第58話 スキル強化と属性経験値
続いてスキル強化だが、これをするにはDP以外に魔物から超低確率でドロップするモンスターカードというアイテムが必要とのこと。
そしてカードのドロップが発生するのはレベル30以上のダンジョン配信者のみらしい。
(だからこれまではどれだけ魔物を倒してもモンスターカードは手に入らなかったと)
だが運の良いことに今回はレベル30になった特典とのことで、特別にそれを達成した魔物のカードとやらが手に入っていた。
雷光のサイクロプスのカード
光属性+2 雷属性+4 雷光属性+1 火属性-2
どうやら雷光のサイクロプスというのが先程倒した魔物の名称らしい。
(やっぱり普通のサイクロプスじゃなかったのか)
モノリスにはDPを利用して購入した物なら、ある程度の量まで無料で預かってくれるチェスト機能が備わっている。
でなければ購入した物を現実世界に満ち帰れない以上、強い武器などを買ってもモノリス内に放置していかなければならなくなってしまうではないか。
まあ仮に特殊な効果などを封じた状態で外に武器などを持ちだせたとしてもやらないが。
下手をすれば銃刀法違反で捕まるだろうし。
だから俺がこれまでの買った武器や回復薬などのアイテムのほぼ全てがここに入っており、必要に応じてモノリスから取り出している形だった。
なお無料で預かってくれる量は高が知れているので、足りない場合は一定のDPを払って容量を増やす必要がある。
またこれを利用したスキルに『武装換装』がある。
実はこれはチェストに保管されている武器と手持ちの武器を交換できるというスキルなのだ。
ただし取り出せるのはあらかじめ登録しておいた三つまでとなっているので無制限に武器を換装できる訳ではない。
と若干話が逸れていたが、その間にカードの仕様についても大体理解した。
カードの使い道は主に二つ。スキルに使って消費するか、あるいはダンジョン配信者本人に装備させるか、この二択だ。
スキルに使うと消費されてそのカードは消えてしまう。
ただしそのカードごとに有する属性経験値というものがスキルに蓄積されることになるようだ。
そしてこの属性経験値が溜まることによってスキルは強化されたり、あるいは進化したりするとのこと。
(『呪殺ボーナス』が『呪怨超ボーナス』に進化したのもこれが影響していた感じだな)
どうも『呪殺ボーナス』は進化するために闇属性や呪属性の属性経験値を必要だったらしく、呪怨ダンジョンで呪い殺されまくっていたことで俺はその属性経験値を知らず知らずのうちに稼いでいたらしい。
このことから分かる通り、カードを消費しなくても属性経験値は貯められる。
ただしそれで貯められるのは少量であることは『呪殺ボーナス』がスキル進化するのに二ヶ月掛かったことからも明らかだった。
だからそれを短縮するためにカードを消費する。
ただしスキルごとに必要な属性経験値は違うらしく、それに合ったものでなければカードを使ってもまるで意味がないようだ。
そして基本的にスキルに必要とされている属性経験値は手探りで見つけるしかない。
(たぶん世界各地のダンジョンにはそういう情報が隠されているな)
それこそ死神タイプの魔物を倒すことでしか進化できないスキルとか、あるいはそれでしか手に入らない進化情報とかもありそうだ。
この妙に凝り性で色々な要素を詰め込むのが好きな運営ならまず間違いなくやりそうな気がするし。
一応自分で保有するスキルに幾つの進化先があるのかなどはモノリスで確認ができる。
ただ必要な属性経験値が何なのかとか、進化先がどんなものなのかは???となっていて見えないので今のところは地道に模索するしかないだろうが。
そんな中でも『呪殺ボーナス』から『呪怨超ボーナス』の進化条件などは確認できるようになっているので、偶然でも進化させてしまえれば条件を確認できるのは助かるかもしれない。
(てか、これを見る限り『呪殺ボーナス』にも複数の進化ルートがあったのかよ)
自分で発見した『呪殺ボーナス』から『呪怨超ボーナス』の進化ルートとそれに必要な経験値は表示されているので分かるのだが、その横にどうも別のルートがあったようなのだ。
それこそスキルツリーのような形で。
別のルートの詳細は分からないので予想にはなるが、『呪殺ボーナス』に別の属性経験値を貯めた場合は今とは異なるスキル進化をしていた、とかに違いない。
(だとすると今後はどんなカードを手に入れるのかもかなり重要な要素になってくるな)
スキル進化がどれほど強力なのかは今更語るまでもないだろう。
なにせそれによって強化された『呪怨超ボーナス』によって今までの俺はここまでの大躍進を可能としたのだから。
自分にカードを装備する方はスキルに消費するのと違って消えないらしい。
そしてカードに設定された属性値が自身に影響を与えるとのこと。
装備はなくならないとのことで試しに雷光のサイクロプスのカードを自分に装備してみる。
なおこのカード装備やスキル強化に消費するなどの行為全般はモノリスでのみ行えるようだ。
そうして自身のステータスを確認してみると、ステータス強化で全ステータスが50上がっている他にも変化が起きていた。
氏名 伊佐木 天架
レベル 30
HP 137+50
MP 134+50
STR 136+50
VIT 135+50
INT 139+50
AGI 135+50
DEX 133+50
LUC 139+50
保有スキル
特級スキル 『呪怨超ボーナス』『ボーナス超強化』『千変万化』
上級スキル 『魔眼移植』『呪いの魔眼』『発火の魔眼』『氷結の魔眼』『千里眼』『武装換装』
中級スキル 『鋼の心』『生命感知』『鷹の目』『属性強化・呪』
下級スキル 『斬撃』『軽身』
装備カード
雷光のサイクロプス(光属性+2 雷属性+4 雷光属性+1 火属性-2)
この状態で『発火の魔眼』を使うと、なんと悲しいことに威力が弱体化していた。
(プラスの属性は耐性も攻撃も強化されるけど、マイナスの方はどちらも弱体化すると)
『発火の魔眼』は火属性の攻撃なので火属性-2がモロに影響したのだろう。
現状では光や雷の属性スキルは持っていないので、それらの耐性が上がる以外に効果はないだろう。
だけど逆に言えば、これで闇属性や呪属性がプラスのカードを装備できれば更に『呪いの魔眼』を強化することもできることを示していた。
「……かなりいいな、これ」
実装されるタイミングの遅さこそクソみたいだが、その内容自体は非常に良い。
これがあればそれこそ中級ダンジョンで苦戦している他のダンジョン配信者もかなり楽になる仕様ではないだろうか。
(いや、もしかしたら運営的には中級ダンジョンでこの辺りを解放してもらう予定だったのか……?)
俺のようにレベル30に到達せず上級ダンジョンに挑むことの方が運営の想定外だった可能性もなくはない。
と言うか絶対にそうだろう。
(……まあいいや。今の俺にしてみれば、使えるものが増えたことが重要なんだし)
これらの新要素を駆使すれば、更に攻略が容易になるのは間違いない。となれば存分に利用するのみだ。
そこでモノリスを弄ることに集中して動きの止まったアルバートの様子を怪しむコメント欄に気が付く。
どうやら確認するのに夢中でそれなりの時間、配信を放置してしまったらしい。
「ああ、すみません。色々と装備を整えたりするのに夢中になっていました。あまりお待たせするのは申し訳ないので。そろそろ耐久配信を再開するとしましょう」
そう言いながら五十一階層に進んだ俺は、強化されたステータスの影響でこれまでの苦戦など嘘のような快進撃を開始するのだった。
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