第64話 七色の騎士戦
戦闘開始と同時にお互いのスキルが発動した。
『氷結の魔眼』
『天歩』
水系統が苦手なのではないかと見当をつけた俺の氷属性の攻撃を、騎士は地面から大剣を素早く抜いて回避する。
しかも何もない空中を蹴って移動しているではないか。
(空中機動を可能にするスキルか)
敵が万が一近接系の攻撃しかもっていなかったら霊馬を召喚して空に退避し、そこから一方的に遠距離攻撃しようかとも思っていたのだが、上級ダンジョンのボスがそんな簡単なハメ技で倒せる訳もない。
『換装・風の剣』
そこで地面から抜いた鎧と同じ赤色をしていた大剣の色が変わる。
そして緑色に変化したそれを明らかに攻撃の届かない場所でも構わず振るってきた。
それを見て嫌な予感を覚えた俺はすぐにその場から動いて、飛んできていた風の刃を回避する。
やはり遠距離攻撃も持っているらしい。
『氷結の魔眼』
『発火の魔眼』
『換装・水の盾』
次の二つの属性による攻撃も、氷の方は新たに出現させた青色の盾に弾かれ、炎も鎧の前にほとんど意味をなさない。
(いや、盾の方は完全に無効化されているみたいだけど、鎧に当たった火は僅かに傷を付けてるな)
ほんの僅かに発生した火が当たった鎧の箇所が焼け焦げているように見えるし、攻撃が通った感触がこちらに伝わってきているのだ。
この感じだと鎧より盾の方が防御力は高いのだろうか。その分、守れる範囲が鎧の方が広いといったところだろう。
『換装・火の剣』
地面に降り立った騎士は、今度は自分の番というかのように赤色に戻った大剣から真っ赤な炎が溢れ出すと、その炎をこちらに目掛けて解き放ってくる。
津波のように押し寄せてきている辺り回避するのは難しそうだ。
『土塊の魔眼』
『氷結の魔眼』
だからまずその炎の津波を受け止めるように土壁を展開させた後、その土壁の周囲を氷で覆って強化する。
単なる土壁だけでなく火系統と相反する水系統で強化したこともあり、どうにかその氷壁は炎を受け止めてくれた。
今の時点で火と水、それに風属性を持っていることが分かるボス。この時点でかなり嫌な予感を覚えていた。
火と水、風と土、光と闇という六つの系統は相反するものとして互いに弱点となることが多い。
例えば火系統に強いバーニングタートルが氷などの水系統に弱いみたいに。
それと同時にダンジョン配信者もどこかの系統に特化すると、それと相反する系統のスキルが取りにくくなったり、場合によっては完全に習得できなくなったりもするのだ。
俺で言えば、呪いなどの闇系統に特化しているので光系統の一部のスキルが習得できなくなっているという風に。
『換装・土の剣』
だけど目の前の騎士は火と水の相反する系統を使ったばかりか、風と土のスキルまで扱っているではないか。
(剣とか盾の装備ごとに使える属性が分けられてるとかでもないのか)
同じ剣で風と土を扱っているのだから。それともこれは俺の『武装換装』のように装備を取り換えているだけなのだろうか。
黄色に変わった剣を地面に突き立てる騎士。すると地面から無数の杭が俺を貫かんとばかりに生えてくる。
『風刃の魔眼』
『呪いの魔眼』
それを上に跳んで避けた俺は、魔眼の力を工夫して作り出した風の足場に着地する。
魔眼は割と自由が利くスキルなこともあって、慣れればこうして攻撃する以外にも色々と使えるのだ。
そしてそれと同時にこちらの最も得意な攻撃である『呪いの魔眼』を使う。
このダンジョンでこのスキルが最も使い込んだと言っても良いだろう。特級スキルの強化が乗るおかげで一番威力が高かったこともあるし。
強化が掛かることで発動する、あるいは発動してからの速度も他と大きく違うせいか『呪いの魔眼』は敵が何かする前に鎧の肩部分にしっかりと命中してくれる。
(いつの間にか盾が消えてる?)
呪属性攻撃によって赤い鎧に傷が付いている騎士。その手にあったはずの水の盾が今は見当たらない。
(盾は防御性能が高い分、時間制限がある? それとも攻撃時には維持してられないとかか?)
それを見極める前に、敵の騎士は新たな動きを取る。
『換装・闇の鎧』
『換装・光の剣』
なんと鎧が黒色に変わっていくばかりか、今の強力な闇系統の攻撃からこちらは光系統が弱点ではないかと察したらしく大剣が白色に変わっていく。
あるいはそれを確かめるために武器を変えたのか。
しかも換装できるのは剣や盾だけでなく、全身を覆っていた鎧まで可能みたいだ。
(敵の得意属性の防御を固めて、弱点属性で攻撃してくるのか。厄介だな)
この分だと、三つの武器全てが全属性に換装できるのだろう。
だとすると攻撃するなら敵が防御を固めている属性以外でするしかない。
(あるいはその耐性をぶち破れる攻撃を叩きこむかだな)
幸いにも俺はそれが可能なスキルを持っている。
幽玄のデュラハンに耐性を無視してダメージを与えたことから分かる通り特級スキルの『呪詛の腕』にはそういう効果があるのだった。
だけどその切り札も知られれば対応されるかもしれないし、チャンスは一度だけだと思っておいた方が良いだろう。
(その一撃で仕留めるか、最低でも大ダメージを与えないとな)
『氷結の魔眼』
『発火の魔眼』
『天歩』
『換装・火の盾』
こちらの空からの魔眼による攻撃を盾と空中機動で躱しながら、瞬く間にこちらに向かって来ようとしている騎士との戦いはまだまだ始まったばかりのようだ。
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