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異世界でレースしてみない?  作者: 猫柾
第五章 新天地にアクセルを
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94.海外で走ってみない?

 



 *数日後*




「あ、おかえり」


「うぅ……もう腰が限界だ……」


 という呻き声と共に、おっちゃんが帰ってきた。

 突然海外へ行く用事ができたと言って失踪したので少し不安だったが、とりあえず無事なようだ。


「見たところ、何も変わりはなさそうだな。よかったよかった」


 心配していたのは店のトラブルらしい。たまに(悪い意味で)奇跡を起こすエルマとやんちゃなシビくんがいても平和だったのは、フェスティバルに行く間店を閉めていたからだろう。


「フェスティバルは楽しかったか? ――どうしたんだ、その傷は」


 奥に停めてあるZの傷を一発で見抜かれ、俺は観念して打ち明ける。


「峠を走ってた時に、派手にやっちゃって……」


「そうか。ボディーはあっち(・・・)で直せるからいいが、エンジンも駄目か?」


「いや、乗った感じ問題なし。サスも狂ってなかった」


「不幸中の幸いだな」


 どうにかなったようだ。

 あの夜のことを話すと後々面倒になりそうだし、これでいい。


「とりあえず、二人を呼んできてくれないか。大事な話がある」


「大事な話? ……分かった」


 俺はガレージの階段を登りながら、話とは何か漠然と考える。

 しかし見当もつかないまま部屋の前まで来てしまった。




「帰ってきてたんだ! おかえりー!」


「おつかれ!」


 ということで今ガレージには俺、エルマ、シビくん、おっちゃんの四人が揃っている。いや三人+一匹か。

 ――――――何が始まるのだろうか?


「レイ。お前さんは、来年クラス2に出場できるよな」


「え? ああ、うん」


「そこで、もし海外でレースする機会があるとしたら、どうだ?」


 か、海外?


「そりゃあもちろん……嬉しいかな」


 ジルペイン以上にモータースポーツの人気が高いアマレイクやティアルタは、聖地とさえ呼ばれるサーキットも数多くある。当然、海外の方がレベルも高いし、そこでメーカーや企業などにアピールできればスポンサーとして支援してくれる可能性も夢ではない。


「そうだろう、そうだろう」


 なぜか満足げな笑顔で頷くおっちゃん。

 俺には話が全く飲み込めないのだが。




「ならいっそのこと、ティアルタ・クラス2選手権に参戦してみないか?」




「え……?」


 思考が脳内を駆け巡り、やがて過負荷でフリーズした。


「な、なんで? どういうこと? 俺が、どうやって?」


「まあ落ち着いてくれ。ゆっくり話す」




 ということで俺は、大急ぎで身支度をしている。

 さっきの提案は冗談でもなんでもなかった。おっちゃんを残して俺とエルマとシビくんはティアルタ共和国へ飛び、そこでクラス2のレースを戦うということになる。


 おっちゃんを残すのはもちろん店の経営があるからだ。減った人員に関しては、従業員を雇うつもりでいるらしい。

 エルマが一緒について来てくれるのは心強い。――――――ん?


「エルマ……もしかして、このこと知ってた?」


 さっきから驚きもせずわくわくした様子で荷物を整理するエルマに訊いてみたが、ただニコッと笑顔を見せるだけだった。まあいいか。


 そして獣人のシビくんだが、エルマが風邪で寝込んだときにレースエンジニアとして代わりを務めた実績がある。犬であることを差し置いてもなかなかの切れ者だ。


「本当に来るの?」


「当たり前だよ! ボクはレイのファンだし、マネージャーだから!」


「そうなんだ……」


 そういえばファンだった。

 とにかく、舞台は変わってもこのメンバーでまた戦えることが俺にとっては何よりも嬉しい。

 また勝利の喜びをみんなと共有できたら――――――なんてことは後で考えよう。


 ティアルタでレース活動をする上での拠点となるのは、北部に位置するメディオラという都市だ。

 そこは首都パラトに次ぐ第二の都市で、商業・工業のみならずファッションや金融、もちろん自動車産業も発達している。


 そんなメディオラの旧市街に、あるプライベーターのレーシングチームが存在する。

 プライベーターというのはワークスチームの対義語にあたる。自動車メーカー直属のチームとして自社開発のマシンで参戦するのがワークス。そうしたサポートを受けずに、独立して活動するチームがプライベーターだ。


 そのプライベーターチームは知る人ぞ知る強豪だったが、ここ数年は成績が落ち込んでいるらしい。

 やがてスポンサーも離れかけ、経営は傾いていき――――――といった状況のなかでドライバーは他のチームへと移籍してどんどん減っていく。

 そこでおっちゃんとチームのオーナーが交渉し、俺をドライバーとして歓迎してくれることになったようだ。




「それで、結局どっちの提案だったの? おっちゃんが俺を走らせてくれって頼み込んだの?」


「もともとオーナーとは付き合いがあったからな。ちょうどドライバーを探してたから、お前さんを売り込んだのさ。向こうも前年のチャンピオンが来ると聞いて、首を長くして待ってるはずだ」


 なるほど。期待されているなら嬉しい。


「それは楽しみだな」




 そういえば、あいつは……?




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