ケツのコイン 後編
「で? なんかあるんでしょ? アイディアが」
注文したビールを1口飲み、勇者に話しかける魔法使い。
「ああ? あー……今考えてるところ〜」
虚ろな返事をする勇者。
ストローを咥えながら、向かいに座った僧侶の胸を眺める……。視線に気付き、それとなく隠す僧侶。
「……よし、これで行こう」
ストローを外し魔法使いに耳打ちする勇者。
「へへ、あんたらしい作戦ね!」
僧侶を一目見て笑う魔法使い。
「?」
頭を傾げる僧侶。
「こんにちはー」
オッサンの家に再びやってきた勇者一行。
「おお! 勇者よ! せがれに相応しい女性見つかったか?」
オッサンとせがれが出迎える。
「いやぁ、それが……」
頭をかく勇者。
「居なかったのか?」
残念そうなオッサン。
「街中探しても、うちの僧侶より良い女は居ませんでしたよ!」
僧侶を指さす勇者。
「え?」
意味が分からない僧侶。
「どうです? 中々いいもんでしょ?」
僧侶にせがれをけしかける勇者。
せがれは僧侶の胸を見て、満更でもない顔をした。
「ただし 僧侶はうちの大事なメンバーです。ただと言う訳にはいきませんな!」
続けて勇者が話す。
「賭けをしませんか?コインを投げて裏か表か当てられたら僧侶をタダで差し上げます。負けたら家宝を下さい」
勇者が悪い顔をして提案を持ちかける。
更に困惑する僧侶。
「ふん、その様な話、誰が乗るか!」
一蹴するせがれ。
「せがれさん……どうみても貴方は24歳に見えないんですよね。実際40は超えているでしょう?他に兄弟も居ない。このまま御家断絶するつもりですか?」
相手の痛い所をグリグリ突く勇者。せがれが今にもキレそうだ!
「……分かった。 その話乗ろう」
承諾するオッサン。
「オ、オヤジ!」
オッサンに詰め寄るせがれ。
「いつまでも彼女の1つも出来ないお前に50%の確率で嫁が出来るんだ!お前も覚悟を決めろ!!勇者よ、ただし家宝は貸すだけだぞ!傷つけたら許さんからな!!」
怖い顔をするオッサン。家宝の入った箱を机に置いた。
「オーケーでーす」
スカした顔をする勇者。
(ここまではOKだ!)
1枚のコインを財布から出す魔法使い。
「表か裏か……選んでくれ」
勇者がせがれに問う。
「……表だ」
しばし悩んだせがれ。
魔法使いがコインを勇者のケツに入れる。
「!!」
驚くオッサンとせがれ。無理も無い。
勇者はケツからコインを天井高く噴射した!!
静かに落ちてくるコイン。カツーン。カツンと金音だけが屋敷にこだまする。
コインは……裏だ!!
「じゃ、そういうことで……」
コインを拾い、家宝の箱を持って持ち静かに立ち去ろうとする勇者一行。深く安堵のため息をついた僧侶。
「待て! コインを見せろ!!」
せがれが叫んだ。
勇者の手からコインを奪い確かめるが、何の変哲もない普通の硬貨であった。 オッサンとせがれは言葉を失い茫然とした。
「よし、少ーし急ぐぞ……」
勇者一行は速足で街を立ち去った。傍らでは魔法使いが僧侶をなだめていた。
「黙っててごめん。ごめんね?」
プンスカ怒る僧侶。 ごもっともである。
「勇者どの。それがしさっぱりである。本当に表が出たらどうするつもりだったのか?」
戦士は首を左右に捻りながら尋ねた。
「出ないよ」
前を向きながら答える勇者。そのまま戦士にコインを投げた。
「へ?」
戦士が手にしたのは両面が裏のコインだった。
「予め、両面が裏のコインと表のコイン。2枚をケツに仕込んでおいたのさ!俺はせがれと逆のコインを出せば良いだけさ……」
「し、しかし、せがれ殿が手にしたコインは……!!」
わけが分からない戦士。
「俺が拾ってすぐすり替えたのさ!!」
頭の後ろに手を組み歩く勇者。
「な、なるほど〜」
ようやく納得した戦士であった。
「悪知恵だけは働くのよね〜」
魔法使いが囃し立てる。
「へっ、褒め言葉として受け取っとくよ」




