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035:学府 其の3

 登校したクラスでの、ホームルーム後の午前中の授業、冒険者学を学び、ルリも真面目に勉強するレドには感心し、特に言わずに後ろで休む。

 ティアのボディーガードのユキカゼは、いつもの様なティアの足元で丸くなって休む。

 獣使いや、召喚士等にはこうした従者が付き物なので、誰も言わない。

 勉強の後のテスト、細かな休み時間などにも勉強をする、特にレドは勉強をよくするタイプだ。休み時間にも授業の前の予習を欠かさない、そんな為に0組でも、細かい時間などはお喋りの前に、勉強をする傾向にある。

 ただ男子は少なく、星空のレド、南のバッシュ、野良のアシル、C+Dのジョーカー、アケチの5名だ。全体でみれば半々なのだが、この0組は色々とはみ出し者のプレイヤー達の中でも、さらに特殊な者達が多いためだ。

 しかしレドの立ち上げた生産会などの連絡もあり、何かあればすぐに連絡が入る。

 元囮捜査官の為に、学府の司法からも話が届く、何かと忙しい人なのだ。

 そんな忙しくても文句一つ言わないので、関係先からの話も多い。

 特にヒーロー側からのスカウトの話が多い、どうにかしてレドを引き抜こうとするためにプレイヤーからはとても嫌われていた。


 昼食になり、レド達は立ち上げた生産会に出る。

 主に星空、C+Dだ。南の方はチャイムの所に、野良の方はアプリの所に行く。

 派閥ではないが、三者とも話し合いをする会議にも名前を連ねる学生だ。

 特にチャイムの商業会は学府の巨大な資本家の集団で、アプリの立ち上げた魔法教会とは仲はよく、レドの立ち上げた生産会とは微妙な関係を持つ。


 調理実習室の隣に作られた生産会用の広場、レドの家族のピローテス、ティアを見た錬金術師たちは狂喜乱舞する、近くに美形のジョーカーやアケチを見た男子は忌々しそうな顔で居たが、女子の方は好みのみ喜ぶ。

 ジョーカーとアケチはリアルチート組枠なので、通常のプレイヤーからはあまり好かれないが、自警団の団員から直ぐに参謀と挨拶される。

 生産会の今日の議題は、至高の議題である複合機能を持つアイテムの事だ。

 薬等を生産する薬師、錬金術師、香水等を生産する調香師、農作物等を生産する農家、この農家より軽い物を生産する園芸家、主に料理等を生産する料理人、製菓などを生産する製菓師、繊維等からの衣類等を生産する裁縫師、これらの衣類の染織を担当する染織師、これらとは違った意味での重要な役割を持つ工作師。


 複合機能、夢の中の夢、この夢のアイテムとも言われる、複数の生産クラスの作り出せるアイテムの中でも、一つのアイテムに複数の機能を有するアイテムだ。

 例えるのなら料理人の料理の中に、薬師の作り出す薬効果がある食べ物や飲み物、農家の作り出した農作物に更にバフ効果等に、上手くいけばデバフ効果を与えようとする試みだ。

 この為に生産会では毎日のように研究し、頭をひねり、時には辞典を調べ、時にはダンジョン区まで行って文献などを調べていた。

 生産会の護衛を担当する忍者達も、この夢のアイテムには興味があり、ソロなどはPTを組み様々な地域で活動していた。他にも召喚士、獣使いもこの夢には賛同していた。


 しかし難易度は高過ぎる程であり、代表になるほどの腕前でも挫折するのが当たり前と言われるものだ。

 これには商業会、魔法協会も独自の調査し、生産系クラスなどにも話し、時には協力し何とかしようとするか挫折してきた。

 参謀の二人もこの説明には納得し、幾つかの情報を元に、重点的な優先順位を作成し、特に初歩的な物から始める。


「生産会始まっての実験か、どうだシェル」


 料理人クラス代表のシェルに言うレド、料理人は慎重に手順を確認し、更に慎重に少しずつ行う、他のクラス代表もじっと観察していた。

 いつもは陽気でクールな料理人のシェルも、クラス仲間が汗を拭くほど緊張しているらしく、握る包丁が震えない方がおかしいほどだ。


「失敗してもよい廃材のみだ。落ち着け、適当な女でも紹介しようか」


 レドが緊張を解くために言う、シェルは苦笑して落ち着きを取り戻して、調理を行う。

 材料はとても廃材とは思えない高級なものばかり、特に世界級の葉っぱなどには震えない方がおかしい最高級の素材だ。

 完成した簡単なサラダ、他の生産クラスは沈黙していた、成功がないからだ。


「よし仕上げを行う」

「どうする気だ」

「調味料をぶっかける」

「まて、それは、それは辞めてくれ」

「必要だろ」

「・・・しかし、やっとここまで来たのだぞ」

「物は試しだ」


 誰もが言葉がない、どれ程の苦労と、どれ程のコインと、どれ程の熱意がこもっているかレドにもよくわかるが、試さない事には無理なのだという事も知っていた。


「何より俺の調味料より、美味しい調味料はまだない」

「分かった、ただし、分量は測らせてもらうぞ」

「おう」


 料理人がしっかりと計算し、他の製菓等も調べてから二重のチェックを受けて掛ける。


『複合レシピ完成、生産者、料理人クラスのシェル、錬金術師クラスのレド、成功者には複合レシピを追加します、なおレシピスペルはありません、おめでとうございました』


 重い沈黙、そして高らかの咆哮と歓喜の声。

 特に苦労をしまくった料理人たちは泣いて喜んだ、他の生産クラスも落ち着かない。

 参謀の二人にも既に仲間と認識されたらしく、声がかかり二人は不思議そうに聞いていた。

 錬金術師のピローテスも、ティアもこれがどれほど貴重な物かは分かってはいた。

 世界でも屈指の者が協力し合いやっとの事で成功一つ初めての例なのだ。

 中には失神する者もいた。


「よし次は製菓の方を」


 製菓のシロップの方は緊張し始める、女仲間が落ち着かせ、クラス仲間も落ち着かせる、簡単なジュースを作り、レドが調味料を加える。


『複合レシピ完成、生産者、製菓師クラスのシロップ、錬金術師クラスのレド、成功者には複合レシピを追加します、なおレシピスペルはありません、おめでとうございました』


 更に歓喜の声が上がる。

 そんな成功した3人には、ジュースとサラダの試食会だ。

 味は最高峰ものの為に、安心して食べる、味の方は特に美味しいのだが思っていたほどの味わいではなかったし、香りの方も特に、効果の方も調べられた。


 ▽

『複合サラダ』

 [詳細]

 名称 サラダ

 素材 複合

 等級 世界級(複合生産級)

 耐久度 1/1

 品質 ☆×1

 完成度 1

 効果

 HP回復+1

 味わい+31

 香り+31

 満腹度+31

 健康1番

 備考

 世界初の複合レシピ第1号、高過ぎる性能だが、生産者の能力により制限されてしまい過ぎた、また素材の等級などにも問題もあり、熟練度などにも問題があり過ぎた、今後に期待すべきものではあった。

 生産者 シェル&レド

 評価 E

 ▽

『複合ジュース』

 [詳細]

 名称 サラダ

 素材 複合

 等級 世界級(複合生産級)

 耐久度 1/1

 品質 ☆×1

 完成度 1

 効果

 HP回復+1

 味わい+31

 香り+31

 満腹度+15

 喉の潤し+31

 備考

 世界初の複合レシピ第2号、高過ぎる性能だが、生産者の能力により制限されてしまい過ぎた、また素材の等級などにも問題もあり、熟練度などにも問題があり過ぎた、今後に期待すべきものではあった。

 生産者 シロップ&レド

 評価 E

 ▽

「ひとまずは成功だと言いたいが、これは酷いな」


 誰もが成功はしたが、完成とは言えないような酷い備考の説明に落ち込んでいた。


「よしフレグランスとシロップだ」


 二人は超緊張していた。特に調香師クラス代表のフレグランスは今にも倒れそうだ。

 それも使う素材の方は成功した二つとは比べようがない貴重な物だ。

 世界樹の花弁、飲料の方は何とか苦労して完成させた紅茶用に特化された液体だ。


「おー緊張しているな、まず3サイズのを考えよう」


 思いっきりレドをひっぱたいた。

 だが緊張は解け、怒りながら始めた。


「失敗したら大変な事になるぞ」

「レド、余り虐めるな」

「軽いジョークなのさ」


 多少の緊張を持つフレグランスは、手慣れた動きで作り、シロップが紅茶を作る。


『複合レシピ完成、生産者、製菓師クラスのシロップ、調香師クラスのフレグランス、成功者には複合レシピを追加します、なおレシピスペルはありません、おめでとうございました』


 三度目の狂喜乱舞。

 そこにレドが紅茶をさっさと入れてから、調味料を入れた。

 思いっきり黒い煙が出る、高級な紅茶のカップも砕け、全員が凍り付く。


「コマリ記録したか?」

「ばっちり、二重加工は成功するも、これを中間素材化は不可能だった、残念」

「き、貴重な」

「ティーカップがァ」


 争いにはならない、こうなると予想していた忍者達が直ぐに鎮圧したからだ。

 忍者クラス代表のウルカは、仲間から抑えられ、しきりに暴れないで下さいと副委員長に頭を下げられていた。

 参謀の二人も見事な動きには感心していた。

 召喚士クラス代表のヒリュウも、直ぐに仲間に従者の事を指示していた。

 ユキカゼも、ルリもよく分からないが、成功には失敗も付き物でもあると理解していた。


「しかし、次は」


 成功は誰もがしたいが、貴重な生産道具を壊せるのも絶対にお断りなので、仕方なしに裁縫師の方が、染織師と共に前に出る。


「よし二人で行こう。ただ他の三つとは世界級はないぞ」

「ええ」

「緊張するな」

「ただし今回の方は俺も加わる、着心地や染織などのスキルを持つ俺が加わるとどうなるか興味がある」

「了解」

「こ、壊さないでよ」


 二人のクラス代表が、最高級の素材と最高級の生産用道具を使う、これでも成功した回数は一度もない、参加する三名の記録が直ぐにつけられた。


「染織にはこれを使え」

「・・・なにこれ」

「世界樹の青葉の汁を染料化したものだ」

「あーう、うん」


 見るからに気の毒そうに震えて受け取る、相棒の裁縫師が言ってから落ち着かせる。


「言った方が良いか」


 女子からレドに冷たい視線が注がれる、碌な事を言わないからだ。


「まず今日の献立を考えよう、卵は醤油?」

「ソース」

「砂糖よりは淡白の方が味を良い」

「もちろん」

「ごはんには必ずタクワンです」

「高菜です」

「ご飯のお供に常に備える味噌汁である」

「YES」

「さて問題です。今日の献立の中に困った物か一つ、それはベーコン、これをどうする」

「避けてから捨てる」

「ばっちりだ」


 よく分からないが緊張は解けたらしく作業を開始する。

 最初からこうしておければ何も問題はないが、とあるクラスの者達は思う。

 作業を行い、裁縫師が綿花より作り出した糸を染織師が染めた。

 爆発、黒墨、ヘドロのような物が出来る。

 二人は激しく落ち込む。

 レドが立ち直らせ、コマリがデータから直ぐに共通点を洗い出し、提供した。


「やはりか」

「そう。同じ生産スキル、同じ生活スキルを持つ者のみが行える、これが複合レシピ」

「調味料と言う素材を提供したから俺は補佐的な立場として認識されたわけか」

「そう。だからこそ生産スキルの裁縫・染織を二人が持ち、生活スキル着心地があればよい」

「成功確実コマリ?」

「そう。二人が失敗したから、成功するべき方策が発見された、これは貴重な礎」


 二人はホッとしていた。周りも一安心であった。

 生産系の中でも一番の重荷を背負う、農家と園芸も顔を見合わせてスキルを確認する。

 工作師のダグスは近い生産クラスのレドに話す。


「まずはガラスだ」

「そちらは専門ではない」

「手順と素材は提供する」

「頑固だからお前は、分かったよ」


 珪砂、石灰、ソーダ灰を使い製造したガラス、この単体素材、これを工作師のダグスが加工し、見事なガラス細工を創り出した。


「成功も失敗でもないか」

「いや成功したも同じだ」

「何が足りない」


 レドが小石を取り出してダグスは薄く笑う、塗料が足りなかった。


「塗料を手に入れる」

「ひとまずは工作スキルを持つ俺が、塗料スキルも取得しよう」

「ああ任せたぞ」

「戦闘系スキルも欲しいけどな」


 戦闘・生産系に属する固定PTのリーダーなのだが、学府では主に生産を行うので戦闘はそれほど必要ないが、それはプレイヤーのプレイスタイルに直結する事なので誰も言わないのが掟の一つだ。


「ただの塗料ではダメだ」

「魔法協会か」

「そうだ。彼奴らの魔法に関する知識は高い」

「だよな~手持ちの札一つを使うか、ああお金なんてどうでもよいけど、レシピが」

「いつか借りは返す」

「分かったよ。」


 レド:

『はろは~ろ』

 アプリ:

『・・・何か用か』

 レド:

『魔法石Please』

 アプリ:

『死ね』

 レド:

『MP回復ポーションレシピ』

 アプリ:

『いいだろう』


 交渉が完了し、待つとノラノラのメンバーがやってくる、アプリが一つの鉱石を置く。

 アケチが直ぐに鑑定し、複雑そうな顔でレドに頷く。


「これがレシピだ」

「毎度」


 渡されたメモ帳を受け取ってから去る。

 レドは超悔しそうにテーブルを叩く。

 軽く寝込みたくなるが、気力を振り絞り鉱石を受け取ってから、スキルポイントから塗料を取り、ダグスも準備は良いようだ。

 製造したガラス、ダグスが加工し、レドの塗料でこれを作った。


『複合レシピ完成、生産者、工作師クラスのダグス、錬金術師クラスのレド、成功者には複合レシピを追加します、なおレシピスペルはありません、おめでとうございました』


 ダグスが吼える、他の工作師達も吠える、相当嬉しかったらしく天を見ていた。


「一つまずは成功か、後はじっくりとした研究だな」


 生産会の実験は一つの段階を終えた。

 データを集めたコマリが分析し、参謀の二人もこれを捕捉し、次の段階に値する一番の難関である評価を上げる事、これには誰もが渋い顔だ。

 何せ完璧なマニュアル生産でも、評価が上がるのは困難なのだ。


「無理だろ」

「珍しい」

「コマリ、完璧なマニュアル生産でも上がるのは1つぐらいだぞ。それも最高級の生産品をかき集め、数多くの失敗を重ね、地道な熟練度も上げ、なお失敗を重ねて初めて上がるのが評価だ。しかもこれは一つのレシピに対してだ」

「大丈夫コマリはしないから」

「いや全然大丈夫じゃねえよ。どこらへんで安心する要素がある」

「コマリの負担がないところ」

「おいおいおい」


 親としてはこの三女がとても心配になるレドだった。

 長女としても、この三女の考えには賛同できないが、かといっても実験をする以上は必要ではあり、WHO惑星の森の都の錬金術師学会に報告すれば、とてつもない事になる。

 父親への負担が増すという辛い点があるのだが、長女と三女はこれを無視した。

 次女の方はよく分かっていない、出されたケーキを美味しそうに食べていた。


 いつもながら貧乏くじを引くタイプのレドの為に、ヒリュウやアリサもどうしたものかと考える。

 相談役のサクヤも、必要ではあるが、負担が集中するのは歓迎できない


「まずはそうじゃの。料理と製菓のみでよいじゃろ、残りは一度保留にしたい良いか」

「「はーい」」


 負担が増え始めたレドに助け舟を出したサクヤにレドは感謝した。


 そんな木曜日の昼食の時間が過ぎた午後。

 戦闘学、生産学ではあるが、戦闘系組、生産系組に分かれ、戦闘・生産系の組は独自に両方を学ぶ。

 最初の週は戦闘学、主に0組は戦闘能力が極めて高い面々で構成されるが、色々と辛いノラノラのマキ、武器スキルがないコンビの三名は別個に学ぶ。

 主に戦闘系クラスとの模擬戦、ただアリサには女性のみ、チャイムには堅い者専用という限定は有った、魔法使いのアプリは攻撃魔法使い同士の戦闘訓練。コマリは杖を習う。

 星空のレド、ピローテス、ティアは細剣を使い、ウルカは忍者刀、ヒリュウは斧槍、サクヤは槍。

 南のリードはクロスボウ、バッシュは弓。

 野良のアシルは盾と片手剣、ビルドは大剣。


「おし、先鋒はティア、次鋒はピローテス、次にアシル、四番目にビルド、五番目にサクヤ、6番目にヒリュウ、7番目にウルカ、8番目にアリサ、9番目にチャイム、俺は10番目と言う事に決定だ」


 誰も異論はない、相手クラスの組は物騒過ぎる相手には安全な者を選出し、易い相手には易い相手を、強い相手には強い相手を選んだ。

 錬金術師たちにアイドルのティア、対戦する相手も戦いはするが、酷い体力しかないので直ぐにばてて倒れて搬送された。

 次鋒の長女、相手の組の中でも腕利きの女子、特に剣士が対戦した。

 次女とは格が違い過ぎあっさりと倒される。

 次にアシル、対戦相手も騎士職の者が選ばれる。

 戦うがどちらも堅い為に、指揮官としての経験があるアシルが、適当な事を言った隙に攻撃して倒した。

 対戦する相手の組は納得がどうしても行かないらしい。

 ビルドも戦うが力及ばずに撃破されてアシルの愚痴っていた。

 サクヤの方は簡単に倒せるがすぐには倒さずに指導してから倒した。

 ヒリュウの場合は戦士型性格の者が対戦し、激戦の末にヒリュウが勝つ。

 何かと苦労が多い忍者のウルカ、対戦するローグ系の者もまずは様子見、互いに相手の力量を測りながら戦い、辛くもウルカが勝つ。

 物騒過ぎる狂暴なアリサ、誰もが尻込みし勇敢な装鎌士が戦うも敗北した。

 チャイムの場合は攻撃力に特化され過ぎているために普通の者では直ぐに倒されるので、硬すぎるプレイヤーが戦い、引き分けになる。

 最後のレド、相手の組の委員長が対戦するも、全部見切られて、避けられて、蹴られてから倒された。

 対戦相手だった委員長は激しく落ち込んでいた。何せ武器の訓練で、武器を使われずに倒された戦闘系は辛い。


 □


 放課後の前に教室に戻っての、料理人からの食事が提供されて食事。

 普通とは違った青春のような学生を過ごしていた。

 部活のある者は参謀コンビを除き全員なので、文科系の部活に向かう。

 そんな参謀コンビは音楽を習いに行くらしく、指揮棒とギターを持って歩いて行った。


 文科系の特に調合部、主に生産会の者の為に色々とおかしい人が多い。

 部長には薬師クラス代表のジェネリック、自警団の妨害部隊の指揮官でもあり、優れたところの多い女子生徒だ。何かと問題の多い部の為に苦労は多過ぎる。ちょっと辛そうだとレドが話を聞き、時々調合して飲ませていた。


 副部長の調合士クラス代表のフレグランス、自警団の支援部隊の指揮官でもある。

 三人はライバル学科の代表でもあるが、レドはそう言った事が理解できない為に特に困っていない、そう言う奴なので二人も特に気にしていない。

 ノンビリと調合の楽しい実験であるが、ルリはピリピリとしていた。好きな物は人体実験、夢の国は治験の自由な国と言う奴だから仕方がない。しかし校医の居ない学府では味の良く、香りの良い薬を求める者は多い。

 特に高学年の大学部では、大量の素材と交換して購入していく。


 平和な木曜日の放課後、調合部に困った一人の女性が来た。対応した部長はとても困っていた。何せ地球人では比べようがない美人でスタイルもよいが、それをぶっ飛ばす様な戦闘型の魔法使い、戦闘艦を魔法で破壊するような女性。

 魔法使いの中でも、特に攻撃魔法に特化された女性の、教師の一人であるポリスだ。

 惑星誕生より生きているエルフ、この最高齢の魔法使いでもある。


 とある古い時代の惑星で騎士、海賊、盗賊、魔法使いと極めて攻撃力に偏ったPTのメンバーの一人だ。

 色々と優れた女性であることは確かであり、少なくてもサクヤと並ぶ魔法使いでもあり、魔法使い達からとても尊敬された人なのだが、夕方に近付くと不穏になる。

 狙いはとある元騎士の少年、この少年に一方通行の片思い中だ。しかもこの少年の本体は戦艦なので、どうしても無理なのだが、そう言う常識が通じない困った女性なのだ。

 困った人ではあるが、生徒への授業などは分かり易く、また魔法部の顧問も担当し魔法においてはエルフの最高峰の人なのだ。

 本人に対応させた方が最も良いのだが、何かと負担が大きい事にもあり、これに一つの文句も言わない奴なので、こんな日位は時間を上げたいというのが決まりの一つだ。


「あっレドは居る」

「居りません」

「あらら、そんなつまらない嘘が通じないわよ。なんせ監視カメラと言うアイテムも有るしね」


 部長のジェネリックは内心で舌打ちした。

 仕方なしにレドを呼ぶ。

 対応する本人は既に調合を終えた薬を取り出して渡す。


「いつも思うが何に使う」

「ホムンクルスよ」

「ああ魔法原理による人造生命か、魔法原論にある奴だな」

「そうなのだけど、これが厄介なものでね」

「そうだろうな」

「あら、元騎士さんは詳しいの」

「良く戦った」

「いえ製造法とか」

「ふむ。まあ診ない事にはな。適当な薬でも調合しよう、こう言うのはティアが大変得意だ」

「ティアが?」

「ああユキカゼとルリの家族を作るって勉強している、少なくてもこの方面でいえば天才らしい、コマリも居ると成功率が上がるぞ、俺の専門は調合だしな」

「少しだけいい」

「ああ」

「子供は作れるようになったの?」

「まだ無理だそうだ。そもそも他の種族とは随分と違うからな、単なる交配では無理だ」

「・・・そう、運命から逃れられるといいわね」

「それは兄に任そう、全ての運命を打倒するために兄は活動している、色々な意味でね特にエルフの惑星にあるとある水とかね」

「レド?」

「とある本が教えてくれた」

「・・・どうして」

「色々と有る、何かに活用する事も考えたが生徒会長も居るので必要はない」

「あのメガネの少年の事?」

「ああ地球人の中でも最高峰の人材だ。世界でも屈指の男だ」

「・・・理由は」

「よく世界級の素材を作って送ってくる」


 これに凍る様な美貌のエルフの顔から表情が消える。

 他の者も不穏な空気を察し、密かに攻撃用の薬品を取り出していた。

 しかしレドはにこりと笑って言う。


「よく失敗する物をね」

「先に言いなさいよ」

「どうせ原始社会の地球人には過ぎたもの過ぎた、だから焼こうと思ったか」

「ええ過ぎたものは身を亡ぼすわ。もしくは星とかね」

「何なら世界級の薬でも飲んでみるか」


 エルフは直ぐに反応できなかったが、この元騎士の少年がつまらない事を言う性格ではないし、くだらない事を考える奴でもない。

 人からすれば長い時間でも、エルフの中では僅かな時間としても、同じ時間を過ごしたきて者を騙せるような奴ではない、そういう事が苦手でもあり、とても嫌う行為と考える騎士の様な少年なのだ。


「世界級の薬かしら」

「ああ別に政治ゲームをする気はないぞ」

「そういう事を教えてくれた人が言う台詞じゃないわ」

「そうだっけ、効果は酷い物だ。何せ製造する俺スキルが低いからな」

「あら学府最高の錬金術師の能力でもダメなの」

「格が違うのさ。本来なら世界級の薬品を作る為にはしっかりとした製法が必要だ。しかしここにはそんなものはないし、製造用の道具もない、その他の製造の為に必要な者も居ない、何から何まで不足し、単なるMPポーション、昔でいう魔法薬だな」

「酷い薬ね」

「それでも良ければ使うか」

「・・・も、ダメ、でも、で、でも」


 とても悩んでいるらしく、部活の者はああこいつはレドの仲間だと直ぐに分かった。

 ウルカのように苦労させられた奴なのだとも理解できた。


「まずは世界樹でも見るか」

「せ、世界樹?なんで地球に」

「色々と有る」

「いつもそればっかり」

「はいはい、ひとまずは世界樹の実でも食べてみるか」

「・・・エルフが知ったら地球を破壊するわよ」

「いいからいいから食べれば証拠は残らないだろ」

「・・・そう言う奴だった」


 ウルカの様に悩まされただろうなと誰にもわかり、姉妹の三名も気の毒そうに見ていた。

 中に入り、部の中央にある植木鉢、植えられていた世界樹から実を取り、渡す。

 惑星誕生より生きたエルフは、困った顔で受け取り、世界樹とレドと自分の手の中にある実を何度も見る。

 困っている所ではなく、内心はどうしようと途方に暮れていた。

 こう言った事に全く気にしないタイプの元騎士の少年なので、森の民たるエルフが何度も狩ろうと考えるのは致し方ない物だ。

 途方に暮れまくるエルフ。

 一応呼ばれた海賊担当のレッドが見ていた。

 何も言わずに回れ右をしかけていた。


「おうレッド、ちょっと」

「お、俺は知らない何も知らない」

「少し木を見てもらいたい」

「木?」

「ああ」


 レッドも部室の中に入り、レドとポリスの傍に依るが、途方に暮れているエルフを見て下がる。


「この木だ」

「・・・見た事のない木だな」

「まあな」


 興味がわいたレッドは近寄り木を観察し、色々と調べる。


「れっど~どうしよう」

「・・・だから学習しろよ」

「困ったよぅ」

「はぁ」


 イメージが随分と変わるようなエルフに、レッドの方も困った顔で木の実を受け取る。


「なんだこれは」

「バカ曰く世界樹の木の実」

「・・・そんな馬鹿な、あれは」

「ああ磨り潰して食った」

「・・・なんで俺がこんな目に」


 どうも二人ともレドの行いに振り回される不憫枠らしい。


「適当に食えば別にいいだろう」

「だからエルフから狙われる行為はするな」

「適当に誤魔化せ」

「お前はそう言う奴だよな。人生どこで間違えんだろ」

「うーん。まあ」

「おめえなんかの船なんて襲うんじゃなかった」

「あっでもレッドの船ならまだあるぞ」

「要らねぇ絶対に要らねぇ。どうせ彼奴が変な事をしているに決まっている」

「乗り易そうだぞ」

「海賊を余り虐めるなよ」

「さあ食え」

「という訳でれっど~が食べるに決定」

「多数決により可決されました」

「・・・いつか殺す」


 とても貴重な木の実をレッドは食べるべきか、それとも持ち逃げするべきか悩む。

 仕方ないから食べ、思いっきり吐いた。


「不味っくそ不味いぞ」

「そうか不味いのか、薬用成分などは」

「・・・やっぱりてめぇは殺した方が絶対に言い」

「なんでさ。単なる実だろ」

「エルフに殺されかねない、変な行為ばかりするから、賞金が懸けられんだよ」

「そうか?よく分からない人々だ。単なる木の実が何で大事なんだろう」


 随分と自由な奴、いつも苦労させられる二人と言う関係らしい。

 ゴミとなった木の実に、レドが薬品を掛けて処分した。


「毎度のこととはいえ、俺ってよく生きているな」

「レッドは頑丈だからな」

「特に胃がね」

「特に内蔵の事は相談に乗るぞ」

「人生間違え過ぎたとしか思えない連中なんだよなぁ」

「彼奴はどうしているのやら」

「阿保の事だ。いつも通りだろうよ」

「あああのくそ盗賊か、いつか殺した方が良い、彼奴さえ消えれば万々歳だ」

「よくつるんでバカをしていたバカの二人なのにね」

「バカの二乗過ぎるしな賞金額も同じだし」

「納得がいかん、断固取り下げるべきだ」

「ああおまえの分のみな」

「そして彼奴の賞金は山分け」

「ええ話や」


 今すぐに殺し合わない事が、不思議な関係でもあるらしい。

 バカな会話も終えてからいつもに戻る。

 姉妹からすれば親の過去でもあり興味があるのだが、中々話してくれない親でもあり困った顔で長女も聞いていたし、双子も困っていた。


 □


 放課後の部活動この後の帰宅時間、部室より帰宅するレド一家、バカ話をしていた時とは違いいつも通りの親の顔だ。

 姉妹としてはかつての仲間の事が聞きたいが、いつもの台詞を言われるのが落ちだ。

 地上の学府より地下の居住区、この戦闘・生産系区画の星空の住む場所まで歩く。

 ユキカゼとルリは特に気にせずにとことこと歩き、自宅の前で止まる。

 内部のカギなどは開いてはいるが、レドが細工を毎日するので直ぐに視線や光の影など多方面からの解析を終えてから入る。

 自宅のそれぞれの自室、双子は個人用があるが、双子の時間として双子用の部屋にいる。

 長女のピローテスとしても、父親の事が気になり双子と別れてから父親の部屋の前に付き、ノックした。


「どした」

「迷うが、父さんの昔が聞きたい」

「いつか話そう、何せ長い、たぶんお前たちが死んでも話は終わらない」

「ならいくつかの質問をしたい」

「分かった。まあ座れ」


 レドの部屋は沢山の本がある、どれも貴重な本であり、特に調合の薬品に関してはどの文明の物なのかも不明な古書が多いのだ。

 比較的新しい本もある、教科書と、その専用の辞典、学科用の辞典、対応するデータベース用のブックなどだ。

 地球の文明の人々からすれば途方もない時間の旅をしていた人なので、その分の知識の方も同じ様に膨大でもあり、身に着けた様々な技能も膨大に有る。

 そんな父親に比べればピローテスの時間などはコンマにも当たらない、それ程に長い時間を旅していたのだ。


「まずは父さんの事だ」

「ふむ。地球でいう自己紹介が必要なのか」

「少しだけでも知りたい」

「日本名は天翔武久、地球に10年前にここに来た、養父と養母に育てられる前は6歳のまま膨大な時間を過ごし、その間の精神年齢は6歳だったが、知識は当然のように蓄積された、対応した惑星用のシステムアシスト機能により様々な能力があり、主に騎士技能と忍者技能に長け、得意なものは錬金術、専攻は調合、幅広い宇宙での名前は地球の日本でいう発音でレドだ」

「そうなんだ。何で賞金を懸けられるのだ」

「父さんを嫌うものは多い、特に惑星に住む者にとってみれば傷一つつかない父さんが好きではないらしい、膨大な惑星で狩れそうになったのさ」

「父さんは惑星と敵対した事は有るのか」

「膨大な数をな、だが壊す必要は全くない、何せ惑星に住む者が傷をつけられないのが父さんの本体だ。膨大な戦いの中でもほとんど傷は付かない、中には傷つけられるような強者たちも居たが、今はとうに滅んだ。父さんのような時間には生きられない」

「そうなのか、父さんはどうしてこの惑星に住む」

「育った場所だからだ。だから滅ぶぐらいまでは居ておこうと思っている」

「なるほど、確かに父さんの時間からすれば大した時間ではないな」

「ああ刹那の時間にも当たらないな」

「・・なぜWHO惑星に住まない」

「質問に質問で返すのは礼儀に反する、しかしピローテスの為にも当ててみろ」

「地球に興味がある、なぜ自分は育ったのか」

「うむ正解だ。ただそれは半分だ。まだわかっていない事も多いが、地球には数多い漂流者と呼ばれる奴らがいた、そいつらは何であったのかは誰も知らないが、俺も兄もサーフもそんな奴らだ。生まれ育った時代も全て違ったが、日本と言う国に生まれ、老いて死ぬ予定ではあったが、とある惑星に転移し、その惑星で戦った、プレイヤーとしてな」

「プレイヤー?」

「俺達は自らをそう呼んだ」

「妙な一致をするな」

「ああ。何故プレイヤー法は出来たのか、それは何かの手掛かりになるかもしれないと俺は睨んでいる」

「父さんは学府にどれぐらいいる予定だ」

「高等部はでなければならないし、大学部も出なければならないだろう。だから8年となる、可能であるのなら大学部でのWHO惑星の対砂漠化用の薬を作りたい」

「何故そんな物を」

「俺にとってみれば大したことではないが、俺に同族にとってみれば母星だ。同族が世界を放浪するのは忍びない」

「・・・分かった。最後ではないがとても重要な事を聞く」

「なんだ」

「父さんの性別は」

「男性型だが」

「・・・ティアが泣くんだ」

「泣き虫だからな、仕方ないか」

「ああ。偶にならいい私もそれでよいと思っている」

「だから母親を探していたのか」

「ああ。そうすればティアが泣きやむと思った」

「よく我慢する子だからな、それなのによく泣く」

「父さんは血縁というものが作れるのか」

「本体は戦艦だしな、戦艦に子供を作れとてもな」

「なら最後の質問に近くなるが、あの二人は」

「レッドとポリス?」

「ああ」

「昔の仲間だ。変わり者エルフのポリス、宇宙の暴れ者のレッド、後は至高の盗賊のくそ盗賊だ」

「地球になにがある」

「一つ聞くがピローテス、もし双子が今のまま膨大な時間を過ごし、最後に成長したらどうする、それに興味を持たない自分と言い切れるか」

「それだけには思えない、祖父や祖母の暮らす星だ。可能であるのなら守りたい」


 聡い長女であるとレドは考える、今までの色々な人々はがいたが、短命な時間の中に生きる人の中でも随分と聡いらしい、森の都の学府や様々な所でも話に出る様な逸材、かといっても情報を与えすぎると双子に流れるのは十分に予想できるし、この長女は中々に頭の方もよいが口も上手く、上手く人から聞き出す事にも長ける。


 武芸の方も腕前は高く、特に弓と剣の二つは森の都でも有数の使い手だ。

 暗黒魔法剣の使い手でもあり、双子からすれば真似できない姉でもあるのだが、双子を守ろうと考える少女だ。

 それ故に色々と無理しているのは解り、可能であるのなら和らげるのが良いのだが、他人が負担するより、自分で負担するタイプの苦労性の少女だ。

 損な性格の長女なのだ。


「ピローテス、何歳になった」


 ダークエルフタイプの長女は、エルフ特有の人でいう顔で、困った様に耳を動かしていた。何歳と言うのはピローテスには難しいからだ。

 ピローテスは普通のエルフと違い、エネミーから進化した個体であり、元従者でもあり普通のNPCとは随分と違う娘でもある。


 地球でいうモンスターから進化した、それも過程を全部吹き飛ばしてから、この為にダークエルフと言われてもよく分からず、見た目が有るのでよく男性から言われるが、そもそも理解できない、何せ元となったのはエネミーなので、ユニークな少女なのだ。


 エネミーの人格と、ダークエルフのNPCの体を持った存在と言うのが近い。

 風変りな個人でもあるが、普通のでは理解できないものはしかないが、見た目はダークエルフでもあり、更に言うのなら、その上位のダークナイトエルフと言う、極めて高いランクにいる個人でもあった。


「よく分からない」

「そうか、人で言うのならまだ1歳にもならないとは知っているな」

「・・・ああ」

「エネミーであった為に、テイム型の従者となり、ダークエルフとなり、ダークナイトエルフとなった、それから初期化の前にNPCとなった」

「そうだ」

「まあそうだから養女なのだが、俺も似た様なものだ。元は地球人の日本人だ」

「・・・そうなんだ」

「双子とは随分と違った存在だ。過程を見るのなら俺や兄に近い」

「誤魔化そうとしていないか父さん」


 かなり疑惑の目で見られているらしい、信用がない父親としては辛いものだとレドは思う、いつも口で誤魔化していただけにこの長女は慣れっこの様だ。


「うーん。困ったな」

「地球に何があるのかは話してほしい」

「兄から話すなと言われているすまんな」

「少しだけだ」

「うーん。まあ兄の専門分野を言えば父さんとは違う、話されてもさっぱりなのだ」

「嘘だな」


 容赦なく追いつけられた、かといっても話すわけにもいかず、双子が助けに来ることを切に祈り、適当に誤魔化し続けるしかない。

 察したらしいピローテスは冷たい目で見ていた。

 仕方なく話す。


「次元の歪みというものだ」

「次元?歪み?」

「兄も微細過ぎるのでよく分からないが、他の惑星にはない特徴があったその大きな理由がその次元の歪みだ」

「危険なのか?」

「危険と言うのならそうだろうな。しかし危険ではないというのならそうだろう。どう人が捉えるのかに過ぎないのだから、何せ俺にとってみれば大したことはないしかし地球人の個人からすれば恐怖そのものだろう」

「・・・」

「地球にはこの歪みがあるが、兄の研究に言えば駅らしい」

「駅?宇宙ステーションとか、日本の電車とかの駅か?」

「ああ」

「では質問を変えよう、父さんは何処にあると思う」


 娘に追い詰められまくるが、一応抵抗するべきなのかとも思う、聡い為にその危険性に関しては直ぐに理解する事はわかるのだが、双子の特にコマリは強く興味を示してしまう。姉のティアは興味すらないだろう。


「駅というものがどんなものかわかるか」

「何処かの駅に通じるのなら安心だ」

「宇宙に駅があった、そこに入る船は宇宙船だ。これを駅に例えるとどうなる」

「永遠に続く駅、永遠にどこまで広がる駅、二人には話せない、また秘密が出来た」

「兄は強く興味を持ったらしいが、俺には興味はない、コマリは違うだろう、兄と同じように興味を持つ、ティアはそれに付き合うだろう。二人はまだ幼い」

「分かった二人には話さない」

「ああ。もう行くといい、双子が何かしでかすと面倒だ」

「分かった」


 □


 娘の為に呪詛のように唱えてから精神的に辛すぎるが性別を変更し、女性用の服装に変えたが、パンツのスーツで限界だった。

 そんな夕飯時、精神的に既にグロッキーのレド、ティアは敏感に感じり直ぐに飛び込んできた。

 精神的に辛い。

 女性アバター時の外見を再現したために、ティアは胸に顔を埋めて匂いを嗅いでいた。

 いつから獣人系になった娘よ?


「お母さんの匂いだー。間違いないこの弾力は確かにお母さんだ」

「父さんは精神的に辛いよ」

「今日からこのまま」

「無理です」

「えー」

「精神的に辛いから無理です」

「ぶー」

「偶にはこうするから」

「うーん」

「風呂も入るから」

「もう一押し」

「偶には添い寝もするから」

「交渉成立、いえーい」


 解放されて、ティアが離れてから性別を戻し服装を着替えた。


(精神的に辛いよ義姉さん)


 親と言うのも大変であった。

 今度は義姉の為に頑張ろうと思う。


 □


 夕飯の時間、いつもよりレドが遅い為にヒリュウは珍しいなと思うが、いつもならそう考えたが、席には間違いなく異常がある、お気楽道楽食い物天国娘がいない。

 養女姉妹の次女のティアが居ないのはあり得ない。


(ふーん。そういう事か)


 ティア絡み、姉の方がいる以上は安全圏であるのなら、あのティアが居ない理由は一つしかないのだ。


(へーそういう事が出来るのか)


 ヒリュウがレドと言う個人が随分と風変わりな個人ではあるし、地球の考えとは違う為に、この尺度は考えない、そもそもレドは膨大な星を旅して戻った来た少年のような戦艦だ。当然のような何故三人を養女にしたのかは謎である。


(ふーん。好い事を知った)


 ヒリュウはニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。

 長年の野望が叶う、我が宿願ここに叶ったりだ。


(ふっついにロリ系とは呼ばせないぞ)


 目指すは身長である。

 理想的な身長は155~169の範囲だが、妥協は必要とはわかっているつもりだ。

 用意していた薬を料理に入れて全員に出し、斧槍を持ってレドの部屋に行く。

 目的の為には容赦はしない性格の娘なのだ。

 着替えていたレドを、ヒリュウはにっこりと微笑んでドアを叩く。


「レド、頼みがあるの」

「・・・仕方ないか、いつも世話になっているしな」

「ありがとう。でも仲間を騙したことは許さない」

「何の話だ?」

「後で話すよ。身長はそうだな」


 とてもお怒りらしいヒリュウに、レドはよく分からないので困るが、この戦士型の娘の性格と、理想から言っても、自分がいかに小さいかとよく知っている。


(何故ばれた)


 どういう訳か身長を伸ばす方法を知ったらしい。

 仕方なしに薬か、どうするか非常に困る。

 ヒリュウは学府でも高い能力を持つ生徒だ。特に召喚に関してはよく勉強し、よく研究し、戦士としての斧槍の訓練を欠かさない。


(ふむ。一計を行うか、いや)


 偶には良いかと思った。何せ毎日のように料理を作ってもらい、散々色々な事を任せているのに、ここで裏切るような真似はできないからだ。


「身長か、+何cmだ」

「まずは10cm」

「別によいが、衣類はどうする」

「・・・え?服?」

「身長が伸びたら服全てを買い替えなくてはならないぞ」


 ヒリュウは衝撃を受けた。


(そうだよ!服!どうしよう?)


 ヒリュウにとってみれば服は非常に重要なのだ。

 好い服なら世界の至宝と交換しても全く惜しくはない。


「ひとまず1cmから行ってみるか?」

「それ位なら」


 レドが素材庫から素材を取り出し、必要な量を取ってから閉める、直ぐに生産用のアイテムを取り出して調合し、薬品瓶に入れて渡した。

 ヒリュウは珍しくオロオロと狼狽していた。

 何せ身長が伸びる、嬉しい事ではあるし、レドの薬は確かだ。

 いざ身長が伸びるとなると、凄く困った。


(どうしよう)


「1mmに調整するか?」


 ヒリュウは頷いた。

 レドが薬を調整し、ヒリュウの145cmピッタリの身長を測り、ヒリュウが飲み、激痛が走ってから直ぐに収まった。


「凄く痛いよぅ」

「そうだろうな。俺も経験があるからわかるよ」

「鎮痛剤」

「対応する薬はまだない」

「痛いよぅ」


 恐らく誰も気付かない程の+1mm、学府のおめでとうと言う位だ。

 余りの痛さによく耐えるなとレドは感心した。

 身長が伸びるが、当然のように体の全てが伸びる訳で、死に程の激痛なのだ。


 □


 薬物で眠っていた全員に薬を掛けて起こした。

 参謀コンビはまだ戻ってなかった。


「ふっ」


 仲間は非常に言いたそうだ。


「難しいね」

「・・・ええ」

「・・・ああ」

「さあ食べようか」


 ヒリュウはスルーすることにしたが、アリサ、ウルカの二人は非常に怒っていた。

 姉妹の方もとても言いたそうな顔で居た、唯一ティアだけは全く気にしていなかった。

 サクヤと何やらあったらしくレドを見る、頭の上に手を置いて伸ばした。


(も、問題しかない娘達じゃの)


 地球人3人娘はそれぞれ問題がある。

 忍者娘の方は頑固、生真面目、潔癖に対し直ぐにキレて暴れる。

 獣使い娘は獣と身内だけには非常に優しいに対し、それ以外に対しての容赦がなさすぎる。

 戦士娘の方は一番まともそうではあるのに対し、目的の為になら容赦は全くしない。

 子供の子守りも老人の仕事ではあるが、途方もない問題を抱え手間暇が掛かり過ぎる奴らの事に戦慄した。

 このPTのリーダーの苦労は並ならぬものが、直ぐに分かるような奴らなのだ。


「生命保険に入った方が良いかの」


 真剣に検討するしかなくなりそうだった。


「まあ飯でも食べよう」


 レドは直ぐには食べず耐性薬品を飲んでから食べる。

 どうやら全員の常備薬化しそうだ。

 ヒリュウは唸る、このリーダーは本当に色々と有ったらしく中々動じないらしい。


 □地球『ガーディアン』→『イーニャ』


 久し振りの『イーニャ』にログイン開放時間にログインした。

 固定PT『星空の記録』共同住宅『星空』邸のセーブポイント。

 一人の少女が直ぐにティアに抱き着く、ティアの大親友のピュシーだ。

 レドの義姉の養女でもあり、レドの従妹になる。


「姉妹の方は適当にな、うち等はリャナの所に行くぞ」

「「了解」」


 参謀の二人は初めての異星に、興味深そうに見ていた。

 そんな義姉の部屋の前につく。


「開いていますよレド」


 ドアが開く、義姉のリャナが挨拶し、新顔の二人にも挨拶した。


「レドの義姉のリャナです。いつも弟がお世話になっています」


 二人は困る、何せいるのは美人な女性ではあるが、それは別にいい、温和で落ち着いた女性の性格にも分かるが、それも別にいい、問題はレドの義姉で、この女性に一つでも何かあれば、二人が宇宙に放り出されても全くおかしくなく、むしろ自然の流れだ。


「安心せえ。そのような事はせぬよ」

「安心できない」

「ああ全くな」

「リャナがそれを許さぬ」

「助かった」

「ああ確実に助かった」

「弟は身内の事になると途端に狂暴になるのが困った事です」


 義姉は大変に分かっていらっしゃった。

 中の方は広い一軒家のような部屋だ。

 既に先客がおり森の都の近衛騎士隊長、姫君の二人に、海の都のニクシーの双子姉妹だ。

 見事に女性ばかりの空間に参謀コンビは肩身が狭い。

 しかも紹介されると、地球とは違いこちらでは女性の権力者が一般的らしい。

 地球とは随分と違う社会なのだともわかる。


「集まっても居るし、適当に座ってくれ、リャナも姫君も姉妹の方も口煩くない硬くもない人たちだ」

「おや私はどうなるのです」

「別にトップという訳でもないから別に良いかなって」

「確かにその通りです」


 一行が座る、リャナの隣の椅子にはレドが座り、近くの菓子パンを取って食べていた。

 レドの同族、一人残らずただの人ではない事は直ぐに分かり、封建的な社会でもないらしく、地球には該当しない文明でもあり、文化でもあり、人種でもある為に、ジョーカーは地球の事はひとまず置いた。


「面子も集まったし、刀京の方はまだつかないのか」

「遠いですからね。何せ星の反対側ですし」

「適当に転送するしかないか、精密なのは得意じゃないし、まあ別にいいか、地球の事から始めよう、データの転送も終わっていたし、状況の把握はどうだ」

「全員とも同じ認識です。地球の方々は良く争うなと言った所です。良いのか悪いのか、文明が違いますから致し方ないのですが」

「そういう方々なのでよく武力を使うが、まあ大したレベルじゃない、スキルの一つでもあれば地球人ではどうしようもない、そもそも場所のガーディアンの内部だ」

「見取り図の方も問題はありません、しかしこれまた巨大な物ですね」

「いやー十分小さいよ」

「価値観の相違と言う奴ですね。そもそも惑星を防衛する船からすれば地上の物等は大抵は小さいですし」

「まあな。海では泳がない方がいいぜこことは違いとても汚いから」

「戦争というものか?」

「色々と流れている良い物は少しと、悪い物は大量に」

「健康にはよくないわね」

「ああニクシーには住みづらい惑星だな」

「森の民にとってみ住み心地は良さそうにも思えませんね」

「間違いなく住み心地は最悪だ。しかも見た目さえ良ければ襲ってくる」

「最低」

「彼方の二人はそんな変わり種の中でもさらに変わり種だ」


 地球人の二人に注目が集まるが、二人は特に気にせずに様々な物を観察していた。


「この星ではトップに立つの合理性と必要性の二つのみだ」

「ほう。随分と地球とは違うな騎士」

「ああ地球人の特に権力者にとってみれば理解不能だろうな。さらに古い王家などもに理解不能だろう。地球とは違う異星人というものはそんな物だ」

「なるほど、しかし単に女性のみなのには理由があるのか」

「女性なのは偶々だ」

「なるほどスキルか」

「違う」

「・・・」

「森の方の近衛騎士隊長の方はナイトエルフ、エルフの中でも騎士に該当する人種ランクだ。姫君の方はドリアード、この中でも最古のエント、このエントの中でも古いエルダーエントだ。姫君の力で大森林の維持されている」

「信じられない程のエネルギーだ」

「しかも姫君にとってみればMP回復率の1%にも当たらない」

「各が違うな」

「姉妹の方はニクシー、この中でもエルダーニクシー、更にユニークな存在だ。二人の力で海がある」

「森そのものと海そのものか」

「理解が速くて助かる、リャナはその関係でも随分と風変わりでな当たら良い物をやろう」

「分かるはずもない」

「そうだな。地球でいう神族、神に属する人種だ。その力によりこの辺りの砂漠化は抑えられている」

「大地神?」

「地母神だ」

「母なる神か、なるほど」

「そんな訳でリャナはこの町でも有名人なのだ」

「そうか」

「森と海、この辺りの砂漠化を抑えるリャナ、三人がその気になれば地球を元に戻すのも容易い、力の比が違うが、それは伏せよう」

「了解した」

「持ちうるスキルもユニークな物で構成される、クラスこそは一般的だ。地球でもありふれた様なものだ」

「・・・」

「即ち学生だ」

「若いのか?」

「ああとても若い、ジョーカーでもビックリの年齢だ」

「そうか」

「来る7月に地球の方の学府での面会となる」

「面倒な事になるぞ」

「なるだろう。100%なるだろう」

「今まで通りにはいかないのか」

「いかないな。地球の方では異星人は嫌い、WHO惑星では地球に興味がある、俺としてはWHO惑星の方がいいのでこちらの意見に従う気だ」

「同族だしな」

「ああ。まあそれだけでもないが、各方面もこの惑星を探索し始めているどうやっても超えられない様々な障害はあるが、まず俺以外では辿り着く事も不可能だろうだからこれは無視していい」

「分かった」

「しかしこちらの人々は異星、地球には興味がある、ともある、しかし地球の方々は異星人が嫌い、これをどうにかしなればならない」

「地球でいう政治か」

「それと外交だ」

「面倒だな」

「ああ面倒だ。しかし来年の事も有るので少しは我慢するさ」

「それで騎士」

「俺のランクは戦艦だ」

「迅速な回答ありがとう」

「俺みたいな奴らは結構いる、特に同族にはこの傾向が強い単なる小石と思えば人だったとかよくある話さ」

「困る」

「安心しろ。直ぐに分かるそう色々な意味でな。まっ軽い説明はこれ位だ」

「・・迷うが質問したい」

「三名の事か?」

「そうだ。何故養女にした」

「親になるのもよい」

「そうか、なら質問を変えようあのエルフは何だ」

「なんだそちらが好みだったのか」

「そうだなユニークな個人だとてもユニークな奴らしいな」

「元は森に住むエネミーだ。その中でも低級どころではないほど低い物だ。むしろ一般的な子供でも倒せるような」

「それで」

「それから俺がテイムし、特殊なアイテムでダークエルフとなり、そのまま進化しダークナイトエルフとなり、その後にNPC化し、その後に初期化されたはずだった」

「しかしならなかった」

「ああ。ならなかった一切のスキルは初期化されるも、人種ランクはそのままとなってしまった。その為に森の都でも随分と高位の存在だ。まともに戦えるのは近衛騎士ぐらいだろう他の騎士では話にならん束になってもフルボッコだな」

「随分と」

「しかも暗黒騎士の系統が大変得意だ。暗黒魔法にも暗黒魔法剣にも得意だ」

「・・・」

「気になるのなら聞いてみるといい、色々と話してくれるさ」

「感謝する」

「そんな訳でジョーカーには頼みって奴だな」

「話次第だ」

「とある秘薬を報酬にしよう、お前さんなら絶対に欲しいと思うあれだ」

「ああ」

「地球の学府に行くことにはなるがその間の代表たちのサポートを願いたい」

「・・・引き受けよう」

「装備の方は適当にしよう、綿密な話というものは特にない、顔合わせって意味合いと軽い説明さ」

「騎士の軽い頼みは大変な事になるのが地球での常識だ。特に相棒や私にとってみればな」

「ああ。いつも通りで結構だ。ただし今回はかなり荒っぽくなる」

「地球の対レド同盟は必ず動き、この代表たちを捕獲しようとするヒーロー側の事はよく分からないと言いたいが、恐らく同じだ。連中にとってみれば地球人ではないからな」

「そう言う所が気に入っている」

「そうか」

「おいアケチ話は聞いていたな」

「当たり前の事を言うなよ」

「さて異星での仕事を引き受けたまずは第一歩だな」

「確かにただまあ難しいぞ」

「・・・だろうな」

「成功報酬は秘薬、その達成条件は1日間のサポート、ボーナスに関しては失点無しと大成功の二つだ」

「ああいつも通りだ」

「刀京の方は一般的なヒュムタイプだ。一番弱い」

「そう言う所もいつも通りだ」

「今回は援軍もある、星空が付く、ただ裏事情が分からない温室育ちばかりなのが困った所さ」

「別にいい」

「問題はない」

「じゃ時間はまだあるこの惑星と人を知る為の冒険に出るぞ」

「胸躍る話だ」

「いえているね」

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