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027:ゴミ以下の仕事、其の3

 

 とあるビルの執務室、剃髪の偉丈夫、長官と呼ばれる男がいた。

 現在の職務は特別警察の長官だ、そこに老紳士のサーフがいた。


「話は分かった、しかしサーフがこんなことを言うとは思わなかったよ」

「儂なりに考えた事じゃ、孫も成長し始めたし、仲間も家族もおるしの、あの弟に格好をつける為に生きた馬鹿に協力するのもよしと思ったのじゃ」

「分かった、全力を持って協力しよう、ただレドには知らせずな、あの少年なりに大切な時間だ。学生時代位自由が有ってもよい、いつも文句ばかり、不平不満ばかりで不真面目な奴ではあったが、裏切る事だけは絶対になかった、試す事すらしなかった、あの子には本当に感謝している」

「すまんのう、儂としてもまだ時間は有るのじゃが、まあ長官は人間じゃないからの、人間からすれば膨大な時間じゃが、長官の時間は短いからの、すまんの友よ」

「よい、長年の友好には答えるのが我らの誇りだ」


 □


 無事ではないが入学式を終え、サーフより自由にするように言われたレドは、いつもなら喜んでゲームをしたが、コマリとの事もあり、コマリの自宅に向かっていた。

 レドは特別警察の刑事だ。警察より唾棄の如く嫌われていても、その警察その物をこき使える立場だ。叩けば埃が出る様々な人もいる、レドを恐れ、長官を恐れるものも大量に居る、逆に協力してくれる人たちもいる、そんな協力してくれる人にレドが頼み、車を借りた。ちなみにそんな協力してくれる人の職業は探偵だ。それも普通の探偵ではなく、武装した賞金稼ぎも担当するような武装探偵。特別警察並みに嫌われる職業の人だ。


 車を運転するレド、向かう先はコマリの自宅でも、よる場所があり、レドをとても嫌う職業の場所だ。そもそもコマリの様な変わり者を除き、一般的に言ってもレドのような職業の者を歓迎する場所はない。どんな場所でも嫌われ、歓迎されないのが特別警察だ。

 その中でもレドを嫌い過ぎて、いつも争う人々、ヤクザという。

 そんな建物の前に車を止める、門番たちは直ぐに武器を取る、当たり前だ武装探偵の車に乗った特別警察がやってくれば、有るのはただ一つ、闘争のみだ。


 車から降りたレド、サクヤも居り、サクヤが本来の体の形になる。

 巨大化した竜のサクヤ、門番たちは恐れずに武器を使うが、むなしく弾かれる。


「こんにちは~特別警察のレドです~」


 フレンドリーに言うレドに、門番たちは武器を白兵戦のものに切り替えた、そこにサクヤの前足が振られ、門番たちはあっさりと吹き飛び、重傷になる。


「君達、特別警察が来たらひとまずあるのは一つだ」


 このヤクザからすれば、レドの様な、屑の汚職警察はどう考えても天敵だ。

 サーフなら問答無用で斬るが、レドはそんな事はしない、ある意味優しいが、働く人にとってみれば悪夢のようなことをする、レドはこれを集金と呼ぶ。

 人はそれを色々と呼ぶが、特別警察が言うのは押収という。


「はい、押収しに来たよ」


 つまりヤクザの金はレドの物となる。どんなに抵抗してもこれは変わらない。

 当然の様に激しく抵抗する。

 しかしレドは優しいが、金は頂く、攻撃を受けても全く効かないレド、特別警察のレドを見たら犯罪に少しでも関われば行うべきことは唯一、有り金全てと借金の限度額まで借りた金を差し出すしかない。

 そんな事をすれば当然に嫌われるが、レドは悪人その物を嫌わないし、卒中見逃すし、それなのに首にならない警察なのだ。その理由はレドが一般的な人ではどうしようもないからだ。今までいろいろとやって来たが、犯罪者からすれば特別警察のレドは死に程嫌われる、殺さないが、有り金はなくなるからだ。

 国が金の一つ支払わない理由はこれだ。

 酷い汚職警察である。

 しかも武装探偵より仕入れた情報で、今日は久々の大漁の日らしい。

 武装探偵はレドより情報を貰い、代わりに調べた情報を提供し、レドはこれで集金を行う、持ちつ持たれずの関係なのだ。


「ただ今日は用件がある、金は要らない」


 ヤクザの抵抗が止まる、レドが金を要らないという奇跡が起きたからだ。

 ヤクザ達のお頭の様なものが、どうしたものかと考える。

 この屑の様なではなく、屑の汚職警察の、その刑事と昇格したが、あるのは金の力という奴であると言われる、ただレドの戦闘能力は本物で有り、どんな武装の巨大な組織からも平気な顔で集金してきた。

 レドにとってみれば犯罪者とは金を集めてくれるアリのようなものだ。しかし、このレドは実に風変わりで、話が分からない奴ではなく、事情があって犯罪をする者は平気な顔で見逃し、時には手を貸す、時には警察より助け出す事もしてきた、例え牢獄の中からも、刑務所の中からも。

 逆に犯罪者の苦しめられた人を救うのもレドでもあった、風変りな変な奴ではあるが、犯罪者の金を巻き上げる嫌な奴ではあるが、それだけの嫌われることをしてでも助け出してきたのだ。

 そんなユニークな奴だ。

 だからレドは理由は様々ではあるが、味方が非常に多いのだ。色々な意味で色々な職業や立場の者が味方する。

 レドが嫌われるが、憎まれないのがこの理由だ。


「兵隊を貸して」


 誰も理解できなかった、特別警察のレドが、ヤクザに兵隊を貸してという、頭は困る、レドに抵抗しても殺されないし、傷一つ付ける事すら稀で、そもそも犯罪を嫌う事すら頭にあるのかも分からない、一応レドは刑事だ。普通の警察からは絶対に認めないが、レドは普通の警察の刑事ではないが、悪名名高き特別警察、その刑事第1号だ。


「話は聞こうか」


 頭も一応話は聞くことにした。


 □


 頭は思う、奇跡があり過ぎて困る、自分たちが余程の幸運の女神に抱擁されたことも分かる、むしろ求婚されたのかもしれないそれ程の幸運が舞い込んだ。

 レドの頼みは簡単だ。

 金を支払うから西園寺一家とその周辺を守る事だ。

 レドは風変わりな奴だ。警察ではあるが、そもそも法律を守るとか、法律の番人とかではない、悪名名高き特別警察だ、この特別警察の基準は、助けるか、助けないかの二択だ。

 そう言って意味で人の味方のような奴だ。

 法律の番人とは犬猿の仲で、司法というものや、行政というもの、それから唾棄の様に嫌われるのもこれが理由だが、そんなものよりよほど頼りになる奴でもある、だからこの町でも、理由は様々ではあるが味方が多いのだ。

 問題しかない特別警察法、これを廃案に出来ない理由の最大の理由だ。

 この特別警察の看板のような奴、それがレドだ。

 そのレドに貸しが作れるのなら、特別警察の看板のような奴との闘争は終わる事になる。

 奇跡というものはこんな物だ。

 そんなレドを怒らせるものはあまりいない、かつては居たが、もうこの世にはいない。

 そんなレドがヤクザを金で雇うという、しかも支払う金額も凄まじい、支給される装備も凄い、渡される乗り物を見れば驚くような高級な物ばかりだ。

 頭はたっぷりと沈黙し、周りの部下の方も理解その物が及ばない。

 ちなみにヤクザ達の屋敷の前には巨大なドラゴンが居り、そんなモノに抵抗する勇敢な者達だ。頭の方はそれほど良くないが、勇敢さだけは最高峰だ。

 普通の警察ならすぐに逃げ出す、そんなものに立ち向かうのは勇敢というより無謀ではあるが、レドは殺害しないので特に困らない。

 ちなみに自衛隊は来ない、どんな理由が有っても来ない、特別警察と自衛隊の中は最悪だ。そんな看板のような奴が暴れても来ない、何が有っても来ない。

 つまりヤクザを助けてくれる者はいない、そんなレドとの専属契約は実質的に特別警察の下っ端ではあるが、特別警察の警官へのオファーだ。

 どうも能力が認められたらしい。

 しかしヤクザにはヤクザの矜持があり、仁義があり、面子がある。

 だから頭は困る。

 ヤクザですら特別警察へは入りたくないのだ。

 傭兵でも特別警察へは何が何でね入らない、どんな者も特別警察だけには入らない。

 世界一の嫌われ者、それが特別警察だ。

 何故なら特別警察に入れば、家庭は崩壊する、どんなことが有っても誰も守らなくなる、最低の生活からより最低の生活へと落ちすぎてどうしようもない。

 だから頭は困る。

 ふと脳裏に子供の顔が浮かぶ。

 将来の孫の姿も浮かぶ。

 だから頭は困る。

 この話を蹴れば、レドがどんな行動に出るか、屑の汚職警察ではある、悪事も様々としてきた、しかし同じぐらいに人を救ってきた、敵も多く、同じぐらいの味方も居る、少なくても公務を行う者は全て敵となる、どんな理由が有っても守られることはない。

 だから頭は困る。

 子供にはとても人気のある職業だ、正確には子供のみ、どんな職業の者よりぶっちぎりの№1だ。しかし愛されない、それだけはどんなことが有っても絶対だ。

 だから頭は困る。

 誰がどう考えても運命の分かれ道だ。最低のヤクザか、最悪の地獄か。

 とても困るのだ。


「・・・考えさせてくれ」

「分かった、邪魔したな、ちゃんと待つよ」


 ちなみにレドの経験から言って、この話を直ぐに頷く者は皆無だ。

 どんな者からも嫌われる、最低最悪の職業、世界一の嫌われ者、それが特別警察だ。

 そんな者の仲間になるのはどんな者も嫌だろう。

 地球上で、この仕事について幸運といった者はいない。

 そんな特別警察に所属した者でも、その刑事のレドでも幸運と思ったことはどんな時もない、特別警察の本部の一階、この門には、ようこそ地獄へ、貴方も不幸への第一歩という長官の有り難い言葉がが飾られる。

 そんなゴミのような仕事だ。

 むしろゴミの方が喜ぶ人がいる分マシである、そういう仕事だ。


 幾つかのヤクザを回るも、どこも考えさせてくれとしか言わない。

 刑務所の方にも行くが、レドを見た刑務官や、受刑者は誰も目を合わさない。

 レドが近寄れば誰もが避ける。

 いかにコマリが変わり者かがよくわかる、桁違いの変わり者としか言えないレベルではあるが、サクヤの方は竜の為にそもそもそんな事は知らない。

 こんなレドに協力した武装探偵はいくら持ちつ持たれつでも、十分変わり者だ。

 そんなレドに味方しても、仲間になる事は間違いなくない、そういう仕事に就いたそれも強制的に、だが誰もそれを信じないし、同情すらしない、そういう仕事だ。


 □


 世界一の嫌われ者の特別警察、この特別警察の警察官の上位にいる刑事のレド。

 そんなレドに押し付けられた酷い仕事を行う。

 査察だ。

 それも普通の警察への、この押収した色々な物の押収だ。

 余りに酷い仕事過ぎて、誰もが拒否した。

 普通の警察は、レドを見て誰もが汚物を見る目だ。

 そんなゴミ以下の仕事を行い、登校した。

 学校でのレドは、すでに職業は知られており、そもそも放送されているので誰もが知っていた、当然の様に誰も目を合わせず、レドが居れば静寂が訪れる。

 どんなことを言っても不幸のどん底である。

 タブレットがなる、通話で名前の方は天川昴。

 生真面目で、頑固で、潔癖症で、侍のような少女で、不真面目な公僕のレドに、本当にキレて殺害しようとした少女だ。

 悩んだが、通話が切れると好いなと思っていたが、一向に消えない。さすがに通話を押せなかった。

 ひとまずクラスに入り、席に着いた。

 レドの席に常に同じ、一番後ろの窓際だ。

 隣の席にはサクヤがいた、不憫そうな顔で挨拶した。


「おはようレド」


 レドは直ぐに返せなかった。

 正直泣きそうなぐらい辛い、余りの辛さに自殺を本気で考えていた。

 家族の事が頭を過る。

 もう少しだけ生きようと決めた。


「辛すぎる」


 レドがそう言う、いつもは騒がしいレドが、力もなくか細く言う。

 サクヤとしても、放送を見ていたため、とても辛いのはよく分かる。

 竜のサクヤからしても、余りに酷い過ぎる仕事だ。

 何と言えばよいか正直サクヤにも分からない。

 どんな仕事よりもぶっちぎりの最低以下の仕事だ。

 こんな仕事に真面目にやれとはさすがにいえない、レドが不真面目になる理由がとてもよくわかる、むしろこんな腐れ仕事をしているのにまともな性格だ。

 サクヤですらこの放送を見て泣いた。

 ウルカの暴力などとは、全くレベルの違い過ぎたものだ。


「腐れ過ぎて困る、もう辞めたい」


 レドの偽らざる本音だ。

 沢山の人を救ってきたレドに対する仕事、これとしてはあまりに酷いとサクヤは強く思う。これを見たレドの味方は、どう考えても涙する。

 仲間達がどんなことを言うのか、サクヤにはよくわかる。

 レドに不幸のどん底から救われたアリサ、レドに容赦なく暴力を振るい、生の感情をぶつけるウルカ、レドをいつも頼りにし慕うヒリュウ。

 三人がレドから離れるとはとても思えないし、裏切る事もまずないだろう。

 アリサなら労わるだろうし、励ますだろう、ヒリュウならいつものように陽気に話すだろう、ウルカならどうするか、これだけはサクヤにも分からない。

 そこに一人の女子生徒が入る、見た目はモデルのような長身の白人女性、学校が違うらしく制服が違う、その女性が思いっきりレドを殴った。

 全ての時が止まるような行為だ。

 この女性が言う。


「何故逃げん」


 声には覚えがあり、レドがみれば天川昴だ。プレイヤーネームでいえばウルカだ。

 大変激怒中らしく、般若の様な顔だ。


「何故逃げん!何故拒まん!」


 激怒しているのはレドの仕事ではなく、逃げなかった事と、拒まなかった事らしい。

 レドは衝撃を受けるが、宇宙戦艦のレドには絶対に出来ない事なのだ。

 だからレド、この惑星での名前は天照武久は、答えた。


「俺にはそんな機能はない」

「何故!」

「何故って!?」


 初めてレドが感情を表しに怒鳴った。

 あり得ない物を見るようにサクヤは見ていた。

 レドはブースデッドヒューマンという別の惑星に住む異星人の宇宙戦艦だ。

 しかしウルカは一切怯まない、顔一つ変えない。

 レドは怒鳴る。


「そんな機能もない俺にどうやって拒み!逃げればいいんだよ!」


 サクヤからしてもレドの言う事は分かる、そんな機能はレドにはない、宇宙戦闘艦にそんな機能をつけるバカは居ないからだ。人ですらないレドには絶対に出来ない事なのだ。

 そこにウルカの拳がレドの顔面を捉える、信じられない音をしてレドか吹き飛ぶ。


「なら機能をつけてやる!」


 ウルカがまた殴る、ここで変化が訪れたレドがこの拳を掴んだ。

 どんなことが有っても抵抗もしなかった、逃げる事すらしなかった、そのレトが拳を受け止めた。


「この女!いい加減にしろよ!俺にはそんな機能はないんだよ!?」

「なら何故受け止めた!?」


 気付いたレド、信じられない物を見るように自分の手を見ていた。

 レドには絶対に出来ないように作られた、拒む事も、逃げる事も、防御する事も出来ない、それは絶対のものだ。どんな事が有ってもどんなにやっても出来ない事だった。

 それは掟とは違い、レドのを作った人が絶対に出来ないようにした事の一つだ。

 この制約をレドが破った事になる。

 レドは宇宙戦艦、滅んだしまったが、異星人が作った惑星を守る物だ。

 そのレドが、かされた制約を自ら破ってしまった。

 膨大な時を生き、膨大な惑星で過ごし、膨大な敵と戦い、膨大な被害を受けてきてもどんな事が有っても出来ない事をやってしまった。


「うわぁ~お、いや嘘、マジ」


 いつもなら絶対に言わないような台詞と声だ。しかもとても嬉しそうであり、サクヤもこんなレドは初めてだ。

 ここにウルカのもう一つの拳が当たろうとするも、これをレドが受け止める。


「お~マジで防御機能が付きやがった」

「やれば出来るではないか!?」

「感謝するぜ、ウルカ、やっとの事お前さんの暴力を防御できる」

「諦めては進めんことを学んだな!?」

「いや~こいつは驚いた、そういう事?」


 どうもウルカはレドを成長させるために、暴力を振るっていたらしい事がレドにもサクヤにも理解できた。

 ウルカが頷く。


「お前さんには感謝するぜウルカ、こっちじゃ天川昴か、安心しなそのうち殴り返してやるぜ」

「うむ。授業はひとまず終了だ」


 レドがウルカによって成長を促され、どんなにしても出来ない事を自ら破ったらしく、新しい機能までついた。とても驚く事であった、しかもウルカに殴り返すという宣言までしてしまう、全てがあり得ない事ばかりだ。

 世界一の嫌われ者の仕事、この特別警察、この本部、そこではあり得ない事が起きていた。奇跡という種類のものではあるが、それを歓迎する者はいない。

 特別警察でも最低最悪の役職の者、刑事、その順列でいえば№1、この反乱である。

 ぶっちぎりの最低最悪の仕事をいつも押し付けられ、絶対に拒まなかった、裏切る事も、逃げる事も、どんな時も絶対にしなかった最低最悪の汚職警官でもあった現在の刑事第1号、このレドの反乱だ。

 何せこのレドは酷過ぎる警官でもあったが、刑事になり更に酷くなったそんな最低過ぎる最低の奴だ。戦闘能力に関しても特別警察でも最強の分類にあり、レドを傷つける事も、レドに与えられた命令を妨げる事も誰にもできない事であった。

 このレドがいる為に特別警察の長官は絶対の権力を持つ、特別警察の看板と言っても同じである、そんな順列№1のレドが反乱を起こした。

 あり得ない事ではあるが、一言で言えば裏切ったのだ。

 直ぐに全員が緊急招集され、レドを鎮圧する事が最優先命令となる。

 だがレドと敵対した者が、どんな末路を歩んできたのかは誰でも知っている。

 凄惨な破壊の後の死である。

 これはどんな者でも何も変わらない、どんな者もこんな目に遭い常に死んで来た。

 長官の命令で、レドと敵対するか、それとも逃げ出すか。

 レドには色々と有るのも誰もが知っている、しかしこの特別警察ですら順列№1のレドを死に程嫌っていた。

 レドと敵対する至福をこの長官が許可したのだ。

 特別警察№1の嫌われ者のレドと、特別警察全員という構図だ。

 特別警察の命令は常に1つだ。前進せよ、特別警察にはそれ以外はない、だからこそ特別警察は常に嫌われてきたが、どんな時でも後退はない、前進しかないのだ。

 日本の持つ最強最悪の盾、それが特別警察だ。

 どのみち特別警察には味方は居ない、どんな時も目的地は常に地獄だ。

 この事は直ぐに世界を駆け巡る、特別警察のレドが裏切ったと。

 誰も信じられない、どんな奴でもこれだけは信じられなかった、太陽が西から上がってきても、地球が滅んでも、これだけはあり得ない事だった。

 それが放送されていた。

 レドの常に行う報酬を貰ってのライブだ。

 そんなレドが全世界へのライブ放送でこう言った。

 いつものレドのライブの時間です、今回の舞台は特別警察本部、ここを襲撃します、ちなみに報酬は受け取っていません、全額レド負担です、また報酬も全てレドが支払いますと。

 あり得ない事ばかり起こる。

 しかしもっとあり得ない物を見る。

 レドはどんな時も武装は持たない、そんな物が必要ないからだ。

 看板が三つ。

 一つはもう我慢できない。

 一つは俺の今までの給与を支払え。

 一つはボランティアはもう嫌だ。

 誰もが信じられなかったが、無報酬だったらしい。

 こんな汚物より酷い汚物の仕事を、無報酬で行う。

 現代ではあり得ない滅私奉公だ。

 これを知っている者は、レドが本当に本気なのだと分かった。

 ホームレスの方が恵まれているような仕事を、無報酬で行う。

 酷いなんてレベルじゃない。

 世界中の人の感想は一つ控えめに表しても、最低最悪、ゴミ以下、汚物より酷い汚物、その仕事の中でも看板というべき刑事をしていた、クソッタレ過ぎてどうしようもない。

 朝方に放送されたこともある、日本の一般警察へ査察、この証拠の押収だ。

 これを無報酬で行うのは、軽く控えめに言っても自殺張りに嫌だ。

 誰も笑えなかった。

 そんな仕事ばかりのレド、我慢できなくなるのもどんな者でも理解できた。

 レドを知る者は、ついに我慢の限界に達したことが分かった。

 しかしレドは特別警察だ。その№1の刑事だ。なんであれ味方する者はいなかった、味方のはずも特別警察その物が敵対する道を選んだのだ。

 レドの仕事は酷い、特別警察の仕事も酷い、しかしこれを無報酬て行わせ、反乱を起こしたら敵対する、正しくは人間ではない、そもそも職業でもない、それは奴隷、もしくは道具だ。

 人間と扱われない物がついに牙をむく、それをあっさりと味方は裏切り、敵対した。

 散々ゴミ以下の仕事を行なわせ、裏切ったら殺す気らしい。

 さすがに酷すぎた。

 しかし、特別警察に味方は居ない、どんな事があっても手は差し伸べられないのだ。

 しかも特別警察の目的地は地獄、それも一方通行で有り、曲がり角はない、休む場所もない、だから前進しかないのだ。

 ゴミ以下の仕事を行う者同士が戦う事になる。


 □


 本部の前にサーフが現れる、老紳士のサーフは、無表情の顔で刀を持っていた。

 これを抜き、レドに向けた。

 №1と№2は袂を分かつことになる。


「裏切るかレド」


 誰も一言も言えなかった。

 こんな仕事をして裏切るなという方がおかしい。

 レドは何も言わない、表情に変化はない。


「どういう意味を持つか分からない幼子ではあるまい」


 知る者もその意味する事は知っている、だから何が何でもレドを殺害する道しかないのだ。それしかない道なのだ。

 恐らく自衛隊も、警察も、機動隊もレドを殺害しようとするのは誰にでもわかる。

 特別警察だからではない、レドだからだ。裏切れば殺すしかない、どんな理由が有っても、どんな手段を使っても殺すしかないのだ。

 サーフが問う理由もある。

 レドは惑星を防衛するためにつくられた惑星サイズの宇宙戦艦だ。

 それが裏切る意志を持った。

 そうなったら誰もが敵対し、レドを殺害するしかないのだ。どんな理由が有っても、どんな手段を使っても、なるべく早く、可及的速やかに。

 特別警察、このレドを除いた全員が持つ唯一の正義だ。

 何故ならレドを殺害する目的で作られた組織なのだから。

 だから採用方針は能力のみ、それ以外は全て不問。

 そこに法律はない、この惑星が壊れるか、それともレドを壊すかしかないのだ。

 唯一絶対の生存を賭けた戦いなのだ。

 両者が仲良くすることは絶対にない、和解の道もない、どんな事が有ってもない。

 だからサクヤが現れた。

 フォックスの姿をした女性は、とても疲れた顔で姿を現す。

 竜となったサクヤは、深く長い溜息を吐く、レドを放置する事はどうしてもできない、壊すしかないのだ。

 いつかこうなるだろう、いつかこういうふうになるだろう、いつか争う事になるだろう、いつか生存を賭けて戦う事になるだろう。全ては解っていた事だ。

 レドと生物ではどうしても共存の道はないのだ。

 例え冒険を共にした仲間でも、例え教育を施したとしても、和解の道はない。

 レドか裏切る意志を持てば、どんな事があっても壊すしかないのだ。それが惑星に住む者が取るしかない道なのだ。

 つまりレドの裏切りは全てとの決別なのだ。

 だからレドには色々な機能がない、様々な制約がある。

 それをウルカ、天川昴が破らせてしまった。

 理由は分からない、原因も何もかもが分からない。

 破った以上は壊すしかない。

 だからレドも思いを伝えた。


「サクヤ、サーフ、今まで幸せだったよ、さようなら」


 ゴミ以下の仕事を行う者同士が戦う。惑星と生存を賭けたものだ。

 サクヤもうどうしようもない所にいた。

 竜は最強だ。何故なら家族を殺した者を必ず殺すからだ。

 レドはまだ家族を殺していない、そんな意思もない奴だ。

 しかしレドを放置する事は出来ない、今壊さなければならない、破った以上、裏切った以上、何が有っても、どんな手段を使っても、出なければ今度はサクヤの星が壊される。

 惑星に住む者にとってみれば、レドとは相いれない、共存は不可能、どんな事が有っても和解する事は決してない。

 分かってはいた、全て分かってはいた。

 こうなる事になる事は、レドが打ち明けた時から全ては決定していた。

 だから一方通行なのだ。

 未来を掴みレドの破壊か、レドに敗北し滅ぼされるか、この二択しかない。

 幾壮年を生きた竜の中でも数えるほどしかいない古老の龍は、とても疲れていた。

 せめてウルカがあんなことをしなければ、レドと戦うまでの時間もあったのだが、そう思わずにはいられない。

 もうどうしようもないそれだけしかない。

 サクヤが吼える。幾壮年生きた龍が鳴いた。

 これが戦いの合図となる。

 しかし戦いは直ぐに止まる。

 一人の男が現れた。

 サーフの息子のような者、開発者だ。


「うーん。地球って素晴らしい」


 開発者が呟く。


「やあサーフ、まっあれだなさすがは裏切りの達人、謀略の天才、大切な者の為には何でも切り捨てる、どんな事が有っても斬るだからこの星もろとも弟を殺そうとした」


 サーフの顔に変化はない、サクヤは信じられない顔でサーフを見る、他の者達も同じだ。


「サーフ、私は弟の兄で有り、あんたの味方ではない、あんたが都合よく踊ってくれるから生かしていたにすぎない、だってあんたはバカだし、都合の好い事だった」


 開発者の言葉に、サーフは本体を呼ぶ。


「無駄でした、いやだってそうだろう。あんたを始末するのに本体を呼ばせるわけがないじゃないか、鍵さえ壊せばあんたは終わりだしな、あんたが一度裏切った時からこうなる為に仕向けていたにすぎない、私は裏切り者は絶対に許さない、それが私の歩む道だ。弟のように優しくはない、弟の様に人に優しくしようとは全く思わない、確かに人は便利だ、色々な知識を見付けて集めてくれる、特に地球人はユニークだ」


 人の外見をした開発者から言う言葉は、人を便利な辞典としか思わない台詞だ。


「一番役に立ったのは、レド量産型とか、サーフ量産型とかの技術だ。あー全部もういらないから破棄したがな、地球に作られていた物も全て壊れている、地球程度の技術で私の技術に敵う筈もない、何せ私は技術開発専門だ。地球の笑える様な玩具を壊すのも簡単だったよ。そう言った技術は弟のバージョンアップに使わせてもらった」


 人を便利な辞典としか思わない傲慢な台詞だ。


「まあメモ帳ももう用済みかな」


 辞典ではなくメモ帳だった。


「しかし、分からないのはあの少女だ。何故弟の事を知っているのに破らせた」

「好きだったからじゃ」


 サクヤが答えた。


「初恋というべきものじゃの、レドは思いっきり好みじゃったんじゃよ」

「・・・よくわからん、ちゃんと話せトカゲ」

「なんじゃもしかして童貞か?」

「いや違うが、だが女は直ぐに裏切るからな」

「主の様な性格の者はいくらなんでもお断りじゃ」

「トカゲに興味はない」

「でどうするんじゃ、サーフという切り札がなくなった以上、レドを止める事はもう敵わん、地球の技術ではどうしようもない、妾もこんな地球人を救おうとは思わぬ」

「・・・もうちょっと様子見決定、あの少女には借りもある、何より私には時間は無限だ。まあ弟の方も似たり寄ったりだが、サーフの本体は当に解体しているから呼べないぜ」

「弟が大切か?」

「ああ。大切だ。弟は転位した時には6歳、こんな私でも兄のように慕ってくれた、一度も裏切る事もなく、今は姪も居る、家庭があるのだぞ、全くこれだから仕事人間は好きじゃないんだ。全ては失われた妻と息子の為、その為になら何でも裏切り、何でも切り捨てる、そしてそのためには私は絶対に殺せない、はいそんな訳だ」

「開発者、もうそろそろ学校の」

「なに、もうそんな時間か、早く行け」

「ああ」


 □


 色々と合っての学校、特別警察のレドがいた、さすがに非常に気まずい、レドと敵対する道を選んだ地球人のクラスメイト、しかし宇宙戦艦は生きており、いつものように席に座っていた。その前に座る西園寺コマリは、レドに直ぐに挨拶し、礼を言う。


「ありがとう天翔君」


 ティアそっくりな顔で、コマリが礼を述べた。

 レドからすれば、レドの親しい人全てをあの兄の開発者が守ったために、レドの出る幕はなかった。そもそも宇宙戦艦のカギの状態のレドだ。


「うーん。兄が全てしたことだしな、俺は戦闘専門だし、そもそも地球人の武器では傷一つつかないしな、本体を呼ぶこともなかったし」


 呼んだら地球の滅んでいること間違いなしだ。

 惑星サイズの宇宙戦艦という事はすでに知らされている。

 しかも現在進行形で性能も向上しているらしい。

 つまり地球人がどんなに頑張っても無理なのだ。

 そもそもレドや開発者の様な無制限に生きる存在からすれば、特に困らないのだ。

 何せそんな事は毎日のように起こるのだから。


「こういう時はどういたしましてというのよ」

「どういたしまして」


 戦艦には色々と機能がないために一つ一つ学ぶしかないのだ。


「人間は色々な事を知っているな」


 教科書をパラパラしながら言う。

 宇宙戦艦にとってみれば、戦闘以外の機能はない、その為に常に知識は驚くような事なのだ。

 クラスメイトからしてもこの戦艦は、本当はポンコツじゃないかと首を傾げる。

 何せ地球誕生前から生きているような奴だ。宇宙開闢を知っていてもおかしくない、そんな奴だ。

 それが人間は色々と知っているなと言った。

 こんなポンコツ戦艦のような奴に負けたのだ、科学者が首をつっても全くおかしくない。


「鳳さんは?」

「多分直ぐに来るんじゃないかな、サーフに頼まれていたし」

「お爺さんは大切?」

「祖父のようなものだ。まあ性格はそんなに良くない、何せよく裏切るし」


 このポンコツ戦艦をよく裏切る常習犯だったらしい。

 レドは寛容な性格なので、これを許すらしい。寛容すぎるとは思うが、そう言う戦艦なのだ。


「お仕事はどうするの?」


 地球最大の懸案事項だ。このポンコツ戦艦を今の仕事に着かせるのは絶対に賢くない、むしろ愚かだ。


「うーん。もうあの仕事は嫌だ。転職する」


 クラスメイトからすれば是非してほしい、出来る事なら絶対に安全でクリーンな仕事がのぞましい。可能なら人と関わらないような仕事だと尚善い。

 しかしコマリとんでもないことを言った。


「ヒーローとかは」


 クラスメイトは祈った、どうかこのポンコツ戦艦が頷かない様にと。


「うーん。勉強とゲームはしたいし、考えとく」


 クラスには盛大なホッとした安堵の吐息が漏れた。

 惑星サイズの宇宙戦艦が、人助けをするのは現在の仕事にすれば遥かに良い、しかし戦闘以外の機能はないポンコツのような機能しかない戦艦だ。可能ならばそんな事をしないで欲しいと切に願う。

 教師も入ってきたが、あまり幸せそうではない、そもそも授業を行う気があるのかすら不明だ。教師は人に教える仕事だ。戦艦は専門外だ。

 しかし教師も地球存続の為には励まねばならない。

 責任は政治家より重い、そう言う学校なのだ。

 そこに学校ではドラゴンさんというサクヤが入ってくる。


「おっサクヤじゃちわ」

「鳳さんこんにちは」


 極普通に挨拶された。

 サクヤとしても複雑なモノで、少なくても人間なんかよほど適任だった。

 地球人からすれば、サクヤの生きた時間も、レドの時間も似た様なモノだ。


「う、うむ」


 さすがのドラゴンさんも気まずいらしい。


「こ、困ったの」


 □


 授業の前の自己紹介に、レドはこの自己紹介がよくわかっていない、これを不思議に思ったコマリが尋ねた。


「天翔君、何故できないの」

「いやだってそんな機能はないし」


 サクヤは知っている、レドは自立型の為に乗員が必要ないのだ。乗員の為の機能が一切ない、必要ない機能をつける事はないからだ。

 そんな訳もありデータベース機能もないのだ。当然の様に学習機能すらない。

 戦闘を除けば一切の機能がないのだから、現在の地球人からすれば幸いなのか不幸なのかさっぱりだ。

 クラスメイトや教師からすればとんでももないポンコツ戦艦だ。

 だからレドのあだ名はポンコツ戦艦となった。ポンコツのレベルが凄まじいが、非常に寛容の為にこのあだ名となる。

 コマリは困った。自己紹介すら出来ないとはと。

 とんでもない問題児だ。

 サクヤからすれば機能の事を除けば性能はよく、基本的な知能の方もまともで有り、星に帰ったらどうしたものかと思う。


(いっその事チェーンした方が良いのかの)


 酷すぎる機能しか無いポンコツだ。戦闘艦の自立型の為に、戦闘だけは最強だ。それ以外すべてない、最近はウルカの教育で何とか機能が追加された。

 その結果裏切る事となったが、何が不幸を呼び、何が幸せを呼ぶかさっぱりだ。

 サクヤからしてもとんでもない問題児だ。

 これをこの学校は地球存続の為に教育するしかない、このポンコツをだ。

 しかも自己紹介からつまずく有様だ。酷すぎるレベルだ。

 コマリが何とか教え、レドが少しずつ理解し、やっとの事で自己紹介した。


 □


 特別警察の本部、レド破壊計画は失敗、面子丸潰れだ。

 しかもサーフはこの惑星ごとレドを破壊しようとした。

 だがどうしてもサーフは要る為に誰も言わない。

 サーフもレドも滅んだ文明の乗り物。レドもサーフも自立型だ、宇宙の戦争用の為に、レドやサーフには様々な機能がない、特にレドは惑星防衛用の宇宙戦艦で宇宙専用なのだ。

 そんな訳で地球人基準に考えても、どう考えてもポンコツなのだ。

 宇宙でしか使えない惑星サイズの戦艦、確かに宇宙では最強だろう、サーフでもどんな事をしても敵わないだろう、だからこの惑星で葬るはずだった。

 だが全員が困った。

 開発者の技術を舐めていた、レベルが違ったのだ、何せ対レド用の兵器全てがウィルスで壊れた。

 しかも地球の全ての技術を使っても修復は不可能だ。

 地球を守る為にはレドを破壊する必要がある、それを行うために兵器、これを開発者を上回らないといけない、そのハードルは地球人の基準ではどうしようもない。

 ただレドは非常に寛容の為に、全く気にしていないのは情報要員より分かった。

 宇宙戦艦が寛容なのは何故なのかは分からないが、地球人の寛容レベルより比ではないらしい、怒らせない限りは安全なのだ。

 サーフとしてもまた失敗だ。一応学校に通っているらしく、読み書きと計算だけはできる、その能力は恐ろしく低いが、警察としての能力は高い、

 大変困るような困らないような話だ。


 □


 学校が終わり、久しぶりのログインの時間だ。

 世界システムのシステムサポートがないレドは、性能を活かす事は出来ない、兄の開発者が、色々とやってはいるがなかなか難しいらしい。

『システムより通達、三月分の報酬です』

 机に上に剣が現れた。

 レドはたっぷりと沈黙し、目だけを動かすとサクヤの所には槍があった。

 クラスメイトは注目し、どうやら情報収集中らしい。


「なんじゃ槍?」

「俺の所は剣だ」

「こんな物を貰ってものぅ」

「いやシステムより通達らしい、つまりこれはWHOの装備に該当するものだ」

「「!?」」


 クラスメイトの顔が変わる、レドやサーフの同族の惑星の武器と知れば当然の様に欲しがるだろう。コマリの所にはない、そのコマリが振り向く。

 剣を見て沈黙し、珍しく感情のこもった瞳だが、非難する様な目だ。


「天翔君、学校に武器はダメよ。しまって」


 レドは困った。しまえと言われても剣を収納するところがない。

 サクヤの方は槍を持つ、ただ沈黙していた。


「これの単なる木の槍じゃ」


 クラスメイトは詳しく聞きたそうだ。

 レドとしても剣を支給されても困る、戦艦のレドに剣は要らないのだ。


「まあ帰ってから飾るかの」


 サクヤはそう言って鞄を持ち、コマリとレドに挨拶する。


「じゃあの、WHOで会おう」

「はい。鳳さんまた」

「サクヤもケガはするなよ」

「阿保抜かせ、妾は竜ぞ、怪我など直ぐに治るわい」

「俺の勘が告げる、この武器碌でもないと」


 戦艦のレドが言うのだから正しい事は分かる。


「気を付けておこう、ではの」


 サクヤが、レドの方による、誰もが理解が及ばない。

 背中より翼を生やし、そのまま窓から飛び降り、そのまま飛んでいく。


「鳳さん、次からはちゃんと歩いて」


 コマリが言う、クラスメイトからすればこの保母さんは、凄まじい変人だと理解できた。

 地球人とは喧嘩中のレド、このレドに世話する女子生徒だ。この学校はそんなレドを殺すために集められた少年・少女の学校だ。理由は不明だが裏切ったらしい、しかも生物枠最強の龍と共に、だからどうしても手が出せないのだ。

 もし傷の一つでもつければ、怒り狂ったレドに惨殺されるからだ。

 このポンコツ戦艦は非常に寛容だが、親しい人を守るためにはどんな事もする。そう言う奴なのだ。

 だからこの学校ではレドを怒らす事だけはしない、一度バカな男子生徒がこれをして殺された、どうも頭の方が悪かったらしい。

 だからレドと話す者はいない、観察し情報を収集するのが主なクラスメイトの役割だ。


「コマリ帰るぞ」

「ええ」


 クラスメイト達の放課後も訓練だが、裏切り者と、ポンコツ戦艦は帰ってもらった方が都合がいいのだ。

 クラスより出たレドとコマリ、そのまま話しながら駐車場に向かう。

 コマリの実家はしっかりと有るが、ご両親はレドを殺す事に大賛成らしく、そんなレドと仲良くしているコマリとは絶縁関係だ。そんな訳で西園寺コマリは、現在はレドの借家の地下に広がる場所に住んでいる。

 ちなみにレドには養父がいる、とても子煩悩な人でこんなレドを育てた人だ。その人は地球人でもあり日本人で、実に風変わりな人なのだ。

 駐車場に着たレドとコマリ、レドはとても嫌な者達を見た。


(折角のログイン時間が)


 武装したスーツ姿の男女達の集団、しかも勢力は別の二つだ。

 一つは特別警察並みに嫌われ、天敵の特別警察以外からは頼られる情報通の武装探偵の組織この者達。

 一つはどんな時も味方は居ないが特別警察とは天敵、武装探偵とも天敵、仁義や任侠の人々、所謂のヤクザ組織この者達。

 全員が武装している、火薬式の兵器なんて可愛いものは一切ない、レドの同族の長老がばら撒いた対レド用兵器、正確には異星人の兵器だ。レドの特別警察時代からの横流しの物、これを量産化した物で、この学園など高速回転してぶっ飛ぶようなものだ。

 正直視線を合わせたくない。

 レドは地球のカギ状態ではそんなに知能は高くない、むしろ人以下だ。

 そんな状態のレドでもわかる、協力しろだ。

 汚職警察の辛い所だ。


「転職するってな、ドラゴンさんから聞いた」

「まっ傭兵位は可能か?」


 レドは泣きそうになった。特別警察の次は傭兵らしい、碌でもない物ばかりしかなれないかもしれない。しかし戦艦なので戦闘は大変得意だ。

 そう言うお誘いは、目的地は一つだ。


「特別警察に喧嘩でも売りに行くことになってな」

「フリーランスになって職に溢れている戦艦を雇いに来た」

「分かった引き受けよう」


 ちなみにここは特別警察の次世代を育成する学園だ。

 優秀な者しか入れない為にもう連絡は言っていた。

 そんな場所に居るのは簡単だ。抵抗するだけ無駄だからだ。本気で特別警察に喧嘩を正式に売りに行くのに、可愛い装備など考える様な温厚な奴らじゃないからだ。

 そこに足音が聞こえてくる、誰もが見ると、白兵戦用の装備の主に刀や長柄武器をしたプレイヤーの三名だ。

 身長の大きい白人女性の忍者刀を持ったウルカ、一応日本人の様な少女の大鎌を持ったアリサ、低身長のロリ系美少女のハルバードを持ったヒリュウだ。


「おう傭兵に転職か?」


 三人が首を振る、ウルカが代表して話す。


「サクヤより話は聞いている、装備の実戦も必要なのでな」

「久し振りに大鎌も扱えるし、ここは一つ暴れないと♪」

「何で愛用の物じゃないの、これちょっと軽いよ」


 三者三様ではあるが、丁度良い話だ。


「コマリもよいか」

「大丈夫ついていく」

「よし喧嘩でも売りに行きますか」


 □


 武装した集団、武装探偵組織のエリート達、ヤクザ組織の精鋭達、プレイヤーの3名+1名、戦艦一隻だ。

 本部までの距離はあれであるが、モーゼもビックリの勢いで人が居なくなった。

 ちなみに二つの勢力はプレイヤーから距離を取る、武器が白兵戦用であるが、そんな物を振り回すような奴らがまともな地球人のはずがない位は誰にでもわかる。

 特にアリサは鼻歌を歌う、それも家事をするような気軽さだ。

 今から戦場に行くのに、幾らなんでも異常に見えたらしい。

 本部につく、まだ機動兵器は間に合わなかったらしく、車両兵器、航空兵器、この見本市の様にある。それだけではない大量の兵器を持った歩兵までいる。


「あら♪一杯の首が有るわ♪」


 軽やかに弾む様な声で言うアリサ、誰も目を逸らす、声を聴いた敵も嫌な顔だ。


「刈り時ねえ♪」


 アリサが大鎌を振るう、真正面の車両兵器が真っ二つに切断された。

 時が止まる、距離にして20m、車両兵器は一般的に言っても高級な戦車だ。

 それを白兵戦用の大鎌が一振りで切断した。

 中に居た者はもうさようならだ。

 しかしアリサは不満だったらしい。


「首だけを斬るのが好きなのよ~つまらないわ」


 まるで射的の的を外したような感情の気軽な声だ。祭り気分でやってきて失敗した。

 誰も何も言えない、仲間のヒリュウもウルカも、視線を逸らしていた。

 敵の特別警察も沈黙していた。

 化け物と誰かが呟く、特別警察に化け物指定されたらしい。

 二つの勢力の者達は、アリサより二歩離れた。

 PTのリーダー役としては、どうしよう。そんな気分だ。

 アリサが再び大鎌を振るう、切断された戦車の隣にいた強化服を着込んだ特別警察の隊員の首が刎ねられる。


「やったぁ!やっと~」


 無邪気に喜んでいた、二つの勢力の者達は三歩離れた。


「首狩り姫の遊びの時間よ♪」


 特別警察の隊員たちが後ずさる、二つの勢力はかなり離れた。

 仲間のウルカも、ヒリュウも、レドも何も言えなかった。

 大鎌を振るう度の隊員達の首が跳ねられる、高級な重装備の強化服を着込んだ歩兵の首を刎ねるなんてことはできないのが常識だった、それを遊びという言葉であっさりと行う。

 アリサが地球人で、日本人で、人間とは誰も信じない、これだけは決定していた。

 この強化服を着込んだ者達は、白兵戦の専門家だ。有効射程が20mを超える白兵戦武器などない、どんな事が有ってもないはずだったのだ。

 だがアリサの振るう大鎌はこれを可能とし、高級な白兵戦用の重装備の強化服、この装甲を易々と破り、有ろうことか絶対防壁まで破っていた。

 こんなことをする者を人間とは思わないだろう。

 二つの勢力もこれが人間とは誰も思っていないのは目に見えていた。

 リーダー役のレドは戦艦、アリサは人間じゃない何か、残る二人も似た様なモノとは思われるからだ。

 辛くないはずがない。

 アリサが笑う、とても嬉しそうに笑う。

 特別警察の指揮官が叫ぶ、化け物を殺せと。

 だが攻撃は出来なかった。

 ウルカの忍者刀が抜かれていた、抜く事によって人を止める機能を有する忍者刀だった。

 アリサか更に笑う、とても嬉しそうに笑う。

 大鎌が振るわれる、有るのは一方的な殺戮だ。

 そんなアリサに比べれば、二つの勢力の者達は非常にまともでマシな人間だった。

 ヒリュウは泣きそうになった、15歳の少女は、このアリサの仲間で友人だ。殺しているのは敵であるのだから、間違ってはいない、例え問題は有っても、戦うのなら全力で戦うのが礼儀だ。どんなことを言っても殺し合うしかない関係なのだからどうしようもない。

 辛かった。

 特別警察は、レドの仲間である三人を狩ろうとした、こうなってはもう戦うしかない。

 アリサはゲームでは非常に良くなったし、このリアルでもマシになりつつあった。

 そんなアリサのまだ残っていたところが表に出たのだ。

 敵は言うだろう、彼奴が首狩り姫の仲間だと。


(もういいや)


 ヒリュウはまともな人生を諦めた、色々と不幸の少女だ。

 ハルバードを振るう、破壊が起こる、アリサの首狩り等が可愛く見える程の、凄まじい音がして凄まじい範囲の者と物がぶっ潰れたのだ。

 敵味方が沈黙し、ヒリュウを凝視した。

 145cmのロリ系少女の起こした正しく破壊であった。

 ウルカの忍者刀によって動きを封じられ、アリサの大鎌の一方的な虐殺を受ける人々、ヒリュウのハルバードはそんな物等可愛すぎてどうしようもない範囲の武器を持っていた。


「レド、戦って」


 ヒリュウが言う、レドは仕方がないと言った所で剣を抜き、振るう。

 黒い霧が辺りを覆う、触れた者は一人が倒れ、死んでいた。

 この戦いでWHOのプレイヤー達との戦争は誰も考えないだろう。

 見た目はレトロな白兵戦武器だが、とんでもないレベルの兵器でもあるらしい。

 ヒリュウが吼える。


「さあ闘争の宴だよ」


 ヒリュウが飛び出し突撃する、ハルバードを振るい、ひたすら破壊を巻き起こす。

 ヤクザも、武装探偵も、とんでもない連中と組んでしまったと思っていた。

 ウルカの忍者刀の範囲外の者から、攻撃が始まるが、プレイヤー達を中心にある防御フィールドにより、むなしく無力化された。

 特別警察も必死に抵抗するが、異星の武器を持っても、攻防一体のレトロな兵器を持つ、プレイヤー達の突撃は止められない、止めようがないらしい。


「撤退!」


 誰もが耳を疑う、特別警察の指揮官がそう叫んだ。

 忍者刀のウルカも、大鎌使いのアリサも、ハルバード使いのヒリュウも、戦艦のレドも、ヤクザも、武装探偵も、特別警察の隊員すらも信じられない顔で見る。


「撤退せよ!このままでは全滅だ!」


 しかし誰も動かない、敵味方が動かない。

 ここでヒリュウが頷いて理解を示した。


「分かった見逃すよ」


 仲間も、ヤクザも、武装探偵も、信じられない顔でヒリュウを見る、敵の特別警察すらヒリュウの言葉が理解できないようだ。


「追い打ちもしない事は僕が約束するよ。」


 一つの戦いが終わった。


 □


 通称オタク法、正式にはプレイヤー法の可決が決まり、日本はプレイヤー達を隔離する事に決定する、ただレドの仲間と言っても過言ではないような連中なので、誰もが担当したがらず、またレトロな刀剣や弓等でも武装し、これらのレトロな旧世代兵器は、地球の技術では解明できない神話級兵器と呼ばれ、現時点では最強の兵器でも武装しているのだ。

 しかし嫌われ者のレドと付き合う様な変人たちは、あっさりと了解し、その理由はゲームを大量に出来るからだ。しかも政府は金から何まで支払うとすら言う、要するに餌に釣られたのだ。一般的に言っても非常に変わっている人々でもあった。


 □


 プレイヤー達が集められた施設、正式には学府と名付けられた、レドの注文でこの正式名称は変えられ、冒険者育成学府ガーディアンに変更された。


 凶報、屑と金の猟犬が手を結び、汚職警察に正式に喧嘩を売る。汚職警察はこれを受けてさらに汚職を強化した。

 凶報、金の猟犬がオタクと手を結び支援を開始。

 凶報、オタク学校創設されました。


 □


 プレイヤー法の施行の後に、冒険者育成学府『ガーディアン』での生活を始める。

 一般的には蔑称であるオタク法施行、オタク学校の創設の後だ。

 プレイヤー達と手を結ぶ武装探偵が支援を行う。

 武装探偵の事を蔑称では金の猟犬、この組合を『武偵組合』、学園の事を『武偵学園』という正式な名前は有るが、組合の方は猟犬組合、学園の方は猟犬の小屋というのが一般的だ。

 世間一般的に、地球では嫌われ者達の話だ。


 特別警察、通称は汚職警察の元刑事のレドは、惑星サイズの宇宙専用戦闘艦が本体で、地球の日本では起動キー(人型)の状態にいる。

 こんなレドは地球ではぶっちぎりの嫌われ者だが、変わり者たちからの人気は非常に高い、この為、レドの知り合いから何までは変人で構成される。

 そんなレドがプレイヤーの一人となり、汚職警察のゴミ以下の仕事より解放された。

 一般的に言えば、ゴミ以下の仕事から、寄生虫のオタクとなったというものだ。

 これを丁寧に言うのなら、プレイヤーとしての生活になった事になる。世間的にはマシになった方だ。


 しかし不幸な手紙が届く、呪いの手紙の方が遥かにマシだ。


 刑事を辞職したレドには今までの給与も、必要経費も、退職金も、年金もない、国は一切の金を支払っていない、つまり滅私奉公だ。現代風に言えばボランティアになる。戦艦には金を掛けない方針らしい、何せこの地球人から、いつも殺されそうになるレドなのだから当たり前と言えば当たり前だ。


 差出人の名前はヒーローマスター、地球での愛される人気者たちの職業の長の名前だ。

 用件はヒーローたちの育成機関である『ヒーローアカデミー』に入らないかというお誘いだ。恐らく誰もが喜ぶだろう、一般的に言えば、しかし嫌われ者の中でもぶっちぎりの嫌われ者のレドはボランティアはもう嫌なのだ。

 だから焼く事にした。


 それなりの土地の一戸建て、一人暮らしなので広さはそれ程いらない、『ガーディアン』の敷地にある住宅街に作られたものだ。ちなみに地下にはレドの力により作られた広大な空間があり、プレイヤー達は地上と地下の二つに家がある。

『ワンオフ・フリーライフオンライン』通称WHOのプレイヤー達は、根っからのゲーマーなので、ゲームの為にそれなりに安全を期したのだ。

 トレーニング用、生産用の施設もある。

 兄の開発者があっさりと作ったのだ。魔法使いのように指を振った。

 惑星開発が大好きな兄にとってみれば簡単な事だったらしい。

 プレイヤー達も、レドもこの兄をゲーム用語で言うのならリスペクトした。

 それぞれに支給された自衛用の兵器、これとトレーニング用の兵器と、これらの説明書も支給された。

 地下にはそれぞれの家と、トレーニング用と生産用の施設があるが、公園の他に、農園や、店用の施設もある、一言で言うのならプレイヤー用の町だ。

 固定PTの『星空の記録』のリーダー役のレド、サブリーダーのウルカ、アリサ、ヒリュウ、サクヤ、新しく入ったコマリも似た様な場所に住む。

 兄なりに考えた配置になっており、固定PT用や、ソロ用、戦闘系や生産系、戦闘・生産系などもあり、似た様な者同士が近くに暮らす。

 レド達は戦闘・生産系に属し、主に生産系を重視するタイプのPTだ。

 そんな訳で、地球とは全く別のような地下空間になってる。

 プレイヤー達の他には、人はいないが、防衛用や警察用に作業用等のロボットも居る。

 WHOの色々な情報が記載された図書館や、映像ライブラリの映画館、説明の為に博物館、様々に有るが、利用する為にはWHOの通貨がいる、物を購入する為にも必要だ。

 支給されたものは三月分の報酬でもあるが、所謂の初期装備の支給らしい。

 この為にプレイヤー達は、直ぐにログインしようとしたが、兄より学校には絶対に行く様に通達され、誰もががっくりだ。どうも弟が学校に行きたがらなかった事から学習したらしい。

 学校では地球の事を知っても意味はないので、WHOの様々な事を学ぶ、ロボットが担当するので安心らしい、この為に正真正銘の冒険者となった。正確にはその卵だ。

 やっとのことスタートしたことになる。

 こんなプレイヤー達が、こんな夢のような事を捨てるはずもない、やっとのことで夢が叶ったのだから。

 ゲームも調整され、学校の放課後のログイン解放時間が、彼方の朝方だ。

 レドが、PTの専用の生産所に来る、それぞれが生産の勉強中だ。専門が違うので素材の方はそれなりに共有できるが、技術的な事は互いによくわからない分野でもある、また三月を持って全プレイヤーは初期化された、これから始まる冒険には必要ないというのが兄の言い分だ。誰もがこれに納得した。


「どうしたレド」


 もうアバターは必要ないので、元の姿でいるウルカだ。ゲームでの名前がそのまま使われることになったのはプレイヤーらしいとだ。リアルネーム、日本名の方もしっかりと有り、こちらの方は固定PTの結成の時用に使う、つまり日本名を知る者は固定PTの者のみだ。正真正銘のPTとなったその時用のものだ。

 しかし卒中使うのはあれなので、プレイヤー名を使うのが日常となった。


「ヒーローアカデミーに入らないかというお誘いの手紙が届いた」

「焼いておけ」

「その為に来たのさ」


 台所に行き、点火したコンロで焼いた。

 やっとのことで始まる冒険者生活を捨てるには魅力がなさ過ぎた。

 地球にはどのみちそんなに良い事はない、色々と合ったが、やっとのことスタートだ。

 養父の事も有るので、当座は日本で暮らす事にしている。

 兄なりに色々としていた事がとても嬉しかった。偶には作った物を食べに行くのもよい、そう考えた。

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