ほんわかする回
暑い、暑すぎる。
「兄さん、中間テストお疲れさまです」
「僕はとある理由で疲れた気がするよ…」
家に帰ったら、紫音が出迎えてくれた。こういうの、なんか良いよね。ドラマみたいで。
「今日はゆっくりしてください」
「そうだな…」
テストのたびにこういうことがあると思うと気が重くなるが、こんな事態が再発
しないことを願うばかりだ。
「ただいまー」
「おかえりなさい、ご主人様!」
「おい、そんな言葉何処で覚えた」
「この部屋にあるらのべ?からです」
「お前…現代社会に馴染みすぎだろ」
特にヲタク趣味に。
「とにかくそれはやめろ。もし周囲にバレたら…」
「バレたら?」
「僕の将来が危ない」
特殊性癖持ちと誤解されるなんて嫌だ。ご近所…なんでもないです。
「私、ラノベとやらに興味を持ちましてね。よかったら詠ませてもらえませんか?」
「いいけど、今日みたいなことはやめてくれよ?」
「善処します」
「知ってるか?政治家の「善処します」「前向きに…」は男の「先っちょだけ」「何もしないから」と同じぐらい信憑性無いんだぞ?(僕調べ)」
「つまり、九条さんのそういう言葉は信用しちゃだめと?」
「そういうことは言わないから問題ない」
僕にそんなことを面と向かっていう勇気はない。僕は基本的にチキンなのだ。遠
くから遠距離武器でチクチク削っていくスタイル、ヘイト稼ぎの達人である。
「じゃあ、適当に読んでていいから」
「はい」
無言の間が続く…因みに僕は手を付けていなかった新刊を消費している。ラノベ
好きな人なら分かると思うけど、買うので満足しちゃって詠まなくなること無
い?あとは単純に読む時間が確保できない。ゲームとかアニメ視聴とかで忙しく
て…
「あの、九条さん。ちょっといいですか?」
「なに?」
「このシーンなんですけど…」
そう言って差し出されたのは、エッッッ路線のラノベ。そのワンシーンなんだけど…
「これ、明らかにおかしくないですか」
このシーンでは、主人公とヒロインがぶつかった拍子に、スカートの中に主人公の頭が入って「ヤバッ!」ってなってる。フィリアさんや…こういう場面をためらいなく見せてくるなよ。こっちが恥ずかしくなるから。
「これは…お話の世界ってことで見逃すのは賢明だと思うよ」
「そうですか…」
「ねえ、考えないで?これ以上有意義な説明をする自身は無いよ?」
「じゃあ、試してみます?」
「え、どういう…」
そう言うと、フィリアは体を実体化させて普通の人と同じ感じで立ち始めた。
一体何をするつもりなんだろうか…
「ほら、ぶつかってきてください」
「はぁ!?」
「だって、お話の世界なんでしょう?ならば、そういうことにならない筈です」
「それはそうだけど…」
「なんですか?幽霊の私を意識しちゃってます?」
「ああもう!やってやるよ!」
「きゃっ…」
根負け(?)して、フィリアにぶつかる。
「おいっ、これ…」
「兄さん、夕ご飯ができました…よ?」
間が悪すぎる。このタイミングで紫音が入ってくるとは…
「えっとな、これには深いわけがありまして…」
「そのようですね。詳しく聞かせてもらいますよ?」
「ハイ…」
ラノベ主人公たち、苦労してるんやな…
「なんかムカつきますね…もう少し意識してほしかったんですが」
夏になると語彙が「暑い」「ダルい」しか無くなる症候群。




