夢:The Lady with a Cat
その日は長い夢を見た。
*
俺は仰々しい装飾が付いたドアを開け、古めかしい洋風のカフェに足を踏み入れた。
「あら、いらっしゃい」
窓際には丸い木のテーブルと、それを挟んで向かい合うように置かれた椅子。
そのうち一つには既に誰かが座っていて、俺を見るなり声をかけて手招きした。
「どうぞ座って」
俺は言われるがまま、椅子に座った。
目の前で紅茶を淹れているのは――――貴婦人のような少女だった。
赤いドレスが窓から差し込む光に反射して、微かに透けている。
少女はティーポットから静かに紅茶を注いだ。
「アッサムティーのセカンドフラッシュよ。召し上がれ」
「ありがとう」
お言葉に甘えて、カップを口元に運んだ。
綺麗な赤褐色の紅茶からはチョコレートにも似た柔らかい香りが漂う。
一口飲むと、濃厚な甘味の中からパンチの効いた深いコクが感じられた。
「味がハッキリとしていて美味しい」
「そうでしょう? アッサムはミルクティーが定番と言われているけど、私はストレートも好きなの」
自慢げに語る少女は楽しそうだった。
温かい紅茶を飲むのは久々だ。気分が落ち着いてくる。
「紅茶に含まれるテアニンという成分は、緊張を和らげる効果があるのよ。レースの前に飲んでみてもいいんじゃないかしら」
「それは役立つ情報だな」
しばらく紅茶を飲んでいると、どこからか猫が歩いてきた。
少女が手を広げると、猫は膝の上に飛び乗った。
「猫飼ってるの?」
「ええ、そうよ。あなたなら知っているはずだけれど」
俺なら知っている?
「……それは、どういう――――――」
*




