイト Lv.23 17歳

ハンターズギルド:アミスター王国 フロート

ランク:M

レイド:ウイング・クレスト

客人まれびととの絆を深めし者、客人まれびとの婚約者、白麗はくれいの騎士


 少し称号が変わりました。見習い騎士という称号は、レベル20までの騎士につけられる称号なので、レベル21になった時点で消えたんです。

 そのことがローズマリー副団長の耳にも入ったみたいで、私を訪ねてきてくれたんですけど、私が纏っている装備を見て、こんな称号を授けてくれたんです。ハンターでも騎士の称号を持つ人は多いですから、副団長には本当に感謝です。

 それでも皆さんに比べればまだまだですから、一層精進を重ねたいと思っています。

 それと、私の装備ですけど、これは大和さんがお金を出して、わざわざオーダーメイドをしてくださったんです。リディアさん、ルディアさんの装備も一緒にオーダーしたのですが、全部あわせて30万エル近くかかってしまいました。大和さんは笑ってお支払いを済ませましたが、リディアさんとルディアさんは何と言ったらいいのかわからない、本当にいいのかな、という顔をされていました。私ですか?私は大和さんとこ、こ、ここ…、婚約したということもあって、そこまで恐縮することはありませんでした。夫となる方が、私のためにオーダーしてくださったのですから、これ以上ない贈り物です。

 そういえば、リディアさんとルディアさんの装備も変わってますよね。私の装備もですけど、こんな装備をしているハンターや騎士はいないのでけっこう目立ってしまいますが、オシャレなデザインでもありますから、正直狩りに着ていくのがもったいない気がします。あ、剣と盾はシルバリオソードとシルバリオシールド、鎧はミスリル・ドレスサーコートと名付けました。いつか本当に、この装備が似合うようなハンターになりたいと思っています。


「どうしたの、ミーナ?」

「え、いえ、なんでもありません。それより本当に、このお部屋を使ってもいいんですか?」


 そうなんです。私が軽く現実逃避していたのは、これが原因なんです。


「ええ。レラに頼んで、少し改装してもらったのよ。この区画は私達の私室で、魔銀亭と同じような感じにしてあるわ」


 プリムさんに案内されてきたのは、私達が私室として使う区画でした。この館は三階建てで、私達は三階にいます。その三階の一部を改装したらしく、ドアを開けると大きなお部屋になっていました。そこから自分達の私室に繋がっているそうなんですが、寝室は一つしかないそうです。ええ、獣車のストレージルームと、まったく同じです。


「プリム、早くベッドを配置して、お風呂行こうよ」

「そうしましょう。ミーナもいらっしゃい」

「え?あ、は、はい」


 プリムさんのボックスには、ストレージルームを作る時に特注した巨大ベッドが入っています。多分スミスギルド フィール支部で注文したのでしょうが、短期間で同じ商品、しかもそれが巨大ベッドなど、いくらスミスギルドでも初めて受けたのではないでしょうか?

 大和さんもプリムさんもフィールを救ってくれた恩人ですから、フィールでは知らない人はいませんし、スミスギルドも快く引き受けてくれたのではないかと思いますが、確か一週間で仕上がるよう頼んだと聞いてますから、とても大変だったことでしょう。


「プリム様、レイアウトにはこちらのオートマトンをお使いください」

「ありがとう、レラ」


 コロポックルのレラさんが連れてきたのは、オートマトンと呼ばれる魔導人形です。とても高価で、作れる人もほとんどいないのですが、アルカには普通にいるそうです。大和さん達と知り合ってから、私の中の常識がどんどん崩れていっている気がしますが、そこは考えないようにしています。Hランクハンターに常識は通用しませんから。


「この大きさだと、やっぱりここになるわよね」

「だね。テーブルはここがいいかな」

「照明はもう少し大きくてもいいかもしれませんね」


 プリムさん、ルディアさん、リディアさんがレイアウトを考えていますが、ここは寝るためだけのお部屋なので、例の巨大ベッドだけで半分埋まっています。窓から見える景色は絶景ですが、お隣のリビングからも見れますし、そちらには既に大きなテーブルとソファが配置されていますから、ここは本当に必要最低限の物しか置きません。着替えなどの私物は私室がありますから、そちらにしまいますし、そもそも皆さんハンターですから、そこまで多くもありません。


「これでよし。殺風景だけど、これは仕方ないわよね」

「ですね。その分リビングを飾ればいいかと」

「王都なら調度品とかも多いだろうしね」


 どうやら終わったようです。私は口を出せませんでしたが、出してもそんなに変わらなかったでしょう。そもそもレイアウトのしようがありませんでしたから。

 ですがリビングに関しては、私もしっかりとお手伝いをしたいと思います。私は王都出身ですし、最近まで滞在してましたから、この中の誰よりも詳しい自信があります。皆さん王都には行ったことがないそうですから、当たり前の話ではありますが。


「さて、それじゃお風呂入りましょうか」

「そうしましょう。ミーナさんも驚くと思いますよ」

「だね。私達も久しぶりだね」


 館には二ヶ所、お風呂があります。一つは一階にあり、主にコロポックルが使っていますが、お客様に使っていただくこともあったそうです。そしてもう一つが屋上にある、私達専用として使うことになるお風呂です。魔銀亭のお風呂より大きく、全周囲の景色を楽しむことができ、なにより露天風呂だと聞きましたが、初めて聞く言葉なので、どんなお風呂なのかわかりませんでした。ですが皆さんワクワクしていますので、私も楽しみにしています。


 ―大和視点―


 俺は今、牧場に来ている。自分の部屋は希望通り和室になったんだが、プリム達が改装を頼んでいたため、思っていたのと大分違う部屋になってしまった。一応部屋は十畳の和室で、しっかり畳もあるんだが、寝室は別ときたもんだ。なんでも獣車のストレージルームと同じベッドを買ったらしい。みんな嬉しそうにしてたから何も言えなかったが、たまには一人になりたい時もあるんだよ?

 それはとりあえず置いといて、俺が牧場に来たのはジェイドとフロライトの様子を見るためだ。獣車とは違い、普段はここで過ごしてもらうことになるから、なるべくいい環境を整えてやりたいんだよ。


「確か二匹とも、マイライト山脈に住んでいたんですよね?」

「ああ。群れがエビル・ドレイクに襲われて、生き残ったのがジェイドとフロライトだな」

「ということは、マイライトを意識しつつも、アルカの環境を維持したほうがいいかもしれませんです」


 と、ノンノは言う。ヒポグリフは繊細な魔物らしく、トラウマを意識させる環境に置いておくと、すぐに衰弱してしまうんだそうだ。それならいっそ、まったく違う環境にした方がヒポグリフもストレスを感じなくなるらしい。森の中の風景なんて、俺からすればどこもおんなじように見えるんだよなぁ。


「ヒポグリフに限らず、魔物や森の生物はしっかりと違いを認識してるです。だからそこをしっかりとしておかないと、大変なことになるですよ」

「フィールでもそれっぽい話を聞いたな。群れを全滅させたエビル・ドレイクの皮を使って獣具を作ろうと思ったんだが、担当の人に止められたんだ」


 フィールの獣舎でジェイドとフロライトの面倒を見てくれていたダークエルフのフィアットさんには、王都に行くまでの注意も何点か受けている。空を飛ぶのは構わないが、降りるなら町や村から離れたところにしないと、最悪の場合、攻撃される恐れがあるんだそうだ。ヒポグリフは大人しく、こちらから手を出さなければ襲ってくることはないが、知らない人も少なくない。だから安全のためにも、町の上空は飛ばない方がいいとアドバイスをもらっている。


「今はそういうことになってるですか。わからない話でもありませんけど」

「まあな。だから俺達も気を付けてるし、ジェイドにもフロライトにもストレスはかけたくない。毎日アルカに来られるわけじゃないから、せめてここにいる間ぐらいはのんびりさせてやりたいんだ」

「そういうことなら任せておいてください!カントやキナにも手伝ってもらうです!」


 うん?野山を管理してるカントはわかるが、なんで畑を管理してるキナもなんだ?


「畑の周りにも木々はありますし、リスルやグライスの実も木に成りますから。それらを含めて、キナの担当なんです」


 なるほど、畑ってのは自分達で作ってる野菜とか果物だけじゃなく、アルカの食用植物全般っていう意味なのか。あ、リスルってのは林檎、グライスは葡萄に似た木の実のことで、フィールじゃよく食べてたよ。


「ならカントやキナにも手伝ってもらって、ノンノの思うようにやってみてくれ。俺はそっちは素人だから、どうしたらいいのかさっぱりわからないからな。ああ、魚が主食だから、アトゥイにも協力してもらったほうがいいかもしれない」

「任せてください!」


 元気よくノンノが答えると、ジェイドとフロライトが嬉しそうに声を上げた。こいつらも期待してるな。


「それじゃジェイド、フロライト。今日はここで寝てもらうけど、少しなら遊んできてもいいからな。しっかりとノンノの言うことを聞くんだぞ?」

「「クワアッ!」」


 元気よく答える二匹の頭を撫でてやり、俺は館の中に戻ることにした。そろそろ寝室のレイアウトも終わってるだろうから、飯でも食うとしますかね。

ミーナ初上陸回です。しばらくはこんな感じで行こうかなと。

あ、ミーナの装備はこちらです。


ミーナ・フォールハイト 基本カラーはピュア・ホワイト

  武器:シルバリオソード(オートクレール)

     シルバリオシールド(スヴェル)

  頭装備:なし

  胴装備:ミスリル・ドレスサーコート(バハムート・ディフェンダーアーマー)

  腕装備:ミスリル・ディフェンドガントレット(バハムート・ディフェンダーガントレット)

  脚装備:ミスリル・パッチキルト(シャーレアン・ガーディアンキルト)

  足装備:ミスリルソルレット(バハムート・ディフェンダーサバトン)

  アクセサリー:なし

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