夢:Her Apology
*
俺は病室にいた。
ベッドに寝かされているのは、この前の夢でカフェで俺と紅茶を飲んだ少女だ。
あのとき着ていた貴婦人のような赤いドレスとはうって変わって、シンプルなデザインの患者衣に身を包んでいる。
少女の右腕はギプスのようなもので固定されていた。
「大丈夫?」
俺の問いに、少女は明るく返した。
「とりあえず腕は大丈夫そうよ。意識もすぐに戻ったみたい」
「そうか、よかった……」
俺と少女の関係性は分からないが、夢の中でそれについては考えられなかった。
「あの……ごめんなさい。私は、あなたを危険な目に遭わせてしまった」
少女は申し訳なさそうな表情で俺から目を逸らした。
俺には何のことか分からなかったのは最初だけで、夢の中にだけ存在するような一時的な記憶によって俺は少女の発言を理解することができた。
「気にしなくていいよ。むしろ、俺一人だったらどうなっていたことか」
俺がそう言っても、少女はやはり相当の罪悪感を感じているようだ。
「それでも、私と関わらなければこんなことは起きなかったでしょう?申し訳ないけれど、あなたは……私と距離を置いた方が良いと思う。それが、あなたのためだから」
慎重に言葉を探して紡ぐように、俺は言う。
「いや、あれは全部俺のせいだ。責任は俺にあるから、そう思い詰める必要は――――」
しかし少女に遮られた。
「ごめんなさい。でも、あなたみたいな素晴らしいレーサーに私なんかはふさわしくない。あなたにはもっと良い***がどこかにいるはずよ」
世界にノイズが走る。
「待って……」
「私には、もう――――」




